「多忙すぎる情シス」からの脱却 - Google Cloud と Google Workspace をフル活用した組織的アプローチ

 2025,04,30 2025.07.04

はじめに

「情シスは常に火消しに追われている」「新しい提案をする余裕がない」「優秀な人材ほど疲弊していく」… これは、多くの中堅・大企業で聞かれる情報システム部門(以下、情シス)の実態ではないでしょうか。この「多忙すぎる」状況は、もはや現場の努力だけで解決できる限界を超え、企業の成長を阻害する経営課題そのものです。

しかし、諦める必要はありません。この閉塞感を打ち破り、「多忙すぎる情シス」から脱却するための道筋は存在します。それは、対症療法ではない根本的な「組織的アプローチ」と、その実現を強力に後押しする「Google CloudとGoogle Workspaceのフル活用」です。

本記事では、なぜ情シスがこれほどまでに多忙なのか、その構造的な要因を深く分析し、放置することのリスクを明らかにします。そして、最も重要な点として、この状況から脱却するための具体的な「組織的アプローチ」と、それを支えるGoogle CloudとGoogle Workspaceの戦略的な「フル活用」法について、導入事例を交えながら詳述します。DX推進のエンジンとなるべき情シスが、そのポテンシャルを最大限に発揮できる体制を築くための、実践的なヒントを提供します。

なぜ情シスはこれほどまでに多忙なのか?構造的な5つの要因

情シスの業務は多岐にわたりますが、その「多忙すぎる」状況の背景には、いくつかの根深く、共通した要因が存在します。

①レガシーシステムの運用・保守負担

長年の運用で複雑化した基幹システム、部門最適で導入され連携の取れない無数のサブシステム群。これらの「レガシーシステム」の維持管理は、情シスのリソースを際限なく吸い込みます。技術的負債は雪だるま式に膨らみ、障害対応、セキュリティパッチ適用、インフラ老朽化対策に忙殺される日々です。ドキュメント不足や担当者の退職によるブラックボックス化は、この問題をさらに深刻化させています。

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②日々高度化・巧妙化するセキュリティ脅威への対応

ランサムウェア、標的型攻撃、サプライチェーン攻撃、内部不正…。サイバー攻撃は、もはや対岸の火事ではありません。これらの脅威から企業を守るため、情シスは脆弱性情報の収集・分析、対策の計画・実行、インシデント発生時の緊急対応、そしてゼロトラストのような新たなセキュリティモデルへの移行検討など、常に最前線での警戒と対応を迫られています。これは、高度な専門知識と絶え間ない努力を要する、精神的にも負担の大きい業務です。

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③DX推進に伴う期待値の高まりとリソースのギャップ

経営層からの「DX推進」の号令一下、情シスには矢継ぎ早に新規プロジェクトの要請が舞い込みます。AI活用、データ分析基盤構築、クラウドネイティブなアプリケーション開発、SaaS導入支援…。しかし、日々の運用保守に追われる中で、これらの戦略的な「攻めのIT」に十分なリソースを割けず、「期待に応えられない」というジレンマに陥りがちです。

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④広範囲なヘルプデスク業務とサポート対応

「PCが起動しない」「パスワードを忘れた」「プリンタに繋がらない」…。従業員からの問い合わせに対応するヘルプデスク業務は、定型的でありながら多くの時間を奪います。リモートワークの普及により、サポートすべき環境が多様化し、問題解決はより一層複雑になっています。

⑤慢性的なIT人材の不足と業務の属人化

経済産業省の調査でも指摘されている通り、IT人材の不足は深刻な社会問題です。限られた人員で広範な業務をカバーするため、特定の担当者に知識やスキルが集中する「属人化」は避けられません。その担当者が不在となれば業務が滞るリスクを常に抱え、組織全体のスキルアップも阻害されるという悪循環に陥っています。

「多忙すぎる情シス」がもたらす、看過できない経営リスク

この状況を放置することは、単に情シス担当者の疲弊に留まらず、企業経営全体に深刻な悪影響を及ぼします。

  • DXの遅延・失敗: 本来DXを牽引すべき情シスが機能不全に陥ることで、市場の変化に対応できず、企業の競争力を失います。

  • セキュリティインシデントによる事業停止・信用の失墜: 対策が後手に回り、重大なインシデントが発生すれば、金銭的損失だけでなく、顧客や社会からの信用も失いかねません。

  • イノベーションの機会損失: 新技術の導入や業務改善提案ができず、企業の成長エンジンが停止します。

  • 全社的な生産性の低下: 情シスからのサポート遅延や使いにくいシステムが、他部門の従業員の業務効率を低下させます。

  • 優秀なIT人材の流出: 魅力のない労働環境により人材が定着せず、採用コストが増大し、組織の技術力が低下します。

もはや、「多忙すぎる情シス」は看過できない経営リスクなのです。

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脱却への道筋:経営課題として取り組む「組織的アプローチ」

この負のスパイラルから脱却するには、情シス部門だけの努力では不十分です。経営層のリーダーシップのもと、組織全体が一丸となった「組織的アプローチ」が不可欠となります。

①【重要】経営層の理解とコミットメント

全ての変革はここから始まります。経営層が「情シスの課題は経営課題である」と明確に認識し、IT投資の重要性を理解し、変革への強い意志を示すこと。予算、権限、そして継続的な関与を約束することが、成功の絶対条件です。

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②情シスの役割・責任範囲の再定義

「何でも屋」状態から脱却し、情シスが本当に注力すべきコア業務(IT戦略立案、アーキテクチャ設計、セキュリティガバナンス等)を明確に定義します。ノンコア業務は、後述するアウトソーシングや自動化の対象として切り分け、リソース配分を最適化します。

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③アウトソーシングとパートナーシップの戦略的活用

定型的な運用保守、24時間365日の監視、専門性の高いセキュリティ運用、ヘルプデスクの一部などは、信頼できる外部パートナーに委託することを積極的に検討します。これは単なるコスト削減ではなく、情シスがより戦略的な業務に集中するための投資です。XIMIXのような専門家集団とのパートナーシップは、最新技術の導入や高度な課題解決においても有効です。

④クラウドサービスの「フル活用」

オンプレミス中心のインフラから脱却し、クラウドサービスを戦略的に「フル活用」することは、現代の組織的アプローチにおいて不可欠です。Google Cloudのようなスケーラブルなプラットフォームはインフラ管理負荷を劇的に削減し、Google Workspaceは組織全体のコミュニケーションとコラボレーションを効率化します。

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【実践編】Google Cloud / Workspace の「フル活用」が脱却を加速する

「組織的アプローチ」を具体的に推進し、「多忙すぎる情シス」からの脱却を加速させる上で、Google CloudとGoogle Workspaceの「フル活用」は極めて有効な手段となります。

Google Cloudによるインフラ運用負荷軽減と戦略的IT基盤の構築

Google Cloudは、単なるインフラ提供に留まらず、情シスが戦略的な役割を果たすための強力な武器となります。

  • インフラ運用からの解放: GKE (Google Kubernetes Engine) や Cloud SQL といったマネージドサービスを「フル活用」することで、OSパッチ適用、ハードウェア障害対応といった運用業務から解放されます。IaC (Infrastructure as Code) ツールと連携し、インフラ構成を自動化することで、迅速かつ安全な環境構築が可能になります。

  • 多層防御とゼロトラストの実現: BeyondCorp Enterpriseのようなゼロトラストソリューションや、各種セキュリティサービス(Cloud Armor, Security Command Center等)を組み合わせることで、従来の境界型防御の限界を超えた、より堅牢なセキュリティ体制を効率的に構築・運用できます。

  • データドリブンな意思決定基盤の構築: BigQueryを中心としたデータプラットフォームを構築し、社内に散在するデータを統合・分析可能にすることで、情シス自身もデータに基づいたIT投資判断や運用改善を行えるようになります。

  • AI/機械学習による業務の高度化・自動化: Vertex AI等を活用し、インシデントチケットの自動分類、ログ分析による障害予兆検知、FAQに基づいたチャットボット応答生成など、情シス自身の業務をAIで高度化・自動化できます。

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Google Workspaceによる全社の生産性向上とガバナンス強化

Google Workspaceは、単なるグループウェアではありません。「フル活用」することで、組織全体の生産性とセキュリティレベルを飛躍的に向上させることができます。

  • 管理コンソールによるガバナンス強化: 詳細なアクセス権限設定、デバイス管理、データ損失防止(DLP)ルール、監査ログの活用などを一元的に行い、運用負荷を低減しつつ強力なセキュリティガバナンスを実現します。

  • コラボレーションの最大化: Gmail, チャット, Meet, カレンダー, ドライブをシームレスに連携させ、「フル活用」することで、情報共有のスピードと効率を最大化します。無駄な会議やメールの往復を削減できます。

  • セキュアなファイル管理の実現: 共有ドライブを活用して部門やプロジェクト単位での情報共有・管理ルールを標準化します。適切な権限設定と運用ルールを徹底することで、属人化を防ぎ、セキュアで効率的なファイル管理を実現します。

  • 市民開発による現場主導のDX推進: AppSheetを使えば、プログラミング知識がなくても現場部門が業務アプリを作成できます。これにより情シスへの開発依頼が減少し、情シスはより重要度の高い業務に集中できます。

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【導入事例】どのように課題を解決したか

製造業A社のケース:

長年利用してきたオンプレミスのファイルサーバーが老朽化し、運用負荷とセキュリティリスクが課題でした。Google ドライブへ移行し、共有ドライブによるアクセス権限の厳格化と、Google WorkspaceのDLP機能を導入。結果、運用工数を削減し、セキュアなファイル共有環境を実現。情シスは本来の役割である生産管理システムの刷新プロジェクトに注力できるようになりました。

小売業B社のケース:

店舗と本部間の情報共有が電話やFAX中心で非効率でした。Google Workspaceを全社導入し、Google Chatでの迅速なコミュニケーション、Google Meetでの遠隔会議、Google サイトでのポータルサイト構築を支援。さらにAppSheetを用いた在庫報告アプリを現場主導で開発。報告業務にかかる時間を短縮し、情シスはECサイトのデータ分析基盤構築という「攻めのIT」に着手できました。

XIMIXが支援する「組織的アプローチ」と「フル活用」の実現

ここまで述べてきた「組織的アプローチ」の推進と、Google Cloud / Workspace の「フル活用」。これらを自社だけで実現するのは容易ではありません。

私たちXIMIXは単にツールを導入するだけでなく、お客様が「多忙すぎる情シス」から脱却し、真に戦略的なIT部門へと変革するための「組織的アプローチ」そのものを、豊富な経験と技術力でご支援します。

  • 現状アセスメントとロードマップ策定: お客様のビジネス課題、情シスの業務内容、システム環境を徹底的に分析し、具体的なロードマップを策定します。

  • 導入・移行の伴走支援: Google Cloud/Workspaceの導入はもちろん、既存システムからの移行、セキュリティポリシーの設計、チェンジマネジメントまで、お客様に寄り添いながらプロジェクトを推進します。

  • 「フル活用」のための運用最適化・高度化支援: コスト最適化、セキュリティ運用強化、自動化推進など、導入後の「フル活用」フェーズにおいても、継続的な改善をご支援します。

「多忙すぎる情シス」からの脱却に向けた「組織的アプローチ」と、Google Cloud/Workspaceの「フル活用」に関心をお持ちでしたら、ぜひ一度XIMIXにご相談ください。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

よくある質問 (FAQ)

 

Q1. クラウド移行にはどれくらいの費用がかかりますか?

A1. 費用は、移行するシステムの規模、データ量、利用するサービスによって大きく異なります。しかし、オンプレミスでかかっていたハードウェア購入費、保守費用、データセンター費用、運用人件費などを考慮すると、長期的にはコスト削減に繋がるケースがほとんどです。XIMIXでは、お客様の環境をアセスメントし、最適なコストシミュレーションをご提示します。

Q2. セキュリティが心配ですが、本当に安全ですか?

A2. Google CloudとGoogle Workspaceは、世界最高水準のセキュリティ基盤上で運用されています。さらに、DLP、多要素認証、アクセス制御など、企業が利用する上で必要な高度なセキュリティ機能が多数提供されています。適切な設定と運用を行うことで、多くのオンプレミス環境よりも堅牢なセキュリティを実現可能です。XIMIXでは、お客様の要件に合わせたセキュリティポリシーの設計・導入をご支援します。

Q3. 既存の社内システムとの連携は可能ですか?

A3. はい、可能です。Google Cloudは、APIや各種コネクタを通じて、多くの既存システムと連携させることができます。例えば、オンプレミスのActive DirectoryとID連携を行ったり、基幹システムからデータを抽出し、BigQueryで分析したりといった活用が可能です。

まとめ:「多忙すぎる情シス」から、価値創造をリードする情シスへ

「多忙すぎる情シス」は、決して担当者の能力や努力不足の問題ではありません。レガシーシステム、セキュリティ脅威、DXへの期待、人材不足といった構造的な要因が絡み合った結果であり、放置すれば企業の成長を妨げる深刻な経営リスクとなります。

しかし、この状況から「脱却」することは可能です。その鍵は、経営層の強いリーダーシップのもと、部門の壁を越えた「組織的アプローチ」を推進すること、そして、その強力な武器としてGoogle CloudとGoogle Workspaceを戦略的に「フル活用」することにあります。

インフラ運用負荷の削減、セキュリティの強化、コミュニケーションの効率化、データとAIの活用。これらのテクノロジーを最大限に活かし、定型業務から解放された情シスは、本来注力すべき価値創造活動、すなわちDXの推進やイノベーションの創出にリソースを振り向けることができるようになります。

本記事が、貴社が「多忙すぎる情シス」から脱却し、ビジネス価値を創造する戦略的IT部門へと変革するための一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。


「多忙すぎる情シス」からの脱却 - Google Cloud と Google Workspace をフル活用した組織的アプローチ

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