【入門編】Gmailの迷惑メール・フィッシング詐欺対策を解説 ビジネスを守る基本設定

 2025,05,09 2025.05.12

はじめに

ビジネスコミュニケーションの基盤であるメール。しかし、その利便性の裏側には、日々巧妙化する「迷惑メール」や「フィッシング詐欺」といった深刻な脅威が潜んでいます。一通の悪意あるメールが、企業の機密情報漏洩や金銭的被害、信用の失墜につながるケースも少なくありません。

特に、多くの企業で導入されているGoogle Workspaceの中核サービスであるGmailでは、高度なセキュリティ機能が標準で搭載されていますが、「具体的にどのような対策がされているのかよくわからない」「自分たちで何か設定すべきことがあるのか?」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、Gmailにおける迷惑メール・フィッシング詐欺対策に関心のある企業の担当者様に向けて、以下の点を入門レベルで分かりやすく解説します。

  • なぜGmailのセキュリティ対策がビジネスに不可欠なのか
  • Gmailに標準搭載されている主な迷惑メール・フィッシング詐欺対策機能
  • ユーザー自身でできる基本的な対策と設定方法
  • Google Workspaceで利用可能なさらに高度なセキュリティ機能(概要)

この記事を読むことで、Gmailのセキュリティ機能の基本を理解し、自社のメール環境をより安全に利用するための第一歩を踏み出すことができます。

なぜGmailの迷惑メール・フィッシング対策がビジネスにおいて重要なのか?

日々の業務で何気なく利用しているメールですが、セキュリティ対策を怠ると、企業は様々なリスクに晒されます。

ビジネスへの影響

  • 情報漏洩: フィッシング詐欺により従業員のアカウント情報が盗まれ、機密情報や顧客データが外部に流出する可能性があります。
  • 金銭的被害: ビジネスメール詐欺 (BEC) などにより、偽の請求書や送金指示に応じ、多額の金銭を騙し取られる被害が発生しています。
  • 業務効率の低下: 大量の迷惑メール処理に追われ、本来の業務に集中できなくなります。また、重要なメールが迷惑メールに埋もれてしまう可能性もあります。
  • 信用の失墜: 自社からマルウェア感染メールやフィッシングメールを送信してしまった場合、取引先や顧客からの信用を大きく損ないます。
  • 法的責任: 情報漏洩などが発生した場合、損害賠償請求や行政処分を受ける可能性もあります。

これらのリスクは、企業の規模に関わらず、すべての組織にとって他人事ではありません。だからこそ、Gmailに備わっているセキュリティ機能を正しく理解し、活用することが極めて重要なのです。

Gmailに標準搭載されている主な対策機能

Googleは、ユーザーを迷惑メールやフィッシング詐欺から守るために、Gmailに多層的な防御システムを実装しています。ここでは、その代表的な機能を見ていきましょう。

迷惑メールフィルタの高度な仕組み

Gmailの迷惑メールフィルタは、単なるキーワードのマッチングだけではありません。Googleが誇る機械学習技術を活用し、日々進化する脅威に対応しています。

  • 機械学習モデル: 何十億ものメールデータを分析し、迷惑メールやフィッシング詐欺に共通するパターンを学習。新しい手口にも迅速に対応します。
  • ユーザーからの報告: ユーザーが「迷惑メールを報告」ボタンを押すことで、その情報が機械学習モデルの精度向上に役立てられます。
  • レピュテーション分析: 送信元サーバーの評判や過去の送信履歴などを評価し、信頼性を判断します。

これらの組み合わせにより、99.9%以上の迷惑メール、フィッシング、マルウェアをユーザーの受信トレイに到達する前にブロックすることを目指しています。 

フィッシング詐欺・なりすまし検知と警告

巧妙なフィッシング詐欺メールは、一見すると正規のメールと見分けがつきにくい場合があります。Gmailは、以下のような機能でユーザーに注意を促します。

  • 不審なリンクの警告: メール本文中のリンクが悪意のあるサイトや既知のフィッシングサイトに誘導する可能性がある場合、警告を表示します。
  • なりすまし検知: 送信者名が連絡先リストにある人物や組織を騙っている可能性がある場合や、認証されていないドメインから送信された場合に警告を表示します。
  • 機密性の高い情報要求の警告: パスワードやクレジットカード情報などの入力を促すメールに対して警告を表示することがあります。

これらの警告が表示された場合は、メールの内容を鵜呑みにせず、慎重に対応することが重要です。

送信ドメイン認証 (SPF, DKIM, DMARC) の活用

送信ドメイン認証は、メールの送信元が正規のものであることを証明するための技術的な仕組みです。「なりすましメール」対策として非常に重要です。

  • SPF (Sender Policy Framework): ドメインがメール送信を許可しているサーバーのリストを公開する仕組み。
  • DKIM (DomainKeys Identified Mail): メールに電子署名を付与し、改ざんされていないことを証明する仕組み。
  • DMARC (Domain-based Message Authentication, Reporting, and Conformance): SPFとDKIMの認証結果に基づき、認証に失敗したメールの処理方法(迷惑メールに入れる、拒否するなど)をドメイン所有者が指定できる仕組み。

Gmailはこれらの認証技術に対応しており、受信メールの検証に利用しています。また、自社ドメインから送信するメールにこれらの設定を行うことで、自社になりすましたメールを防ぎ、メールの到達率を高める効果も期待できます。(設定は管理者側の作業となります)

セーフブラウジング機能との連携

Googleセーフブラウジングは、不正なウェブサイトやマルウェア配布サイトのリストを保持し、ユーザーが危険なサイトにアクセスしようとすると警告を表示する機能です。Gmailは、メール内のリンクをこのセーフブラウジングのリストと照合し、危険なリンクが含まれている場合に警告を表示します。

サンドボックスによる添付ファイルの保護

Google Workspaceの一部のエディションでは、添付ファイルを「サンドボックス」と呼ばれる隔離された仮想環境で実行し、悪意のある動作がないか事前にチェックする機能が提供されています。これにより、未知のマルウェアが添付されたメールによる被害を未然に防ぐことができます。

ユーザーができる基本的な対策と設定

Gmailの高度な自動保護機能に加えて、ユーザー自身が意識して行うべき対策も重要です。

迷惑メールの報告

もし迷惑メールやフィッシング詐欺と思われるメールが受信トレイに届いてしまった場合は、無視したり単に削除したりするのではなく、「迷惑メールを報告」機能を使ってGoogleに報告しましょう。これにより、Gmailのフィルタ精度が向上し、他のユーザーを保護することにも繋がります。

信頼できる送信者の登録(フィルタ設定)

特定の送信者からのメールが誤って迷惑メールに分類されてしまう場合、フィルタを作成して「迷惑メールにしない」設定を行うことができます。これにより、重要なメールを見逃すリスクを減らせます。逆に、特定の送信者や件名のメールを自動的に削除するフィルタも作成可能です。

不審なメールの見分け方のポイント

フィッシング詐欺メールは巧妙化していますが、注意深く見れば不審な点が見つかることがあります。

  • 緊急性を煽る件名や本文: 「アカウントがロックされました」「至急ご確認ください」など、焦らせて判断を誤らせようとします。
  • 不自然な日本語表現: 機械翻訳を使ったような、文法や言い回しがおかしい場合があります。
  • 個人情報や認証情報の要求: 正規のサービスがメールでパスワードやクレジットカード情報を直接尋ねることはほとんどありません。
  • 送信元メールアドレスの確認: 表示されている送信者名と、実際のメールアドレス(特に@以降のドメイン名)が一致しているか、正規のものかを確認します。
  • リンク先のURL確認: リンクにマウスカーソルを合わせると表示されるURLが、正規のドメインと異なっていないか、不審な文字列を含んでいないかを確認します。クリックする前に慎重に確認しましょう。

少しでも怪しいと感じたら、安易にリンクをクリックしたり、添付ファイルを開いたり、情報を入力したりしないことが重要です。

セキュリティ診断の活用

Googleアカウントには「セキュリティ診断」機能があり、アカウントのセキュリティ設定状況を確認し、推奨される対策を実行できます。パスワードの強度、2段階認証プロセスの設定状況、最近のアクティビティなどを定期的にチェックすることをおすすめします。

Google Workspaceで利用できる高度なセキュリティ機能

Gmailの標準機能に加えて、Google Workspaceの管理者向けには、組織全体のセキュリティをさらに強化するための高度な機能が提供されています。(ここでは概要のみ紹介します)

  • データ損失防止 (DLP): メール本文や添付ファイルの内容をスキャンし、機密情報(個人情報、マイナンバー、クレジットカード番号など)が意図せず外部に送信されるのを防ぎます。
  • セキュリティセンター: 組織全体のセキュリティ状況を可視化し、脅威の分析や対策を行うための統合ダッシュボードを提供します。
  • 高度なフィッシングとマルウェアの保護: 不審な添付ファイルやリンクに対する追加の保護レイヤーを提供します。
  • コンテキストアウェアアクセス: ユーザーの場所、デバイスのセキュリティ状態、IPアドレスなどに基づいて、Google Workspaceへのアクセスを制御します。

これらの機能は、より堅牢なセキュリティ体制を構築するために有効ですが、適切な設定と運用には専門的な知識が必要となる場合があります。

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XIMIXによるGoogle Workspaceセキュリティ強化支援

ここまでGmailの基本的な迷惑メール・フィッシング対策機能について解説してきました。これらの機能を理解し活用することは重要ですが、企業として本格的にセキュリティ対策を進める上では、以下のような課題に直面することも少なくありません。

  • 自社に最適なセキュリティ設定が分からない。
  • 送信ドメイン認証 (SPF, DKIM, DMARC) の設定方法が複雑で難しい。
  • 従業員へのセキュリティ教育をどのように実施すればよいか。
  • 万が一インシデントが発生した場合の対応フローが整備されていない。
  • DLPなど、より高度なセキュリティ機能を導入・運用したいがノウハウがない。

このような課題に対し、XIMIXは、お客様の状況に合わせた最適なセキュリティ強化をご支援します。

多くの企業様をご支援してきた豊富な経験と、Google Cloud、Google Workspaceに関する深い知見に基づき、現状のセキュリティ診断から、最適なポリシーの策定、各種設定の導入支援、従業員向けトレーニング、そして継続的な運用サポートまで、一貫したサービスを提供いたします。

単にツールを導入するだけでなく、お客様のビジネス環境に合わせた実効性のあるセキュリティ対策を実現し、安心してGoogle Workspaceをご活用いただけるよう伴走いたします。

Google Workspaceのセキュリティ対策にお悩みでしたら、ぜひ一度XIMIXにご相談ください。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

まとめ

今回は、Gmailにおける迷惑メールおよびフィッシング詐欺対策の基本について解説しました。Gmailには、機械学習を活用した高度なフィルタリングや、不審なメールへの警告、送信ドメイン認証など、ビジネスメールを保護するための強力な機能が標準で備わっています。

これらの機能を理解するとともに、ユーザー自身も「迷惑メールの報告」や「不審なメールの見分け方」といった基本的な対策を実践することが、セキュリティレベルを向上させる上で不可欠です。

一方で、組織全体のセキュリティを確保するためには、より高度な設定や運用体制の構築が必要となる場合もあります。自社だけでの対応が難しいと感じる場合は、専門家の支援を活用することも有効な選択肢です。

この記事が、皆様のGmail環境のセキュリティを見直し、より安全なビジネスコミュニケーションを実現するための一助となれば幸いです。まずは、できることから対策を始めてみましょう。


【入門編】Gmailの迷惑メール・フィッシング詐欺対策を解説 ビジネスを守る基本設定

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