プラットフォームエンジニアリングとは?目的・メリット・Google Cloud との関係をわかりやすく解説!DX開発基盤の考え方

 2025,05,02 2025.05.04

はじめに:加速するDX、求められる開発効率化のアプローチ

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する現代において、ソフトウェア開発のスピードと効率は、競争優位性を左右する重要な要素となっています。しかし、クラウドネイティブ技術の普及やマイクロサービス化の進展により、開発環境は複雑化の一途をたどり、開発者が本来注力すべきアプリケーション開発以外の作業(インフラ構築、運用、ツール選定など)に多くの時間を費やさざるを得ない状況も生まれています。

「開発プロセスをもっと効率化したい」 「開発者がより創造的な作業に集中できる環境を作りたい」 「変化に迅速に対応できる、柔軟でスケーラブルな開発基盤を構築したい」

このような課題を感じている企業は少なくないでしょう。こうした背景から、近年注目を集めているのが「プラットフォームエンジニアリング」という考え方です。

本記事では、「プラットフォームエンジニアリングとは何か?」という基本的な疑問にお答えするとともに、その目的、メリット、そしてDX推進においてなぜ重要なのかを、入門者向けにわかりやすく解説します。Google Cloudのようなクラウドプラットフォームとの関連性にも触れながら、次世代の開発基盤構築に向けた第一歩をサポートします。

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プラットフォームエンジニアリングとは何か?

プラットフォームエンジニアリングとは、簡単に言えば、ソフトウェア開発者が必要なツールや機能、インフラストラクチャを、セルフサービスで簡単に利用できるようにするための「開発者向けプラットフォーム」を設計・構築・運用する取り組みのことです。

Gartner社は、プラットフォームエンジニアリングを「ソフトウェアの開発とデリバリを目的とした、セルフサービス型の開発者プラットフォームの構築と運用に関する専門分野」と定義しています[出典: https://www.gartner.co.jp/ja/articles/what-is-platform-engineering]。

開発者は、このプラットフォームを通じて、コーディング、ビルド、テスト、デプロイ、モニタリングといった開発ライフサイクル全体に必要なリソースやサービスへ、オンデマンドでアクセスできるようになります。まるで高速道路(舗装された道=Golden Path)が整備されているかのように、開発者は複雑なインフラやツールチェインの詳細を意識することなく、スムーズに開発を進めることができるのです。

この開発者向けプラットフォームは、「Internal Developer Platform(IDP)」と呼ばれることもあります。プラットフォームエンジニアリングは、このIDPをプロダクトとして捉え、継続的に改善していく活動とも言えます。

なぜ今、プラットフォームエンジニアリングが注目されるのか?【背景と目的】

プラットフォームエンジニアリングが注目される背景には、いくつかの要因があります。

背景1:開発環境の複雑化と開発者の認知負荷増大

クラウド、コンテナ、マイクロサービス、サーバーレスといった技術の普及は、開発の自由度を高める一方で、扱うべきツールや知識の範囲を広げ、開発環境の複雑性を増大させました。これにより、開発者はアプリケーション開発そのものだけでなく、インフラの管理や運用、セキュリティ対策、各種ツールの連携など、多岐にわたるタスクに対応する必要に迫られ、「認知負荷(Cognitive Load)」が増大しています。

背景2:DevOpsの浸透と課題

開発(Development)と運用(Operations)が協力し、ソフトウェア開発ライフサイクル全体のスピードと品質を向上させるDevOpsの考え方は広く浸透しました。しかし、開発者に運用タスクの責任まで負わせる「You build it, you run it」のモデルは、時として開発者の負担を過度に増加させる結果を招くこともありました。プラットフォームエンジニアリングは、DevOpsの文化を維持しつつ、開発者の負担を軽減し、生産性を最大化するための一つの解決策として期待されています。

背景3:DX推進におけるアジリティ向上の要請

市場の変化に迅速に対応し、継続的に新しい価値を提供するためには、ソフトウェア開発のアジリティ(俊敏性)が不可欠です。プラットフォームエンジニアリングは、開発プロセスを標準化・自動化し、セルフサービス化することで、開発リードタイムの短縮とデプロイ頻度の向上を実現し、企業のDX推進を強力に後押しします。

プラットフォームエンジニアリングの主な目的

これらの背景を踏まえ、プラットフォームエンジニアリングは主に以下の目的を達成することを目指します。

  1. 開発者エクスペリエンス(Developer Experience: DX)の向上: 開発者がインフラやツールの複雑さに悩まされることなく、快適かつ効率的に開発に集中できる環境を提供します。
  2. 開発者の生産性向上: 開発ライフサイクルにおけるボトルネックを解消し、反復的な作業を自動化することで、開発者の生産性を最大化します。
  3. ソフトウェアデリバリーの迅速化: 標準化されたツールとプロセスにより、アイデアから本番環境へのリリースまでの時間を短縮します。
  4. ガバナンスとセキュリティの強化: 事前に定義されたセキュリティポリシーやコンプライアンス要件をプラットフォームに組み込むことで、開発プロセス全体で一貫したガバナンスを確保します。
  5. 運用効率の向上: プラットフォームチームがインフラやツールの運用に責任を持つことで、運用業務を集約し、効率化を図ります。

プラットフォームエンジニアリングの主なメリット

プラットフォームエンジニアリングを導入することで、企業は以下のようなメリットを享受できます。

  • 開発スピードの向上と市場投入までの時間短縮: 開発者はインフラ構築や環境設定に時間を費やす必要がなくなり、アプリケーション開発に集中できます。これにより、新機能やサービスのリリースサイクルが短縮されます。
  • 開発コストの削減: 共通基盤の利用促進、自動化による手作業の削減、運用業務の効率化などにより、開発・運用コスト全体を最適化できます。
  • 品質と信頼性の向上: 標準化されたツール、テスト自動化、監視機能などをプラットフォームに組み込むことで、ソフトウェアの品質と信頼性を高めることができます。
  • セキュリティとコンプライアンスの強化: 組織のセキュリティ基準やコンプライアンス要件を満たすガードレールをプラットフォームレベルで実装し、開発初期段階から安全性を確保できます。
  • 開発者の満足度向上と定着率改善: 開発者が煩雑な作業から解放され、創造的な業務に集中できる環境は、エンゲージメントと満足度を高め、優秀な人材の獲得と定着にも繋がります。
  • スケーラビリティと柔軟性の向上: クラウドネイティブ技術を基盤とすることが多く、ビジネスの成長に合わせて柔軟にスケールできる開発基盤を実現します。

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プラットフォームエンジニアリングと関連する概念(DevOps, SRE)

プラットフォームエンジニアリングは、DevOpsやSRE(Site Reliability Engineering)といった概念と密接に関連していますが、それぞれ焦点が異なります。

  • DevOps: 開発と運用の文化・プラクティス・ツールに焦点を当て、協力して価値提供のスピードと品質を高めることを目指します。プラットフォームエンジニアリングは、DevOpsの原則を実現するための具体的な手段・基盤を提供します。
  • SRE: システムの信頼性に焦点を当て、自動化とソフトウェアエンジニアリングの手法を用いて、スケーラブルで信頼性の高いシステムを構築・運用することを目指します。プラットフォームチームは、SREの原則を取り入れて、信頼性の高い開発者プラットフォームを提供することがあります。また、SREチームがプラットフォームの運用を担当することもあります。

プラットフォームエンジニアリングは、これらの概念を補完し、特に「開発者エクスペリエンスの向上」を通じて開発組織全体の生産性を高めることに重点を置いていると言えるでしょう。

Google Cloudとプラットフォームエンジニアリング

Google Cloudは、プラットフォームエンジニアリングを実現するための強力な基盤となるサービスを豊富に提供しています。

  • Google Kubernetes Engine (GKE): コンテナオーケストレーションの標準であるKubernetesのマネージドサービス。スケーラブルで信頼性の高いアプリケーション実行基盤を提供します。
  • Cloud Build: フルマネージドなCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)プラットフォーム。ソースコードのビルド、テスト、デプロイを自動化します。
  • Artifact Registry: コンテナイメージや言語パッケージ(Maven、npmなど)を一元管理できるリポジトリサービス。
  • Cloud Deploy: GKEへの継続的デリバリーを簡素化・自動化するマネージドサービス。
  • Cloud Run: サーバーレス環境でコンテナを実行できるサービス。インフラ管理の手間を削減します。
  • Cloud Monitoring / Cloud Logging: アプリケーションとインフラの監視、ログ収集・分析機能を提供。
  • Cloud Workstations: クラウドベースのセキュアな開発環境を提供。開発者はブラウザからすぐに開発を開始できます。
  • Infrastructure Manager / Policy Controller: インフラ構成管理の自動化(IaC)やポリシー適用を支援

これらのサービスを組み合わせることで、企業は自社のニーズに合わせた最適な「DX プラットフォーム」としてのInternal Developer Platform(IDP)を効率的に構築・運用できます。Google Cloudは、開発者がインフラを意識せず、迅速かつ安全にアプリケーションを開発・デプロイできる環境、「Golden Path」の実現を支援します。

XIMIXによるプラットフォームエンジニアリング導入支援

プラットフォームエンジニアリングの概念は理解できても、「自社にどう適用すれば良いのか?」「何から始めれば良いのか?」といった具体的な導入ステップで悩む企業は少なくありません。また、最適なツール選定、プラットフォームの設計・構築、そして継続的な運用・改善には専門的な知識と経験が不可欠です。

これまでの解説で、プラットフォームエンジニアリングが開発効率化やDX推進に有効であることはご理解いただけたかと思います。しかし、その実現には、現状の課題分析、適切な技術選定、組織文化の変革など、乗り越えるべきハードルも存在します。特に、自社の状況に合わせた「Golden Path」を定義し、開発者にとって本当に価値のあるプラットフォームを構築することは容易ではありません。

私たちXIMIXは、Google Cloudに関する豊富な知見と、多くの企業様のDX推進をご支援してきた経験に基づき、導入・活用を強力にサポートします。

  • Google Cloudを活用したIDP設計・構築: GKE、Cloud Build、Artifact Registryなどを活用し、お客様のニーズに最適化されたセキュアでスケーラブルな開発者プラットフォームを設計・構築します。
  • CI/CDパイプライン構築・最適化: 開発ライフサイクル全体の自動化を推進し、迅速かつ信頼性の高いソフトウェアデリバリーを実現します。
  • 継続的な運用・改善支援: プラットフォームの運用監視、アップデート対応、利用状況分析に基づいた改善提案など、継続的な価値向上をサポートします。

「プラットフォームエンジニアリングに関心があるが、何から手をつけるべきかわからない」 「Google Cloudを活用して開発環境をモダナイズしたい」 「開発者の生産性を向上させ、DXを加速させたい」

このようなご要望をお持ちでしたら、ぜひXIMIXにご相談ください。お客様のビジネス目標達成に向けた最適なソリューションをご提案いたします。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

まとめ

本記事では、プラットフォームエンジニアリングの基本的な概念、注目される背景と目的、そして主なメリットについて解説しました。

プラットフォームエンジニアリングは、複雑化する開発環境において、開発者の負担を軽減し、生産性を最大化するための重要なアプローチです。標準化され、セルフサービスで利用可能な開発者プラットフォーム(IDP)を提供することで、開発スピードの向上、品質とセキュリティの確保、そして開発者エクスペリエンスの向上を実現します。

これは、単なるツール導入の話ではなく、開発文化そのものを変革し、企業のDX推進を加速させるための戦略的な取り組みと言えるでしょう。Google Cloudのような先進的なクラウドプラットフォームを活用することで、その実現可能性は大きく高まります。

まずは自社の開発プロセスにおける課題を特定し、プラットフォームエンジニアリングがどのように貢献できるかを検討してみてはいかがでしょうか。この記事が、その第一歩となれば幸いです。


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