【入門編】Google Cloudセキュリティ対策の基本 - まずやるべき5つのこと

 Apr 21, 2025 5:41:53 PM 2025.04.22

はじめに

Google Cloudをはじめとするクラウドサービスの利用が拡大する一方で、「クラウドのセキュリティは大丈夫なのか?」「設定ミスで情報漏洩したらどうしよう…」といったセキュリティに関する不安の声は後を絶ちません。特にクラウド利用の初心者にとっては、どこから手をつければ良いのか分からず、不安を感じやすいポイントかもしれません。

Google Cloud自体は非常に堅牢なセキュリティ基盤を持っていますが、クラウドのセキュリティは、サービス提供者(Google)と利用者(ユーザー企業)の双方の責任において成り立つものです。つまり、Google Cloudが提供するセキュリティ機能を適切に設定・運用することが、安全な利用のためには不可欠なのです。

この記事では、Google Cloudのセキュリティ対策に不安を感じている初心者の方に向けて、「まずやるべき」基本的なセキュリティ対策を5つに絞ってわかりやすく解説します。この記事を読むことで、Google Cloudセキュリティの第一歩を踏み出し、安心してクラウド活用を進めるための基礎知識を身につけていただければ幸いです

(重要: セキュリティの脅威や技術は常に変化します。この記事では基本的な対策と考え方を解説しますが、最新の情報や自社の状況に合わせた対策については、常に最新情報の確認と専門家への相談をお勧めします。)

Google Cloudセキュリティの基本:責任共有モデルを理解する

まず理解しておきたいのが、「責任共有モデル (Shared Responsibility Model)」という考え方です。これは、クラウド環境のセキュリティにおいて、クラウド事業者と利用者の間で責任範囲を分担するというモデルです。

  • Google Cloudの責任範囲: データセンターの物理的なセキュリティ、サーバーやネットワーク機器などのハードウェア、基盤となるソフトウェアなどのセキュリティは、Googleが責任を持って管理・保護します。
  • 利用者の責任範囲: 利用者自身がクラウド上に構築したシステム、保存するデータ、アプリケーション、OSの設定、ネットワーク設定(ファイアウォールなど)、そしてアクセス権限管理 (IAM) などについては、利用者が責任を持ってセキュリティ対策を講じる必要があります。

つまり、「Google Cloudを使っていれば自動的に安全」というわけではなく、利用者側での適切な設定と運用が極めて重要になるのです。これから紹介する基本的なセキュリティ対策は、まさにこの利用者側の責任範囲において「まずやるべき」ことです。

まずはここから!Google Cloud 基本セキュリティ対策5選

では、具体的にどのような対策から始めるべきでしょうか?ここでは、Google Cloudセキュリティ対策の基本となる5つのポイントをご紹介します。

1. アクセス権限を適切に管理する (IAM)

誰が、どのリソースに、どのような操作を行えるかを制御する「Identity and Access Management (IAM)」の設定は、セキュリティの根幹です。設定ミスは不正アクセスや情報漏洩に直結します。

  • やるべきこと:
    • 最小権限の原則を徹底する: ユーザーやサービスアカウントには、業務に必要な最小限の権限(ロール)のみを付与します。不要な権限は与えません。
    • 事前定義ロールを理解し活用する: Google Cloudには様々な操作権限をまとめた「事前定義ロール」が用意されています。まずはこれらを適切に割り当てることから始めましょう。(例: Compute Engine閲覧者、Storageオブジェクト作成者など)
    • カスタムロールの利用は慎重に: 事前定義ロールで不足する場合のみ、必要な権限だけを組み合わせたカスタムロールを作成します。
    • 定期的な権限の見直し: 異動や退職、役割変更などに伴い、不要になった権限は速やかに削除・変更します。

IAMの適切な設定は、内部不正や設定ミスによるリスクを低減する上で非常に重要です。 

2. 不正アクセスを防ぐ (認証強化)

適切な権限管理と併せて、ユーザー認証の強化も不可欠な対策です。ID/パスワードの漏洩による不正アクセスを防ぎます。

  • やるべきこと:
    • 多要素認証 (MFA) を必須にする: パスワードだけでなく、スマートフォンアプリやセキュリティキーなど、複数の要素を組み合わせた認証(MFA)をすべてのユーザー(特に管理者権限を持つユーザー)に適用します。Google WorkspaceやCloud Identityと連携して設定可能です。
    • サービスアカウントキーの厳重な管理: プログラムなどがGoogle Cloud APIを利用する際に使う「サービスアカウントキー」は、漏洩すると深刻なセキュリティインシデントに繋がります。キーファイルを直接コードに埋め込まず、安全な方法(Secret Managerなど)で管理し、定期的にローテーション(変更)します。可能な限りキーを使わない認証方法(Workload Identity連携など)を検討します。

強力な認証は、不正アクセスの最初の関門を突破させないための基本的な対策です。

3. ネットワークの入口を守る (VPCファイアウォール)

外部からの不正な通信を防ぐため、仮想ネットワーク(VPC)レベルでのファイアウォール設定が重要です。

  • やるべきこと:
    • 不要なポートは原則閉じる (デフォルトDeny): VPCファイアウォールルールは、明示的に許可されていない通信はデフォルトで拒否(Deny)する設定が推奨されます。
    • 必要な通信のみを許可する: WebサーバーならHTTP/HTTPS (ポート80/443)、SSH接続なら特定のIPアドレスからのみポート22を許可するなど、業務上必要な最小限の通信プロトコルとポート番号、送信元IPアドレス範囲のみを許可するルールを作成します。
    • 定期的なルールの見直し: 不要になったルールは削除し、常に最小限の許可設定を維持します。

VPCファイアウォールは、ネットワークレベルでの不正侵入を防ぐための重要な防壁です。

4. データを保護する (暗号化)

機密情報や個人情報など、重要なデータを保護するために暗号化は必須の対策です。

  • やるべきこと:
    • 保管時の暗号化を確認する: Google Cloudでは、Cloud Storageや永続ディスクなどに保存されるデータは、デフォルトでGoogleが管理する鍵を使って暗号化されています。この設定が有効になっていることを確認しましょう。
    • 転送時の暗号化を徹底する: インターネット経由でデータを送受信する場合は、HTTPSなどの暗号化されたプロトコルを使用します。
    • (検討)顧客管理の暗号鍵 (CMEK) の利用: より厳密な管理が必要な場合は、ユーザー自身が暗号鍵を管理するCMEK (Customer-Managed Encryption Keys) の利用も検討できますが、鍵管理の運用負荷も増えるため、初心者はまずデフォルトの暗号化を理解することから始めましょう。

データの暗号化は、万が一データが漏洩した場合でも、その内容を読み取られるリスクを低減します。

5. 何が起きているか把握する (ログ監査)

セキュリティインシデントの早期発見や原因究明のためには、ログの記録と監視が不可欠です。

  • やるべきこと:
    • 監査ログ (Cloud Audit Logs) を有効にする: 「誰が」「いつ」「どのリソースに」「何をしたか」という操作履歴を記録する監査ログは、デフォルトで有効になっていることが多いですが、確認し、必要に応じて設定を見直します。特に管理アクティビティログは重要です。
    • ログの保管と定期的な確認 (Cloud Logging): ログはCloud Loggingサービスに集約・保管されます。不正な操作や予期せぬアクティビティがないか、定期的にログを確認するプロセスを確立します。
    • (推奨)ログのアラート設定: 特定の不審なログ(例: IAM権限の変更、ファイアウォールルールの変更)が記録された場合に通知するアラートを設定すると、早期対応に繋がります。
    • (参考)Security Command Center: Google Cloudには、セキュリティ状況を一元的に可視化し、脅威検出や脆弱性管理を行う「Security Command Center」というサービスもあります。より高度な管理を目指す場合に検討しましょう。

ログは、セキュリティ状況を把握し、問題発生時に迅速に対応するための重要な情報源です。

セキュリティレベルを維持・向上させるために

上記5つの基本対策を実施したら終わり、ではありません。セキュリティ対策は継続的な取り組みが重要です。

  • 定期的な設定の見直し: 一度設定したIAMポリシーやファイアウォールルールが、現状の要件に合っているか、不要なものが残っていないかなどを定期的にレビューします。
  • 最新のセキュリティ情報の収集: Google Cloudのセキュリティ関連のブログやドキュメントをチェックし、新たな脅威や推奨される対策に関する情報を収集し続けます。
  • 社内ルールの整備と教育: クラウド利用に関するセキュリティルールを明確にし、従業員への教育を通じてセキュリティ意識を高めることも重要です。

XIMIXによる支援サービス:セキュリティの不安を解消し、安全な活用を

「基本的な対策はわかったけど、自社で設定するのは不安」「IAMやファイアウォールの設計が難しい」「継続的な監視体制をどう作ればいいかわからない」—— このようなセキュリティ対策に関する具体的なお悩みは、ぜひXIMIXにご相談ください。

XIMIXは、Google Cloudのセキュリティに関する豊富な知見と実績に基づき、お客様が安心してクラウドを活用できるよう、多角的な支援を提供します。

  • セキュリティ診断・アセスメント: お客様の現在のGoogle Cloud環境のセキュリティ設定状況を診断し、リスクと推奨される対策を具体的に提示します。
  • IAM・ネットワークセキュリティ設計・設定支援: 最小権限の原則に基づいたIAMポリシーの設計や、要件に応じたVPCファイアウォールルールの設計・設定を支援します。
  • ログ監視・インシデント対応体制構築支援: 効果的なログ監視の方法やアラート設定、インシデント発生時の対応プロセス構築などをサポートします。
  • セキュリティコンサルティング: お客様のビジネスやコンプライアンス要件に合わせた、包括的なGoogle Cloudセキュリティ戦略の策定をご支援します。

セキュリティ対策に終わりはありません。XIMIXはお客様のパートナーとして、継続的なセキュリティレベルの維持・向上をサポートします。

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※Google Cloud については、こちらのコラム記事もご参照ください。 
【基本編】Google Cloudとは? DX推進の基盤となる基本をわかりやすく解説
【基本編】Google Cloud導入のメリット・注意点とは? 初心者向けにわかりやすく解説

まとめ

今回は、Google Cloudの初心者向けに、まずやるべき基本的なセキュリティ対策として5つのポイントを解説しました。

  1. アクセス権限を適切に管理する (IAM)
  2. 不正アクセスを防ぐ (認証強化)
  3. ネットワークの入口を守る (VPCファイアウォール)
  4. データを保護する (暗号化)
  5. 何が起きているか把握する (ログ監査)

クラウドのセキュリティは「責任共有モデル」に基づき、利用者自身による対策が不可欠です。まずはこれらの基本的な対策を確実に実施することが、安全なGoogle Cloud利用の第一歩となります。そして、一度設定したら終わりではなく、継続的に見直し、改善していくことが重要です。

セキュリティ対策に不安がある場合や、より高度な対策が必要な場合は、遠慮なくご相談ください。


【入門編】Google Cloudセキュリティ対策の基本 - まずやるべき5つのこと

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