なぜ今、Google Workspaceのセキュリティ強化が急務なのか?
「まさか自社が狙われるはずはない」そう考えてはいないでしょうか。しかし、企業の規模や業種を問わず、サイバー攻撃、特にアカウント乗っ取りのリスクはかつてないほど高まっています。
警察庁の発表によると、令和5年(2023年)の不正アクセス行為の認知件数は前年比で約1.8倍に急増。その主な原因は、依然として「パスワードの設定・管理の甘さ」にあります。
万が一、Google Workspaceのアカウントが乗っ取られた場合、その被害は計り知れません。
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機密情報の漏洩: 経営情報、顧客リスト、開発データなど、企業の生命線となる情報が外部に流出する。
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金銭的被害: 関連するアカウントから不正に送金されたり、登録されたクレジットカード情報が悪用されたりする。
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信用の失墜: セキュリティ体制の不備が露呈し、顧客や取引先からの信頼を根本から揺るがす事態に発展する。
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事業継続への影響: サービス停止や復旧作業により、正常な事業活動が困難になる。
従来のパスワードのみに依存した防御策では、巧妙化するフィッシング詐欺やパスワードリスト攻撃を防ぎきれないのが現実です。こうした脅威から企業の重要資産を保護し、事業の継続性を確保するために、より強固なセキュリティ対策が不可欠です。その最も効果的かつ基本的な一手が「二段階認証プロセス」の導入なのです。
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不正ログインを劇的に減らす「二段階認証プロセス」とは
二段階認証プロセス(2要素認証とも呼ばれます)とは、ログイン時に2つの異なる種類の要素を組み合わせて本人確認を行うセキュリティの仕組みです。これにより、仮にパスワードが漏洩したとしても、第三者による不正ログインを極めて困難にします。
認証の3要素
認証には、大きく分けて3つの要素があります。
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知識情報(知っていること): パスワード、PINコード、秘密の質問など
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所持情報(持っているもの): スマートフォン、物理的なセキュリティキー、ICカードなど
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生体情報(自分自身の特性): 指紋、顔、虹彩など
二段階認証は、この中から異なる2つの要素を組み合わせて認証を行います。例えば、「パスワード(知識情報)」と「スマートフォンに届く確認コード(所持情報)」の組み合わせが一般的です。パスワードが突破されても、攻撃者はあなたのスマートフォンを物理的に持っていないため、ログインを阻止できます。
多要素認証(MFA)との関係
二段階認証は、2つの要素で認証する方式です。これに対し、2つ以上の要素で行う認証全般を「多要素認証(MFA: Multi-Factor Authentication)」と呼びます。二段階認証は、MFAの一種と理解してください。
Google Workspaceで利用できる主な二段階認証の方法
Google Workspaceでは、企業のセキュリティポリシーやユーザーの利便性に応じて、複数の二段階認証方法が提供されています。それぞれの特徴を理解し、自社に最適な方法を選択することが重要です。
各認証方法のメリット・デメリット比較
認証方法 |
セキュリティ |
利便性 |
コスト |
主な特徴 |
Googleからの |
高 |
◎ |
無料 |
スマホ通知の「はい」をタップするだけ。最も手軽でGoogleが推奨。 |
Google 認証システム |
高 |
〇 |
無料 |
オフラインでも利用可能。標準的な認証アプリ方式。 |
セキュリティキー |
◎(最高) |
△ |
有料 |
物理的なデバイスが必要。フィッシング耐性が極めて高い。 |
SMS/音声通話 |
中 |
〇 |
無料 |
ガラケーでも利用可能。SIMスワップ等のリスクがあり非推奨の傾向。 |
バックアップコード |
- |
緊急用 |
無料 |
他の手段が使えない場合の命綱。オフラインでの厳重保管が必須。 |
Googleからのメッセージ (Google Prompt)
ログイン試行時に登録済みスマートフォンの画面に「ログインしようとしていますか?」という通知が表示され、「はい」をタップするだけで認証が完了します。コード入力の手間がなく、ユーザーの負担が少ないため、Googleが最も推奨する方法です。
Google 認証システム (Authenticator App)
「Google Authenticator」などの認証アプリをスマートフォンにインストールし、30秒ごとなど、短い間隔で生成される6桁の確認コード(ワンタイムパスワード)を入力する方法です。スマートフォンの電波が届かないオフライン環境でも利用できる利点があります。
セキュリティキー
USB、NFC、BluetoothなどでPCやスマートフォンに接続する物理的なデバイスです。ログイン時にこのキーを接続またはタッチすることで認証します。 物理的なキーそのものが「鍵」となるため、オンラインで認証情報が盗まれるフィッシング詐欺に対して極めて高い耐性を誇ります。最も安全な方法であり、特権管理者や機密情報を扱う役員など、高いセキュリティが求められるユーザーに最適です。
バックアップコード
スマートフォンを紛失した場合など、主要な二段階認証方法が利用できなくなった際の緊急用リカバリー手段です。事前に10個の使い切りコードを発行し、印刷して安全な場所に保管しておく必要があります。これは「最後の砦」であるため、管理の徹底が不可欠です。
【管理者向け】二段階認証の有効化と強制ポリシー設定
管理者はGoogle管理コンソールから、組織全体の二段階認証ポリシーを一元管理できます。セキュリティを確保するため、単に有効化するだけでなく、利用を「強制」する設定が強く推奨されます。
基本的な設定手順
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管理コンソールにログイン: 特権管理者アカウントで admin.google.com にアクセスします。
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設定画面へ移動: メニューから [セキュリティ] > [認証] > [2段階認証プロセス] の順に選択します。
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有効化: [ユーザーが 2 段階認証プロセスを有効にできるようにする] のチェックボックスをオンにします。
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強制ポリシーの設定:
- 対象: ポリシーを適用する組織部門(OU)またはグループを選択します。全社一斉、または部署ごとに段階的な適用が可能です。
- 適用開始: 強制を開始するタイミング(即時または特定の日から)を設定します。従業員への周知期間を考慮し、猶予期間を設けるのが一般的です。
- 許可する認証方法: 組織のセキュリティ要件に合わせて、利用を許可する認証方法を限定します。例えば「セキュリティキーのみ」に制限することで、最高レベルのセキュリティを担保できます。
XIMIXの導入支援実績に基づくと、全社強制の前には、まずIT部門や一部の部署で先行導入し、運用フローを確立してから段階的に展開する方法が、混乱も少なくスムーズです。
【ユーザー向け】二段階認証の初期設定手順
管理者によって二段階認証が有効化されると、各ユーザーは自身で設定を行う必要があります。
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Googleアカウントにアクセス: 自身のGoogleアカウント設定ページ(https://myaccount.google.com/security)を開きます。
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設定開始: 「Google へのログイン」セクションの「2段階認証プロセス」をクリックし、画面の指示に従いパスワードで再認証します。
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認証方法の登録: 「Googleからのメッセージ」に使用するスマートフォンの登録や、「Google 認証システム」のセットアップなど、利用したい認証方法を選択し、画面の指示に沿って設定を完了させます。複数の方法を登録しておくことをお勧めします。
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バックアップコードの保管: 【最重要】 設定完了後、必ず「バックアップコード」を表示・ダウンロードし、印刷して財布に入れる、自宅の金庫に保管するなど、オンラインとは切り離された安全な場所で厳重に管理してください。
導入・運用を成功させるための注意点
二段階認証は強力なツールですが、その効果を最大限に引き出すには、計画的な導入と運用が鍵となります。
①従業員への丁寧な周知とサポート体制
「なぜ必要なのか」という目的の共有から、具体的な設定手順、トラブルシューティングまで、丁寧な説明が不可欠です。説明会の実施や分かりやすいマニュアルの配布、問い合わせ対応のヘルプデスク設置など、特にITに不慣れな従業員へのサポート体制を構築することが、円滑な導入の成功を左右します。
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②バックアップコードの管理徹底
バックアップコードは、アカウントにアクセスするための最後の手段です。その重要性を繰り返し伝え、紛失や盗難がないよう、安全な場所への保管を徹底するよう周知します。
③デバイス紛失・機種変更時の対応フロー整備
「スマートフォンを紛失した」「機種変更で認証アプリが使えなくなった」といった事態は必ず発生します。その際にユーザーが迷わず行動できるよう、管理者への連絡方法や再設定の手順を事前に明確化し、マニュアルとして整備しておく必要があります。
④定期的な利用状況の監査
管理者は、定期的に管理コンソールで組織内の二段階認証設定率を確認し、未設定のユーザーにはリマインドを行うなど、ポリシーが遵守されている状態を維持するための監査と働きかけを継続します。
まとめ:二段階認証は企業の信頼を守る第一歩
Google Workspaceの二段階認証プロセスは、もはや「推奨」される機能ではなく、企業の重要資産と信頼を守るために「必須」のセキュリティ基盤です。パスワードと「所持情報(スマートフォンやセキュリティキー)」を組み合わせることで、不正ログインのリスクを劇的に低減できます。
本記事では、二段階認証の仕組みと重要性、具体的な認証方法、そして管理者とユーザー双方の設定手順や運用上の注意点を解説しました。
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ビジネスリスクの理解: 不正アクセスは深刻な経営リスクに直結する。
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認証方法の選択: セキュリティ強度と利便性のバランスを考慮して最適な方法を選ぶ。
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計画的な導入と運用: 従業員への周知とサポート体制、緊急時の対応フローが成功の鍵。
管理者による適切なポリシー設定と、ユーザー一人ひとりの正しい理解が、組織全体のセキュリティレベルを飛躍的に向上させます。まだ導入がお済みでない場合は、最優先のセキュリティ課題として、速やかに導入をご検討ください。
XIMIXによる専門的なセキュリティ導入・運用支援
「何から手をつければいいか分からない」「全社展開のリソースが足りない」 二段階認証の導入は、時に管理者に大きな負荷をかけるプロジェクトです。
私たち XIMIX (NI+C) は、Google CloudおよびGoogle Workspaceのプレミアパートナーとして、お客様のセキュリティポリシーやビジネス環境に最適な形での二段階認証導入を数多く支援してまいりました。
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現状分析と導入計画の策定
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従業員向け説明会の実施・マニュアル作成代行
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管理コンソールにおける最適なポリシー設定支援
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セキュリティキーの選定・導入コンサルティング
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導入後の運用サポート、ヘルプデスクサービス
NI+Cが持つ豊富な実績とセキュリティに関する深い知見に基づき、計画策定から定着化までを一貫してサポートし、貴社のセキュリティ強化を力強く後押しします。Google Workspaceのセキュリティ対策でお困りの際は、ぜひお気軽にXIMIXにご相談ください。
XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。
※こちらのコラム記事もご参照ください。
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