クラウド導入後にやるべきこととは?安定稼働と効果最大化のための運用タスクを解説

 2025,04,22 2025.07.19

はじめに

「ようやくクラウドサービスを導入できた。これで一安心…」

もしそう思われているなら、非常にもったいない状況かもしれません。Google CloudやGoogle Workspaceのような高機能なクラウドの導入は、ビジネス変革のゴールではなく、価値創出に向けた新たなスタートラインです。

しかし、実際には「導入したのはいいが、この後何をすべきか分からない」と戸惑う担当者様は少なくありません。

クラウドの真価は、導入後の「運用」フェーズで決まります。運用を疎かにすれば、予期せぬコスト増、重大なセキュリティインシデント、あるいはDXの停滞といった事態を招きかねません。

本記事では、クラウド導入後に押さえるべき運用の全体像を、「守りの運用(安定稼働)」「攻めの運用(価値最大化)」という2つの視点から、やるべきことを具体的に解説します。クラウド運用の第一歩を踏み出し、ビジネスの成長を加速させましょう。

なぜクラウド導入後の「運用」が最重要なのか?

クラウド導入のメリット(俊敏性、コスト削減、拡張性など)を継続的に享受するには、計画的な運用が不可欠です。導入して終わりではなく、むしろ導入してからが本番と言えます。

放置が招く深刻なリスク

適切な運用を怠ると、事業継続に影響を及ぼす様々なリスクが発生します。

  • コストの無駄遣い: 利用実態に合わないリソースや、開発用に作成して放置されたインスタンスなどが、毎月無駄なコストを発生させ続けます。ある調査によれば、クラウド予算の約3割が無駄になっているとの報告もあります。

  • セキュリティリスクの増大: 設定ミスや脆弱性の放置は、不正アクセスや情報漏洩に直結します。クラウド特有の設定不備が、企業の信頼を揺るがす重大インシデントにつながるケースは後を絶ちません。

  • パフォーマンスの低下: アクセス増やデータ量の増加に気づかず、システムの応答が遅くなったり、サービスが停止したりする可能性があります。これは顧客満足度の低下や機会損失に直結します。

  • DX推進の停滞: クラウドの最新機能を活用できず、競合他社に比べてビジネススピードで後れを取ってしまいます。

これらのリスクを回避し、クラウド投資の効果を最大化するために、戦略的な運用活動が求められるのです。

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【守りの運用】安定稼働に不可欠な5大基本業務

まず着手すべきは、クラウド環境を安全かつ安定的に稼働させるための「守りの運用」です。これはビジネスの土台を守る、最も重要な基盤となります。

① アカウント・権限管理:セキュリティの要

セキュリティの第一歩は、誰が、どのリソースに、何をできるかを厳密に管理することです。

最小権限の原則を徹底し、ユーザーやプログラムには業務に必要な最低限の権限のみを付与します。Google Cloudの IAM (Identity and Access Management) を活用すれば、役割(ロール)ごとにきめ細かな権限設定が可能です。また、人事異動や退職、プロジェクト完了に伴うアカウントの棚卸しを定期的に実施するフローを確立しましょう。放置されたアカウントは、不正の温床となります。

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② コスト管理:”見える化”と予算超過の防止

クラウドは従量課金制のため、利用状況を把握しないと想定外の高額請求につながります。

まずは Google Cloud Billing などの公式ツールで、部署別・プロジェクト別にコストを可視化する習慣をつけましょう。その上で、予算アラート機能は必ず設定します。これにより、コストの異常な増加を早期に検知し、迅速な対応が可能になります。開発環境で使ったままの仮想マシンなど、不要リソースの定期的な棚卸しもコスト抑制に直結する重要なタスクです。

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③ セキュリティ対策:責任共有モデルの理解と実践

クラウドのセキュリティは、クラウド事業者と利用者双方の責任で守られます(責任共有モデル)。利用者は、自身が管理するOS、ミドルウェア、データ、アクセス権限などに対して、責任を持って対策を講じる必要があります。

Security Command Center などのツールで設定ミスや脆弱性を定期的にスキャンし、OSやミドルウェアのセキュリティパッチは迅速に適用しましょう。また、フィッシング対策やパスワード管理といった、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高める教育も、人的ミスによるインシデントを防ぐ上で欠かせません。

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④ 監視・モニタリング:安定稼働の”目”

システムが正常に稼働しているか、パフォーマンスに問題はないかを継続的に監視します。

Google Cloud Monitoring を活用し、CPU使用率やメモリ使用量といったシステムの健全性を示す基本指標を監視します。システムログやアプリケーションログを収集・分析できる体制を整えておくことで、障害発生時の原因究明や不正アクセスの兆候検知が迅速に行えます。異常を検知した際に担当者へ自動で通知が飛ぶアラート設定は、障害対応の初動を速めるために必須です。

⑤ バックアップ・リストア:事業継続の生命線

システム障害、操作ミス、ランサムウェア攻撃など、万が一の事態に備えたデータ保護は必須です。

どのデータを、どの頻度で、どこに、どれくらいの期間保存するかというバックアップポリシーを策定し、確実に実行します。そして最も重要なのが、定期的なリストア(復旧)訓練です。「バックアップはあるが、いざという時に使えなかった」という事態は絶対に避けなければなりません。

【攻めの運用】クラウドの価値を最大化する次の一手

守りの運用で基盤が固まったら、次はその投資効果をさらに高める「攻めの運用」フェーズへと移行します。

① 継続的なコスト最適化

コスト管理を一歩進め、継続的な最適化を目指します。例えば、利用状況に合わせて仮想マシンのスペックを適正化する(ライトサイジング)、利用頻度の低いデータを低コストなストレージクラスに移動する、より費用対効果の高い新世代のインスタンスタイプへ移行する、といった施策が考えられます。これらは専門的な知見を要しますが、大きなコスト削減効果が期待できます。

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② パフォーマンスチューニング

ビジネスの成長に伴い、システムのパフォーマンス要件も変化します。データベースのクエリを最適化したり、負荷分散の構成を見直したりすることで、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、機会損失を防ぎます。パフォーマンスのボトルネックを特定し、継続的に改善していくサイクルを回すことが重要です。

③ 最新技術の活用とDX推進

クラウドの真価は、次々とリリースされる新しいサービスをビジネスに取り入れ、DXを加速させる点にあります。例えば、データ分析基盤(BigQueryなど)を構築してデータドリブンな意思決定を実現したり、AI/機械学習サービスを活用して業務効率化や新サービス開発に繋げたりすることが可能です。こうした「攻めの活用」にリソースを割くためにも、前述の「守りの運用」が安定していることが前提となります。

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クラウド運用の「よくある失敗例」とその対策

理論は分かっていても、多くの企業が陥りがちな失敗があります。

  • 失敗例1:兼任担当者が疲弊し、運用が形骸化する

    • 対策: 運用業務の負荷を正しく見積もり、必要であれば専任担当者やチームを設置する。経営層が運用の重要性を理解し、リソースを確保することが不可欠です。

  • 失敗例2:コスト意識がなく、請求額に驚愕する

    • 対策: 導入初期からコストの見える化と予算アラート設定を徹底する。誰がどのリソースを使っているかを把握できるタグ付けルールを整備することも有効です。

  • 失敗例3:セキュリティ設定を初期状態のまま放置し、インシデントを招く

    • 対策: 「責任共有モデル」を正しく理解し、自社の責任範囲におけるセキュリティ対策(アクセス権限、パッチ適用など)を怠らない。定期的なセキュリティ診断をプロセスに組み込みましょう。

効果的なクラウド運用のための体制づくり

高度な運用タスクを継続的に実行するには、体制の整備が不可欠です。

担当者の役割分担とドキュメント整備

クラウド運用には、インフラ、ネットワーク、セキュリティ、コスト管理など多岐にわたるスキルが求められます。これらの役割と責任を明確にし、チームで対応できる体制が理想です。

また、運用業務の属人化を防ぐため、クラウドの構成情報、各種設定手順、障害対応記録などをドキュメントとして整備し、常に最新の状態に保つことが極めて重要です。これにより、担当者の変更にもスムーズに対応できます。

専門パートナーとの連携という選択肢

「運用に十分なリソースを割けない」「高度なスキルを持つ人材がいない」 こうした課題を抱える場合、専門知識を持つパートナー企業との連携が有効な一手となります。特に、高度なセキュリティ対策やコスト最適化、24時間365日の監視などは、外部の専門家の力を借りることで、自社担当者はより戦略的な「攻めの運用」に集中できます。

どこまでを自社で行い、どこからをパートナーに委託するのか。自社のリソースとクラウド活用の戦略に合わせて、最適なバランスを見つけることが成功の鍵となります。

まとめ:クラウド運用を成功に導くために

クラウド導入はビジネス変革の大きな一歩ですが、その真価を引き出すには、導入後の計画的かつ継続的な「運用」が不可欠です。

本記事で解説した「守りの運用」で安定稼働の基盤を固め、次に「攻めの運用」でクラウドの価値を最大化していく。このステップを意識することが重要です。

  • 守りの運用(安定稼働の基礎)

    • アカウント・権限管理: 最小権限の原則を徹底。

    • コスト管理: "見える化"とアラート設定が基本。

    • セキュリティ対策: 責任共有モデルを理解し、自社の責任を果たす。

    • 監視・モニタリング: 異常の早期検知体制を構築。

    • バックアップ・リストア: 定期的な復旧訓練を忘れずに。

  • 攻めの運用(価値最大化へのステップ)

    • 継続的なコスト最適化: ライトサイジングなどでコスト効率を追求。

    • パフォーマンスチューニング: ビジネス成長に合わせた性能改善。

    • 最新技術の活用: データ分析やAI活用でDXを加速。

これらの運用を地道に続けることが、安全で効率的なクラウド活用につながります。「クラウドの運用で何をすべきか」という問いへの答えは、これらの活動を計画的に実行し、継続的に改善していくことに他なりません。

XIMIXによる運用支援

ここまでクラウド導入後の運用について解説しましたが、「専門知識を持つ人材がいない」「日々の運用業務に手が回らない」といった課題をお持ちではないでしょうか。

私たちXIMIXは、Google Cloud / Google Workspaceの豊富な導入実績に基づき、お客様の導入後の運用フェーズを強力にサポートします。

 


クラウド導入後にやるべきこととは?安定稼働と効果最大化のための運用タスクを解説

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