Cloud Storageの署名付きURLを使用して、Lookerダッシュボードに画像を表示する

 2023.11.30 XIMIX 重永

        

はじめに

マークダウンテキストタイルに画像 URL をハードコードすることで、Looker ダッシュボードに画像を追加できます。(後述の参考サイト①参照)

Lookerダッシュボードに表示する画像をCloud Storageで保管することで、複数のダッシュボードで同じ画像を再利用でき、細かい権限設定ができるため、画像を安全に管理することができます。

Cloud StorageのURLには、以下の3種類があります。

  1. 承認済みURL:特定のユーザーまたはグループにのみアクセスを許可するURL
  2. 署名付きURL:指定された期間内に、指定されたアクションを実行できる一時的なアクセス許可を提供するURL
  3. 公開URL:誰でもアクセスできるURL

Lookerダッシュボード上の画像を表示する場合、上記3つのURLには以下のメリットとデメリットがあります。

種類 メリット デメリット
承認済みURL

・特定のユーザーまたはグループにのみアクセスを許可するため、セキュリティが高い

・画像を表示するユーザーにGoogleアカウントが必要

・Cloud Storageのアクセス制御ポリシーの設定が必要

署名付きURL

・画像を表示するユーザーのGoogleアカウントが不要

・URLに有効期限が設定できる

・URLが知られると誰でもアクセスできる

・有効期間が過ぎるとURLが失効する

公開URL

・画像を表示するユーザーのGoogleアカウントが不要

・URLが知られると誰でもアクセスできる

承認済みURLが最も安全なため推奨となりますが、Googleアカウント数の制限等により、署名付きURLまたは公開URLを採用する場合は、VPC Service ControlでIPアドレスによるアクセス制限をかけることをお勧めします。(後述の参考サイト②参照)

本記事では、署名付きURLを使用してLookerダッシュボードに画像を表示する方法について説明します。

本記事の想定読者

Cloud Storage, BigQuery, Lookerの基礎知識がある人

実現方式

署名付きURLを使用してLookerダッシュボードに画像を表示する流れは以下の通りです。

  1. Cloud Storage上に保管した画像ファイルを基に、BigQueryのオブジェクトテーブルを作成する
  2. BigQueryの組み込みテーブル関数「EXTERNAL_OBJECT_TRANSFORM」を用いて署名付きURLを生成して、Lookerダッシュボードに画像を表示する(「EXTERNAL_OBJECT_TRANSFORM」については、後述の参考サイト③参照)

gcs_image_to_looker

設定手順

後述の参考サイト④⑤の通りに、Cloudリソース接続とオブジェクトテーブルを作成します。

前提条件

以下の設定が完了していることを前提とします。

  • Google Cloud プロジェクトとBigQueryデータセットが作成済みであること
  • Google Cloud プロジェクトで課金が有効になっていること
  • LookerとBigQueryデータセットが接続済みであること

Google Cloud

Cloud Storage バケットの作成

Cloud Storageのバケットを作成します。([BUCKET_NAME_1]は適宜設定してください)

$ gsutil mb gs://[BUCKET_NAME_1]

バケット作成後、適宜画像ファイルを作成したバケットにアップロードしてください。

本記事では以下の画像ファイルをCloud Storageバケットにアップロードしました。

オブジェクトの詳細

BigQuery Connection API の有効化

オブジェクトテーブルの作成に必要である、BigQuery Connection APIを有効にします。

$ gcloud services enable bigqueryconnection.googleapis.com

Cloud リソース接続の作成

Cloud リソース接続を作成します。

$ bq mk --connection --location=us-central1 --connection_type=CLOUD_RESOURCE my-connection

Cloud リソース接続が作成されました。

作成したCloudリソース接続

Cloud リソース接続を作成すると、BigQuery により一意のシステムサービスアカウント(上記画像のサービスアカウントID)が作成され、Cloud リソース接続に関連付けられます。

作成されたサービスアカウントにバケットのStorageオブジェクト閲覧者の役割を付与します。([MEMBER]はサービスアカウントID、[BUCKET_NAME_1]は作成したCloud Storageバケット名を設定してください。)

$ gsutil iam ch serviceAccount:[MEMBER]:objectViewer gs://[BUCKET_NAME_1]

オブジェクトテーブルの作成

BigQueryのクエリエディタで以下を実行し、オブジェクトテーブルを作成します。([PROJECT_ID].[BQ_DATASET].[TABLE_NAME]は適宜設定してください)

CREATE EXTERNAL TABLE `[PROJECT_ID].[BQ_DATASET].[TABLE_NAME]`
WITH CONNECTION `us-central1.my-connection`
OPTIONS(
  object_metadata = 'SIMPLE',
uris = ['gs://[BUCKET_NAME_1]/hoge/*.png', 'gs://[BUCKET_NAME_2]/hoge/*.png'],
  max_staleness = INTERVAL 1 DAY,
  metadata_cache_mode = 'AUTOMATIC'
);

上記クエリの設定値の説明は以下の通りです。

  1. uris
    1. オブジェクト テーブルで表されるオブジェクトを含む Cloud Storage バケットへのパス
    2. コマンド例の場合、[BUCKET_NAME_1]と[BUCKET_NAME_2]のバケットの/hogeフォルダ配下の拡張子がpngのファイルのみをオブジェクトテーブルに表示する
  1. max_staleness
    1. キャッシュ内のメタデータをオブジェクト テーブルに対するオペレーションで使用するかどうかを指定
    2. コマンド例の場合、テーブルに対するオペレーションは過去 1日以内に更新されたキャッシュ メタデータを使用する。キャッシュに保存されているメタデータがそれより古い場合は、代わりに Cloud Storage からメタデータが取得する
    3. 詳細は後述の参考サイト⑥を参照
  2. metadata_cache_mode
    1. メタデータ キャッシュを自動的に更新するか、手動で更新するかを指定
    2. コマンド例の場合、メタデータ キャッシュがシステムで定義された間隔(通常は 30 ~ 60 分)で更新される
    3. 詳細は後述の参考サイト⑥を参照

オブジェクトテーブルが作成されました。

オブジェクトテーブル_スキーマ

オブジェクトテーブル_詳細

オブジェクトテーブルに対してクエリしてみると、Cloud Storageオブジェクトのメタデータが取得できます。

SELECT * FROM test.gcs_table;

オブジェクトテーブルへのクエリ

Cloud Storageオブジェ句テーブルの作成が完了しました。

続いて、Lookerの設定を行います。

Looker

viewとmodelの作成

[TABLE_NAME].view

view: gcs_table {
  sql_table_name: `test.gcs_table` ;;

  dimension: content_type {
    type: string
    sql: ${TABLE}.content_type ;;
  }
  dimension: generation {
    type: number
    sql: ${TABLE}.generation ;;
  }
  dimension: md5_hash {
    type: string
    sql: ${TABLE}.md5_hash ;;
  }
  dimension: metadata {
    hidden: yes
    sql: ${TABLE}.metadata ;;
  }
  dimension: size {
    type: number
    sql: ${TABLE}.size ;;
  }
  dimension_group: updated {
    type: time
    timeframes: [raw, time, date, week, month, quarter, year]
    sql: ${TABLE}.updated ;;
  }
  dimension: uri {
    type: string
    sql: ${TABLE}.uri ;;
  }
  measure: count {
    type: count
  }
}

view: gcs_table_signed_url {

  derived_table: {
    sql:  SELECT
        uri,
      signed_url
      FROM EXTERNAL_OBJECT_TRANSFORM(TABLE test.gcs_table, ['SIGNED_URL'])
      ;;
  }

  dimension: uri {
    type: string
    sql: ${TABLE}.uri ;;
  }

  dimension: signed_url {
    type: string
    sql: ${TABLE}.signed_url ;;
}

  dimension: image {
    type: string
    sql: ${TABLE}.signed_url ;;
    html: <img src= height=auto width="100%">;;
  }
}

derived_table で署名付きURLの生成をし、dimension: imageで画像を埋め込んでいます。

このとき、生成される署名付き URL は、発行から6 時間後に期限切れになります。

model

modelを作成します。

connection: "[PROJECT_ID]"

# include all the views
include: "/views/**/*.view.lkml"

datagroup:[LOOKER_PROJECT]_default_datagroup {
  # sql_trigger: SELECT MAX(id) FROM etl_log;;
  max_cache_age: "1 hour"
}

persist_with: [LOOKER_PROJECT]_default_datagroup

explore: gcs_table {
    join: gcs_table_signed_url {
      type: left_outer
      relationship: one_to_many
      sql_on: ${gcs_table_signed_url.uri} = ${uri};;
    }
}

Lookerダッシュボードの作成

Exploreでディメンションを「Image」「Signed URL」「URI」を選択し、実行ボタンを押下することで、署名付きURLの画像が表示されることが確認できました。(画像表示の都合上、ビジュアリゼーションは 単一レコード に設定しております。)

gcs_image_to_looker_8

Exploreからダッシュボードを作成します。

Lookerダッシュボード_表示1回目

キャッシュを消去して更新すると、署名付きURL(Signed URL)が更新されていることが確認できます。

Lookerダッシュボード_表示2回目

まとめ

Google Storageの署名付きURLを使用して、Lookerダッシュボードに画像を表示することができました。

署名付きURLを使用することで、有効期限が設定されるため、公開URLよりは安全にファイルを管理することができ、承認済みURLのような権限管理は不要となります。

参考サイト

    1. Liquid と HTML を使用して動的なダッシュボード画像を作成する
    2. VPC Service Controls - アクセスレベルの設計
    3. オブジェクトテーブルの概要 - 署名付きURL
    4. オブジェクト テーブルを作成する
    5. Cloud リソース接続を作成して設定する
    6. パフォーマンス向上のためのメタデータキャッシュ
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執筆者紹介

Hikaru Shigenaga
XIMIX 重永
2019年よりGoogleCloudで開発を始める。 主に、データ分析基盤構築案件のPM/PLを担当。 主にGKE・CloudFunctions・BigQuery・CloudStorage・Matillion(ETLツール)を扱う。 Looker・Tableauの勉強中。

Cloud Storageの署名付きURLを使用して、Lookerダッシュボードに画像を表示する

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