長期休暇前 Google Workspace のセキュリティ設定総点検ガイド

 2025,06,05 2025.06.05

はじめに

年末年始やゴールデンウィークなどの長期休暇は、多くの企業にとって業務を一時的に休止し、リフレッシュする貴重な機会です。しかしその一方で、システム管理者の目が届きにくくなることから、サイバー攻撃のリスクや内部不正による情報漏洩の危険性が高まる時期でもあります。特に、日々の業務に不可欠なGoogle Workspaceのセキュリティ対策は、長期休暇前にこそ見直しと強化が求められます。

「どこから手をつければ良いかわからない」「基本的な設定はしているつもりだが、長期休暇特有のリスクに備えられているか不安だ」といったお悩みをお持ちの情報システム担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、Google Workspaceを利用する企業が、長期休暇を迎える前に確認・見直しすべきセキュリティ設定や運用の考え方、その重要性について、網羅的かつ分かりやすく解説します。この記事を通じて、長期休暇中に想定されるセキュリティインシデントを未然に防ぎ、企業全体が安心して休暇を過ごせるよう、具体的な準備を整えるための一助となれば幸いです。

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なぜ長期休暇前にGoogle Workspaceのセキュリティ見直しが重要なのか?

日常業務が停止する長期休暇は、一見するとセキュリティリスクも低下するように思えるかもしれません。しかし、実際にはこの期間特有の脆弱性が狙われるケースが少なくありません。具体的にどのようなリスクがあり、なぜ事前のセキュリティ見直しが重要なのでしょうか。

①休暇中の攻撃リスクの高まり

長期休暇中は、多くの企業で情報システム部門の担当者も休暇を取得します。攻撃者はこの隙を狙い、不正アクセスやマルウェア感染といったサイバー攻撃を仕掛けてくる可能性があります。万が一インシデントが発生した場合、担当者の不在により発見や初動対応が遅れ、被害が拡大してしまう恐れがあります。

②内部不正のリスク

残念ながら、企業の機密情報を狙うのは外部の攻撃者だけではありません。年末や年度末といった時期は、退職や異動を控えた従業員による情報持ち出しといった内部不正のリスクが高まる傾向も指摘されています。長期休暇の直前は、こうした動きを隠蔽しやすいタイミングとも言えるため、アクセス権限やデータの取り扱いに関する設定を再確認することが重要です。

③設定不備による情報漏洩の未然防止

日々の業務に追われ、Google Workspaceのセキュリティ設定が最適化されていないケースも見受けられます。例えば、不必要に広い範囲にファイルが共有されていたり、退職者のアカウントがアクティブなまま放置されていたりすると、意図しない情報漏洩につながる可能性があります。長期休暇前は、こうした設定不備を洗い出し、修正する良い機会です。

これらのリスクを最小限に抑え、安心して休暇期間を過ごすためには、事前の網羅的なセキュリティチェックと対策が不可欠なのです。

長期休暇前に見直すべきGoogle Workspaceの主要セキュリティ設定

Google Workspaceには多岐にわたるセキュリティ機能が備わっています。ここでは、特に長期休暇前に重点的に見直すべき主要な設定項目について解説します。

①アカウントとアクセス管理の強化

ユーザーアカウントは、情報資産への入口です。ここの管理が甘ければ、他の対策も効果を失いかねません。

a.パスワードポリシーの確認と強化

強固なパスワードはセキュリティの基本です。Google Workspaceの管理コンソールで、パスワードの最小文字数、複雑性(大文字・小文字・数字・記号の組み合わせなど)、定期的な変更の強制といったポリシーが適切に設定されているか確認しましょう。従業員に対しても、推測されにくいパスワードの設定と、他サービスとの使い回しを避けるよう改めて周知することが推奨されます。

b.2段階認証プロセスの利用状況確認と未導入ユーザーへの設定推奨

IDとパスワードだけに頼る認証は、パスワードリスト攻撃などにより突破されるリスクがあります。2段階認証プロセス(2SV)は、パスワードに加えて、スマートフォンアプリやセキュリティキーなどによる追加の認証を要求することで、不正アクセスを大幅に困難にします。管理者アカウントはもちろんのこと、全ユーザーに対して2段階認証プロセスの設定を強く推奨し、未設定のユーザーには設定を促しましょう。

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c.不要なアカウントの棚卸しと一時停止・削除

退職者や長期間利用していないアカウントがアクティブなまま放置されていると、不正アクセスの踏み台にされたり、ライセンスコストの無駄遣いになったりする可能性があります。定期的なアカウントの棚卸しを実施し、不要なアカウントは速やかに一時停止または削除しましょう。特に長期休暇前には、この作業を徹底することが望まれます。

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d.管理コンソールへのアクセス権限の最小化と適切な役割分担

Google Workspaceの管理コンソールへのアクセス権限は、必要最小限のユーザーに限定することが鉄則です。特権管理者アカウントの数は厳密に管理し、日常的な運用は特定の機能に限定されたカスタムロールを活用するなど、権限の適切な役割分担を行いましょう。

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②情報共有ルールの再確認と設定見直し

Google Workspaceの便利な機能の一つが、ファイル共有や共同編集です。しかし、この手軽さが情報漏洩のリスクにもつながり得るため、適切な管理が不可欠です。

a.Googleドライブのファイル共有設定

Googleドライブ内のファイルやフォルダが、意図せず広範囲に共有されていないか確認が必要です。「組織内の全員(リンクを知っている全員)」「ウェブ上で一般公開」といった共有設定は、特に慎重に扱うべきです。定期的に共有設定を見直し、不要な共有は解除する、あるいはより限定的な範囲に変更することを検討しましょう。管理コンソールから、組織全体のデフォルトの共有設定や、ユーザーによる共有範囲の制限が可能です。

b.共有ドライブのアクセス権管理の徹底

チームでの共同作業に便利な共有ドライブも、参加メンバーや権限レベル(閲覧者、編集者、管理者など)が適切に設定されているか確認しましょう。プロジェクトの終了やメンバーの異動に伴い、不要になったアクセス権は速やかに削除する必要があります。

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c.Gmailのフィルタ設定や情報保護ルール

Gmailでは、特定のキーワードや条件に基づいてメールを自動的に分類・処理するフィルタ設定が可能です。また、より高度なセキュリティ対策として、S/MIMEによるメールの暗号化や署名、コンテキストアウェアアクセスによる特定の条件下でのアクセス制御など、情報保護ルールを活用することも検討できます。これらの機能は専門的な知識を要する場合もありますが、機密情報の送受信が多い企業にとっては重要な対策となります。入門レベルでは、まずこのような機能があることを認識し、必要に応じて専門家の支援を検討すると良いでしょう。

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③デバイス管理の徹底

業務で利用するPCやスマートフォン、タブレットといったデバイスからの情報漏洩も大きなリスクです。

a.モバイルデバイス管理(MDM)の設定確認

従業員が私物のスマートフォンや会社支給のモバイルデバイスからGoogle Workspaceにアクセスする場合、モバイルデバイス管理(MDM)機能の活用が不可欠です。パスコードの強制、リモートワイプ(遠隔データ削除)、アプリ管理などの設定が適切に行われているか確認しましょう。これにより、デバイスの紛失や盗難時における情報漏洩リスクを低減できます。

b.エンドポイント管理の重要性と基本的な設定

PCなどのエンドポイントデバイスについても、セキュリティ対策は重要です。Google Workspaceでは、Chromeブラウザ管理を通じて拡張機能の制御やセキュリティ設定の適用が可能です。また、より包括的なエンドポイントセキュリティ対策(EDRなど)の導入も検討に値します。

④監査ログの活用と監視体制

万が一の事態に備え、また不正の兆候を早期に発見するためには、監査ログの活用と監視体制が重要です。

a.監査ログの定期的な確認の重要性

Google Workspaceの管理コンソールでは、ユーザーのログイン履歴、ファイルアクセス履歴、管理設定の変更履歴など、様々なアクティビティが監査ログとして記録されています。長期休暇前には、直近の監査ログを確認し、不審なアクティビティがないかチェックしましょう。また、休暇明けにも同様にログを確認する体制を整えておくことが望ましいです。

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b.アラート設定の確認と通知先の適切性

特定のセキュリティイベント(例:管理者権限の変更、不審な国からのログイン試行など)が発生した際に管理者に通知を送るアラート設定が可能です。これらのアラートが適切に設定されており、通知先が休暇中も確認できる担当者になっているか確認しましょう。

長期休暇中のGoogle Workspace運用における注意点

事前の設定見直しに加えて、長期休暇中の運用体制についても考慮が必要です。

①インシデント発生時の連絡体制と対応フローの明確化

万が一、セキュリティインシデントが発生した場合に備え、誰に連絡し、どのような手順で対応するのかを明確にした連絡体制と対応フローを事前に定めておくことが重要です。情報システム担当者だけでなく、関連部署の責任者も含めたエスカレーションルートを整備しましょう。

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②緊急連絡網の整備と周知徹底

上記の対応フローに基づき、関係者の緊急連絡先をリスト化し、必要なメンバー間で共有・周知しておくことが不可欠です。休暇中であっても非常時には迅速に連絡が取れる体制を確保しましょう。

③従業員へのセキュリティ意識向上に関するリマインド

長期休暇前には、全従業員に対して改めてセキュリティ意識の向上を促すリマインドを行うことが効果的です。特に、フィッシングメールや不審なウェブサイトへの注意喚起、公共のWi-Fi利用時のリスク、機密情報の取り扱いに関するルールなどを再確認させましょう。

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長期休暇明けに実施すべきセキュリティチェック

無事に長期休暇が終了した後も、油断は禁物です。休暇中に何らかのセキュリティイベントが発生していなかったかを確認する作業が必要です。

①監査ログの詳細確認

休暇期間中のGoogle Workspaceの監査ログ(ログイン履歴、ファイルアクセス、共有設定の変更など)を詳細に確認し、不審なアクティビティやポリシー違反がなかったかをチェックします。

②セキュリティアラートの確認と対応

設定しているセキュリティアラートに、休暇中にトリガーされたものがないかを確認します。もしアラートが発生していた場合は、その内容を調査し、必要な対応を行います。

③休暇中に発生したインシデントのレビューと再発防止策の検討

万が一、休暇中に何らかのセキュリティインシデントが発生した場合は、その原因や影響範囲を徹底的に調査し、同様の事態が再発しないための具体的な対策を検討・実施します。

XIMIXによる支援サービス

これまで見てきたように、長期休暇前のGoogle Workspaceのセキュリティ対策は多岐にわたります。日常業務に加え、これらの設定確認や運用体制の整備を自社だけで行うことに不安を感じる企業様も少なくないでしょう。「何から手をつければ良いか分からない」「専門的な知見を持つ人材が社内にいない」といった課題に直面することも考えられます。

XIMIXでは、Google CloudおよびGoogle Workspaceに精通した経験豊富な専門家が、お客様の環境に最適なセキュリティ設定のご提案から導入支援、さらには継続的な運用サポートまで、一貫したサービスを提供しています。

  • セキュリティ診断サービス: お客様の現在のGoogle Workspaceの設定状況を詳細に分析し、セキュリティ上の潜在的なリスクや改善点を具体的に洗い出します。第三者の視点からの客観的な評価は、自社では気づきにくい問題点の発見に繋がります。
  • 導入・設定支援: 洗い出されたリスクやお客様のセキュリティポリシーに基づき、最適なセキュリティ設定の導入を支援します。複雑な設定作業や、全社的な展開もスムーズに実施できるようサポートいたします。
  • 運用コンサルティング: 一度設定を最適化するだけでなく、長期的な視点でのセキュリティ強化策や、インシデント発生時の効果的な対応体制の構築についても、専門的な知見に基づいたコンサルティングを提供します。

NI+Cは、これまでに数多くの企業様のGoogle Workspace導入・活用をご支援してきた実績がございます。その経験から得られたノウハウを活かし、お客様のビジネス環境や企業規模、業種特性に応じた、実効性の高いセキュリティ対策の実現をお手伝いします。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

まとめ

年末年始をはじめとする長期休暇は、ビジネスを一時的に離れ、英気を養うための大切な時間です。しかし、その裏ではセキュリティ上の脅威が活動を活発化させる可能性も潜んでいます。Google Workspaceを安全かつ快適に利用し続けるためには、休暇前の適切なセキュリティ設定の見直しと、運用体制の再確認が極めて重要です。

本記事では、長期休暇前に特に注意すべきGoogle Workspaceのセキュリティポイントとして、アカウントとアクセス管理、情報共有ルール、デバイス管理、そして監査ログの活用といった基本的な項目を中心に解説しました。これらのポイントを参考に、自社の設定状況を今一度点検し、必要な対策を講じることで、安心して休暇期間を迎える準備を整えていただければ幸いです。

セキュリティ対策は一度行えば終わりというものではなく、継続的な見直しと改善が不可欠です。もし、自社での対策に不安がある場合や、より高度で包括的なセキュリティ対策をご検討の場合は、信頼できる専門家のサポートを活用することも有効な選択肢の一つと言えるでしょう。XIMIXは、お客様のGoogle Workspace環境のセキュリティ強化を力強くサポートいたします。


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