はじめに:
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する現在、クラウドサービスの活用は事業成長の必須条件となりました。しかし、多くの経営層やIT部門長が抱く懸念、それは「自社の重要なデータを外部に預けて本当に安全なのか?」という点に尽きます。
結論から申し上げますと、現代において「オンプレミスよりもGoogle Cloudの方が安全なケースが多い」と言える根拠が揃っています。
Google Cloudは、単なるインフラの貸し出しではなく、Googleが数十億ユーザーを支えるために構築した「世界最高水準の防御システム」そのものを利用できるサービスだからです。
本記事では、中堅・大企業のDXを推進する決裁者の皆様に向けて、Google Cloudのセキュリティがなぜ他社と比較して優位性があるのか、その設計思想、技術的アーキテクチャ、そして第三者評価まで踏み込んで解説します。
Google Cloudのセキュリティが強固と評される3つの本質的理由
Google Cloudのセキュリティが選ばれる理由は、機能の多さだけではありません。その根底にある「思想」と、それを実現する「テクノロジー」の融合にあります。
1. 「ゼロトラスト」の実績と実装(BeyondCorp)
昨今、当然になってきている「ゼロトラスト(何も信頼せず、常に検証する)」ですが、Googleはこの概念を2010年代初頭から提唱し、自社運用モデル「BeyondCorp」として体系化してきました。
他社ベンダーが後付けでゼロトラスト対応を進める中、Google Cloudはアーキテクチャの根幹がゼロトラスト前提で設計されています。これにより、VPN不要で安全なリモートアクセスを実現するなど、実用性とセキュリティを両立した環境を提供可能です。
関連記事:
今さら聞けない「ゼロトラスト」とは?基本概念からメリットまで徹底解説
2. デフォルトで暗号化される「Security by Default」
多くのクラウドサービスでは、ストレージの暗号化などはユーザーが「オン」にする必要があります(オプトイン方式)。対して、Google Cloudは「デフォルトで暗号化(保存データおよび転送データ)」が適用されています。
「設定漏れによる事故」がセキュリティインシデントの大部分を占める中、何もしなくても安全な状態からスタートできるという設計思想(Security by Default)は、運用リスクを劇的に低減します。
関連記事:
セキュリティインシデントが発生するとどうなるか?影響範囲を徹底解説、対策不備が招く事業存続の危機とは
セキュリティバイデザインとは?:意味や重要性、Google CloudとWorkspaceにおける実践
3. グローバル規模のAI脅威インテリジェンス
Googleは検索エンジン、Gmail、YouTubeなど、9つのサービスで10億人以上のユーザーを抱えています。ここから得られる脅威情報は膨大であり、AIがリアルタイムで解析を行っています。
ある場所で検知された新しい攻撃手法は、即座にGoogle Cloudの防御システム(Google Cloud Armor等)に反映され、世界中のお客様の環境が守られます。一企業では到底構築できない「集合知による防御」こそが最大の強みです。
関連記事:
【入門編】脅威インテリジェンスとは?知っておくべきサイバーセキュリティ対策の新たな羅針盤
【比較】Google Cloud vs AWS vs Azure セキュリティの視点
主要3大クラウドはどれも高水準なセキュリティを提供していますが、その「アプローチ」には明確な違いがあります。
| 観点 | Google Cloud | AWS (Amazon Web Services) | Microsoft Azure |
| 基本思想 |
Security by Default デフォルトで安全。設定の手間を最小化。 |
Configurable Security 非常に細かく設定可能だが、ユーザーの設計スキルに依存。 |
Integration AD連携など、Microsoft製品との統合管理を重視。 |
| ゼロトラスト |
先進的・標準装備 BeyondCorp Enterpriseにより、Webブラウザベースで高度な制御が可能。 |
追加サービスやサードパーティ製品との組み合わせで構築する必要がある。 | Azure AD (Entra ID) を中心としたIDベースの制御に強み。 |
| インフラ防御 | カスタムチップ「Titan」によるハードウェアレベルの信頼性確認。 | Nitro Systemによる仮想化オーバーヘッドの排除と分離。 | 物理的なデータセンターの厳格な管理とAI活用。 |
| 運用負荷 |
低〜中 マネージドサービスが多く、自動化が進んでいる。 |
中〜高 自由度が高い分、正しく設定・維持する工数がかかる。 |
中 Windows環境であれば親和性が高いが、独自知識が必要。 |
既存のオンプレミス環境(特にWindows系)をそのまま延長したい場合はAzure、インフラを細部まで手動でチューニングしたい場合はAWSが適しています。
一方、「運用負荷を下げつつ、最新のモダンなセキュリティ(コンテナ、ゼロトラスト、AI活用)を享受したい」というニーズに対しては、Google Cloudが最も合理的かつ強力な選択肢となります。
関連記事:
クラウド運用負荷を劇的に削減!Google Cloudのマネージドサービスのメリット【入門編】
穴を作らない「多層防御」アーキテクチャの全貌
Google Cloudは、攻撃者が一つの壁を突破してもデータには到達できない「多層防御(Defense in Depth)」を採用しています。
1. ハードウェア:独自設計チップ「Titan」
汎用的なハードウェアには、製造過程での改ざんリスク(サプライチェーン攻撃)が潜んでいます。Googleは、サーバーに搭載するセキュリティチップ「Titan」を自社設計し、ハードウェアのブート(起動)時点から正規のプログラムであることを暗号論的に検証しています。
関連記事:
サプライチェーンセキュリティとは? DXに不可欠な理由と対策、Google Cloud/Google Workspace活用法を解説
2. ネットワーク:世界最大級のプライベートネットワーク
Googleのサービス間の通信は、インターネットを経由せず、Google独自のグローバルファイバーネットワークを通ります。
さらに、VPC Service Controls という機能を用いることで、クラウド上のデータに対して「論理的な境界線」を引き、許可されたネットワーク以外からのデータ持ち出し(exfiltration)を技術的に遮断することが可能です。
3. データ:デフォルト暗号化と鍵管理
前述の通り、データは保存時(at-rest)も転送時(in-transit)も自動的に暗号化されます。さらに、金融機関などで求められる厳格な要件に対しては、Cloud KMS(鍵管理システム)やCloud HSM(ハードウェアセキュリティモジュール)を提供し、暗号鍵自体を顧客が管理することも可能です。
客観的評価:第三者機関の評価とコンプライアンス
自称「安全」ではなく、客観的な指標においてもGoogle Cloudは最高評価を得ています。
①第三者機関による評価
ITアドバイザリ企業であるガートナー社やのレポートにおいて、Google Cloudは「クラウドインフラストラクチャとプラットフォームサービス(CIPS)」等の分野で、長年「リーダー」のポジションに位置付けられています。特にデータ分析やAIセキュリティの分野で高い評価を受けています。
②日本企業にとって重要な「ISMAP」への対応
日本政府が求めるセキュリティ基準を満たしているかを評価する制度「ISMAP」のクラウドサービスリストにも、Google Cloudは登録されています。これは、政府機関や重要インフラ企業が採用するに足る信頼性を有していることの証明であり、日本国内のエンタープライズ企業にとって重要な選定基準となります。
その他、ISO 27001、PCI DSS、SOC 1/2/3、HIPAAなど、主要な国際コンプライアンス基準も網羅しています。
【重要】「責任共有モデル」の落とし穴とXIMIXの知見
ここまでGoogle Cloudの堅牢性を解説しましたが、導入すれば「自動的にすべてが守られる」わけではありません。クラウド利用には「責任共有モデル」という大原則が存在します。
-
Googleの責任: クラウド「の」セキュリティ(インフラ、物理設備、ハイパーバイザー等)
-
お客様の責任: クラウド「における」セキュリティ(保存データ、ID管理、設定、OSのパッチ適用等)
関連記事:
改めて、クラウドセキュリティの「責任共有モデル」とは?自社の責任範囲と対策をわかりやすく解説
XIMIXが見てきた「企業が見落としがちなリスク」
私たちXIMIXが多くのお客様のお話を伺う中で、インシデントの一歩手前まで至っていたケースには共通点があります。
-
IAM(権限管理)の形骸化:
「とりあえず動くように」と、開発ベンダーに過剰な特権(オーナー権限)を付与したまま放置し、不正アクセスのリスクに晒されているケース。
-
公開設定のミス:
Cloud Storageのバケットを意図せず「公開」設定にしてしまい、機密情報がインターネットから閲覧可能になっていたケース。
-
シャドーITの横行:
各部署が独自の判断でプロジェクトを立ち上げ、全社セキュリティポリシーが適用されていない「野良プロジェクト」が乱立しているケース。
これらはGoogle Cloudの脆弱性ではなく、「使い手の設定ミス(Misconfiguration)」に起因します。
関連記事:
【入門編】最小権限の原則とは?セキュリティ強化とDXを推進する上での基本を徹底解説
【入門編】シャドーIT・野良アプリとは?DX推進を阻むリスクと対策を徹底解説【+ Google Workspaceの導入価値も探る】
クラウドの設定ミスが招く深刻なリスクとは?原因と今すぐできる対策を徹底解説【入門編】
XIMIXが実現する、一歩先のGoogle Cloudセキュリティ活用
Google Cloudという「最強の盾」を手に入れても、その持ち方(設定・運用)を誤れば意味がありません。
XIMIX は、Google Cloudのプレミアパートナーとして、お客様が「責任共有モデル」の落とし穴に陥らないよう、専門的な知見で支援します。
1. 「Security Command Center」による統合監視の導入
Google Cloud環境全体のリスクを可視化するSecurity Command Centerの導入を支援します。これにより、設定ミスや脅威をリアルタイムで検知し、自動修復するフローを構築します。
2. ゼロトラスト環境(BeyondCorp)の実装
VPNの遅延や管理工数にお悩みのお客様に対し、Identity-Aware Proxy (IAP) やEndpoint Verificationを活用した、セキュアかつ快適なリモートアクセス環境の構築を一気通貫で提供します。
XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. Google Cloudのセキュリティ対策には高額な費用がかかりますか?
基本的なセキュリティ機能(デフォルトの暗号化、VPCファイアウォール、IAM、BasicレベルのDDoS防御など)は、追加費用なし(標準料金に含まれる)で利用可能です。
より高度な管理機能であるSecurity Command Centerのプレミアム機能や、大規模攻撃防御のGoogle Cloud Armorなどは従量課金やサブスクリプションとなります。XIMIXでは、リスクとコストのバランスを考慮した最適な構成をご提案します。
Q2. 金融機関ですが、FISC安全対策基準に対応できますか?
はい、対応可能です。Google CloudはFISC(金融情報システムセンター)安全対策基準への対応状況を示すリファレンスを公開しています。XIMIXは厳格なネットワーク設計やログ管理基盤の構築をサポートいたします。
Q3. 社内にセキュリティの専門家がいません。運用は可能でしょうか?
専門家が不在の場合こそ、Google Cloudのマネージドサービスや、XIMIXのようなパートナーの活用が推奨されます。Google Cloudは自動化機能が充実しており、運用負荷を下げることが可能です。また、XIMIXが運用を支援するサービスも提供しておりますのでご相談ください。
まとめ:攻めのDXを支える「守りの要」として
本記事では、Google Cloudのセキュリティ優位性について解説しました。
-
設計思想: Security by Default と Zero Trust が根底にある。
-
技術: 独自チップTitan、世界規模のネットワーク、AIによる脅威検知。
-
客観性: ISMAP登録や第三者機関の高い評価。
Google Cloudは、世界で最もサイバー攻撃を受ける企業の一つであるGoogleが、自らを守り抜いてきた実績の結晶です。このインフラを活用することで、貴社はセキュリティ対策の「重荷」から解放され、本来注力すべきビジネスの創造(DX)にリソースを集中させることができます。
セキュアなクラウド環境の構築、既存環境のセキュリティ診断、ISMAP対応など、具体的な課題がございましたら、ぜひXIMIXにご相談ください。
- カテゴリ:
- Google Cloud