今さら聞けない「クラウド」と「ITインフラ」- DX担当者が押さえるべき基本と関係性

 2025,04,22 2025.07.10

はじめに

「DX推進のため、本格的にクラウド活用を検討しよう」 「レガシー化した社内のITインフラを、抜本的に見直す必要がある」

ビジネスの現場で「クラウド」や「ITインフラ」という言葉が日常的に使われる今、これらの基本的な意味や関係性について、自信を持って説明できるでしょうか。特に、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する立場にあるご担当者様の中には、「言葉は知っているが、その本質やビジネスインパクトまでは深く理解できていない…」という方も少なくないかもしれません。

この記事では、そうした疑問や不安を解消するため、「ITインフラ」と「クラウド」の基本的な定義から、両者の関係性、そしてなぜ今クラウドがDX推進の鍵となるのかまで、体系的に解説します。

本記事を最後までお読みいただくことで、クラウドとインフラの基礎知識が明確になり、今後のDX戦略に関する議論や情報収集を、より確信を持って進められるようになるでしょう。

まずは基本から:「ITインフラ」とは何か?

「インフラ」と聞くと、電気・ガス・水道や道路網といった、社会を支える基盤を思い浮かべるでしょう。これらがなければ現代の生活が成り立たないように、ITシステムにも不可欠な基盤が存在します。それが「ITインフラ」です。

ITインフラとは、企業のあらゆるITシステムを動かすための土台となる、ハードウェアやソフトウェア、ネットワークなどの総称です。具体的には、以下のような要素で構成されています。

  • ハードウェア: サーバー、PC、ネットワーク機器(ルーターやスイッチ)、ストレージ(データを保存する装置)など、物理的な機器。

  • ソフトウェア: Windows ServerやLinuxといったOS(オペレーティングシステム)、OSとアプリケーションを仲介するミドルウェアなど、ハードウェアを制御する基本的なソフトウェア。

  • ネットワーク: 社内LANやインターネット回線など、コンピューター同士を接続し、データをやり取りするための通信網。

  • 施設: サーバーなどの精密機器を安全に設置・運用するための専用施設(データセンターなど)。

これらのITインフラは、メールの送受信、業務アプリケーションの利用、Webサイトの運営といった、企業活動に欠かせない全てのITサービスの土台を担っています。

従来、多くの企業はこれらのITインフラ資産を物理的に自社で所有し、社内で管理・運用してきました。このような形態を「オンプレミス」と呼びます。

「クラウド」とは何か? - ITインフラの新しい「利用形態」

次に「クラウド」です。正式には「クラウドコンピューティング」と呼ばれ、サーバー、ストレージ、ソフトウェアといったITリソースを、自社で「所有」するのではなく、インターネットを経由して「利用」するサービスの形態を指します。

利用者は、ITリソースが物理的にどこにあるのか、どのような複雑な仕組みで動いているのかを意識する必要がありません。あたかも雲(Cloud)の向こう側にある巨大なコンピューターリソースを、必要な時に必要な分だけ手元で利用できるイメージから、この名が付きました。

Gmail や Google ドライブ といった個人向けサービスもクラウドの一種です。企業向けでは、Google Workspace のようなグループウェアや、様々な業務システム(SaaS)がクラウドサービスとして提供されています。これらは全て、サービス提供事業者が管理する巨大なITインフラの上で動いており、私たちはインターネットを通じてその機能を使っているのです。

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【重要】クラウドとITインフラの関係性を整理する

ここまでの説明で、「ITインフラは土台」「クラウドは利用形態」ということが分かりました。では、両者の関係性をさらに深く理解するために、クラウドの代表的なサービスモデルである「IaaS」「PaaS」「SaaS」とITインフラの関連を見ていきましょう。これにより、クラウドを「どこまでサービス事業者に任せるか」の選択肢として捉えることができます。

クラウドのサービスモデル:IaaS, PaaS, SaaS

クラウドサービスは、提供される機能の範囲(階層)によって、主に以下の3種類に分類されます。オンプレミスと比較すると、その違いが明確になります。

  • IaaS (Infrastructure as a Service): サーバー、ストレージ、ネットワークといった、ITインフラそのものをインターネット経由で利用できるサービスです。OSやミドルウェア、アプリケーションは利用者が自由に選択・構築できます。インフラの管理・運用をサービス事業者に任せられるため、オンプレミスに比べて物理的な保守の手間やコストを削減できます。Google Cloud やAmazon Web Services (AWS)、Microsoft Azureなどが代表例です。

  • PaaS (Platform as a Service): IaaSの提供範囲に加え、OSやミドルウェア、データベースといった、アプリケーションを開発・実行するための「プラットフォーム」までを提供してくれるサービスです。利用者はアプリケーション開発に集中できます。

  • SaaS (Software as a Service): インフラからアプリケーションまで、全ての機能をサービスとして利用できる形態です。利用者はアカウントを契約すれば、すぐにソフトウェアの機能を使えます。Google Workspace™ や各種業務システムなどがこれにあたります。

この3つのモデルは、「どこまでを自社で管理し、どこからをサービス事業者に任せるか」という責任分界点の違いと理解すると良いでしょう。オンプレミスが全て自社責任であるのに対し、IaaS、PaaS、SaaSと進むにつれて、利用者が管理する範囲は狭まり、よりビジネスの本質的な活動に集中できるようになります。

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なぜクラウドか? オンプレミスとの徹底比較

DX推進においてクラウドがなぜ有力な選択肢となるのかを理解するために、従来のオンプレミスとクラウド(特にIaaS)を比較してみましょう。

比較項目

クラウド (IaaS)

オンプレミス

初期コスト

低い(ハードウェア購入不要)

高い(サーバー等の購入費、設置費用)

導入スピード

速い(数分~数時間で利用開始)

遅い(機器の選定・調達・構築に数週間~数ヶ月)

拡張性・柔軟性

非常に高い(需要に応じて即座に増減可能)

低い(リソース追加には再度の購入・構築が必要)

運用・管理

負荷が低い(ハードウェア保守は事業者が担当)

負荷が高い(ハードウェアから全て自社で管理)

コスト構造

変動費(利用量に応じた従量課金)

固定費(資産としての減価償却)

セキュリティ

責任共有モデル(事業者と利用者で責任を分担)

全て自社の責任で対策が必要

BCP/DR対策

比較的容易(複数拠点への分散が容易)

自社で構築・運用する必要があり、高コスト

 

このように、クラウドは特に「スピード」と「柔軟性」において圧倒的な優位性を持ちます。これが、変化の激しい現代のビジネス環境において、新規事業の創出や競争力強化を目指すDXと非常に相性が良い理由です。

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DX推進におけるクラウドの重要性とメリット

クラウドがもたらすメリットは、単なるコスト削減や効率化に留まりません。ビジネスモデルそのものを変革する力を秘めています。

①俊敏なビジネス展開(アジリティの向上)

市場の変化や顧客ニーズに迅速に対応するため、アイデアをすぐに形にできる環境が不可欠です。クラウドなら、インフラの調達期間を待つことなく、数クリックでサーバーを立ち上げ、アプリケーションの開発・テストを開始できます。これにより、試行錯誤のサイクルを高速で回し、イノベーションを加速させることが可能です。

②データドリブンな意思決定の促進

DXの核となるデータ活用においても、クラウドは強力な基盤となります。例えば、Google Cloud の BigQuery のようなサービスを利用すれば、膨大なデータを高速に分析・可視化する環境を、低コストかつ容易に構築できます。これにより、勘や経験に頼るのではなく、データに基づいた客観的な意思決定が可能になります。

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③IT部門の役割変革

インフラの運用・保守といった定型業務から解放されたIT部門は、より戦略的で付加価値の高い業務にリソースを集中できるようになります。例えば、全社のDX戦略の策定、業務プロセスの改善提案、最新技術の評価・導入といった、ビジネスの成長に直接貢献する役割への変革が期待できます。

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④最新技術へのアクセス

AI、機械学習、IoTといった最先端の技術は、自社で一から開発するには膨大な投資と専門知識が必要です。クラウドプラットフォームは、これらの機能をAPIなどを通じてサービスとして提供しており、企業は比較的容易に最新技術を活用して自社のサービスや製品を高度化できます。

クラウド導入を成功させる3つのポイント

クラウドのメリットは大きいですが、その導入を成功させるためには押さえるべきポイントがあります。

ポイント1:目的を明確にする

「他社がやっているから」という理由で導入しても、期待した効果は得られません。「コストを30%削減したい」「新サービスの開発期間を半分にしたい」など、クラウド導入によって何を達成したいのか、具体的な目的とKPI(目標達成指標)を最初に設定することが重要です。

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ポイント2:スモールスタートで始める

全てのシステムを一度にクラウドへ移行するのはリスクが伴います。まずは、影響範囲の少ない情報系システムや、新規開発のプロジェクトなどから小さく始め、知見やノウハウを蓄積しながら段階的に対象を広げていく「スモールスタート」が成功の鍵です。

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ポイント3:専門家の知見を活用する

クラウドの導入・運用には、特有のスキルや知識が求められます。特にセキュリティの担保やコスト最適化は、専門家でなければ難しい領域です。 例えば、私たちXIMIX (NI+C) のような導入支援パートナーは、お客様のビジネス課題を深く理解した上で、最適なクラウドサービスの選定から、安全な移行計画の策定、継続的なコスト管理までを支援します。自社だけで抱え込まず、外部の専門知識を積極的に活用することが、結果的に最短距離での成功に繋がります。

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XIMIXが提供するGoogle Cloud導入支援

ここまでお読みいただき、「自社でも本格的にクラウド活用を進めたい」「オンプレミスからの移行を具体的に検討したい」と感じられた方もいらっしゃるでしょう。

しかし、実際に導入を進める上では、「どのクラウドサービスが自社に最適か?」「既存システムとの連携は?」「セキュリティやコスト管理はどうすれば?」といった、専門的な課題が必ず生じます。

私たちXIMIXは、Google Cloud および Google Workspace のプレミアパートナーとして、多くの中堅・大企業様のDXをご支援してきました。その中で培った豊富な実績と専門知識に基づき、お客様一人ひとりの課題に寄り添った最適なソリューションを提供します。

  • 「老朽化した基幹システムを刷新し、ビジネスの変化に追随できるようにしたい」

  • 「散在するデータを一元化し、全社的なデータ活用文化を醸成したい」

  • 「インフラ運用コストを削減し、捻出した予算を戦略的なIT投資に回したい」

こうした課題に対し、NI+Cが長年培ってきたシステムインテグレーションのノウハウと、Google Cloud の先進性を組み合わせ、構想策定から設計・構築、運用保守、さらにはデータ分析やAI活用といった高度な領域まで、一貫してサポートいたします。

クラウド導入に関するご相談やお見積もりなど、まずはお気軽にお問い合わせください。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

まとめ

今回は、DX時代に必須の知識である「クラウド」と「ITインフラ」について、その基本から関係性、ビジネスにおける重要性までを解説しました。

  • ITインフラ: ITシステム全体の「土台」。オンプレミスはこれを自社で「所有」する形態。

  • クラウド: インターネット経由でITリソースを「利用」するサービス形態。IaaS, PaaS, SaaSといったモデルがある。

  • 関係性: クラウドサービスは、サービス事業者が管理する巨大なITインフラを基盤として提供されている。

  • 重要性: クラウドは「スピード」と「柔軟性」を企業にもたらし、データ活用やイノベーションを加速させる、DX推進に不可欠な戦略基盤である。

クラウドとインフラの基礎を正しく理解することは、これからのIT戦略やDX推進を成功させるための第一歩です。本記事が、皆様の理解の一助となれば幸いです。企業の持続的な成長と競争力強化のため、この機会に自社のクラウド戦略を見直してみてはいかがでしょうか。


今さら聞けない「クラウド」と「ITインフラ」- DX担当者が押さえるべき基本と関係性

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