【入門編】CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?重要性から成功戦略までを徹底解説

 2025,09,02 2025.09.02

はじめに

「CX(カスタマーエクスペリエンス)」という言葉を耳にする機会が増え、その重要性が叫ばれていますが、「具体的に何を指すのか」「なぜ今、自社の経営戦略において重要なのか」を明確に説明できるでしょうか。

多くの企業が顧客満足度の向上を目指す一方で、市場のコモディティ化が進み、製品やサービスの機能だけで差別化を図ることは極めて困難になっています。このような時代において、企業の持続的な成長を左右する鍵こそが、顧客とのあらゆる接点を通じて得られる「体験」の質、すなわちCXなのです。

この記事では、単なる言葉の定義にとどまらず、CXがなぜ現代のビジネスにおいて最重要課題の一つなのか、そして多くの企業がCX向上に取り組む上で直面する課題と、それを乗り越えるための具体的な戦略アプローチについて、専門家の視点から解説します。この記事を読めば、CXの基本を理解し、自社の成長戦略として実践するための道筋を描けるようになるでしょう。

CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?今さら聞けない基本を解説

CXとは「Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)」の略で、日本語では「顧客体験」や「顧客体験価値」と訳されます。これは、顧客が商品を認知し、興味を持ち、購入を検討、購入、そして利用後のアフターサポートに至るまで、企業と関わるすべての一連の接点(タッチポイント)で顧客が感じる、感情的・心理的な価値の総体を指します。

単に製品が使いやすい、価格が安いといった機能的・物理的な価値だけでなく、「このブランドのサポートはいつも丁寧で安心できる」「このサービスのウェブサイトは情報が探しやすい」といったポジティブな感情もCXの一部です。

CSやUXとの違いは?

CXを理解する上で、よく似た言葉である「CS」や「UX」との違いを把握しておくことが重要です。

  • CS (Customer Satisfaction / 顧客満足度): CSは、提供された商品やサービスが顧客の期待をどの程度満たしたかという「結果」に対する満足度を測る指標です。特定の接点における満足度を指すことが多く、CXを構成する一つの要素と言えます。

  • UX (User Experience / ユーザーエクスペリエンス): UXは、主にウェブサイトやアプリ、製品といった「特定のプロダクトやサービスを利用する際に得られる体験」を指します。例えば、「このアプリは直感的に操作できる」といった体験がUXです。UXは、数ある顧客接点の中の一つであり、優れたUXはCX全体を向上させる重要な要素です。

まとめると、CXはCSやUXを包含する、より長期的かつ広範な概念です。個々の接点での体験(UX)やその結果としての満足度(CS)の積み重ねが、ブランド全体に対する総合的な顧客体験(CX)を形成するのです。

なぜ、CXが企業の成長を左右する重要経営指標なのか

近年、CXがマーケティング部門だけの課題ではなく、全社で取り組むべき経営指標として位置づけられるようになった背景には、市場環境の劇的な変化があります。

背景1:市場の成熟とコモディティ化

テクノロジーの進化により、多くの市場で製品やサービスの機能・品質・価格による差別化が難しくなりました。顧客は類似した選択肢の中から一つを選ぶ際、機能的な価値だけでなく、「購入プロセスが快適だった」「自分に合った提案をしてくれた」といった体験価値を重視するようになっています。

背景2:購買プロセスの変化と顧客接点の多様化

スマートフォンやSNSの普及により、顧客は購入前にオンラインで情報を収集・比較し、購入後にはその体験をSNSで発信することが当たり前になりました。企業と顧客の接点は、店舗や営業担当者だけでなく、ウェブサイト、SNS、広告、カスタマーサポートなど、オンライン・オフラインを問わず多様化・複雑化しています。これらの多様な接点すべてで一貫した質の高い体験を提供することが、顧客の信頼を得る上で不可欠です。

CXがもたらすビジネスインパクト

優れたCXは、顧客の感情に直接働きかけ、企業に具体的な利益をもたらします。

  • 顧客ロイヤルティの向上とLTVの最大化: ポジティブな体験をした顧客は、その企業やブランドのファンとなり、継続的に製品やサービスを利用してくれる「リピーター」になる可能性が高まります。これにより、顧客一人ひとりが生涯にわたって企業にもたらす利益(LTV:Life Time Value)が最大化されます。

  • ブランドイメージと競争優位性の確立: 顧客の良い体験は、口コミやSNSを通じて拡散され、新たな顧客を呼び込む強力なマーケティング効果を生み出します。これは他社が容易に模倣できない、持続可能な競争優位性となります。

  • 価格競争からの脱却: 顧客が提供される「体験」そのものに価値を感じるようになれば、多少価格が高くても選ばれるようになり、不毛な価格競争から一線を画すことができます。

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CX向上を阻む、多くの企業が陥る「3つの壁」

多くの企業がCXの重要性を認識しながらも、その取り組みはなかなか成果に結びつかないケースが少なくありません。これまでの支援経験から、多くの企業が共通して直面する「3つの壁」が見えてきます。

壁1:データのサイロ化による「顧客の分断」

顧客データが、マーケティング部門のMAツール、営業部門のSFA/CRM、サポート部門の問い合わせ管理システムといったように、部門ごとにバラバラに管理されている状態(データのサイロ化)です。これでは、ある顧客がウェブサイトでどのページを閲覧し、営業担当とどんな話をし、過去にどんな問い合わせをしたか、という一連の行動を統合的に把握できません。結果として、各部門が分断された顧客情報をもとにアプローチしてしまい、一貫性のないチグハグな体験を提供してしまうのです。

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壁2:部門間の連携不足による「体験の分断」

データのサイロ化は、組織の壁にも起因します。マーケティング部門はリード獲得、営業部門は受注件数、サポート部門は対応件数といったように、各部門が個別のKPI(重要業績評価指標)を追求するあまり、部門間の連携が疎かになりがちです。顧客にとっては、企業の都合は関係ありません。「マーケティング部門と営業部門で言っていることが違う」といった体験は、不信感を招き、CXを著しく損ないます。

壁3:場当たり的な施策による「戦略の不在」

「CX向上が重要だ」という号令のもと、ウェブサイトをリニューアルしたり、チャットボットを導入したりと、個別の施策に飛びついてしまうケースも散見されます。しかし、自社の顧客が誰で、どのような体験を求めているのか、そして現状の課題はどこにあるのか、という分析に基づいた戦略がなければ、それらの施策は単なる点となり、線としての優れたCXには繋がりません。

成功企業に学ぶ、CX向上のための戦略的アプローチ

これらの壁を乗り越え、CX向上を成功させるためには、場当たり的な施策ではなく、データに基づいた戦略的なアプローチが不可欠です。ここでは、そのための基本的なステップをご紹介します。

Step 1: 顧客接点の可視化とデータ統合

まず、顧客が自社と関わるすべての接点(ウェブサイト、広告、店舗、営業、サポートなど)を洗い出し、それぞれの接点での顧客の行動や感情を可視化する「カスタマージャーニーマップ」を作成します。 そして、そのジャーニー全体を支えるために最も重要なのが、サイロ化された顧客データを統合するデータ活用基盤の構築です。

クラウドベースのデータウェアハウス、例えば Google Cloud の BigQuery などを活用することで、社内に散在するあらゆるデータを一元的に収集・分析し、顧客の全体像を360度で理解することが可能になります。

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Step 2: データに基づいたパーソナライズ施策の実行

統合されたデータを分析することで、顧客一人ひとりの興味関心や行動パターンを深く理解できます。そのインサイトに基づき、個々の顧客に最適化された情報やサービスを提供する「パーソナライズ」を実現します。 例えば、ウェブサイトの閲覧履歴から、顧客が興味を持ちそうなコンテンツをAIが自動で推薦する、といった施策が考えられます。

近年では、Vertex AI のようなプラットフォームを活用し、生成AIによる高度なレコメンデーションや、顧客からの問い合わせに対する最適な回答を自動生成するなど、より高度なCX提供も可能になっています。

Step 3: 全社一丸となるための従業員体験(EX)の向上

見落とされがちですが、優れたCXは、優れた従業員体験(EX:Employee Experience)なくしては実現できません。顧客に最高のサービスを提供するためには、まず従業員自身が円滑に情報共有でき、部門の壁を越えて協力し合える環境が必要です。 例えば、Google Workspace のようなコラボレーションツールは、リアルタイムでの情報共有や共同作業を促進し、組織の縦割りを解消します。

従業員が必要な情報にいつでもどこからでもアクセスできる環境を整えることが、結果的にお客様への迅速で質の高い対応、すなわちCXの向上に直結するのです。

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成功の鍵は、データ基盤と組織横断のパートナーシップ

ここまで見てきたように、真のCX向上を実現するには、個別のツール導入やマーケティング施策だけでは不十分です。

  • 全社の顧客データを統合・分析するための堅牢なデータ活用基盤

  • 部門の壁を越えて連携し、一貫した顧客体験を創出する組織文化

この両輪を回していくことが成功の絶対条件です。しかし、多くの企業にとって、これらを自社だけのリソースで推進するには高いハードルが存在するのも事実です。データ基盤の構築には高度な専門知識が求められ、組織改革には客観的な視点と強力な推進力が必要となります。

このような課題に対し、私たちXIMIXは、Google Cloud の専門家集団として、技術とビジネスの両面からお客様を支援します。Google Cloud を活用したデータ分析基盤の構築から、Google Workspace を活用した業務改革・組織文化の醸成までをワンストップで提供し、お客様のCX戦略が絵に描いた餅で終わらないよう、計画策定から実装、そして定着化までを伴走支援します。

自社のCXを次のステージへ引き上げたい、データと組織の両面から改革を進めたいとお考えの際は、ぜひ一度XIMIXにご相談ください。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

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まとめ

本記事では、CX(カスタマーエクスペリエンス)の基本的な概念から、その重要性、そして企業が直面しがちな課題と成功へのアプローチについて解説しました。

  • CXとは、顧客が企業と関わる全接点での体験価値の総体であり、CSやUXを包含する広範な概念である。

  • 市場の成熟化と顧客接点の多様化を背景に、CXは企業の成長を左右する経営の重要指標となっている。

  • CX向上を成功させるには、「データのサイロ化」や「部門間の連携不足」といった壁を乗り越える必要がある。

  • その鍵は、データ活用基盤の構築と、従業員体験(EX)の向上を両輪で進める戦略的アプローチにある。

CX向上は一朝一夕に成し遂げられるものではありません。しかし、顧客を深く理解し、全社一丸となって一貫した価値体験を提供し続けることで、それは揺るぎない競争優位性となります。まずは自社の顧客接点を見直し、どこに課題があるのかを把握することから始めてみてはいかがでしょうか。


【入門編】CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?重要性から成功戦略までを徹底解説

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