【入門編】シャドーIT・野良アプリとは?DX推進を阻むリスクと対策を徹底解説【+ Google Workspaceの導入価値も探る】

 2025,05,01 2025.05.01

はじめに

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進が加速する現代において、従業員が業務効率化のために、企業の許可なく個人で利用するITツールやクラウドサービス、いわゆる「シャドーIT」や「野良アプリ」が無視できない課題となっています。

「便利なツールだから」「申請が面倒だから」といった理由で利用されがちなこれらのIT活用は、一見すると業務効率を上げているように見えるかもしれません。しかし、その裏には情報漏洩やコンプライアンス違反といった深刻なリスクが潜んでおり、特にセキュリティガバナンス体制の構築が求められる中堅・大企業にとっては、DX推進の大きな妨げとなりかねません。

この記事では、DX推進を担当される方や情報システム部門の担当者様に向けて、以下の点を分かりやすく解説します。

  • シャドーIT・野良アプリとは何か、なぜ発生するのか
  • 企業にもたらす具体的なリスク
  • 効果的な対策方法と、推進すべきセキュリティガバナンス
  • Google Workspaceを活用した対策例

本記事を通じて、シャドーIT・野良アプリの問題に対する理解を深め、自社のセキュリティ対策を見直すきっかけとなれば幸いです。

シャドーIT・野良アプリとは? なぜ生まれるのか?

①シャドーIT・野良アプリの定義

シャドーITとは、企業のIT部門が把握・管理しておらず、従業員が業務目的で利用している情報システム、デバイス、ソフトウェア、クラウドサービスなどの総称です。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 個人契約のオンラインストレージ(Dropbox、Google ドライブ™ の個人アカウントなど)
  • 無料のチャットツール、Web会議システム
  • 個人所有のスマートフォン、タブレット、ノートPC(BYODとは異なる、無許可利用)
  • 業務部門が独自に導入したクラウドサービス(プロジェクト管理ツール、SFA/CRMなど)
  • 従業員が独自に作成したマクロや簡易アプリケーション(野良アプリ)

野良アプリはシャドーITの一種で、特に従業員が表計算ソフトのマクロ機能や、近年普及しているノーコード・ローコード開発ツールなどを利用して、IT部門の関与なしに作成・利用するアプリケーションを指します。

なぜシャドーIT・野良アプリが発生するのか?

シャドーITや野良アプリが生まれる背景には、主に以下のような要因があります。

  1. 業務効率化への要求: 現場の従業員は、日々の業務をより効率的に進めたいと考えています。会社支給のツールよりも使いやすく、高機能なツールを個人的に見つけ、利用し始めるケースが多くあります。
  2. IT部門の承認プロセス: 新しいツールの導入申請や承認プロセスが複雑であったり、時間がかかりすぎたりする場合、従業員は公式な手続きを避けて、手軽に利用できるツールに流れがちです。
  3. クラウドサービスの普及と利便性: 多種多様なクラウドサービスが容易に入手・利用できるようになったことも、シャドーITを助長する一因です。多くは無料プランや低価格で始められ、専門知識がなくても利用できます。
  4. 従業員のITリテラシー: 従業員自身がシャドーITのリスクを十分に認識していない、あるいは「自分だけなら大丈夫だろう」といった意識を持っている場合があります。
  5. 働き方の多様化: テレワークやハイブリッドワークの普及により、従業員が社内ネットワーク外で業務を行う機会が増え、IT部門の目が届きにくくなったことも背景にあります。

これらの要因が複合的に絡み合い、企業が意図しない形でシャドーITや野良アプリが蔓延してしまうのです。

シャドーIT・野良アプリがもたらす深刻なリスク

シャドーITや野良アプリの利用は、企業に様々なリスクをもたらします。特に注意すべき点をいくつか挙げます。

①情報漏洩リスクの増大

シャドーITとして利用されるツールやサービスは、企業のセキュリティ基準を満たしていない可能性があります。

  • 機密情報の外部流出: 個人向けオンラインストレージに機密情報を含むファイルを保存し、誤って公開設定にしてしまったり、アカウントが不正アクセスされたりするケース。
  • マルウェア感染: セキュリティ対策が不十分なフリーソフトや個人デバイスから、社内ネットワークへマルウェアが侵入する経路となる。
  • 不正アクセス: 退職した従業員が、個人で利用していたシャドーITのアカウントを通じて、退職後も企業のデータにアクセスし続ける。

②コンプライアンス・ガバナンス違反

企業は様々な法令や業界規制(個人情報保護法、GDPR、各種セキュリティ基準など)を遵守する必要があります。シャドーITの利用は、これらのコンプライアンス要件を満たせなくなるリスクを高めます。

  • データ管理規定違反: データの保存場所やアクセス権限が管理外となり、監査に対応できなくなる。
  • ライセンス違反: 個人向けライセンスのソフトウェアを業務利用してしまう。

③IT統制・管理の複雑化とコスト増

IT部門が把握していないツールやサービスが増えることで、ITガバナンスの維持が困難になります。

  • 管理対象の把握困難: どのようなツールが、誰によって、どのように利用されているのか把握できず、適切な管理やサポートが提供できない。
  • インシデント対応の遅延: 問題が発生した際に、原因究明や復旧に時間がかかる。
  • 不要なコスト発生: 各部門が類似のツールを個別に契約し、全体として無駄なコストが発生する。野良アプリの場合、作成した担当者が異動・退職すると、メンテナンス不能となり、業務が滞るリスク(属人化)もある。

④システム連携・データ統合の阻害

各部門や従業員がバラバラのツールを利用していると、システム間の連携やデータの統合が困難になり、全社的なDX推進の妨げとなります。せっかく導入した基幹システムや情報共有基盤の効果が薄れてしまう可能性もあります。

シャドーIT・野良アプリへの効果的な対策

シャドーITや野良アプリのリスクを低減し、適切なITガバナンスを確立するためには、単に禁止するだけではなく、多角的なアプローチが必要です。

1. 利用実態の把握と可視化

まずは、社内でどのようなシャドーITや野良アプリが利用されているのか実態を把握することが第一歩です。

  • アンケート調査: 従業員に対して、利用しているツールやサービスに関するアンケートを実施する。
  • ヒアリング: 各部門の担当者や従業員に直接ヒアリングを行い、業務内容や利用ツールの実態を確認する。
  • ログ分析・検知ツールの活用: ネットワークログの監視や、CASB (Cloud Access Security Broker) などのソリューションを導入し、利用されているクラウドサービスや通信を検知・可視化する。

2. 利用ルールの策定と周知徹底

シャドーITのリスクと、会社として認めるツールの範囲、利用申請プロセスなどを明確にした利用ルール(ガイドライン)を策定し、全従業員に周知徹底します。

  • 目的と背景の説明: なぜルールが必要なのか、シャドーITにどのようなリスクがあるのかを丁寧に説明し、従業員の理解と協力を得る。
  • 承認済みツールリストの提示: 会社として利用を推奨・許可するツールリストを作成し、積極的に利用を促す。
  • 申請・承認プロセスの明確化: 新しいツールの利用申請や、野良アプリ作成に関するルールを明確にし、迅速に対応できる体制を整える。
  • 定期的な見直し: ビジネス環境や技術の変化に合わせて、ルールを定期的に見直す。

3. 代替となる公式ツールの提供と利便性向上

従業員がシャドーITに頼らざるを得ない状況をなくすために、利便性が高く、安全な公式ツールを提供することが重要です。

  • ニーズの把握: 従業員がどのような機能やツールを求めているのか、アンケートやヒアリングを通じて把握する。
  • 適切なツールの選定・導入: 把握したニーズに基づき、セキュリティを確保しつつ、業務効率化に貢献できるツールを選定・導入する(例: Google Workspace™ のような統合型グループウェア)。
  • 利用促進とサポート: 導入したツールの使い方に関する研修やマニュアル提供、ヘルプデスクによるサポート体制を充実させ、従業員がスムーズに活用できるように支援する。

4. 継続的なモニタリングと監査

ルールを策定し、ツールを提供した後も、シャドーITの利用状況を継続的にモニタリングし、ルールが遵守されているかを確認する体制が必要です。

  • アクセスログの監視: 不審な通信や未承認ツールへのアクセスがないか監視する。
  • 定期的な棚卸し: 利用されているツールやソフトウェアのライセンス状況などを定期的に確認する。
  • 内部監査: 定期的な内部監査を通じて、ルールの遵守状況やセキュリティ対策の有効性を評価する。

5. 従業員への教育と意識向上

最も重要な対策の一つが、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることです。

  • 定期的な研修: シャドーITのリスク、情報セキュリティの重要性、会社のルールについて、eラーニングや集合研修などを通じて定期的に教育する。
  • インシデント事例の共有: 他社で発生した情報漏洩事故などの事例を共有し、リスクを具体的に理解してもらう。
  • 相談窓口の設置: セキュリティに関する疑問や不安を気軽に相談できる窓口を設置する。

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Google Workspaceを活用したシャドーIT対策

多くの企業で導入されている Google Workspace は、豊富な機能と高度なセキュリティ、管理機能を備えており、シャドーIT対策においても有効なツールとなり得ます。

①豊富な標準機能による代替ツールの提供

Google Workspace は、メール (Gmail™)、カレンダー (Google カレンダー™)、オンラインストレージ (Google ドライブ)、ビデオ会議 (Google Meet™)、チャット (Google チャット™)、ドキュメント作成 (Google ドキュメント™, Google スプレッドシート™, Google スライド) など、日常業務に必要な多くの機能を標準で提供しています。これらの機能を活用することで、従業員がシャドーITに頼る必要性を減らすことができます。

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②強力な管理機能によるITガバナンス強化

管理者は Google Workspace の管理コンソールを通じて、様々なセキュリティ設定や利用状況の管理を一元的に行うことができます。

  • アプリの利用制御: 組織として利用を許可するサードパーティ製アプリを管理者がコントロールし、未承認アプリの利用を制限できます。これにより、リスクの高いアプリが利用されるのを防ぎます。
  • データ損失防止 (DLP): Gmail や Google Drive 内の機密情報(マイナンバー、クレジットカード番号など)を検出し、社外への共有や送信を自動的にブロックするルールを設定できます。
  • アクセス制御: ログイン地域やデバイスの種類に応じてアクセスを制御したり、2段階認証プロセスを必須化したりすることで、不正アクセスリスクを低減します。
  • 監査ログ: 管理者操作やユーザーのログイン履歴、ファイル共有などのアクティビティログを確認でき、インシデント発生時の追跡や不正利用の監視に役立ちます。
  • セキュリティセンター (Enterpriseプラン以上): セキュリティに関する脅威や推奨事項を一元的に可視化し、プロアクティブな対策を支援します。

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Google AppSheet™ による「統制された」市民開発環境

従業員が作成する「野良アプリ」への対策としては、Google Workspace に含まれるノーコード開発プラットフォーム Google AppSheet の活用が考えられます。IT部門の管理下で、従業員が安全に業務改善アプリを作成できる環境を提供することで、無秩序な野良アプリ開発を防ぎつつ、現場のDX推進を支援できます。

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Google Workspace を適切に設定・運用することで、利便性とセキュリティを両立させ、シャドーITのリスクを効果的に抑制することが可能です。

XIMIXによる支援

ここまでシャドーIT・野良アプリのリスクと対策について解説してきましたが、「自社の状況を正確に把握したい」「具体的な対策の進め方がわからない」「Google Workspace をもっと安全に活用したい」といったお悩みをお持ちではないでしょうか。

私たちXIMIX サービスでは、Google Cloud と Google Workspace の導入・活用支援における豊富な実績と知見に基づき、お客様をご支援します。

  • 現状アセスメント: お客様の環境におけるシャドーITの利用実態調査や、セキュリティリスクの評価を行います。
  • ルール策定・ガバナンス強化支援: お客様の状況に合わせた利用ルールの策定や、ITガバナンス体制の構築をご支援します。
  • Google Workspace 最適化・セキュリティ設定支援: Google Workspace の導入・移行はもちろん、セキュリティ機能の最適な設定や活用方法について、専門的な知見からアドバイス・実装支援を行います。管理コンソールの設定、DLPルールの策定、アクセス制御ポリシーの設計など、貴社のセキュリティ要件に合わせてカスタマイズします。
  • 従業員向けトレーニング: セキュリティ意識向上や、Google Workspace の安全な利活用に関するトレーニングを提供します。
  • 継続的な運用サポート・伴走支援: 導入後の運用監視や、新たな脅威への対応など、継続的なサポートを通じてお客様のIT環境の安全性を維持します。

多くの企業様をご支援してきた経験から、XIMIXは、お客様の状況に合わせた最適なソリューションをご提案し、安全で効率的なDX推進を強力にサポートいたします。

シャドーIT対策やGoogle Workspaceのセキュリティ強化にご関心のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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まとめ

本記事では、企業のDX推進における隠れた課題である「シャドーIT」と「野良アプリ」について、その定義、発生原因、リスク、そして具体的な対策方法を解説しました。

シャドーITや野良アプリは、従業員の「業務を効率化したい」という前向きな動機から生まれることもありますが、企業全体としては情報漏洩、コンプライアンス違反、ITガバナンスの崩壊といった深刻なリスクにつながる可能性があります。

効果的な対策のためには、利用実態の把握、明確なルールの策定と周知、安全で利便性の高い代替ツールの提供(Google Workspaceなど)、継続的なモニタリング、そして従業員のセキュリティ意識向上が不可欠です。

特に Google Workspace は、豊富な機能と強力な管理・セキュリティ機能により、シャドーIT対策において有効なソリューションとなり得ます。

シャドーIT対策は、単なるツールの制限ではなく、従業員の利便性と企業のセキュリティ・ガバナンスを両立させるための継続的な取り組みです。本記事が、貴社の安全なDX推進の一助となれば幸いです。より具体的な対策や Google Workspace の活用についてお困りの際は、ぜひXIMIXまでお気軽にご相談ください。


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