はじめに
本記事は、Google Workspace Studio(旧Flows)の実践ノウハウを100本紹介する連載「Google Workspace Studio活用方法100本ノック」の一つとなります。
今回は、Google Workspaceに登場した革命的な新機能「Google Workspace Studio」をご紹介します。
これまでの業務自動化ツールといえば、「メールが届いたらチャットに通知する」といった単純なルール設定が主でした。しかし、このGoogle Workspace Studioは、Googleの生成AI「Gemini」を搭載することで、「AIが文脈を理解し、判断して処理を進める」という、まったく新しい次元の自動化を実現します。
一体どのようなことができるのか、その特徴や具体的な活用方法について徹底解説していきます。
| 難易度 | 初心者向け |
| 実現すること | Google Workspace Studioについて知る |
| 想定する対象者 | Google Workspace Studioについて知りたい人 |
| 利用サービス | Gemini |
Google Workspace Studioとは?
Google Workspace Studioは、Google Workspace(Gmail, Drive, Docs, Sheetsなど)のアプリケーション間をまたぐワークフローを、自然言語による指示とAIの判断力を使って構築・実行できるプラットフォームです。
従来の自動化ツール(RPAやiPaaS)と決定的に異なるのは、「データの意味を理解できる」点です。
例えば、「請求書が届いたら保存する」だけでなく、「請求書の内容を読み取り、金額が規定を超えていたら上司に承認を回し、そうでなければ支払い処理に進む」といった、これまで人間が目で見て判断していたプロセスを自動化できます。
Google Workspace Studioの3つの革新的な特徴
#1. プログラミング不要!自然言語でフローを作成
「コーディングは苦手…」という方でも安心です。Google Workspace Studioでは、Geminiにやりたいことをチャットで伝えるだけで、AIが自動的にフローの骨組みを提案してくれます。
ユーザーの指示例:
「顧客からの問い合わせメールを受け取ったら、内容を要約して、緊急度が高いものはSlackで通知し、それ以外はスプレッドシートに記録して」と入力後、「作成する」を押下します。

作成結果:
上記の指示を解析し、Gmailトリガー、Geminiによる分析ノード、条件分岐、Sheetsへの書き込みアクションを自動で配置できます。
#2. Gemini(AI)が「判断」を担当
これが最大の特徴です。フローの中に「Gemini」のノード(処理ブロック)を組み込むことができます。以下例となります。
- ドキュメントの解析:
契約書のPDFを読み込み、「リスク条項が含まれているか」をチェックする。 - 感情分析:
顧客からのメールが「怒っている」か「感謝している」かを判断し、対応を変える。 - コンテンツ生成:
会議の議事録から、ネクストアクションを抽出してタスクリストを作成する。
これらは従来の「If文(もし~なら)」だけでは実現不可能だった処理です。
#3. Google Workspaceアプリとの深い統合
Gmail、Googleカレンダー、ドライブ、ドキュメント、スプレッドシート、Chatなど、普段使っているGoogleアプリとシームレスに連携します。追加のログインや複雑なAPI設定はほとんど必要ありません。
具体的な活用ユースケース
以下のような業務に活用できます。
ケース1:カスタマーサポートの一次対応
- トリガー: サポート用アドレスにメールが届く。
- AI処理: Geminiがメール本文を読み、カテゴリ(不具合、要望、その他)と緊急度を判定。
- 分岐:
- 緊急: 担当者のGoogle Chatにメンション付きで通知し、返信案を自動作成して下書き保存。
- 通常: スプレッドシートの管理台帳に追記し、自動応答メールを送信。
ケース2:在庫管理と発注業務
- トリガー: スプレッドシートの在庫数が閾値を下回る。
- AI処理:過去の注文履歴と現在のトレンドを分析し、最適な発注数を提案。
- アクション:発注書(Googleドキュメント)を自動生成し、PDF化して購買担当へ承認依頼メールを送信。
既存ツール(GAS・AppSheet・Zapier)との違いは?
業務自動化を考えたとき、これまでは主に以下の3つの選択肢がありました。
| ツール名 | 特徴 | 強味 | Studioとの違い |
| GAS | プログラミング言語(JavaScriptベース) | 柔軟性が高く、細かい操作が可能 | コードを書くスキルが必須 |
| AppSheet | Googleのノーコードアプリ開発 | 業務アプリの画面作成に特化 | 「裏側のフロー」構築が主目的ではない |
| Zapier / Make (旧Integromat) | 外部アプリ連携 | アプリ間連携が簡単 | データの中身を読んで「判断」することが苦手 |
Google Workspace Studioは、これら既存ツールの「いいとこ取り」をしつつ、さらにAIの力を加えたものです。
つまり、「アプリを作るほどではないが、GASを書くのは難しく、既存の連携ツールではAIの判断が足りない」という領域を埋める強力なツールと言えます。
まとめ
#面倒な仕事はAIに任せて、もっと自由な時間を
「このメール、内容を確認してスプレッドシートに転記しておいて」
そんな一言で、面倒な事務作業がすべて終わるとしたらどうでしょうか?
Google Workspace Studioは、まさにそんな未来を実現してくれるツールです。
これまで「自動化したいけど、設定が難しそう」「結局、最後は人間がチェックしないと不安」と諦めていた作業も、Geminiという頼れる相棒がいれば安心して任せられます。
空いた時間で新しい企画を考えたり、チームとコミュニケーションをとったり、あるいは定時で帰ってリフレッシュしたり。
Google Workspace Studioは、私たちの働き方を「作業」から「創造」へとシフトさせてくれるはずです。これからの進化が本当に楽しみです!
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※本記事は執筆時点(2025年12月)の情報に基づいています。機能や名称は変更される可能性があります。
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