はじめに
「データは新しい石油である」と言われる現代において、企業が競争優位性を確立し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためには、データに基づいた意思決定が不可欠です。しかし、「社内に散在する膨大なデータをどう活用すれば良いのか」「データ分析基盤を導入したいが、何から始めれば良いかわからない」といった課題を抱える企業は少なくありません。
特に、データ分析基盤の中核となるサービス選定は、将来のデータ活用戦略を大きく左右する重要なポイントです。数ある選択肢の中でも、近年、多くの企業から熱い視線を集めているのが、Google Cloud が提供するフルマネージド・データウェアハウス「BigQuery」です。
本記事では、データ分析基盤の導入を検討されている企業の決裁者様やDX推進担当者様に向けて、なぜBigQueryがデータ分析基盤として選ばれるのか、その主な理由とメリットを、分かりやすく解説します。この記事を読むことで、BigQueryの基本的な特徴と、なぜ多くの企業に支持されるのかをご理解いただけ、貴社のデータ活用戦略の一助となれば幸いです。
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そもそもデータ分析基盤とは? なぜ今重要なのか?
まず、「データ分析基盤」とは何か、そしてなぜ現代のビジネスにおいてその重要性が増しているのかを簡単に整理しておきましょう。
データ分析基盤の役割
データ分析基盤とは、企業が保有するさまざまなデータを収集・蓄積・処理・分析し、ビジネス上の意思決定に役立つ知見を引き出すための一連のシステムや仕組みのことを指します。具体的には、以下のような機能を提供します。
- データ収集: 社内外の多様なソース(業務システム、Webサイト、IoTデバイスなど)からデータを集めます。
- データ蓄積: 収集したデータを安全かつ効率的に保存します。
- データ処理: 分析しやすいように、データをクレンジングしたり、必要な形式に変換・加工したりします。
- データ分析・可視化: 蓄積・処理されたデータを用いて、統計分析、機械学習、レポーティング、ダッシュボードによる可視化などを行います。
これらの機能を通じて、企業は勘や経験に頼るのではなく、客観的なデータに基づいた戦略立案や業務改善を行うことが可能になります。
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データ分析基盤の重要性の高まり
近年、データ分析基盤の重要性が急速に高まっている背景には、以下のような要因があります。
- データ量の爆発的な増加: デジタル化の進展により、企業が取り扱うデータの量は飛躍的に増大しています。これらの「ビッグデータ」を有効活用することが、新たなビジネスチャンスの創出につながります。
- DX推進の加速: 多くの企業がDXを経営戦略の柱と位置づけ、データ活用をその中核に据えています。データ分析基盤は、DXを実現するためのエンジンとも言える存在です。
- 市場競争の激化: 変化の激しい市場環境において、迅速かつ的確な意思決定を行うためには、リアルタイムに近いデータ分析が求められます。
- 顧客ニーズの多様化: 顧客一人ひとりのニーズに合わせたパーソナライズされたサービス提供が重要となる中、そのための顧客データ分析は不可欠です。
このような状況下で、高性能かつ柔軟なデータ分析基盤を持つことは、企業にとって競争力の源泉となりつつあるのです。
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Google Cloud と BigQuery の概要
それでは、本題である Google Cloud と BigQuery について見ていきましょう。
Google Cloud とは
Google Cloud は、Google が提供するクラウドコンピューティングサービスの総称です。Google の強力なインフラストラクチャと最先端技術を基盤としており、コンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワーキング、機械学習、データ分析など、幅広いサービスを提供しています。
拡張性、信頼性、セキュリティの高さに加え、革新的なサービスを迅速に市場投入するスピード感も特徴であり、世界中の多くの企業や組織で利用されています。DX推進を目指す企業にとって、Google Cloud は強力な選択肢の一つと言えるでしょう。
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BigQuery とは
BigQuery は、Google Cloud の中で提供されている、サーバーレスでスケーラビリティに優れた、費用対効果の高いマルチクラウド データウェアハウスです。
従来のデータウェアハウスとは異なり、インフラストラクチャの管理やチューニングといった運用負荷を大幅に削減しつつ、ペタバイト(PB)級の膨大なデータに対しても、数秒から数分という驚異的な速さで分析クエリを実行できる能力を持っています。
「サーバーレス」とは、ユーザーがサーバーの存在を意識することなくサービスを利用できるアーキテクチャのことです。これにより、インフラのプロビジョニングやメンテナンスといった作業から解放され、データ分析そのものに集中できます。
BigQuery がデータ分析基盤として選ばれる主な理由
ここからは、なぜ多くの企業がデータ分析基盤としてBigQueryを選択するのか、その具体的な理由やメリットを掘り下げて解説します。
①圧倒的な処理性能とスケーラビリティ
BigQueryの最大の魅力の一つは、その卓越した処理性能です。Googleの巨大なインフラと分散処理技術を活用することで、テラバイト(TB)やペタバイト(PB)といった膨大なデータセットに対する複雑な分析クエリも、驚くほど高速に処理します。
- カラム型ストレージ: BigQueryはデータを列指向で保存する「カラム型ストレージ」を採用しています。これにより、分析クエリで実際に使用する列のデータのみを読み込むため、I/O処理が効率化され、クエリの実行速度が向上します。
- 大規模並列処理 (MPP): クエリを実行する際には、数千台規模のサーバーリソースを動的に割り当て、並列処理を行います。これにより、データ量が増加してもパフォーマンスが低下しにくい、高いスケーラビリティを実現しています。
ビジネスの成長に伴いデータ量が急増したとしても、BigQueryであれば性能劣化を心配することなく、常に高速な分析環境を維持できます。
②サーバーレスアーキテクチャによる運用負荷の低減
前述の通り、BigQueryはサーバーレスアーキテクチャを採用しています。これにより、従来型のデータウェアハウス運用に不可欠だった以下のような作業が不要になります。
- サーバーのプロビジョニングやサイジング
- OSやミドルウェアのパッチ適用、アップデート
- データベースのチューニングやインデックス管理
- バックアップや障害復旧対応
これらの運用管理業務から解放されることで、データエンジニアやアナリストは、より価値の高いデータ分析業務や新たなインサイトの発見に注力できるようになります。これは、特にITリソースが限られている企業にとって大きなメリットと言えるでしょう。
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③費用対効果の高さと柔軟な料金体系
BigQueryは、その高い性能にもかかわらず、非常にコスト効率の良い料金体系を提供しています。
- ストレージとコンピューティングの分離: データストレージ料金とクエリ実行(コンピューティング)料金が分離されており、それぞれ実際に使用した分だけ課金されます。データを大量に蓄積していても、クエリを実行しなければコンピューティング費用は発生しません。
- オンデマンド料金と定額料金: クエリ料金には、処理したデータ量に応じて課金される「オンデマンド料金」と、あらかじめ処理能力(スロット)を予約する「定額料金」があり、利用状況に応じて最適なプランを選択できます。
- 長期保存データの低コスト化: 90日間アクセスがないデータは、自動的に長期保存ストレージ料金(より安価)が適用されるなど、コスト最適化の仕組みも備わっています。
初期投資を抑えつつスモールスタートし、ビジネスの成長に合わせて柔軟にスケールアップできるため、無駄なコストを発生させにくいのが特徴です。
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④Google Cloud の他サービスとのシームレスな連携
BigQueryは、Google Cloudが提供する他の強力なサービス群と緊密に連携できます。これにより、データ収集から分析、可視化、さらには機械学習モデルの活用まで、エンドツーエンドのデータ分析パイプラインを効率的に構築できます。
- Google Cloud Storage: 安価でスケーラブルなオブジェクトストレージであり、さまざまな形式のデータをBigQueryにロードする際のデータレイクとして活用できます。
- Dataflow / Dataproc: 大規模なデータ処理やETL(抽出・変換・ロード)処理を効率的に行うためのサービスです。
- Looker Studio (旧 Googleデータポータル): BigQueryのデータを簡単に可視化し、インタラクティブなダッシュボードやレポートを作成できる無料のBIツールです。
- Vertex AI: 機械学習モデルの開発からデプロイまでを統合的にサポートするプラットフォームです。BigQuery MLと連携することで、高度な予測分析も実現可能です。
これらのサービスを組み合わせることで、より高度で包括的なデータ活用が実現します。
⑤BigQuery MLによるSQLでの機械学習実現
通常、機械学習モデルを構築・利用するには、Pythonなどのプログラミング言語や専門的な知識が必要となります。しかし、BigQuery MLを利用すれば、使い慣れたSQLの知識だけで、BigQuery内に保存されたデータを使って機械学習モデルを作成し、予測分析を行うことができます。
- 対応モデル: 線形回帰、ロジスティック回帰、k-meansクラスタリング、時系列予測(ARIMA)など、ビジネスでよく利用される多くのモデルに対応しています。
- データ移動不要: BigQueryからデータをエクスポートすることなく、直接BigQuery内でモデルの学習と予測を実行できるため、時間と手間を大幅に削減できます。
これにより、データアナリストやSQLに慣れたエンジニアでも、気軽に機械学習の恩恵を受けられるようになり、データ活用の幅が大きく広がります。
⑥エンタープライズレベルのセキュリティとコンプライアンス
企業がデータを扱う上で、セキュリティとコンプライアンスは最も重要な考慮事項の一つです。BigQueryは、Google Cloudの堅牢なセキュリティ基盤の上に構築されており、エンタープライズレベルのセキュリティ機能を提供します。
- データ暗号化: 保存データと転送中のデータはデフォルトで暗号化されます。
- 詳細なアクセス制御: IAM(Identity and Access Management)との連携により、ユーザーやグループごとにきめ細かなアクセス権限を設定できます。列レベルのセキュリティや行レベルのセキュリティもサポートしています。
- 監査ログ: データアクセスやシステム操作に関するログが詳細に記録され、追跡や監査に利用できます。
- 各種コンプライアンス認証: ISO 27001、SOC 2/3、PCI DSS、HIPAAなど、多くの国際的なセキュリティおよびプライバシー基準に準拠しています。
これらの機能により、企業は機密データを安全に管理・分析し、規制要件を遵守することができます。
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BigQuery導入を検討する際のポイント (入門レベル向け)
BigQueryの魅力をご理解いただけたところで、実際に導入を検討する際に、特に意識しておきたい入門者向けのポイントをいくつかご紹介します。
①まずは目的を明確にする
どのようなデータを分析し、それによって何を達成したいのか、具体的な目的を明確にすることが最初のステップです。「とりあえずデータを集めてみよう」ではなく、「〇〇の課題を解決するために、△△のデータを分析して□□のインサイトを得たい」といった具体的な目標設定が重要です。
②スモールスタートを心がける
BigQueryはスケーラビリティに優れているため、最初から大規模なシステムを構築する必要はありません。まずは特定の部門や課題に絞って小規模に導入し、効果を検証しながら徐々に適用範囲を拡大していくアプローチが有効です。Google Cloudには無料利用枠も用意されているため、実際に触ってみて使用感を確かめるのも良いでしょう。
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③データソースと連携方法の確認
社内のどこにどのようなデータが存在し、それらをどのようにBigQueryに集約するかを検討します。既存のデータベース、業務システム、クラウドサービスなど、連携するデータソースの種類や形式、更新頻度などを事前に把握しておくことが大切です。
④必要なスキルセットの確認と育成
BigQueryの操作自体はSQLが中心となりますが、データ分析基盤を効果的に活用するためには、データエンジニアリング、データ分析、ビジネス理解といったスキルが必要になります。社内の人材育成や、場合によっては外部の専門家の支援も視野に入れると良いでしょう。
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ここまでBigQueryが選ばれる理由や導入のポイントについて解説してきましたが、実際に自社でデータ分析基盤を構築・運用していく中では、 「自社のビジネスに最適なアーキテクチャ設計はどうすれば良いのか?」 「既存システムからのデータ移行をスムーズに行いたい」 「BigQueryを導入したものの、どのように分析を進めれば成果につながるのか」 「運用コストを最適化しつつ、継続的にパフォーマンスを維持したい」 といった、さらなる課題や専門的なノウハウが必要となる場面に直面することも少なくありません。
私たちXIMIXは、Google CloudおよびGoogle Workspaceの導入・活用支援に特化したサービスを提供しており、これまで多くの企業様のDX推進をご支援してまいりました。その豊富な経験と専門知識を活かし、BigQueryをはじめとするGoogle Cloudのサービスを活用したデータ分析基盤の構想策定から、PoC(概念実証)、設計・構築、データ移行、運用保守、さらにはデータ分析の内製化支援まで、お客様のフェーズやニーズに合わせた伴走型のSIサービスを提供しています。
XIMIXの強みは、単にツールを導入するだけでなく、お客様のビジネス課題の解決とデータドリブンな意思決定文化の醸成をゴールとして、ロードマップ策定から技術支援、活用促進までをトータルでサポートできる点にあります。もし、BigQueryの導入やデータ分析基盤の最適化にご関心をお持ちでしたら、ぜひ一度XIMIXにご相談ください。お客様の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。
XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。
まとめ
本記事では、なぜデータ分析基盤としてGoogle CloudのBigQueryが多くの企業に選ばれるのか、その主な理由とメリットについて、入門者向けに解説しました。
BigQueryが選ばれる理由は、
- 圧倒的な処理性能とスケーラビリティ
- サーバーレスアーキテクチャによる運用負荷の低減
- 費用対効果の高さと柔軟な料金体系
- Google Cloudの他サービスとのシームレスな連携
- BigQuery MLによるSQLでの機械学習実現
- エンタープライズレベルのセキュリティとコンプライアンス
データ活用が企業競争力の源泉となる現代において、BigQueryはDX推進を目指す企業にとって非常に強力なツールとなり得ます。まずは自社の課題と目的を明確にし、スモールスタートでBigQueryの導入を検討してみてはいかがでしょうか。そして、その過程で専門家の支援が必要だと感じられた際には、ぜひXIMIXにご相談いただければ幸いです。
この記事が、皆様のデータ分析基盤選びの一助となれば幸いです。
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