Google Workspaceの管理・運用を楽にする!負荷軽減のための基本と実践のヒント

 2025,04,28 2025.06.23

はじめに

Google Workspaceは、企業のDXを推進し、生産性を飛躍させる強力なツールです。しかし、その多機能性と柔軟性の裏側で、情報システム部門の管理者が日々の運用業務に追われ、本来注力すべき戦略的なIT企画に時間を割けない、というジレンマに陥るケースは少なくありません。

「絶え間ないアカウント管理と問い合わせ対応」「高度化するセキュリティ要件への追従」「導入した機能が思うように活用されない」…こうした課題は、特に管理体制が確立しきれていない導入初期や、組織改編のタイミングで顕在化しがちです。

本記事では、中堅〜大企業の情報システム部門やDX推進担当者の皆様に向けて、Google Workspaceの管理・運用における負荷を軽減し、属人化を防ぐための基本的な考え方から、すぐに実践できる具体的なヒントまでを、SIerとしての知見を交えながら解説します。

※Google Workspaceの基本的な機能やメリットについては、以下の記事もあわせてご参照ください。

なぜ? Google Workspaceの運用負荷が増え続ける4つの原因

負荷軽減策を講じる前に、なぜ管理者への負担が集中してしまうのか、その構造的な原因を理解することが重要です。

①継続的なアカウント管理の必要性

従業員の入退社や頻繁な組織変更は、企業が成長している証でもありますが、管理者にとっては継続的な業務負荷の源泉です。特に数百〜数千名規模の組織では、手作業でのアカウント発行・権限変更・削除は膨大な工数となり、ヒューマンエラーのリスクも高まります。

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②高度化・複雑化するセキュリティ要件

サイバー攻撃の手法は年々巧妙化しており、企業に求められるセキュリティ水準も高まり続けています。多くの調査機関が指摘するように、情報漏洩や不正アクセスへの対策はIT管理者の最重要ミッションですが、それには専門的な知識が不可欠です。二段階認証プロセスの徹底、アクセス権限の厳格な管理、不審なアクティビティの監視など、維持・運用するだけでも大きな負担となります。

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③アプリケーションごとの設定と利用定着の壁

GmailドライブMeetなど、Google Workspaceの各アプリケーションは非常に多機能ですが、それぞれに独自の管理設定が存在します。管理者はこれらの仕様を理解し、自社のポリシーに合わせて最適化しなくてはなりません。また、せっかく導入したツールが従業員に浸透せず、「宝の持ち腐れ」になることを防ぐための利用促進活動も求められます。

④後を絶たないユーザーからの問い合わせ対応

「ファイルにアクセスできない」「メールの設定がわからない」といったユーザーからの日常的な問い合わせやトラブルシューティングは、管理者の時間を大きく占有します。一つ一つは小さな問題でも、積み重なればコア業務を圧迫する要因となります。

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属人化を防ぎ、管理を効率化する3つのアプローチ

場当たり的な対応から脱却し、運用負荷を軽減するためには、体系的なアプローチが不可欠です。以下の3つの考え方を軸に、管理体制を見直してみましょう。

アプローチ1:ルールの標準化 - 「判断」業務をなくす

運用における「判断」の余地をなくし、誰が担当しても同じ品質で作業できる状態を目指します。アカウントの命名規則、パスワードポリシー、部署ごとの共有設定の権限、データの保持期間といった運用ポリシーを明文化し、標準化することが第一歩です。これにより、対応の一貫性が保たれ、管理者の心理的負担も軽減されます。

アプローチ2:適切な権限委任 - 業務の分散と専門化

すべての管理業務を情報システム部門だけで抱え込む必要はありません。Google Workspaceの管理コンソールには、特定の管理権限だけを持つ「カスタムロール」を作成する機能があります。例えば、「グループの管理権限」を各部署の担当者に、「Meetの管理設定権限」を総務部門に委任するなど、業務を分散させることで効率化を図れます。

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アプローチ3:ナレッジの共有 - 「問い合わせ」を減らす仕組み作り

ユーザー自身で問題を解決できる環境を整えることで、管理者への問い合わせ件数を削減できます。よくある質問とその回答をまとめた社内ポータルサイト(Googleサイトで作成可能)を用意したり、新機能に関する簡単なマニュアルを共有したりするだけでも効果的です。こうした取り組みは、従業員のITリテラシー向上にも繋がり、組織全体の生産性を高めます。

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【実践編】明日から試せる!Google Workspace負荷軽減の具体策

基本的なアプローチを理解した上で、具体的な負荷軽減に繋がる設定やツールの活用法を見ていきましょう。

①アカウント管理を自動化・省力化する

  • グループの活用: 部門やプロジェクト単位でGoogleグループを作成し、メーリングリストやアクセス権限をグループ単位で管理します。ユーザー個人ではなく「グループ」に対して設定を行うことで、異動や担当変更時の作業を最小限に抑えられます。
  • 組織部門の活用: 企業の組織構造に合わせて「組織部門」を設計し、ポリシーやアプリ設定を部門単位で一括適用します。これにより、階層的で抜け漏れのないガバナンスを実現できます。
  • (応用)動的グループの活用: 一部のエディションで利用可能な「動的グループ」機能を使えば、「部署が営業本部」「役職が部長」といった特定の属性を持つユーザーを自動でグループに追加・削除できます。これにより、手動でのメンバー管理が不要になり、大幅な自動化が可能です。
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②最低限実施すべきセキュリティ設定の要点

  • 二段階認証プロセスの強制: 全ユーザーに二段階認証を義務付け、不正ログインのリスクを根本から低減します。これはセキュリティ設定の基本中の基本です。
  • パスワードポリシーの強化: 最低文字数や複雑さ(英数字・記号の組み合わせ)の要件を定め、推測されにくいパスワードの使用を徹底させます。
  • 共有設定のデフォルト化: Googleドライブのファイル共有設定を、デフォルトで「組織内のユーザーに限定」するなどの制限を加えることで、意図しない情報漏洩リスクを低減します。
  • アラートセンターの定期的確認: 管理コンソールの「アラートセンター」は、不審なログインやポリシー違反の可能性など、セキュリティ上の重要な警告を通知します。週に一度は確認する習慣をつけましょう。
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③定型業務を自動化するツール活用

  • Google Apps Script (GAS): GASを使えば、アカウントの棚卸しリストを定期的に自動生成してスプレッドシートに出力したり、特定のルールでメールを自動整理したりするなど、定型業務の自動化が可能です。
  • AppSheet: プログラミング知識がなくても、簡単な業務アプリを開発できるノーコードツールです。例えば、備品管理や稟議申請といったプロセスをアプリ化し、業務を効率化できます。
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さらなる高みへ - 中堅〜大企業のためのパートナー

ここまで紹介した基本策を実践するだけでも、管理者の負担は大きく軽減されるはずです。しかし、中堅〜大企業では、さらに高度で複雑な課題に直面します。

「基本設定」だけでは対応できない高度な課題

  • 数千人規模の組織階層やグループを、統制を効かせながらどう管理するか?
  • 業界特有の厳しいコンプライアンスや、内部統制の要件をどう満たすか?
  • 人事DBなどの既存システムと連携させ、アカウント管理を完全に自動化したい。
  • 全社的なセキュリティレベルをもう一段階引き上げ、監査にも対応できる体制を構築したい。

これらの課題は、付け焼き刃の対策では解決が難しく、専門的な知見に基づいた運用設計が不可欠です。

運用設計から伴走支援まで - XIMIXができること

私たちXIMIXは、NI+Cが長年培ってきたSIerとしての実績と知見を基盤に、お客様の状況に合わせた最適なGoogle Workspace支援サービスを提供しています。

単なるツールの導入支援に留まらず、お客様のビジネス要件や組織課題を深く理解した上での運用設計、ポリシー策定、セキュリティ強化、そして日々の管理業務を代行・伴走支援するサービスまで、一気通貫でサポートします。特に、複雑な要件が絡む中堅〜大企業の運用効率化とガバナンス強化を得意としています。

もし、Google Workspaceの管理・運用に関するお悩みや、さらなる効率化、DX推進に関するご相談がございましたら、ぜひお気軽にXIMIXまでお問い合わせください。専門のスタッフが、お客様の課題解決に向けて最適なソリューションをご提案いたします。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

まとめ

Google Workspaceの運用負荷は、多くの管理者が抱える共通の悩みです。しかし、その原因を正しく理解し、「ルールの標準化」「権限の委任」「ナレッジの共有」といった体系的なアプローチを取り入れることで、負荷は着実に軽減できます。

まずは本記事で紹介した、グループや組織部門の活用、基本的なセキュリティ設定の見直しなど、取り組みやすいところから始めてみてください。小さな改善の積み重ねが、日々の運用を楽にし、管理者がより戦略的な業務に集中するための貴重な時間を生み出します。

そして、自社だけでの対応に限界を感じたり、より高度でセキュアな運用体制を目指したりする際には、私たちのような専門家の支援を頼ることも有効な選択肢です。最適な管理・運用体制を構築し、Google Workspaceの価値を最大限に引き出しましょう。


Google Workspaceの管理・運用を楽にする!負荷軽減のための基本と実践のヒント

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