【入門編】データセキュリティとは?構成する7つの要素と対策の基本を解説

 2025,06,05 2025.08.25

はじめに

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進において、データ活用は成長の鍵を握る最重要要素です。しかし、データを活用すればするほど、情報漏えいやサイバー攻撃といった「データセキュリティ」のリスクは確実に増大します。

「データセキュリティという言葉はよく聞くが、具体的に何を指すのかわからない」 「自社の重要データを守るため、何から手をつければ良いのか知りたい」

このような課題をお持ちのDX推進担当者や決裁者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、データセキュリティの基本的な概念から、なぜ今最重要の経営課題なのか、そしてセキュリティ体制を強化するための具体的な対策と進め方までを網羅的に解説します。この記事を読めば、データセキュリティの全体像を明確に理解し、自社の対策を推進するための確かな第一歩を踏み出すことができます。

今、データセキュリティが経営の重要課題である3つの理由

なぜ、これほどまでにデータセキュリティの重要性が叫ばれるのでしょうか。その背景には、もはや無視できない3つの大きな変化があります。

①DX推進で高まるデータの資産価値と漏えいリスク

DXの本質は、データを活用して新たな価値を創造することにあります。顧客情報や技術情報、販売データといったデジタルデータは、今や企業の競争力を左右する「資産」です。この資産の価値が高まるにつれ、それを狙うサイバー攻撃者も増加しています。データが一度流出すれば、金銭的な損害はもちろん、企業の社会的信用を根本から揺るがしかねません。

②年々巧妙化・深刻化するサイバー攻撃の脅威

ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)攻撃は、もはや他人事ではありません。近年では、自社だけでなく、セキュリティ対策が手薄な取引先や子会社を踏み台にする「サプライチェーン攻撃」も急増しており、自社だけの対策では不十分な状況です。IPA(情報処理推進機構)が発表した「情報セキュリティ10大脅威」でも、「ランサムウェアによる被害」が連続で組織部門の第1位となるなど、その脅威は深刻化の一途をたどっています。

③遵守が必須となる国内外の法規制とガイドライン

データの取り扱いに関するルールは、世界的に厳格化しています。日本では改正個人情報保護法、EU圏ではGDPR(EU一般データ保護規則)が施行されており、法令に違反すれば、多額の制裁金や事業停止命令といった厳しい行政処分の対象となります。データセキュリティは、企業の自主的な取り組みであると同時に、事業継続のために遵守すべき法的要請でもあるのです。

「データセキュリティ」と「情報セキュリティ」の明確な違い

データセキュリティとよく似た言葉に「情報セキュリティ」があります。両者は密接に関連していますが、保護する対象の範囲に違いがあります。

  • 情報セキュリティ: より広範な概念です。デジタルデータだけでなく、紙媒体の書類や人間の記憶まで、あらゆる「情報資産」を保護の対象とします。

  • データセキュリティ: 情報セキュリティの中でも、特にPCやサーバー、クラウド上に存在する「デジタルデータ」の保護に特化した領域です。

情報セキュリティという大きな傘の中に、データセキュリティが位置づけられていると理解すると分かりやすいでしょう。

データセキュリティ対策の欠如が招く、事業存続の危機

もし、データセキュリティ対策を怠ってしまったら、企業はどのような事態に陥るのでしょうか。これは単なる「ITトラブル」では済みません。

①事業停止に追い込まれるリスク

ランサムウェア攻撃によって基幹システムが暗号化され、生産ラインやサービス提供が完全にストップする事例が後を絶ちません。復旧までに数週間から数ヶ月を要することも珍しくなく、その間の機会損失は計り知れません。

②莫大な金銭的損害

攻撃者へ支払う身代金(支払うべきではありませんが)だけでなく、システムの復旧費用、調査費用、顧客への補償、そして売上減少など、直接的・間接的に多額の費用が発生します。

③社会的信用の失墜と顧客離反

情報漏えいを起こした企業として報道されれば、ブランドイメージは大きく傷つきます。一度失った信頼を回復するのは極めて困難であり、顧客離半や取引停止に繋がる恐れは十分にあります。

④法的責任の追及

個人情報保護法などの法令に違反した場合、行政からの改善命令や数億円規模の高額な課徴金を課される可能性があります。

関連記事:
セキュリティインシデントが発生するとどうなるか?影響範囲を徹底解説、対策不備が招く事業存続の危機とは

データセキュリティを構成する多層的なアプローチ

データセキュリティは、単一のツールで実現できるものではありません。「技術」「組織・人」「物理」の3つの観点から対策を組み合わせ、多層的に防御することが不可欠です。ここでは、その中心となる要素を解説します。

①技術的対策:テクノロジーでデータを保護する

テクノロジーを活用し、不正なアクセスや攻撃からデータを守るための仕組みです。

① アクセス制御

「誰が」「どのデータに」「何をしてよいか」を厳密に管理する、セキュリティの基本です。役職や業務に応じて必要最小限の権限のみを与える「最小権限の原則」を徹底します。これにより、内部不正やアカウント乗っ取り時の被害を最小限に抑えます。

関連記事: 【入門編】最小権限の原則とは?セキュリティ強化とDXを推進する上での基本を徹底解説

② データの暗号化

データを特殊なルールで変換し、権限のない第三者には意味不明な状態にする技術です。万が一データが流出しても、内容を読み取られるリスクを大幅に低減できます。通信経路と保存データの両方を暗号化することが重要です。

③ データのバックアップとリカバリ

ランサムウェア攻撃やシステム障害に備え、データを復元できるように準備しておくプロセスです。定期的なバックアップはもちろん、「いざという時に本当に復旧できるか」を確認するリストアテストも欠かせません。

④ 脆弱性管理

OSやソフトウェアに存在するセキュリティ上の欠陥(脆弱性)を放置すると、サイバー攻撃の侵入口となります。自社のシステムに存在する脆弱性を継続的に把握し、速やかに修正パッチを適用する体制が求められます。

関連記事: 脆弱性管理とは?DX時代における基本と目的、企業が取り組むべき理由を解説

⑤ データのマスキングと匿名化

開発やテストの環境で本番データを利用する際に、氏名やクレジットカード番号といった機微な情報を、意味のある別のデータに置き換える技術です。これにより、リアルなデータで安全にテストを行うことが可能になります。

関連記事:  データマスキングとは? DX推進に不可欠なデータ保護の基本をわかりやすく解説 - Google Cloudでの活用も紹介【入門編】

②組織的・人的対策:セキュリティ文化を醸成する

最も重要であり、同時に最も難しい対策です。どれだけ高度な技術を導入しても、それを使う「人」の意識が低ければ、セキュリティは簡単に破られてしまいます。

⑥ 組織的な体制構築

全社的なルールである「セキュリティポリシー」を策定し、全従業員に周知徹底します。また、インシデント発生時に慌てず対応できるよう、報告体制や手順を定めた「インシデントレスポンス計画」を事前に準備しておくことが極めて重要です。

関連記事: クラウド時代のインシデント対応計画(IRP) – 押さえておくべき留意点と実践ポイント

⑦ 従業員への継続的な教育・訓練

標的型メール攻撃の訓練や、最新のセキュリティ脅威に関する研修を定期的に実施し、全従業員のセキュリティリテラシーを向上させることが不可欠です。

関連記事:  【入門編】社員に対するGoogle Workspaceのセキュリティ教育対策:意識向上と簡単な教育方法

③物理的対策:データが保存される場所を守る

デジタルデータが保存されているサーバーやネットワーク機器そのものを、物理的な脅威から守る対策です。

⑧ 物理的セキュリティ

サーバーが設置されているデータセンターやサーバルームへの入退室管理、監視カメラの設置、施錠管理などが含まれます。クラウドサービスを利用する場合は、クラウド事業者がどのような物理的セキュリティ対策を講じているかを確認することも大切です。

データセキュリティ対策を成功に導く4つのステップ

「対策の重要性は分かったが、具体的に何から手をつければいいのか」。これは、私たちXIMIXがお客様から最も多くいただくご質問の一つです。効果的な対策は、以下の4ステップで計画的に進めるのが基本です。

ステップ1:現状把握とリスクアセスメント

まずは、自社が「どこに」「どのような」重要なデータを保有しているかを洗い出し、可視化します。その上で、それぞれのデータに対し「どのような脅威が存在し」「どのような脆弱性があるか」を評価(リスクアセスメント)し、守るべき対象の優先順位を決定します。

関連記事:
リスクベースアプローチとは?DX推進とクラウドセキュリティにおける重要性を分かりやすく解説

ステップ2:セキュリティポリシーの策定と目標設定

リスクアセスメントの結果に基づき、自社が目指すべきセキュリティレベルを定義し、全社的なルールである「セキュリティポリシー」を策定します。このポリシーに沿って、具体的な対策の導入計画と目標を設定します。

ステップ3:対策の導入と実行

策定した計画に基づき、前章で解説したような具体的なセキュリティ対策(ツールの導入、ルールの適用など)を実行に移します。技術的な対策と並行して、従業員への教育も必ず実施しましょう。

ステップ4:監視、評価、そして継続的な改善(PDCA)

セキュリティ対策は一度導入して終わりではありません。新たな脅威は次々と生まれます。導入した対策が有効に機能しているかを継続的に監視・評価し、状況の変化に合わせてポリシーや対策を定期的に見直し、改善していく「PDCAサイクル」を回すことが成功の鍵です。

クラウド活用がデータセキュリティの最適解である理由

ここまで解説した対策をすべて自社単独で、しかも高いレベルで実現・運用するのは、専門人材の確保が難しい現代において大きな経営課題です。この課題に対する最も有力な解決策が、Google CloudGoogle Workspace といったクラウドサービスの活用です。

①責任共有モデルによる負担軽減と専門性の確保

クラウドでは、セキュリティ対策の責任範囲をクラウド事業者と利用者で分担する「責任共有モデル」が採用されています。物理的セキュリティやインフラの脆弱性管理といった、専門性が高く負担の大きい領域をGoogleのような専門企業に任せることで、利用者は自社のデータやアプリケーションの保護に集中できます。

関連記事: 改めて、クラウドセキュリティの「責任共有モデル」とは?自社の責任範囲と対策をわかりやすく解説

②「ゼロトラスト」を前提とした先進的なアーキテクチャ

Google Cloudは、「何も信頼しない」ことを前提にあらゆるアクセスを検証する「ゼロトラスト」という先進的なセキュリティモデルで設計されています。データは保管時に自動的に暗号化され、世界中に分散配置された堅牢なデータセンターで厳重に管理されます。これにより、従来型の境界防御モデルよりも遥かに高い安全性を実現します。

関連記事: さら聞けない「ゼロトラスト」とは?基本概念からメリットまで徹底解説
なぜGoogle Cloudは安全なのか? 設計思想とゼロトラストで解き明かすセキュリティの優位性【徹底解説】

③Google Cloud / Workspaceが提供する具体的なセキュリティ機能

Google Workspace にも、フィッシングやマルウェアからの高度な保護機能、詳細なアクセス制御、データ損失防止(DLP)といった、企業のデータセキュリティを強化するための機能が豊富に備わっています。これらのクラウドサービスを適切に活用することで、企業は自社でインフラを構築・運用するよりも遥かに高いレベルのセキュリティ基盤を、効率的に手に入れることができるのです。

関連記事: Google Workspaceのセキュリティは万全?公式情報から読み解く安全性と対策の要点

よくあるご質問(Q&A)

Q1. データセキュリティ対策、何から始めるべきですか?

A1. まずは「ステップ1:現状把握とリスクアセスメント」から始めることを強く推奨します。自社が守るべき重要なデータがどこにあるのかを把握しなければ、効果的な対策は打てません。まずは資産の棚卸しから着手しましょう。

Q2. 対策にかかる費用はどのくらいですか?

A2. 費用は企業の規模や業種、求めるセキュリティレベルによって大きく異なります。しかし、重要なのは対策を「コスト」ではなく「投資」と捉えることです。万が一インシデントが発生した場合の損害額(事業停止損失、賠償金など)と比較すれば、事前対策の投資対効果は非常に高いと言えます。

Q3. 専門部署がない中小企業でも対策は必要ですか?

A3. はい、絶対に必要です。 近年、サイバー攻撃は企業の規模を問いません。むしろ、大企業への足がかりとして、セキュリティ対策が手薄になりがちな中小企業が狙われる「サプライチェーン攻撃」が増加しています。Google Cloudのようなクラウドサービスや、我々のような専門家の支援を活用することで、効率的に対策を進めることが可能です。

XIMIXが実現する、貴社の状況に最適化されたデータセキュリティ

「クラウドが有効なのは分かったが、自社の状況に合わせて正しく設定・運用できるか不安だ」 「どこから手をつければ、効果的なデータセキュリティ対策が実現できるのか、専門家の視点でアドバイスがほしい」

このようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度XIMIXにご相談ください。 私たちは、長年にわたり多くの企業様の Google Cloud および Google Workspace の導入・活用をご支援してきた専門チームです。その豊富な経験と実績に基づき、お客様の事業内容やセキュリティ要件を深く理解した上で、現状評価のアセスメントから、具体的なポリシー策定、ツールの導入・設定、さらには運用開始後の伴走支援まで、ワンストップで最適なデータセキュリティの構築をご支援します。

貴社のDX推進をセキュリティの側面から力強くサポートし、データの安全な活用とビジネスの成長を両立させるお手伝いをいたします。 

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

まとめ

本記事では、データセキュリティの基本的な概念から、その重要性、対策を構成する多層的なアプローチ、そして対策を実践するための具体的なステップまでを解説しました。

データセキュリティは、単一のツールを導入すれば終わりというものではありません。「技術的対策」「組織的・人的対策」「物理的対策」を組み合わせ、自社の状況に合わせて継続的に改善していくことが不可欠です。

そして、この複雑で専門性の高い取り組みを成功に導くためには、自社の努力だけでなく、Google Cloud のようなセキュアなプラットフォームの活用や、XIMIXのような専門知識を持つパートナーとの連携が極めて有効な一手となります。

本記事が、貴社のデータセキュリティ体制を見つめ直し、安全なDX推進を実現するための一助となれば幸いです。


【入門編】データセキュリティとは?構成する7つの要素と対策の基本を解説

BACK TO LIST