データ分析基盤はどう構築する?事前に把握しておきたい基本的な考え方【BigQuery】

 2025,04,22 2025.07.18

はじめに

DX推進が不可欠となった現代、多くの企業がデータ活用を重要課題と捉えています。具体的な目的を設定し、分析したいデータも見えてきた。その次に考えるべきは「どこで、どのようにデータを分析するか?」という、データ活用の成否を左右するデータ分析基盤の構築です。

しかし、中堅・大企業のDX推進担当者様からは、このような声がよく聞かれます。

  • 「データ分析基盤と言われても、何から手をつければ良いかわからない」

  • 「Excelでのデータ集計に限界を感じているが、最適な移行先は?」

  • 「自社に合った分析基盤を、失敗せずに構築するための具体的な進め方を知りたい」

データ分析基盤は、データ活用の重要な「土台」ですが、その構築は専門知識も要するため、最初のステップでつまずきやすいのも事実です。

本記事では、データ分析基盤の構築を本格的に検討し始めた方々を対象に、最新の動向を踏まえ、以下の点を網羅的かつ分かりやすく解説します。

  • データ分析基盤の基本と、なぜ今必要なのか

  • ビジネスにもたらす具体的な価値(メリット)

  • 基盤を構成する主要な要素

  • 失敗しないための「構築5ステップ」

  • クラウド(特にGoogle Cloud)が最適解である理由

  • 構築・運用にかかる費用の考え方

  • 構築を成功に導くための重要ポイント

この記事を最後まで読めば、データ分析基盤構築の全体像と具体的な進め方が明確になり、貴社にとって最適な「土台」づくりに向けた、確かな一歩を踏み出せるはずです。

データ分析基盤とは? なぜ今、必要不可欠なのか?

データ分析基盤とは、企業が保有する多種多様なデータを効率的に「収集・蓄積・加工・分析・活用」するために整備された、一連のシステムやツールの組み合わせ、そしてその運用ルール全体を指します。単一の製品ではなく、データ活用のプロセス全体を支える戦略的インフラと捉えるのが適切です。

多くの企業では、基幹システム、営業支援システム(CRM)、Webサイト、各部署のExcelファイルなど、データが社内に点在し「サイロ化」しています。この状態は、以下のような深刻なビジネス課題を引き起こします。

  • 機会損失: 部門を横断した分析ができず、新たなビジネスチャンスを発見できない。

  • 生産性の低下: 必要なデータを探し、手作業で集計するのに膨大な時間がかかる。

  • 意思決定の遅延・誤り: データの鮮度や正確性が担保されず、勘と経験に頼った判断から脱却できない。

  • ガバナンスの欠如: 誰がどのデータを使っているか把握できず、セキュリティリスクが増大する。

データ分析基盤は、これらの課題を根本から解決し、データを真の経営資産に変えるために不可欠な投資なのです。

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データ分析基盤がもたらすビジネス価値

データ分析基盤を構築することで、単にデータが整理されるだけでなく、企業経営に直結する具体的な価値が生まれます。

①データドリブンな意思決定の高速化

散在していたデータを一元化し、高速な分析環境を整えることで、経営層から現場担当者まで、誰もが必要な時にデータへアクセスし、客観的な事実に基づいた迅速な意思決定を行えるようになります。

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②新たなビジネス機会の創出

これまで見過ごされていた顧客インサイトの発見、製品・サービスの改善点の特定、新たな収益モデルの着想など、部門横断的なデータ分析を通じて、新たなビジネス価値を創造できます。

③業務効率の大幅な向上

手作業で行っていたデータ集計やレポート作成を自動化することで、担当者はより付加価値の高い分析業務に集中できます。これにより、組織全体の生産性が飛躍的に向上します。

④顧客体験(CX)の向上

顧客の行動データや購買履歴などを統合的に分析することで、一人ひとりのニーズに合わせたパーソナライズされたコミュニケーションやサービス提供が可能になり、顧客満足度とロイヤルティを高めます。

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データ分析基盤の主要な構成要素

データ分析基盤は、データが流れる一連のプロセスを担う、複数のコンポーネントで構成されています。

①データソース

分析の元となるデータです。社内の基幹システム、CRM/SFA、Webアクセスログ、IoTデバイスのセンサーデータ、外部の公開データなど、その種類は多岐にわたります。

②データ収集・連携(ETL/ELT)

様々なデータソースからデータを抽出し(Extract)、後段のデータ蓄積層へ転送・統合するプロセスです。近年は、まずデータをそのままロード(Load)し、必要に応じて変換(Transform)するELTのアプローチが、クラウドのパワーを活かせるため主流になりつつあります。

③データ蓄積(データレイク/DWH)

収集したデータを保管する場所です。

  • データレイク: あらゆる形式の生データをそのまま大量に貯蔵する「貯水池」。柔軟性が高いのが特徴です。

  • データウェアハウス(DWH): 分析しやすいように整理・加工されたデータを格納する「倉庫」。高速な集計・分析に特化しています。

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④データ加工・処理

DWHに格納されたデータを、分析目的に合わせてさらに加工・集計する工程です。主にSQL(データベース言語)が用いられます。

⑤データ分析・可視化(BI)

加工済みのデータを分析し、結果をグラフやダッシュボードで分かりやすく可視化する工程です。Looker StudioやTableauといったBI(ビジネスインテリジェンス)ツールが活用されます。

【最重要】失敗しないためのデータ分析基盤 構築5ステップ

データ分析基盤の構築は、やみくもに進めると失敗に終わるリスクがあります。成功のためには、体系化されたステップに沿って進めることが極めて重要です。

ステップ1:目的の明確化と計画策定

「何のためにデータ分析基盤を構築するのか?」というビジネス目的を明確に定義します。 これは最も重要なステップです。「売上を10%向上させる」「解約率を5%改善する」といった具体的なKGI/KPIに落とし込み、その達成のために「どのデータを」「どのように分析する必要があるか」を定義します。この段階で経営層と現場の認識を合わせることが、後の手戻りを防ぎます。

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ステップ2:要件定義とアーキテクチャ設計

ステップ1で定めた目的を達成するために必要な機能を洗い出し、技術的な要件に落とし込みます。

  • 分析対象のデータソースは何か?

  • データ量は将来的にどれくらい増えそうか?

  • どのくらいの頻度でデータを更新する必要があるか?

  • 誰が、どのようなツールで分析するのか?

これらの要件に基づき、クラウドサービスの選定や、各コンポーネントをどう連携させるかといった全体のアーキテクチャ(構造)設計します。スケーラビリティ(拡張性)とセキュリティを特に重視することが肝要です。

ステップ3:構築と実装

設計したアーキテクチャに基づき、クラウド環境で各サービスの設定を行い、実際に基盤を構築していきます。データソースからのデータ連携パイプラインの構築、DWHのテーブル設計、BIツールでのダッシュボード作成などが主な作業です。 XIMIXのような経験豊富なパートナーと連携することで、ベストプラクティスに基づいた迅速かつ確実な構築が可能になります。

ステップ4:テストと検証

構築した基盤が要件通りに動作するかを徹底的にテストします。データが正しく連携されるか、処理速度に問題はないか、分析結果は想定通りかなどを検証します。また、実際に利用するビジネス部門のユーザーにも触ってもらい、使い勝手に関するフィードバックを得ることも重要です。

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ステップ5:運用・定着化と評価

基盤は作って終わりではありません。安定稼働のための監視やメンテナンスといった「運用」と、ビジネス部門が基盤を使いこなし、成果を出すための「定着化」の両輪が不可欠です。 利用方法に関する勉強会の開催や、分析に関する相談窓口の設置といった活用促進の取り組みが成功の鍵を握ります。そして、定期的にステップ1で設定した目的に対する貢献度を評価し、改善を繰り返していくことが重要です。

構築アプローチの選択肢:クラウド一択の時代へ

データ分析基盤の構築方法には、自社でサーバーを持つ「オンプレミス」と、クラウドサービスを利用する「クラウド」の2つがありますが、現在ではクラウドが圧倒的な主流です。

  クラウド オンプレミス
初期コスト 低い(ハードウェア購入不要) 高い(サーバー等購入費)
拡張性 非常に高い(柔軟に増減可) 低い(物理的制約)
導入速度 速い 遅い
運用負荷 低い(インフラ管理不要) 高い(専門人材が必要)
最新技術 常に利用可能 自社での導入・更新が必要
特に、扱うデータ量が予測しづらく、ビジネスの変化に迅速に対応する必要がある現代において、柔軟な拡張性とコスト効率を両立できるクラウドは、ほぼすべての企業にとって最適な選択肢と言えるでしょう。

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クラウドならGoogle Cloudが最適解である理由

数あるクラウドの中でも、Google Cloudはデータ分析基盤の構築において特に強力な選択肢です。その理由は、中核をなすサービス「BigQuery」の存在にあります。

  • 圧倒的な処理性能: ペタバイト級(テラバイトの1000倍)のデータでも、数秒から数十秒で分析結果を返す驚異的なパフォーマンスを誇ります。

  • サーバーレスで運用が容易: サーバーの管理やサイジングを一切気にする必要がなく、インフラ運用から解放されます。

  • 高いコスト効率: 実際に処理したデータ量に応じた従量課金制が基本であり、無駄なコストが発生しません。

  • 豊富な機能: 標準SQLで操作できる手軽さに加え、地理空間データ分析やAI/機械学習機能も組み込まれています。

BigQueryを中心に、データレイクに適したCloud Storage、データ連携を自動化するDataflow、高機能な無料BIツールLooker Studioなどを組み合わせることで、最先端のデータ分析基盤を迅速かつ低コストで構築できます。

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気になる費用は?構築・運用コストの考え方

データ分析基盤の構築を検討する決裁者にとって、コストは最重要関心事の一つです。クラウド、特にGoogle Cloudを利用する場合の費用の考え方を解説します。

初期構築費用

クラウドを利用する場合、ハードウェア購入費のような高額な初期投資は不要です。初期費用は主に、要件定義・設計・構築作業に対する人件費(パートナー企業への委託費など)となります。プロジェクトの規模や複雑さによって変動しますが、オンプレミスに比べて大幅に抑えられるのが一般的です。

運用・ランニングコスト

Google Cloudの運用コストは、主に「データの保存量」と「データの処理量(分析クエリの実行量)」によって決まる従量課金制です。

  • ストレージ料金: BigQueryやCloud Storageに保存しているデータ量に応じて課金されます。非常に低コストです。

  • 分析料金: BigQueryで分析クエリを実行した際に、スキャンされたデータ量に応じて課金されます。

この料金体系は、「使った分だけ支払う」ため無駄がありませんが、一方で、非効率な使い方をするとコストが想定以上にかかる可能性もあります。コストを最適化するためには、適切なパーティショニング(データの分割管理)やクエリのチューニングといった専門的な知見が重要になります。

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Google Cloudの料金体系をわかりやすく解説!課金の仕組みとコスト管理の基本

構築を成功に導くための重要ポイント

技術的な側面だけでなく、ビジネス的な観点から成功の確率を格段に高めるための3つの重要ポイントをご紹介します。これは、私たちXIMIXが数々の支援実績から得た知見でもあります。

①スモールスタートとアジャイルな改善

最初から全社規模の完璧な基盤を目指すのは現実的ではありません。まずは特定の部門やビジネス課題にスコープを絞り、小さく始めて(スモールスタート)、早く成果を出すことが重要です。その成功体験をテコに、フィードバックを取り入れながら段階的に対象範囲を広げていくアジャイルなアプローチが、最終的な成功に繋がります。

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②データガバナンスの確立

「誰が、どのデータに、どこまでアクセスできるのか」というルールを定めるデータガバナンスは、セキュリティとデータ活用の両立に不可欠です。アクセス権限の管理、データの品質管理、個人情報保護などのポリシーを初期段階でしっかりと設計しておく必要があります。

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③利用者(エンドユーザー)の巻き込み

データ分析基盤は、ビジネス部門の担当者が使って初めて価値が生まれます。構築段階から実際に利用するユーザーを巻き込み、彼らが本当に使いやすいツールは何か、どのようなダッシュボードが必要かといった意見を吸い上げることが、導入後の「使われない」という最悪の事態を防ぎます。

よくあるご質問(Q&A)

Q1. 構築にはどのくらいの期間がかかりますか?

A1. プロジェクトの規模や要件によりますが、スモールスタートの場合、目的の明確化から最初のダッシュボードが利用可能になるまで、最短で1〜3ヶ月程度で実現できるケースもあります。

Q2. 専門知識がない部門でも使いこなせますか?

A2. はい、可能です。Looker Studioのような最新のBIツールは、直感的な操作で誰でもデータを可視化・分析できるように設計されています。導入後のトレーニングやサポート体制を整えることで、データ活用の民主化を実現できます。

Q3. どのベンダーに依頼すれば良いか分かりません。

A3. クラウド、特にGoogle Cloudにおけるデータ分析基盤の構築実績が豊富かどうかが重要な選定ポイントです。アーキテクチャ設計から構築、コスト最適化、運用支援まで、一気通貫でサポートできるパートナーを選ぶことをお勧めします。

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データ分析基盤のパートナー選定で失敗しないための7つのポイント|良いベンダーの見極め方とは?

XIMIXによるデータ分析基盤構築支援

ここまで、データ分析基盤の構築について網羅的に解説してきました。しかし、実際に自社のビジネス課題と技術を最適に結びつけ、プロジェクトを成功に導くには、やはり専門的な知識と経験を持つパートナーの存在が不可欠です。

「何から手をつければ良いか、具体的なアドバイスが欲しい」 「自社の状況に合ったクラウドサービスの選定や設計をお願いしたい」 「セキュリティやコスト面での不安を解消しながら進めたい」

このようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ私たちXIMIXにご相談ください。
XIMIXはお客様のデータドリブン経営への変革を強力に支援します。

  • アセスメント・計画策定: お客様のビジネス課題を深く理解し、データ活用ロードマップの策定からご支援します。

  • 最適なアーキテクチャ設計・構築: Google Cloudのベストプラクティスに基づき、BigQueryを中核とした拡張性・安全性・コスト効率に優れた基盤を設計・構築します。

  • 運用・定着化・内製化支援: 構築して終わりではなく、お客様がデータを活用してビジネス成果を生み出し続けるための運用サポートやトレーニングまで、一気通貫で伴走します。

XIMIXは、中堅・大企業様におけるGoogle Cloudを活用したデータ分析基盤の豊富な構築・運用実績がございます。構想策定から実装、運用まで、お客様のビジネスゴール達成を全力でご支援します。

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まとめ:目的を見据え、最適な「土台」づくりを

本記事では、データ分析基盤の基本から、具体的な構築ステップ、クラウド活用のメリット、そして成功のポイントまでを詳しく解説しました。

データ分析基盤は、データを資産として活用し、ビジネスを成長させるための戦略的な「土台」です。しかし、その構築は目的達成のための「手段」であり、基盤を作ること自体がゴールではありません。

最も重要なのは、「何のためにデータを分析するのか」というビジネス目的を常に見据え、スモールスタートで成果を出し、アジャイルに改善・拡張していくことです。そのアプローチを強力に後押しするのが、Google Cloudのような柔軟で高性能なクラウドプラットフォームです。

データ分析基盤の構築という重要な一歩を、失敗なく、最短距離で成功へと導くために。ぜひ、経験豊富な私たちXIMIXをパートナーとしてご検討ください。貴社のデータ活用戦略を成功に導くための最適な「土台」づくりを、全力でご支援いたします。


データ分析基盤はどう構築する?事前に把握しておきたい基本的な考え方【BigQuery】

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