レガシーシステムとは?DX推進を阻む課題とGoogle Cloudによる解決策をわかりやすく解説

 2025,05,13 2025.05.15

はじめに

「DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進したいが、既存の古いシステムが足かせになっている…」 「長年使ってきた基幹システム、そろそろ限界かもしれないが、何から手をつければ良いのか…」

多くの企業様において、このような課題認識をお持ちではないでしょうか。その背景には、多くの場合「レガシーシステム」の存在があります。レガシーシステムは、現代のビジネススピードや変化への対応を困難にし、DX推進の大きな障壁となり得ます。

本記事では、DX推進を担当される方や、自社のITシステムに課題を感じている決裁者層の皆様に向けて、以下の点を網羅的に解説します。

  • レガシーシステムとは具体的にどのようなものか
  • レガシーシステムが抱える問題点とその深刻さ
  • レガシーシステムを放置した場合に起こりうるリスク
  • レガシーシステムに対して企業が取るべき対応策
  • Google Cloud がレガシーシステム刷新においてどのように貢献できるのか

この記事を通じて、レガシーシステムに関する基本的な知識を深め、自社の課題解決に向けた具体的な次の一歩を踏み出すためのヒントを得ていただければ幸いです。

レガシーシステムとは何か?

「レガシーシステム(Legacy System)」とは、一般的に、老朽化した技術や仕組みで構築・運用されている古い情報システムを指します。具体的には、過去の技術で作られたメインフレームやオフコン上のシステム、長期間にわたり改修を繰り返してきた結果、複雑化・ブラックボックス化してしまった業務システムなどが該当します。

これらは導入当時には最新鋭であったかもしれませんが、時間の経過とともに以下のような特徴を持つようになります。

  • 技術の旧式化: 使用されているプログラミング言語やデータベース、ハードウェアなどが現代の標準から大きくかけ離れている。
  • ドキュメントの不備: 設計書や仕様書が最新の状態に更新されていなかったり、そもそも存在しなかったりする。
  • 担当者の退職・不在: システム開発や運用に携わった担当者が退職し、詳細を把握している人材が社内にいない。
  • 複雑なシステム構造: 長年の改修の積み重ねにより、システム内部の依存関係が複雑怪奇になっている。

これらの特徴が、後述する様々な問題点を引き起こす原因となります。

レガシーシステムが引き起こす深刻な問題点

レガシーシステムは、企業の競争力や成長を阻害する様々な問題点を内包しています。主な問題点を具体的に見ていきましょう。

①ビジネスアジリティの低下

市場の変化や新たなビジネスニーズに迅速に対応することが困難になります。例えば、新しいサービスを立ち上げようとしても、既存システムとの連携に多大な時間とコストがかかったり、そもそも改修が不可能だったりするケースがあります。

②運用・保守コストの増大

古い技術を維持するためには、専門知識を持つエンジニアの確保が必要ですが、そうした人材は年々減少しており、人件費が高騰しがちです。また、老朽化したハードウェアの保守費用や、複雑化したシステムの維持管理にも多額のコストがかかります。経済産業省の「DXレポート」によれば、企業のIT予算の8割以上が既存システムの維持管理費に充てられているという指摘もあり、イノベーションへの投資を圧迫しています [出典:経済産業省 DXレポート https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html]。

③セキュリティリスクの増大

古いシステムは、最新のセキュリティ脅威に対応するための修正パッチが提供されなかったり、新たな防御策を導入することが困難だったりします。これにより、サイバー攻撃の標的となりやすく、情報漏洩やシステム停止といった重大なインシデントを引き起こすリスクが高まります。

④データ活用の障壁

最新のデータ分析ツールやAI技術との連携が難しく、蓄積された貴重なデータを経営戦略や業務改善に活かせない「データのサイロ化」が生じます。これにより、データドリブンな意思決定が阻害され、競争優位性を確立できません。

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⑤技術的負債の蓄積

場当たり的な改修や機能追加を繰り返すことで、システムの構造はますます複雑化し、見えない「技術的負債」が積み重なっていきます。この負債は、将来的なシステム改修や刷新のコストをさらに増大させ、企業のIT戦略全体の柔軟性を奪います。

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⑥人材採用・育成の困難化

若い世代のエンジニアは、古い技術よりも新しい技術を習得・活用したいと考える傾向があります。レガシーシステムを主力とする企業では、優秀なIT人材の採用や育成が難しくなり、将来的なIT部門の空洞化を招く恐れがあります。

レガシーシステムを放置するリスク:「2025年の崖」の警鐘

レガシーシステムが抱える問題点を放置し続けると、企業はどのような未来に直面するのでしょうか。経済産業省は2018年に発表した「DXレポート」の中で、「2025年の崖」という言葉を用いて警鐘を鳴らしました。

これは、多くの企業でレガシーシステムが限界を迎え、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるというシナリオです。具体的には、以下のような深刻な事態が予測されています。

  • システム障害やダウンの頻発: 老朽化による故障や、複雑化したシステムに起因する予期せぬトラブルが多発し、事業継続が困難になる。
  • データ滅失・毀損リスク: バックアップ体制の不備や災害対策の遅れにより、重要な経営データが失われる。
  • 市場での競争力低下: 新しい技術やサービスを取り入れられず、競合他社に大きく後れを取る。
  • DXの頓挫: レガシーシステムが足かせとなり、デジタルトランスフォーメーションが全く進まない。
  • サイバー攻撃による深刻な被害: セキュリティ対策の遅れから重大な情報漏洩や金銭的被害が発生する。

「まだ大丈夫だろう」という油断は禁物です。問題が顕在化してからでは手遅れになる可能性もあり、計画的な対策が急務と言えるでしょう。

レガシーシステムへの対処法とは?:モダナイゼーションのアプローチ

では、企業はレガシーシステムに対して具体的にどのような対処をすれば良いのでしょうか。一般的に「モダナイゼーション(近代化)」と呼ばれるアプローチが取られます。モダナイゼーションには、現状のシステムやビジネスへの影響度、コスト、期間などを考慮して、いくつかの選択肢があります。

  • リホスト(Rehost):
    • 「リフト&シフト」とも呼ばれます。アプリケーションのコードやアーキテクチャにはほとんど手を加えず、既存のシステムをそのまま新しいITインフラ(例: クラウド環境)へ移行する方法です。最も迅速かつ低コストで実施できる可能性がありますが、レガシーシステムの根本的な問題解決には至らない場合が多いです。
  • リプラットフォーム(Replatform):
    • 「リフト&リシェイプ」とも呼ばれます。アプリケーションのコアアーキテクチャは維持しつつ、OSやミドルウェアなどを新しいプラットフォームに合わせて一部修正・最適化して移行する方法です。リホストよりはクラウドのメリットを享受しやすくなります。
  • リファクタリング(Refactor)/リアーキテクト(Rearchitect):
    • アプリケーションの外部仕様は変更せずに、内部構造やコードを大幅に見直し、より効率的で保守性の高い設計に作り変える方法です。クラウドネイティブな機能を活用しやすくなりますが、相応のコストと時間が必要です。
  • リビルド(Rebuild):
    • 既存システムの機能要件は踏襲しつつ、アプリケーションをゼロから再構築する方法です。最新技術を全面的に採用できますが、最も時間とコストがかかるアプローチです。
  • リプレイス(Replace):
    • 既存システムを完全に廃棄し、SaaS(Software as a Service)などの新しいパッケージソリューションやサービスに置き換える方法です。業務プロセスそのものを見直す良い機会にもなります。

どの手法が最適かは、企業の状況やシステムの特性、目指すゴールによって異なります。専門家のアドバイスを受けながら慎重に検討することが重要です。

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Google Cloud がレガシーシステム刷新を支援する理由

レガシーシステムの刷新先として、近年クラウドプラットフォームの活用が主流となっています。中でも Google Cloud は、その柔軟性、拡張性、革新的なサービス群により、企業のレガシーシステム刷新を強力に支援します。

Google Cloud が選ばれる主な理由を以下に挙げます。

①圧倒的なインフラストラクチャとスケーラビリティ

Google が世界中で展開する高性能なデータセンターとグローバルネットワークを利用できます。これにより、ビジネスの成長に合わせてリソースを柔軟に拡張・縮小でき、突発的なアクセス増にも対応可能です。ハードウェアの調達や管理といった煩わしさからも解放されます。

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②多様なコンピューティングオプション

仮想マシン(Compute Engine)、コンテナ管理(Google Kubernetes Engine, Cloud Run)、サーバーレス(Cloud Functions)など、アプリケーションの特性や要件に応じた最適なコンピューティング環境を選択できます。これにより、リホストからリビルドまで、幅広いモダナイゼーション戦略に対応可能です。

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③先進的なデータ分析・AIプラットフォーム

BigQuery に代表される高速なデータウェアハウスや、Vertex AI などの機械学習プラットフォームを活用することで、レガシーシステムに眠っていたデータを価値ある洞察へと転換できます。これにより、データドリブンな経営や新しいビジネス価値の創出を加速します。

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④高度なセキュリティ

Google の長年にわたるセキュリティ運用の知見と最先端技術に基づいた、多層的なセキュリティ対策が施されています。データ暗号化、アクセス制御、脅威検出など、エンタープライズレベルのセキュリティを確保し、企業の貴重な情報資産を保護します。

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⑤コスト最適化

従量課金制を基本とし、利用した分だけ料金を支払うモデルのため、初期投資を抑えられます。また、継続的な値下げや確約利用割引など、コストを最適化するための多様なオプションが用意されており、TCO(総所有コスト)削減に貢献します。

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⑥オープンソース技術との親和性

Kubernetes や TensorFlow など、Google が開発を主導するオープンソース技術が多く活用されており、技術的なロックインを避けやすいというメリットがあります。これにより、特定のベンダーに依存しない柔軟なシステム構築が可能です。

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これらの特長を活かすことで、企業はレガシーシステムの課題を解決し、より俊敏で革新的なIT基盤を構築できます。

Google Cloud を活用したレガシーシステム刷新の進め方(ステップ概要)

Google Cloud を活用してレガシーシステムを刷新する際の、一般的なステップの概要をご紹介します。

  1. 現状評価と課題の明確化(Assessment):
    1. 既存システムの構成、技術スタック、ビジネス上の役割、課題点などを詳細に調査・分析します。
    2. 移行対象の優先順位付けや、モダナイゼーションの目標を設定します。
  2. 移行戦略の策定(Planning):
    1. 前述のモダナイゼーションアプローチ(リホスト、リプラットフォーム等)の中から、対象システムや目標に最適な手法を選択します。
    2. Google Cloud のどのサービスを利用するか、アーキテクチャ設計、移行計画、体制、予算などを具体化します。
  3. PoC(概念実証)の実施(Proof of Concept):
    1. 小規模な範囲で、実際に Google Cloud 環境への移行やシステム構築を試行し、技術的な実現可能性や効果を検証します。
    2. リスクを早期に発見し、計画の精度を高めることができます。
  4. 移行・開発の実行(Migration/Development):
    1. 策定した計画に基づき、データの移行、アプリケーションの改修や再構築、インフラ構築などを進めます。
    2. アジャイルな開発手法を取り入れ、段階的に移行を進めることも有効です。
  5. テストと検証(Testing):
    1. 移行・開発したシステムが要件通りに動作するか、性能やセキュリティに問題がないかなどを徹底的にテストします。
  6. 本番稼働と運用・最適化(Go-live and Optimization):
    1. 新システムを本番環境で稼働させます。
    2. 稼働後は、モニタリングやパフォーマンスチューニング、コスト最適化などを継続的に行い、システムの価値を最大化します。

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これらのステップは一直線に進むとは限らず、状況に応じて反復したり、見直しを行ったりすることが重要です。多くの企業様をご支援してきた経験から、専門的な知見を持つパートナーとの連携が、プロジェクト成功の鍵となると言えます。

XIMIXによる支援サービス

ここまでレガシーシステムの問題点、放置するリスク、そして Google Cloud を活用した解決策について解説してきました。しかし、実際にレガシーシステム刷新プロジェクトを推進するには、専門的な知識や経験、そして十分なリソースが必要です。

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まとめ

本記事では、レガシーシステムの定義から、それが引き起こす問題点、放置するリスク、そして Google Cloud を活用した具体的な解決アプローチまでを解説しました。

レガシーシステムは、DX推進を阻害し、企業の競争力を低下させる大きな要因です。しかし、適切に対処し、クラウドのような最新技術を活用することで、これらの課題を克服し、むしろビジネス成長の新たな機会へと転換することが可能です。

特に Google Cloud は、その高い柔軟性、スケーラビリティ、豊富なサービス群により、レガシーシステム刷新の強力なプラットフォームとなります。

この記事が、皆様の会社におけるレガシーシステムの見直しと、DX推進に向けた次の一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。まずは自社の現状を把握し、小さなところからでも改善に着手してみてはいかがでしょうか。

XIMIXでは、本記事で触れたようなレガシーシステムに関する課題をお持ちの企業様向けに、より詳しい情報提供や具体的なご提案を行っております。お気軽にお問い合わせください。


レガシーシステムとは?DX推進を阻む課題とGoogle Cloudによる解決策をわかりやすく解説

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