【入門編】コンポーザブルエンタープライズとは?DX時代を勝ち抜く俊敏な組織の実現に向けて

 2025,05,28 2025.05.28

はじめに

「市場の変化が速すぎて、既存のシステムや組織構造では対応しきれない」 「新しいビジネスモデルを迅速に立ち上げたいが、何から手をつければ良いのかわからない」

中堅企業から大企業に至るまで、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する中で、このような課題に直面されている決裁者の方も多いのではないでしょうか。変化が常態となった現代において、企業が持続的に成長を遂げるためには、ビジネス環境の変化に俊敏に対応できる能力が不可欠です。

そこで注目されているのが、「コンポーザブルエンタープライズ」という考え方です。本記事では、このコンポーザブルエンタープライズとは何か、その基本的な概念からメリット、そして実現に向けたポイントまでを、DX推進に取り組む企業の皆様にも分かりやすく解説します。この記事をお読みいただくことで、コンポーザブルエンタープライズへの理解を深め、自社のDX戦略を加速させるヒントを得られるでしょう。

コンポーザブルエンタープライズとは?

コンポーザブルエンタープライズとは、直訳すると「組み立て可能な企業」を意味します。ビジネスの変化に迅速かつ柔軟に対応するために、企業の能力や機能を「ブロック」のように組み合わせ、再構成できるアーキテクチャや組織文化を持つ企業モデルを指します。

従来の企業システムは、一度構築すると変更が難しく、硬直化しやすいという課題がありました。しかし、コンポーザブルエンタープライズでは、ビジネスの構成要素(アプリケーション、データ、プロセスなど)を独立した部品(コンポーネント)として捉え、これらをAPI(Application Programming Interface)などを通じて連携させます。これにより、市場のニーズやビジネス戦略の変化に応じて、必要な機能を迅速に追加・変更・削除できるようになります。

なぜ今、コンポーザブルエンタープライズが注目されるのか?

現代のビジネス環境は、VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代と言われ、予測不可能な変化が常に起きています。このような状況下で企業が競争優位性を維持し、成長を続けるためには、変化への対応力、すなわち「俊敏性(アジリティ)」が極めて重要です。

コンポーザブルエンタープライズは、この俊敏性を高めるための強力なアプローチとして注目されています。例えば、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、多くの企業が急な働き方の変更やサプライチェーンの見直しを迫られましたが、コンポーザブルな要素を持っていた企業は、比較的迅速に対応できたと言われています。

また、DX推進においては、新しいデジタル技術を迅速に導入し、ビジネス価値を創出することが求められます。コンポーザブルなアーキテクチャは、新しい技術やサービスを既存のシステムと容易に統合できるため、イノベーションを加速させる上でも有効です。

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コンポーザブルエンタープライズを構成する主要な要素

ガートナー社は、コンポーザブルエンタープライズを実現するための主要な要素として、以下の3つを挙げています。

1. コンポーザブルシンキング (Composable Thinking)

これは、あらゆるものを再利用可能な部品として捉え、それらを組み合わせて価値を創造するという思考様式です。固定観念にとらわれず、柔軟な発想でビジネスの課題解決に取り組む姿勢が求められます。リーダーシップ層がこの思考様式を理解し、組織全体に浸透させることが重要です。

2. コンポーザブルビジネスアーキテクチャ (Composable Business Architecture)

ビジネス戦略に基づいて、企業の機能やプロセスをモジュール化し、それらを柔軟に組み合わせられるように設計されたビジネスの構造です。変化に強いビジネスモデルを構築するためには、現状のビジネスプロセスを分析し、どこをコンポーネント化すべきかを見極める必要があります。

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3. コンポーザブルテクノロジー (Composable Technologies)

コンポーザブルなビジネスアーキテクチャを支える技術基盤です。API連携、マイクロサービス、クラウドネイティブ技術、ローコード/ノーコードプラットフォームなどがこれに該当します。これらの技術を活用することで、ビジネス機能の迅速な開発、展開、変更が可能になります。特に、Google Cloud のようなクラウドプラットフォームは、コンポーザブルテクノロジーを実装するための強力な基盤を提供します。

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コンポーザブルエンタープライズのメリット

コンポーザブルエンタープライズを実現することで、企業は以下のようなメリットを享受できます。

①俊敏性の向上

最大のメリットは、ビジネス環境の変化や新たな機会に対して迅速に対応できることです。新しいサービスの開発や既存プロセスの変更を、従来よりも短期間かつ低コストで実現できます。

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②レジリエンス(回復力)の強化

予期せぬ事態が発生した際にも、ビジネスへの影響を最小限に抑え、迅速に復旧する能力が高まります。特定の機能に問題が生じても、他のコンポーネントへの影響を限定的にできるためです。

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③イノベーションの促進

新しい技術やアイデアを容易に試すことができるため、イノベーションが生まれやすい環境が醸成されます。既存のシステムに縛られることなく、新しい価値創造に挑戦できます。

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④顧客体験の向上

顧客ニーズの変化に合わせて、迅速にサービス内容を調整したり、パーソナライズされた体験を提供したりすることが容易になります。

⑤効率性の改善とコスト最適化

機能の再利用性が高まることで、開発の重複を防ぎ、運用効率を向上させることができます。また、必要な機能だけを選択的に利用することで、ITコストの最適化にも繋がります。

コンポーザブルエンタープライズ実現に向けた課題とポイント

コンポーザブルエンタープライズへの移行は、単なる技術導入に留まらず、組織文化や思考様式の変革も伴うため、いくつかの課題も存在します。

課題

  • 複雑性の増大: 多数のコンポーネントを管理・連携させるため、アーキテクチャが複雑になる可能性があります。適切なガバナンスと運用体制が必要です。
  • セキュリティリスク: API連携が増えることで、セキュリティの脆弱性が生じるリスクも考慮しなければなりません。包括的なセキュリティ対策が不可欠です。
  • 組織文化の変革: 従来の縦割り組織や固定的な思考様式から脱却し、部門横断的な連携や柔軟な発想を促す組織文化への変革が求められます。これには時間と労力が必要です。
  • スキルセットの獲得: コンポーザブルテクノロジーを使いこなし、コンポーザブルシンキングを実践できる人材の育成・獲得が課題となる場合があります。

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実現のポイント

  • 明確なビジョンと戦略: まず、自社がコンポーザブルエンタープライズを通じて何を実現したいのか、明確なビジョンと戦略を策定することが重要です。
  • スモールスタートと段階的導入: 一気に全てのシステムやプロセスを変更するのではなく、影響範囲の少ない領域からスモールスタートし、成功体験を積み重ねながら段階的に拡大していくアプローチが現実的です。
  • APIファーストのアプローチ: 新しい機能やサービスを開発する際には、APIを前提とした設計を行うことで、再利用性と連携性を高めます。
  • 適切な技術選定: 自社のビジネス目標や既存システムとの親和性を考慮し、Google Cloud のような柔軟性と拡張性に優れたクラウドプラットフォームや、マイクロサービス、ローコード開発ツールなどを適切に選択・活用します。
  • 人材育成と組織文化の醸成: 研修プログラムの実施や、部門横断プロジェクトの推進などを通じて、コンポーザブルな思考様式を持つ人材を育成し、協力的な組織文化を醸成します。
  • 外部パートナーとの連携: コンポーザブルエンタープライズの実現には高度な専門知識と経験が必要です。信頼できる外部パートナーと連携し、知見や技術支援を得ることも有効な手段です。

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XIMIXによるご支援

ここまでコンポーザブルエンタープライズの概要とメリット、実現のポイントについて解説してきました。しかし、実際に自社でこれらの変革を推進するには、「どこから手をつければ良いのか」「自社に最適なアーキテクチャは何か」「技術的な課題をどうクリアすればよいのか」といった具体的な課題に直面することも少なくありません。

私たちXIMIXは、NI+Cが提供するGoogle CloudおよびGoogle WorkspaceのSIサービスとして、多くの中堅・大企業様のDX推進をご支援してきた豊富な実績と知見を有しております。コンポーザブルエンタープライズの実現に向けて、PoC(概念実証)、システム開発、運用、そして更なる高度化に至るまで、一貫したサポートを提供いたします。

特に、コンポーザブルテクノロジーの中核を担う Google Cloud の活用においては、その柔軟性、拡張性、豊富なサービス群を最大限に活かし、お客様のビジネスに最適化されたコンポーザブルなアーキテクチャの設計・構築をご支援します。

XIMIXの強みは、単に技術を提供するだけでなく、お客様のビジネス課題に深く寄り添い、共に解決策を模索し、DXのその先にあるビジネス価値の創造を目指す点にあります。

Google Cloud を活用したDX推進にご興味をお持ちでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
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まとめ

本記事では、DX時代における企業の新たな指針となる「コンポーザブルエンタープライズ」について解説しました。コンポーザブルエンタープライズは、ビジネスの構成要素を柔軟に組み替え可能にすることで、変化への俊敏性とレジリエンスを高め、継続的なイノベーションを促進する企業モデルです。

その実現には、コンポーザブルシンキング、コンポーザブルなビジネスアーキテクチャ、そしてGoogle Cloud のようなコンポーザブルテクノロジーの3つの要素が不可欠です。課題も伴いますが、明確なビジョンを持ち、段階的に取り組むことで、企業は大きなメリットを享受できるでしょう。

これからの時代を勝ち抜くためには、変化を恐れるのではなく、変化を機会と捉え、柔軟に対応できる組織へと進化していくことが求められます。コンポーザブルエンタープライズは、そのための強力な羅針盤となるはずです。

この記事が、皆様のDX推進、そしてより俊敏で競争力のある企業への変革の一助となれば幸いです。


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