はじめに
「月末月初は請求書処理に追われる」「入退社手続きの書類が多くて大変」「備品管理や申請業務が煩雑」…。多くの企業で、経理、人事、総務といったバックオフィス部門は、日々の定型業務に多くの時間と労力を費やしているのではないでしょうか。これらの業務は企業活動に不可欠ですが、効率化の余地が大きい領域でもあります。
もし、普段利用しているビジネスツールで、これらの業務を少しでも楽に、そして自動化できたらどうでしょう?
この記事では、多くの企業で導入されている Google Workspace を活用して、バックオフィス業務をどのように効率化・自動化できるのか、その具体的な活用例を分かりやすく解説します。
この記事を読むことで、以下のメリットがあります。
- Google Workspace の標準機能で実現できるバックオフィス業務の効率化アイデアがわかる
- AppSheet などのツールを使った一歩進んだ自動化の可能性を知ることができる
- 自社のバックオフィス業務における Google Workspace 活用の具体的なイメージが掴める
DX推進を検討されている担当者様、特にバックオフィス部門の業務改善に関心のある方にとって、最初の一歩を踏み出すためのヒントとなれば幸いです。
なぜGoogle Workspaceがバックオフィス業務の効率化に適しているのか?
Google Workspace は、単なるメールやカレンダーのツールではありません。クラウドベースで提供される多様なアプリケーション群が、バックオフィス業務の効率化・自動化に貢献する理由を解説します。
①クラウドベースでのシームレスな情報共有と共同作業
Google Workspace の最大の強みは、すべてのツールがクラウド上で連携し、場所やデバイスを選ばずにアクセスできる点です。
- Google ドライブ/共有ドライブ: あらゆるファイルをクラウド上に保管し、関係者と安全に共有できます。紙ベースの書類を電子化し、検索性を高めるだけでなく、版管理も容易になります。特に、部署やプロジェクト単位でファイルを管理できる「共有ドライブ」は、バックオフィス部門の情報資産管理に最適です。
- Google ドキュメント/スプレッドシート/スライド: 複数メンバーが同時にファイルを編集でき、コメント機能でのコミュニケーションも可能です。これにより、稟議書や報告書の作成、予算管理シートの更新といった共同作業が格段にスムーズになります。
②標準機能だけでも実現できる業務改善
特別なツールを導入しなくても、Google Workspace の標準機能だけで多くの業務改善が可能です。
- Google フォーム: アンケート、申請フォーム、簡単なデータ収集などを容易に作成できます。回答は自動的に Google スプレッドシートに集計されるため、転記作業の手間が省けます。
- Google カレンダー: 会議室や備品の予約管理、メンバーのスケジュール共有を効率化します。
- Google チャット/Meet: 迅速なコミュニケーションやオンライン会議を実現し、部門内外の連携を強化します。
拡張性による自動化の可能性
Google Workspace は、他のツールやサービスと連携させることで、さらに高度な業務自動化を実現できます。
- Google Apps Script (GAS): Google Workspace の各アプリケーションをプログラムで操作し、定型的な作業を自動化できます(例: 特定のメールを自動転送、スプレッドシートのデータを自動更新など)。
- AppSheet: プログラミング不要(ノーコード/ローコード)で、業務に合わせたカスタムアプリケーションを作成できます。これにより、より複雑なワークフローやデータ管理も実現可能です。
これらの特徴により、Google Workspace はバックオフィス業務のデジタル化、効率化、そして自動化を段階的に進めるための強力な基盤となるのです。
【部門別】Google Workspace活用による効率化・自動化アイデア(入門編)
ここでは、経理、人事、総務の各部門で、Google Workspace を使って具体的にどのような業務を効率化・自動化できるか、入門レベルのアイデアをご紹介します。
①経理部門
経理部門は、請求書、領収書、経費精算など、多くの書類やデータを扱います。Google Workspace はこれらのペーパーレス化と効率化に貢献します。
- 請求書・領収書の電子化と共有:
- 紙で受け取った請求書や領収書をスキャンし、Google ドライブにアップロードして関連部署と共有します。ファイル名を命名規則に基づいて統一すれば、検索も容易になります。共有ドライブを活用すれば、アクセス権限管理も確実に行えます。
- 経費精算の簡易化:
- Google フォームで経費精算申請フォームを作成します。申請内容は自動でスプレッドシートに集計され、承認フローもスプレッドシート上で管理できます。領収書の画像ファイルを添付させることも可能です。
- 予実管理レポートの共同編集:
- 予算データと実績データを Google スプレッドシートで管理し、関係者と共有します。リアルタイムで共同編集できるため、常に最新の状況を把握し、迅速な意思決定を支援します。
人事部門
入退社手続き、社内アンケート、研修資料の管理など、人事部門の業務も Google Workspace で効率化できます。
- 入退社手続きのペーパーレス化:
- 入社時に必要な書類提出や情報入力を Google フォームで行います。収集したデータはスプレッドシートで管理し、関連部署との情報共有もスムーズになります。退社手続きに関する書類も同様に電子化できます。
- 社内アンケートの実施・集計:
- 従業員満足度調査や研修後のアンケートなどを Google フォームで簡単に作成・配布できます。回答はリアルタイムで自動集計され、グラフ表示も可能なため、分析作業の負担が軽減されます。
- 研修資料の共有と管理:
- 研修資料(動画、スライド、ドキュメントなど)を Google ドライブに保存し、受講者と共有します。Google サイトを使って研修ポータルサイトを作成し、情報を一元化することも有効です。
総務部門
備品管理、社内通達、施設予約など、総務部門が担当する多岐にわたる業務も効率化の対象です。
- 備品管理・発注の効率化:
- Google スプレッドシートで備品リストを作成し、在庫状況や貸出状況を管理します。Google フォームを使って備品申請フォームを作成すれば、申請から承認までのプロセスをデジタル化できます。
- 社内通達・情報共有の迅速化:
- 重要な社内通達は Gmail のメーリングリストや Google Chat のスペースを活用して迅速に周知します。頻繁に参照される情報は Google サイトで社内ポータルを作成し、集約すると便利です。
- 会議室予約システムの簡易構築:
- Google カレンダーの「リソース」機能を使えば、会議室やプロジェクターなどの設備を登録し、予約状況を可視化できます。空き状況の確認や予約が簡単に行えます。
これらの例はあくまで一部です。自社の業務プロセスに合わせて Google Workspace の機能を組み合わせることで、さらなる効率化が可能です。
一歩進んだ自動化へ:AppSheetとGoogle Apps Script (GAS) の活用
Google Workspace の標準機能だけでも多くの効率化が可能ですが、AppSheet や Google Apps Script (GAS) を活用することで、より本格的な業務自動化への道が開けます。
AppSheetとは?ノーコード/ローコードで業務アプリを作成
AppSheet は、プログラミングの知識がなくても、スプレッドシートなどのデータソースから簡単に業務アプリケーションを作成できるプラットフォームです。
- 特徴: 直感的なインターフェースで、データ入力、ワークフロー、レポート表示などの機能を持つアプリを迅速に開発できます。
- 活用例(バックオフィス):
- 簡易ワークフローアプリ: 経費精算、稟議申請、休暇申請などの承認プロセスを自動化。
- データ入力アプリ: 外出先からでもスマートフォンで簡単に報告書や点検記録を入力。
- 在庫管理アプリ: バーコード読み取り機能などを活用した備品や在庫の管理。
AppSheet を活用することで、これまで手作業や複数のツールで行っていた業務を、一つのアプリケーションに集約し、効率化できます。
関連記事:AppSheetで実現するバックオフィス業務効率化|具体的な活用例とDX推進への貢献
Google Apps Script (GAS) とは?Google Workspaceの機能を自動化
GAS は、JavaScript をベースとしたスクリプト言語で、Gmail、スプレッドシート、ドキュメントなど、Google Workspace の各種サービスを連携・自動化できます。
- 特徴: Google Workspace 上で動作するため、特別な開発環境は不要です。定型的な繰り返し作業の自動化に適しています。
- 活用例(バックオフィス):
- 定型メールの自動送信: 特定の条件(例: スプレッドシートのステータス変更時)に、関係者へ自動でメール通知。
- スプレッドシートの自動処理: 複数のスプレッドシートからのデータ集計、レポートの自動作成。
- カレンダーへの自動登録: フォームからの申請内容を基に、会議や予定を自動でカレンダーに登録。
GAS は AppSheet よりも自由度が高い反面、プログラミングの知識が必要となりますが、うまく活用すればルーチンワークを大幅に削減できます。
これらのツールは、バックオフィス業務の自動化レベルを格段に引き上げる可能性を秘めています。ただし、導入や開発にはある程度の知識やノウハウが必要となるため、専門家のサポートを検討することも有効な選択肢です。
XIMIXによる支援サービス:Google Workspace活用の次の一歩へ
ここまで、Google Workspace を活用したバックオフィス業務の効率化・自動化について、基本的な活用例から AppSheet や GAS を用いた一歩進んだ活用法までご紹介しました。
「まずは標準機能から試してみたい」「AppSheet で簡単なアプリを作ってみたい」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。一方で、「自社のどの業務から手をつけるべきか分からない」「AppSheet や GAS を使った本格的な自動化は難しそう」「既存システムとの連携はどうすればいい?」といった新たな疑問や課題に直面することも考えられます。
特に、部門横断的な業務プロセスの見直しや、より高度な自動化、セキュリティ要件への対応などは、専門的な知識や経験が求められる領域です。
私たちXIMIX では、Google Workspace や Google Cloud の導入支援から、お客様の業務に合わせた最適な活用方法のご提案、AppSheet や GAS を用いたカスタムアプリケーションの開発、さらには運用サポートまで、一貫した支援を提供しています。
多くの企業様のバックオフィス業務における DX 推進をご支援してきた経験に基づき、お客様の課題や目的に合わせた最適なソリューションをご提案いたします。現状の業務分析、ツールの選定、PoC(概念実証)の実施、そして本格導入後の伴走支援まで、お客様の Google Workspace 活用を成功へと導きます。
Google Workspace を活用したバックオフィス業務の効率化・自動化にご興味のある方、より具体的な進め方について相談したい方は、ぜひお気軽に XIMIX までお問い合わせください。
XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。
まとめ
この記事では、Google Workspace を活用して、経理・人事・総務といったバックオフィス部門の業務を効率化・自動化するための入門的な活用例をご紹介しました。
- Google Workspace は、クラウドベースでの情報共有や共同作業を容易にし、バックオフィス業務の効率化に適したツールです。
- 標準機能(ドライブ、フォーム、スプレッドシートなど)だけでも、ペーパーレス化や定型業務の改善が可能です。
- AppSheet や GAS を活用すれば、より高度な業務自動化も実現できます。
バックオフィス業務の効率化は、従業員の負担軽減だけでなく、生産性向上やコア業務への集中にも繋がります。まずは、自社の業務の中で、Google Workspace を活用して改善できそうな小さなステップから始めてみてはいかがでしょうか。
もし、導入や活用方法、さらなる自動化についてお困りの場合は、専門家の支援を検討することも有効です。XIMIX は、お客様の状況に合わせた最適な Google Workspace 活用をサポートいたします。この記事が、貴社のバックオフィス DX 推進の一助となれば幸いです。
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