アプリケーション開発はクラウドが常識? オンプレミスとの違いとメリットを徹底比較

 2025,04,22 2025.11.08

はじめに

ビジネスのデジタル化が加速する現代、顧客ニーズへ迅速に応え、競争優位性を確立するため、独自のアプリケーション開発は企業の成長を支える重要な戦略です。そして、その成否を分けるのが「どこで、どのように開発・実行するか」という環境選択です。

従来主流だった自社内でサーバーを管理する「オンプレミス」から、インターネット経由でリソースを利用する「クラウド」へと、アプリケーション開発の常識は大きくシフトしています。

「クラウド開発の具体的なメリットは何?」

「オンプレミスとは根本的に何が違う?」

「単にインフラを移すだけで、本当に開発スピードは上がるのか?」

この記事では、DX推進を担う決裁者層の皆様が抱えるこのような疑問に、SIerとして数々の企業のクラウド移行を支援してきたXIMIXの視点からお答えします。オンプレミスとの違いを明確にしながら、クラウドでのアプリケーション開発がなぜ今選ばれるのか、そのメリットから現代的な開発手法、注意点、成功へのステップまでを徹底的に解説します。

クラウドとオンプレミスの根本的な違い

まず、アプリケーション開発におけるクラウドとオンプレミスの違いを整理しましょう。両者の最も大きな違いは、ITインフラを「所有」するのか、サービスとして「利用」するのかという点にあります。

オンプレミス:インフラを「所有」するモデル

オンプレミスとは、自社でサーバーやネットワーク機器といったハードウェアを購入し、社内のデータセンターやサーバルームに設置して運用する形態です。

自社で全てを管理するため、システム構成の自由度が高い反面、初期投資や専門知識を持つ人材による維持管理が不可欠となります。

クラウド:インフラを「利用」するモデル

クラウド(クラウドコンピューティング)とは、Google Cloudのような事業者が提供するITリソース(サーバー、ストレージ、データベース、開発ツール等)を、インターネット経SaaSでサービスとして利用する形態です。

必要な時に必要な分だけリソースを調達できるため、インフラを「所有」することに伴う様々な制約から解放されます。

この「所有から利用へ」というパラダイムシフトが、開発のあり方を根本から変革しているのです。

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なぜ今クラウドなのか?アプリケーション開発における5つの絶大なメリット

総務省の「令和5年通信利用動向調査」によると、既に7割以上の企業が何らかの形でクラウドサービスを利用しており、その流れは年々加速しています。

なぜ多くの企業が、アプリケーション開発の基盤をオンプレミスへ移行しているのでしょうか。その理由は、クラウドがもたらす圧倒的なビジネス上のメリットにあります。

①圧倒的なスピードと俊敏性(アジリティ)

オンプレミスでは数週間〜数ヶ月かかっていたサーバーの調達・構築が、クラウドでは数クリック、わずか数分で完了します。

このスピードは、市場投入までの時間(Time to Market)を劇的に短縮します。アイデアを素早く形にし、市場の反応を見ながら改善を繰り返す「アジャイル開発」とクラウドは極めて親和性が高いです。アクセス急増時にも即座にサーバーを増強できるなど、ビジネス状況に合わせた柔軟な対応力(アジリティ)は、変化の速い市場でビジネスチャンスを逃さないために不可欠な要素です。

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②コスト構造の最適化と初期投資の削減

オンプレミス環境で必須だった高価なサーバーの購入費、データセンターの賃料、電源・空調設備といった多額の初期投資(CAPEX)が、クラウドでは不要です。

さらに、多くのクラウドサービスは利用した分だけ料金を支払う「従量課金制」を採用しています。これにより、需要のピークに合わせて過剰な設備投資を行う必要がなくなり、リソースの無駄を排除できます。コストを変動費(OPEX)化できるため、特に新規事業や実証実験(PoC)にとっては、参入障壁を大きく下げる要因となります。

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③運用負荷の劇的な軽減とコア業務への集中

ハードウェアの監視・故障対応、OSやミドルウェアのアップデート、セキュリティパッチの適用など、オンプレミス環境では専門チームが24時間365日体制で行っていた煩雑な運用保守業務。これらの多くをクラウド事業者に任せることができます。

特にPaaS (Platform as a Service) を利用すれば、OSやミドルウェアを含めたプラットフォーム全体が管理されるため、開発者はアプリケーションのコードを書くことにさらに集中できます。これは、限られたIT人材を、システムの維持管理ではなく、ビジネス価値を生み出すコア業務(=アプリケーション開発)へシフトさせることを意味します。

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④高い可用性と事業継続性(BCP/DR)

Google Cloudのような主要クラウド事業者は、世界中の複数の地域(リージョン)に巨大なデータセンターを構え、地理的に分散された堅牢なインフラを提供しています。

ハードウェア障害が発生しても自動で復旧する仕組みが整っており、自社単独で同レベルの可用性(システムの稼働し続ける能力)を確保するのは、コスト的にも技術的にも非常に困難です。

また、データのバックアップを遠隔地に自動で保管したり、災害時に別のリージョンでシステムを即座に立ち上げたりといったBCP(事業継続計画)/DR(災害復旧)対策も、オンプレミスに比べてはるかに容易かつ低コストで実現できます。

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⑤最新技術の活用とイノベーションの加速

AI/機械学習、ビッグデータ解析、サーバーレス、コンテナ(Kubernetes)など、ビジネスを革新する最先端の技術が、クラウドでは常にサービスとして提供されています。

自社で一から研究・開発することなく、これらの高度な技術をAPIを呼び出すように手軽に利用できるため、企業のイノベーションを強力に促進します。世界中にデータセンター網が広がっているため、海外ユーザー向けのサービスも迅速に展開可能です。

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クラウド時代の「現代的な」アプリケーション開発とは

クラウドのメリットは、単にインフラを「借りる」だけでは最大限に引き出せません。真の価値は、クラウドの能力を前提とした「クラウドネイティブ」な設計・開発手法を取り入れることで発揮されます。

ここでは、決裁者として知っておくべき3つの重要キーワードを解説します。

①マイクロサービスとコンテナ(GKE)

従来、一つの大きな塊として作られていたアプリケーション(モノリス)を、機能ごとに小さな独立したサービス(マイクロサービス)に分割して開発する手法が主流になっています。

この小さなサービスを動かす基盤として最適なのが「コンテナ」技術です。コンテナは、アプリケーションをOSごと隔離された環境に「箱詰め」する技術で、どこでも同じように動かせ、起動も非常に高速です。

そして、このコンテナを大量に、かつ効率的に管理・運用するためにデファクトスタンダードとなっているのが「Kubernetes(クバネティス)」です。Google Cloudが提供するGKE (Google Kubernetes Engine) は、このKubernetesの本家であり、最も安定かつ高機能なマネージドサービスとして、多くの企業のモダンな開発基盤に採用されています。

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②PaaSとサーバーレス

開発基盤(OS、ミドルウェア)の管理すら不要にし、開発者がコードを書くことに集中できるようにするPaaS (Platform as a Service) も強力な選択肢です。Google CloudのCloud RunApp Engineなどがこれに該当します。

さらに進んだ「サーバーレス」は、サーバーの存在を一切意識することなく、プログラムの実行(リクエスト)があった時だけリソースが割り当てられる仕組みです。運用負荷をゼロに近づけつつ、コスト効率を極限まで高められる可能性があります。

③DevOpsとCI/CD

クラウドネイティブな開発では、開発チーム(Development)と運用チーム(Operations)が密に連携する「DevOps」という文化・体制が不可欠です。

そして、そのプロセスを自動化するのが「CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)」です。コードの変更からテスト、本番環境へのリリースまでを自動化することで、ヒューマンエラーを減らし、高速かつ高品質なサービス改善サイクルを実現します。

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【要注意】クラウド開発のデメリットと失敗しないための対策

クラウドは万能の解決策ではありません。メリットばかりに目を向けていると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。ここでは、私たちがお客様からよくご相談いただく現実的なデメリットと、それを乗り越えるための対策を解説します。

①コスト管理の複雑さ:「想定外の高額請求」リスク

従量課金はメリットである一方、管理を怠るとコストが意図せず膨れ上がる危険性をはらんでいます。「開発環境を消し忘れた」「データの転送量を見誤った」といった理由で、想定外の高額請求に繋がるケースは少なくありません。

【対策】:コストの可視化とアラート設定が不可欠です。クラウド事業者が提供するダッシュボードで利用状況を常に監視し、予算超過を防ぐためのアラートを設定しましょう。SIerとしてのアドバイスとしては、定期的なリソースの棚卸しと最適化を「運用プロセス」に組み込むことが重要です。

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②セキュリティ:「責任共有モデル」の正しい理解

「クラウドは危険」というのは過去の誤解ですが、「クラウド事業者が全てを守ってくれる」というのも間違いです。クラウドのセキュリティは、事業者と利用者がそれぞれ責任を分担する「責任共有モデル」に基づいています。

事業者はインフラ(ハードウェア、データセンター等)の物理的なセキュリティに責任を持ちますが、OS以上のレイヤー(データの暗号化、アクセス権限管理、アプリケーションの脆弱性対策など)は利用者側の責任となります。この認識が不足していると、重大なセキュリティインシデントを引き起こす可能性があります。

【対策】:自社が利用するクラウドサービス(IaaS/PaaS/SaaS)に応じて、どこまでが自社の責任範囲なのかを正確に理解し、適切なセキュリティ設定(IAMによる権限管理、ファイアウォール設定、データの暗号化など)を徹底する必要があります。

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③既存システムとの連携・移行の難易度

長年利用してきたオンプレミスの基幹システムや複雑なデータ連携を持つアプリケーションをクラウドへ移行するのは、決して簡単ではありません。既存の設計思想やアーキテクチャがクラウド環境に適していない場合(モノリシックな構造など)、大幅な改修が必要になったり、期待した性能が出なかったりする場合があります。

【対策】 全てのシステムを一度に移行する「ビッグバン」アプローチは避け、影響の少ない周辺システムから段階的に移行を進めるのが賢明です。移行前には、専門家による十分なアセスメント(現状分析・評価)を行い、最適な移行戦略(リフト&シフト、リファクタリング、リプラットフォームなど)を策定することが成功の鍵となります。

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Google Cloud、AWS、Azure - 3大クラウドの比較と選び方

クラウドサービスは多数存在しますが、特に「Google Cloud」「Amazon Web Services (AWS)」「Microsoft Azure」が3大クラウドとして市場を牽引しています。それぞれに特徴があり、アプリケーションの要件によって最適な選択は異なります。

クラウドサービス 特徴・強み こんな企業におすすめ
Google Cloud
  • データ分析・AI/機械学習分野で業界をリード (BigQuery, Vertex AI)
  • コンテナ技術 (Kubernetes/GKE) の本家であり、安定性と機能性に優れる
  • Google検索等を支える高性能グローバルネットワーク
  • データドリブンな意思決定やAIを活用した新サービス開発を目指す企業
  • マイクロサービスやコンテナベースのモダンな開発を行いたい企業
AWS
  • 業界シェアNo.1で、最も長い実績と幅広いサービスラインナップを持つ
  • 日本語の情報や技術コミュニティが豊富で、ナレッジを得やすい
  • 多様な要件に応える幅広いサービスを求めている企業
  • 市場での実績やドキュメントの豊富さを重視する企業
Microsoft Azure
  • Microsoft製品との親和性が非常に高い (Windows Server, Office 365など)
  • 既存のエンタープライズ環境からの移行や連携がスムーズ
  • Windows中心のITインフラを保有し、既存資産を活かしたい企業
  • ハイブリッドクラウド環境の構築を検討している企業

XIMIX は、特にGoogle Cloudの活用を推奨しています。

なぜなら、これからのアプリケーション開発に不可欠なデータ活用とAI連携、そしてスケーラブルなコンテナ基盤(GKE)において、Google Cloudが明確な強みを持っているからです。企業のDXを加速させるための革新的なアプリケーション開発基盤として、最適な選択肢であると確信しています。

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成功へ導く!クラウドアプリケーション開発・移行の5ステップ

クラウドのメリットを最大限に引き出すには、計画的なアプローチが不可欠です。ここでは、オンプレミスからの移行や新規開発を成功させるための実践的な5つのステップをご紹介します。

ステップ1:目的とスコープの明確化

まず「なぜクラウド化するのか?」という目的を明確にします。「コスト削減」「開発スピード向上」「BCP対策」「AI活用」など、ビジネス上のゴールを定義し、関係者間で共有することが全ての出発点です。その上で、対象となるアプリケーションの範囲(スコープ)を決定します。

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ステップ2:アセスメント(現状分析と評価)

対象システムの現状(アーキテクチャ、依存関係、データ量など)を詳細に分析・評価します。この結果に基づき、クラウド化の難易度やリスク、期待される効果を客観的に判断します。特に、既存アプリケーションをそのまま移行する(リフト)のか、クラウドネイティブに作り替える(リファクタリング/リプラットフォーム)のか、戦略を立てる上で重要なステップです。

ステップ3:クラウドサービスの選定とPoC(概念実証)

目的とアセスメント結果に基づき、最適なクラウド事業者(Google Cloudなど)とサービス(IaaS/PaaS/GKEなど)を選定します。いきなり本番移行するのではなく、小規模なPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施し、技術的な実現可能性や性能、コスト感を事前に検証することが重要です。

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PoCから本格導入へ:Google Cloudを活用した概念実証の進め方と効果測定・評価基準を徹底解説

ステップ4:移行・開発の実行

PoCの結果を踏まえ、本番環境の設計・構築、そして実際のデータ移行やアプリケーション開発を行います。セキュリティ設定や監視体制の構築もこの段階で並行して進めます。モダンな開発手法(CI/CDなど)を取り入れる場合、この段階で開発プロセスの整備も行います。

ステップ5:運用・監視と継続的な最適化

システム稼働後は、パフォーマンスやコストを継続的に監視し、改善を続けます。クラウド技術は日々進化するため、定期的に構成を見直し、より効率的でコスト効果の高い運用を目指す「継続的な最適化」のサイクルを回すことが成功の鍵です。

クラウド開発の課題はXIMIXが解決します

ここまで見てきたように、クラウドでのアプリケーション開発は多大なメリットをもたらす一方で、成功のためにはクラウドネイティブな知見と計画的なアプローチが不可欠です。

「自社に最適なクラウドサービスがわからない」

「既存システムからの安全な移行計画を立てられない」

「コンテナやGKEを活用したモダンな開発体制を構築したい」

「クラウドのセキュリティ設定やコスト管理に不安がある」

こうした課題は、多くの企業が直面する共通の悩みです。

XIMIX は、Google Cloudのプレミアパートナーとして、これらのお悩みを解決し、お客様のクラウド活用を成功に導きます。長年にわたるSIerとしての豊富な経験とGoogle Cloudへの深い知見を組み合わせ、お客様のビジネスに最適なソリューションを提供します。

  • クラウド移行コンサル・実行支援: 現状アセスメントから戦略策定(リフト&シフト、モダナイゼーション)、PoC、実際の移行作業、移行後の最適化までワンストップで支援します。

  • クラウドネイティブアプリケーション開発: コンテナ(GKE)やサーバーレス、マイクロサービスを活用した、モダンでスケーラブルなアプリケーションの設計・開発をご支援します。

  • コスト最適化コンサルティング: クラウド利用状況をプロの目で分析し、無駄なコストを削減するための具体的な改善策を提案・実行します。

クラウドでのアプリケーション開発やオンプレミスからの移行をご検討の際は、ぜひ一度 XIMIX にご相談ください。お客様のビジネス目標達成を力強くサポートします。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
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まとめ

本記事では、アプリケーション開発の基盤としてクラウドが選ばれる理由を、オンプレミスとの比較、そして現代的な開発手法の観点から多角的に解説しました。

クラウド開発は、コスト削減、開発スピード向上、運用負荷の軽減といった従来のメリットに加え、クラウドネイティブなアーキテクチャ(コンテナ、サーバーレスなど)を採用することで、ビジネスの俊敏性を飛躍的に高めます。

もちろん、コスト管理やセキュリティといった注意点も存在しますが、それらを正しく理解し、計画的にアプローチすることで、リスクを最小限に抑えながらメリットを最大化できます。

特に Google Cloud のような先進的なプラットフォームを活用すれば、データ分析やAI連携といった、次世代のアプリケーション開発を有利に進めることが可能です。この記事が、貴社のアプリケーション戦略を次のステージへ進める一助となれば幸いです。


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