【入門編】CCoEとは?目的から組織体制、成功のポイントまで徹底解説

 2025,06,06 2025.06.06

はじめに

「全社的にクラウド導入を進めているが、部門ごとに利用方法がバラバラで統制が取れていない」 「期待したほどのコスト削減や業務効率化に繋がっていない」 「セキュリティやガバナンスの面で不安が残る」

多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する中で、クラウドの利活用はもはや当たり前の選択肢となりました。しかしその一方で、上記のような新たな課題に直面しているケースは少なくありません。特に、中堅〜大企業においては、組織規模が大きいがゆえに、全社最適なクラウド活用を実現することの難易度は高まります。

こうした課題を解決し、企業のクラウド活用を成功へと導くための鍵として、今「CCoE(Cloud Center of Excellence)」に注目が集まっています。

本記事では、これから本格的にクラウド活用を推進していきたい、あるいは現在の活用状況に課題を感じている企業のDX推進担当者様や決裁者様に向けて、CCoEとは何か、その目的や役割、そして成功のためのポイントを網羅的かつ分かりやすく解説します。この記事を読めば、CCoEの基本的な概念を理解し、自社のクラウド戦略を次のステージへ進めるための具体的なヒントを得られるはずです。

CCoEとは何か?

CCoEとは、「Cloud Center of Excellence」の略称で、企業がクラウドコンピューティングを効果的かつ効率的に利用するための専門組織・チームを指します。

単に技術的な専門家を集めたチームというだけではなく、ビジネス戦略に基づいてクラウドの利用方針を定め、全社的なガバナンスを効かせ、クラウド活用のベストプラクティスを組織全体に浸透させていく、いわば「クラウド活用の司令塔」としての役割を担います。

なぜ今、CCoEが注目されるのか?

多くの企業でクラウド利用が本格化する以前は、情報システム部門がITインフラを一元的に管理することが一般的でした。しかし、クラウドサービスは手軽に導入できるため、事業部門や開発チームが個別の判断で様々なサービスを利用する「シャドーIT」が生まれやすくなりました。

このような状況は、一見すると現場のスピード感を高めるように見えますが、長期的には以下のような深刻な問題を引き起こすリスクをはらんでいます。

  • セキュリティリスクの増大: 全社的なセキュリティ基準が適用されず、脆弱性が放置される。
  • コストの非効率化: 利用状況が可視化されず、不要なコストが発生する。
  • ガバナンスの欠如: 企業のコンプライアンスポリシーに反した利用が行われる。
  • ノウハウのサイロ化: 各部門が得た知見や成功体験が共有されず、全社的な成長に繋がらない。

CCoEは、こうしたクラウド利用の「無秩序」な状態を防ぎ、全社横断で統制の取れた戦略的なクラウド活用を推進するために不可欠な存在として、その重要性が高まっているのです。

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CCoEの主な目的と役割

CCoEが担うべき目的と役割は多岐にわたりますが、主に以下の点が挙げられます。これらは相互に関連し合い、企業のクラウド活用を総合的に成熟させていきます。

①クラウド戦略の策定と推進

企業の経営戦略や事業戦略と連携し、「何のためにクラウドを使うのか」という大方針を定めます。どのクラウドサービスを標準として採用するかの選定や、オンプレミスからの移行計画の策定なども重要な役割です。

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②ガバナンスとセキュリティの強化

全社共通のクラウド利用に関するルールやガイドラインを策定し、遵守を徹底させます。これには、セキュリティポリシーの策定、アクセス権限の管理、データの取り扱い基準の明確化などが含まれ、企業の重要な情報資産を保護します。

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③コストの最適化

クラウドの利用状況を全社的に監視・分析し、無駄なコストが発生していないかをチェックします。リソースの適正化や、より安価なサービスへの切り替え提案などを通じて、クラウド投資の費用対効果を最大化します。多くの企業様をご支援してきた経験から、このコスト最適化はCCoEがもたらす非常に大きな価値の一つと言えます。

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④標準化とベストプラクティスの展開

クラウド環境の構築パターンやアーキテクチャを標準化し、誰が利用しても一定の品質とセキュリティが保たれる「型」を提供します。また、一部門で得られた成功事例や効率的な利用方法を「ベストプラクティス」として形式知化し、全社に展開することで組織全体のスキルアップを図ります。

⑤人材育成と文化醸成

クラウドを使いこなすための人材育成もCCoEの重要な役割です。社内勉強会やトレーニングプログラムの企画・実施を通じて、全社のクラウドスキルを底上げします。また、クラウド活用を積極的に推進する文化を醸成し、DXに向けた組織変革を後押しします。

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CCoEを設置するメリット

CCoEを設置することは、企業に多角的なメリットをもたらします。ここでは、経営、IT部門、事業部門それぞれの視点から見ていきましょう。

  • 経営視点のメリット:

    • DXの加速: 統制の取れたクラウド活用により、新規事業の開発やビジネス変革のスピードが向上します。
    • IT投資対効果の最大化: 全社最適の視点でコスト管理が行われ、無駄のない投資が実現します。
    • リスク管理の強化: 全社的なガバナンスにより、セキュリティインシデントやコンプライアンス違反のリスクを低減します。

  • IT部門視点のメリット:

    • 戦略的業務へのシフト: 個別の問い合わせ対応やトラブルシューティングといった受動的な業務から解放され、より戦略的なIT企画に注力できます。
    • 運用業務の効率化・自動化: 標準化された環境とベストプラクティスの導入により、運用負荷が大幅に軽減されます。
    • 専門性の向上: CCoEメンバーとして、最新のクラウド技術やマネジメント手法を習得し、キャリアアップに繋がります。

  • 事業部門(利用部門)視点のメリット:

    • ビジネス俊敏性の向上: CCoEが提供する安全で使いやすいプラットフォーム上で、新しいサービスやアプリケーションを迅速に開発・展開できます。
    • イノベーションの創出: IT部門との連携が密になり、クラウドを活用した新たなビジネスアイデアを実現しやすくなります。
    • セルフサービス化の促進: ガイドラインやテンプレートが整備されることで、IT部門に都度確認することなく、必要なITリソースを安全かつ迅速に利用できます。

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CCoEを成功に導く5つのポイント

CCoEは、ただ組織を作れば機能するというものではありません。ここでは、多くの企業の事例から見えてきた、CCoEを成功に導くための重要なポイントを5つご紹介します。

1.経営層の強力なコミットメント

CCoEは、時に既存の組織体制や業務プロセスに変革を求めるため、各部門との調整や折衝が必要になります。経営層がCCoEの重要性を理解し、強力なリーダーシップでその活動を後押しすることが、成功の絶対条件です。

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2.スモールスタートと成功体験の積み重ね

最初から全社規模の完璧なCCoEを目指すのではなく、まずは特定の部門やプロジェクトを対象にスモールスタートを切ることが現実的です。小さな成功体験を積み重ね、その価値を社内に示すことで、協力者や理解者を増やしていくことができます。

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3.適切な人材の配置

CCoEには、クラウドの技術的な知見を持つ人材だけでなく、ビジネス要件を理解できる人材、プロジェクトを管理できる人材、そして社内各所と円滑にコミュニケーションを取れる人材など、多様なスキルセットが求められます。社内からの登用に加え、必要に応じて外部の専門家の知見を活用することも有効な手段です。

4.「統制」と「推進」のバランス

CCoEの役割は、厳格なルールで縛り付ける「統制」だけではありません。事業部門のイノベーションを促進するための「推進」の役割も同等に重要です。ガバナンスを効かせつつも、現場のスピード感を損なわない、バランスの取れたルール作りと運用が求められます。

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5.継続的なコミュニケーションと改善

CCoEの活動方針や成果は、定期的に全社へ発信し、透明性を保つことが重要です。また、ビジネス環境や技術の変化に合わせて、CCoE自体の役割や機能も常に見直し、改善し続ける姿勢が不可欠です。

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CCoE設立・運用の注意点

CCoEの推進にあたっては、いくつかの壁に直面する可能性があります。事前に注意点を把握し、対策を講じておくことが重要です。

  • 形骸化させない: 「CCoEという箱は作ったものの、実質的な活動が行われない」というケースは少なくありません。明確なミッションとKPI(重要業績評価指標)を設定し、活動の成果を可視化することが重要です。
  • 「評論家」にならない: 現場の実態を無視した理想論ばかりを掲げると、各部門から敬遠されてしまいます。常に現場の声に耳を傾け、現実的な解決策を共に考える姿勢が求められます。
  • 抵抗勢力への配慮: 変化を嫌う抵抗勢力は必ず存在します。一方的に変革を押し付けるのではなく、CCoEを設置するメリットを丁寧に説明し、対話を通じて理解を得ていく努力が必要です。

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XIMIXによる支援サービス

ここまでCCoEの重要性や成功のポイントについて解説してきましたが、実際に自社でCCoEを立ち上げ、軌道に乗せるまでには、高度な専門知識と多くのリソースが必要となります。

「CCoEの必要性は理解できたが、何から手をつければ良いかわからない」 「CCoEを担えるような専門人材が社内にいない」 「自社に最適なCCoEの形がどのようなものか、客観的なアドバイスが欲しい」

このような課題をお持ちではないでしょうか。

私たち XIMIX ではお客様のビジネス状況やクラウドの利用フェーズに合わせて、ロードマップ策定、人材育成プランの設計、そして実際の運用まで、ハンズオンでご支援します。

単に仕組みを作るだけでなく、お客様の組織にクラウド活用の文化が根付き、自律的にDXを推進できる体制が構築されるまで、信頼できるパートナーとして伴走いたします。

CCoEやクラウドガバナンスの強化にご関心をお持ちでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
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まとめ

本記事では、企業のクラウド活用を成功に導く鍵となる「CCoE」について、その基本的な概念から目的、役割、そして成功のポイントまでを解説しました。

CCoEは、単なるIT専門組織ではありません。経営と現場を繋ぎ、技術とビジネスを融合させ、全社一丸となってクラウドの価値を最大化するための「羅針盤」であり「エンジン」です。

クラウド利用の無秩序化によるコスト増やセキュリティリスクといった課題を防ぎ、ビジネスの成長を加速させるために、CCoEの設置は今後ますます重要になるでしょう。

この記事が、皆様の会社のクラウド戦略を見つめ直し、次の一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。まずは自社のクラウド活用の現状を把握し、どこに課題があるのかを整理することから始めてみてはいかがでしょうか。


【入門編】CCoEとは?目的から組織体制、成功のポイントまで徹底解説

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