前編のテーマは「生成AIで口コミ分析を自動化する」
こんにちは。
D&A事業本部の村瀬です。
本TechBlogはTeam xG Advent Calendar 2025 5日目の記事になります。
皆さんはビジネス現場で「お客様の声」を分析する業務をご存じですか?
これをVoC分析(Voice of Customer) といい、コールセンターやカスタマーサービス部門では欠かせない業務です。しかし従来、この分析には大きな課題がありました。
従来のVoC分析の3大課題
- 高度なITスキルが必須 → BIツール、レポーティングツールの使いこなしが難しく、現場の担当者では対応不可
- 膨大な作業時間 → 業務の片手間では到底できない分析ボリューム
- 外注コスト高騰 → マーケティング会社に依頼すると、数週間かかるうえ相応の費用発生
これまで私たちは「このしんどい業務をなんとか効率化できないか」と考えてきました。その答えが、生成AI(Gemini ProとNotebookLM Enterprise)を組み合わせることなのです。
生成AIで「分析業務が一気に効率化」する3つの理由
✅ 理由1:データ収集が自動化できる
- Geminiで「口コミ100件」をたった1回のプロンプトで自動抽出
- 複数サイト(Amazon、楽天、価格.com)の情報を同時に集約
- 所要時間:わずか数分
✅ 理由2:分析環境がクリック操作だけで完成
- NotebookLMにExcelをアップロードするだけで準備完了
- プログラミング不要、ビジネス知識でOK
✅ 理由3:レポート作成が半自動化
- 「属性別分析」「時系列分析」「テーマ別分析」が数秒で完成
- 経営層向けのまとまったレポートが自動生成される
これにより、従来なら数週間かかった分析業務が「数時間」で完了するのです。
実践ワークフロー|4ステップで完成
📥 ステップ1:Geminiで口コミを自動収集
使用ツール: Gemini Pro
まずは分析対象商品の口コミをGeminiで一括収集します。
今回は例として「iPhone Air」の口コミを100件取得してみます。
(※以降の分析結果はサンプルデータでの口コミ分析です。一例とご承知おきください)
プロンプト例
『iPhone Air 口コミ レビュー 2025』で検索し、価格.comやAmazon、楽天、家電量販店のレビューなど複数サイトを参考にしてください。
実在するユーザーのレビュー内容をそのままコピーせず、内容を要約した「要約レビュー」を100件分作成してください。
項目は「日付,性別,年代,口コミテキスト」とし、CSV形式で出力してください。
日付・性別・年代が不明な場合は「不明」としてください。
🎯 プロンプトのポイント
なぜ「要約レビュー」と指定するのか?
- 実在するレビュー本文をそのままコピーすると、著作権や利用規約に引っかかる
- 「要約」と明記することで、内容の傾向を反映した独自データセットが作成できる
- 実務で分析に使える「疑似ユーザーレビューデータ」として活用可能
なぜ「項目を明示」するのか?
- 「日付」「性別」「年代」「口コミテキスト」と明確に列を指定すれば、CSV形式で構造化されたデータが返ってくる
- その後の分析作業がスムーズになり、NotebookLMへのアップロードが簡単
なぜ「不明」を指定するのか?
- Webレビューは投稿者の属性が必ず記載されているわけではない
- 「不明」と記載しておけば、後で分析時に「属性不明のデータ」として取り扱える
📊 Geminiの出力イメージ
日付,性別,年代,口コミテキスト
2025/11/15,男性,30代,"薄くて軽いのが本当に最高!長時間持っていても手が疲れなくて、まるでディスプレイだけ持っているみたいだ。"
2025/11/16,女性,20代,"デザインがとにかくスタイリッシュで美しい。チタンフレームの質感が上品で、裸で使いたくなる。"
2025/11/17,不明,40代,"画面が6.5インチと大きめなのに、この軽さには感動。ベゼルも薄くて没入感がある。"
2025/11/18,男性,50代,"レスポンスはサクサクで何の不満もない。日常使いならProモデルとの差は感じない。"
💾 保存方法
- Geminiの出力結果をコピーしてメモ帳にペースト(Ctrl+A → Ctrl+C)
- CSVファイル形式で保存(「review_iphone_air.csv」など拡張子を.csvにします)
- CSVファイルをExcelで開きExcelファイル形式で保存(ファイル名は「review_iphone_air.xlsx」など分かりやすい名前にします)
🔧 ステップ2:NotebookLMで分析環境を準備
使用ツール: NotebookLM Enterprise
準備作業(わずか2分)
- NotebookLMで新規ノートブック作成
- 保存したExcelファイルをドラッグ&ドロップしてアップロード
- 完了
これで分析準備は終わりです。シンプルですね。
🔍 ステップ3:NotebookLMで「個別分析」を実行
使用ツール: NotebookLM Enterprise
ここからが本格的な分析です。NotebookLMのチャット欄に、以下のような質問を入力していきます。
分析パターン例① ユーザー属性別分析
20代女性の口コミ傾向は何か、3つポイントを抽出してください。
返ってくる回答例
- 「デザイン面の満足度が高い傾向」
- 「SNS用途での活用を重視」
- 「価格帯に対する関心度が低い」
分析パターン例② 時系列分析
製品リリース後から現在では口コミにどのような変化がありましたか?
返ってくる回答例
- 「初期は発熱に関する苦情が目立ったが、最近は改善傾向」
- 「ソフトウェアアップデート後、バッテリー持ちが向上したというレビューが増加」
分析パターン例③ 製品テーマ別分析
「バッテリー」「価格」「カメラ」の3つのテーマ別に、ポジティブ・ネガティブの評価比率を集計してください。
返ってくる回答例
iPhone Airの口コミにおける「バッテリー」「価格」「カメラ」の3つのテーマについて、ポジティブ・ネガティブ評価の比率を集計します。
バッテリー
• ポジティブ: バッテリーの持ちは使い方によっては十分であるという意見があります 。軽量化のためにバッテリー容量が少ないことを承知で購入しているユーザーもいます 。
• ネガティブ: バッテリーの持ちに対する不満が多く見られます。ゲームをするとバッテリーの消耗が激しい。iPhone 17 Pro Maxと比較してバッテリーの減りが早いという意見や、ヘビーに使うと1日持たないという意見があります。薄型化のためにバッテリーが犠牲になっているという評価もあります。
バッテリーに関する評価比率(概算):
ネガティブ: 70%
ポジティブ: 30%
分析パターン例④ 販路別分析
ドコモ、au、ソフトバンク、楽天の4キャリア別に、ユーザーの満足度傾向は異なりますか?
このように、「知りたい観点」をそのまま質問形式で入力するだけで、NotebookLMが自動的に該当データを抽出して分析結果を返してくれます。
📄 ステップ4:NotebookLMの「お任せ分析」機能で簡易レポート自動生成
使用ツール: NotebookLM Enterprise
ステップ3までは「こちらが質問を投げかけるアプローチ」でした。ステップ4からは、「NotebookLMが自動的に最適な切り口で分析してくれるアプローチ」に変わります。
自動分析機能① Briefing Doc(ブリーフィング文書)
NotebookLMの「Studio」パネルから「Briefing Doc」を選択すると、データ全体から経営層向けの簡易レポートが自動生成されます。
生成される内容
- データ概要(件数、期間、主要な属性)
- 主要な発見事項(トップ3)
- 今後の推奨アクション
活用シーン 経営会議や幹部への報告時に、このレポートをそのまま使える資料として活用可能。
(Briefing Doc 出力例)
iPhone Air 口コミ分析ブリーフィング
概要:
このドキュメントは、iPhone Airに関する口コミデータを分析した結果をまとめたものです。軽量薄型デザイン、カメラ性能、バッテリー性能、価格、その他の機能に関するユーザーの意見を分析し、製品の強みと弱みを明らかにします。
主なテーマと考察:
軽量薄型デザイン:圧倒的な高評価。多くのユーザーがその軽さと薄さを賞賛しており、長時間使用しても手が疲れにくい点、持ち運びやすさを利点として挙げています。
例: 「薄くて軽いのが本当に最高!長時間持っていても手が疲れなくて、まるでディスプレイだけ持っているみたいだ。」 (30代, 男性)
例: 「iPhone 6が太って見えるほどの薄さ。薄型化への執念を感じる。」 (不明, 女性)
ただし、薄すぎるゆえに滑りやすく、落下のリスクを懸念する声も存在します。
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結論:
iPhone Airは、軽量薄型デザインを重視するユーザーにとって魅力的な選択肢です。しかし、カメラ性能やバッテリー性能、価格などの面で妥協が必要となる可能性があります。購入を検討する際は、自身の利用状況や優先順位を考慮することが重要です。
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今後の展望:
次期モデルでは、バッテリー性能の改善が期待されます。
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自動分析機能② マインドマップ
「主要なテーマ」と「関連トピック」が自動抽出され、階層的に整理されます。
活用シーン
- CS部門内でのディスカッション
- 新入社員の教育資料
- アイデア出しのベース材料
(マインドマップ 画面例)

自動分析機能③ 音声解説
テキストの内容をラジオ番組やポッドキャストのように音声に変換して解説してくれる機能。
活用シーン
- 新入社員や若手社員への研修
- 通勤時間での情報インプット
- プレゼン前の予習
⚡ この手法の3つのメリット
1️⃣ 誰でもできる
- プログラミング知識ゼロ
- ビジネス分析の経験がなくても大丈夫
- コピー&ペーストと対話形式の指示だけ
2️⃣ スピード重視
- 従来なら数週間かかった分析が「数時間」で完成
- 急な経営判断が必要な場合も対応可能
3️⃣ 低コスト
- 外注マーケティング会社の費用が不要
- ツール代だけで済む(月数千円程度)
📌 まとめ:前編で学んだ重要ポイント
✅ VoC分析は従来、高度なスキルと時間が必要だった
✅ Geminiで100件の口コミが数分で自動抽出できる
✅ NotebookLMで「個別分析」「自動分析」が同時に実現
✅ 業務知識があれば、プログラミング不要で完成
🔄 次の後編では
ステップ5以降は以下の内容を解説します。
- ✍️ 詳細レポートを経営層向けに構成する方法
- 🎨 Gemini Canvasを使ったPowerPointプレゼン資料の自動作成
- 📊 複数の視点から分析をより深掘りするテクニック
「分析完成 → プレゼン資料化」までの全体像を後編でお届けします。
📖 おまけ:
1.NotebookLMの応用活用法
今回は例としてiPhoneレビューを収集し分析をしましたが、この手法は口コミやレビュー分析に限りません。
活用例
- コールセンター録音データ → 音声データを直接アップロードして分析
(データソースとして音声ファイルを直接取り込むことが可能) - 顧客タイムライン分析 → 特定顧客の過去やり取り全体を取り込み、課題と対策を自動抽出
(NotebookLMのタイムライン分析機能で実現) - 社内共有による波及効果 → 作成したノートブックを部門内で共有し、全員で同じベースで議論
(NotebookLMのの共有機能で実現)
2. Perplexity Proをプラスすると、さらに実務度が上がる
ここまでの手順だけでも十分な分析は完成しますが、Perplexity Proを組み合わせると、業界知識や競合状況をプラスできます。
Perplexity Proとは、社内情報とWeb情報を統合分析しレポート生成まで自動化する業務分析特化AIサービスです。わかりやすくいうと自分専用の業務コンサルタントのような存在です。
例えば「iPhone Air」の分析をしている場合、
iPhone Airの市場ポジショニングは?
競合となるPixel、Galaxy、Xiomi製品との違いは?
2025年のスマートフォン市場トレンドは?
といった「業界・競合理解」の質問をPerplexity Proに投げかけます。その情報をNotebookLMの分析結果に加えることで、より深みのある分析レポートにアップグレードできます。
生成AIの進化により、「分析は一部の専門家の仕事」という時代は終わりました。
ぜひ、あなたの部門でも実践してみてください。
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- Gemini