はじめに
業務効率化や多様な働き方の実現を目指し、Google Workspaceの導入を検討されている企業は多いでしょう。しかし、その一方で「クラウドサービスってセキュリティは大丈夫なのか?」「導入したのはいいけれど、何から設定すれば安全に使えるのかわからない」といった不安の声もよく耳にします。特に企業の機密情報を取り扱う上で、セキュリティ対策は最優先事項の一つです。
Google Workspaceは、Googleの堅牢なインフラと高度なセキュリティ技術に基づいて構築されていますが、その安全性を最大限に引き出すためには、導入企業側での適切な設定が不可欠です。初期設定のままでは、思わぬセキュリティリスクを抱えてしまう可能性もゼロではありません。
「Google Workspaceを導入したいけれど、セキュリティが心配」「まず何を設定すればいいのか、基本的なことを知りたい」
このような課題感をお持ちの企業の管理者様、情報システム担当者様に向けて、本記事ではGoogle Workspace導入時に最低限行うべき基本的なセキュリティ設定に焦点を当て、その重要性と設定のポイントを分かりやすく解説します。この記事を読めば、Google Workspaceを安全に利用し始めるための第一歩を踏み出すことができます。
なぜ導入時にセキュリティ設定が重要なのか?
クラウドサービスのセキュリティは、サービス提供事業者(Google)と利用者(導入企業)の双方の責任において成り立っています。Googleはインフラやサービスの基盤部分のセキュリティを担保しますが、アカウント管理、アクセス制御、データ共有のルール設定など、運用面でのセキュリティは利用企業側の責任となります。(責任共有モデル)
Google Workspaceを導入した直後のデフォルト設定は、必ずしもすべての企業にとって最適とは限りません。例えば、ファイル共有の設定が緩すぎたり、パスワードの要件が不十分だったりする可能性があります。これらを放置すると、不正アクセスや情報漏洩のリスクを高めてしまいます。
だからこそ、導入初期の段階で、自社のセキュリティポリシーに合わせて基本的な設定を見直し、強化することが極めて重要なのです。
Google Workspace 管理コンソールとは?
Google Workspaceの各種設定は、管理者権限を持つユーザーが「管理コンソール」と呼ばれるWebベースの管理画面で行います。ユーザーアカウントの管理、サービスの有効/無効化、そして本記事で解説するセキュリティ関連の設定など、組織全体のGoogle Workspace環境をコントロールするための中枢機能です。
セキュリティ設定を行うには、まずこの管理コンソール (https://admin.google.com/) に管理者アカウントでログインする必要があります。これから紹介する設定項目は、基本的にこの管理コンソール内で操作します。
最低限行うべき基本的なセキュリティ設定【管理者向け】
では、具体的にどのような設定を優先的に行うべきでしょうか。ここでは、Google Workspace導入時に最低限確認・設定しておきたい基本的な項目を4つご紹介します。
①アカウント保護の基本:2段階認証プロセスの強制
- なぜ必要か?: IDとパスワードだけでは、漏洩した場合に簡単になりすましを許してしまいます。2段階認証は、パスワードに加えて、スマートフォンへの確認コード送信やセキュリティキーなど、本人しか持ち得ない要素を要求することで、不正ログインのリスクを大幅に低減します。これは、Google Workspaceのセキュリティを確保する上で最も基本的かつ効果的な対策の一つです。
- 設定ポイント:
- 管理コンソールで、組織内の全ユーザーに対して2段階認証を強制する設定を有効にします。
- 猶予期間を設けることも可能ですが、セキュリティの観点からは早期の適用が推奨されます。
- 利用可能な2段階認証の方法(確認コード、Google認証システムアプリ、セキュリティキーなど)を選択・管理します。
不正アクセス対策:パスワードポリシーの強化
- なぜ必要か?: 推測されやすい単純なパスワードや、長期間変更されていないパスワードは、不正アクセスの標的となりやすいです。強固なパスワードポリシーを設定し、ユーザーに遵守させることで、アカウント侵害のリスクを軽減します。
- 設定ポイント:
- 管理コンソールで、パスワードの最低文字数を長く設定します(例: 12文字以上)。
- 複雑さの要件(大文字、小文字、数字、記号の使用)を強制します。
- 定期的なパスワード変更を要求する(有効期限を設定する)。
- パスワードの再利用を禁止する設定も有効です。
情報漏洩リスク低減:ファイル共有設定の見直し
- なぜ必要か?: Googleドライブなどのファイル共有機能は非常に便利ですが、設定を誤ると意図せず機密情報が外部に漏洩する可能性があります。特に組織外への共有や、「リンクを知っている全員」への共有設定は慎重に管理する必要があります。
- 設定ポイント(管理コンソールでの組織全体設定):
- 組織外への共有を制限または禁止する: デフォルトで組織外ユーザーとの共有を許可するかどうかを設定します。必要に応じて、特定の信頼できるドメイン(取引先など)のみ許可するホワイトリスト方式も検討します。
- リンク共有のデフォルト設定: 新規にファイル共有する際のデフォルトのリンク共有設定を、「制限付き」(特定のユーザーのみアクセス可能)にするなど、より安全な設定に変更します。
- ユーザーによる組織外共有の許可設定: 従業員が個別に組織外へ共有することを許可するかどうかを制御します。
- (参考)より詳細なファイル共有の安全性については、こちらの記事もご参照ください。
Googleドライブで安全にファイルを共有するには?基本設定と重要ポイントを解説
シャドーIT対策:サードパーティアプリ連携の管理
- なぜ必要か?: Google Workspaceは、様々なサードパーティ製のアプリケーション(例: プロジェクト管理ツール、CRM、各種アドオンなど)と連携できます。これらは便利ですが、中にはセキュリティリスクのあるアプリや、過剰なデータアクセス権限を要求するアプリも存在します。管理者が把握・許可していないアプリ利用(シャドーIT)は、情報漏洩の温床となり得ます。
- 設定ポイント:
- 管理コンソールで、ユーザーがGoogleアカウントを使ってログインできるサードパーティアプリを制限します。
- 信頼できるアプリのみを許可リストに追加し、それ以外のアプリ連携をブロックする設定を検討します。
- 各アプリが要求するアクセス権限(スコープ)を定期的に確認し、不要な権限を持つアプリのアクセスを取り消します。
(補足)セキュリティアラートの確認
管理コンソールには、不審なログイン試行、不審なメール送信、セキュリティ設定の変更など、潜在的なセキュリティリスクを示すアラートが表示される「アラートセンター」があります。定期的にここを確認し、異常がないかチェックする習慣をつけることも重要です。
これらの設定だけでは不十分?更なるステップ
今回ご紹介したのは、あくまで「最低限」行うべき基本的なセキュリティ設定です。企業の業種や取り扱う情報の機密性、コンプライアンス要件によっては、これらの設定だけでは不十分な場合もあります。
Google Workspaceには、より高度なセキュリティ機能が用意されています。
- データ損失防止(DLP): 機密情報(マイナンバー、クレジットカード番号など)を含むファイルが、意図せず組織外に共有されるのを防ぐ。
- コンテキストアウェアアクセス: ユーザーの場所、デバイスの状態、IPアドレスなどに基づいて、Google Workspaceへのアクセスを動的に制御する。
- セキュリティセンター: セキュリティ状況の分析、脅威の検出、推奨される対策の提示など、統合的なセキュリティ管理機能を提供(Enterpriseエディションなど)。
- 監査ログの詳細分析: より詳細なユーザーアクティビティログを確認し、インシデント調査などに活用する。
これらの高度な機能を活用することで、さらにセキュリティレベルを高めることが可能です。
XIMIXによるGoogle Workspace セキュリティ強化支援
基本的なセキュリティ設定の実施から、より高度なセキュリティ対策の導入まで、自社だけで対応するには専門知識やリソースが必要となる場合があります。
「何から手をつければいいかわからない」「自社の状況に合った最適な設定を知りたい」「高度なセキュリティ機能を導入したいが、設定や運用が難しそう」
このようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひXIMIXにご相談ください。
XIMIXは、NI+C(エヌアイアンドシー)が提供するGoogle CloudおよびGoogle Workspaceの導入・活用支援サービスです。Google Workspaceのセキュリティに関する深い知見を持つ専門家が、お客様の現状と要件をヒアリングし、最適なセキュリティ設定のご提案から導入、運用支援までを一貫してサポートします。
- 初期セキュリティ設定の代行・レビュー
- 企業ポリシーに合わせたセキュリティ設定のカスタマイズ
- DLPやコンテキストアウェアアクセスなど高度な機能の導入支援
- 従業員向けセキュリティトレーニング
- 継続的なセキュリティ運用のアドバイス
多くの企業様のGoogle Workspace導入・運用をご支援してきた実績に基づき、お客様が安心してGoogle Workspaceを活用できるよう、セキュリティ強化を強力にバックアップいたします。
XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
※Google Workspace については、こちらのコラム記事もご参照ください。
- 改めて知りたい「Google Workspace とは」- 機能・メリット・活用法をDX視点で解説
- グループウェアの進化がDXを加速する - Google Workspaceに見る次世代の働き方
- Google Workspace導入コストを徹底解剖!ライセンスから運用まで費用全体を把握
まとめ
Google Workspaceは、適切に設定・運用すれば非常に安全性の高いクラウドサービスです。しかし、その安全性を確保するためには、導入企業側の主体的な取り組みが不可欠です。
本記事で紹介した以下の基本的なセキュリティ設定は、Google Workspaceを安全に利用するための最低限のスタートラインです。
- 2段階認証プロセスの強制
- パスワードポリシーの強化
- ファイル共有設定の見直し(特に組織外・リンク共有)
- サードパーティアプリ連携の管理
まずはこれらの設定を確実に実施し、セキュアな利用環境の土台を築きましょう。そして、企業の成長や状況の変化に合わせて、定期的に設定を見直し、必要に応じてより高度な対策を検討していくことが重要です。
セキュリティ対策は一度行えば終わりではありません。継続的な意識と取り組みによって、Google Workspaceのメリットを最大限に享受し、安全なDX推進を実現しましょう。
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