Cloud SQLとは? Google CloudのマネージドDB入門 - 特徴・メリットを分かりやすく解説

 Apr 23, 2025 10:09:02 AM 2025.04.23

はじめに

「アプリケーション開発のためにデータベースが必要だけど、サーバーの準備や運用管理が大変…」 「データベースのバックアップやパッチ適用、セキュリティ対策に時間と人手を割かれている…」 「オンプレミスのデータベースをクラウドに移行したいけど、どのサービスを選べばいいかわからない…」

企業のITシステムにおいて、データベースはデータを格納・管理するための心臓部とも言える存在です。しかし、その重要性とは裏腹に、データベースサーバーの構築から日々の運用管理(バックアップ、パッチ適用、監視、障害対応など)には、専門的な知識と多くの時間、そしてコストがかかるのが実情です。

もし、こうしたデータベースの運用管理の悩みから解放され、もっとアプリケーション開発やデータ活用といった本来注力すべき業務に集中できたら素晴らしいと思いませんか?

それを実現する強力な選択肢が、Google Cloud  が提供する「Cloud SQL」です。

この記事では、「Cloud SQLって何?」「聞いたことはあるけど、よく知らない」という方に向けて、

  • Cloud SQLの基本的な概念(マネージドサービスとは?)
  • その主な特徴とメリット
  • どのようなケースで役立つのか

などを、クラウドデータベースやマネージドサービスの利用を検討し始めた入門者の方にも分かりやすく解説していきます。Cloud SQLを理解することで、貴社のデータベース運用のあり方を変えるヒントが見つかるかもしれません。

※Google Cloud については、こちらのコラム記事もご参照ください。 
【基本編】Google Cloudとは? DX推進の基盤となる基本をわかりやすく解説
【基本編】Google Cloud導入のメリット・注意点とは? 初心者向けにわかりやすく解説

Cloud SQLとは?

Cloud SQLを理解する上で、まずは「リレーショナルデータベース」と「マネージドサービス」という2つのキーワードを押さえましょう。

そもそもリレーショナルデータベース(RDB)とは?

リレーショナルデータベース (Relational Database、RDB) とは、データをExcelの表のように、行(レコード)と列(カラム)で構成されるテーブル形式で管理するデータベースのことです。テーブル同士を関連付ける(リレーション)ことができるため、複雑なデータの整合性を保ちながら効率的に管理できます。データの操作には、一般的にSQL (Structured Query Language) というデータベース言語が用いられます。 企業システムで最も広く利用されているタイプのデータベースであり、MySQL、PostgreSQL、Microsoft SQL Serverなどが代表的なRDBソフトウェアです。

「マネージドサービス」の意味 

これがCloud SQLを理解する上で最も重要なポイントです。

従来、企業がデータベースを利用する場合、物理サーバーや仮想サーバーを用意し、OSをインストールし、データベースソフトウェア(MySQLなど)をインストール・設定し、さらに日々のバックアップ、ソフトウェアのアップデートやセキュリティパッチの適用、稼働状況の監視、障害発生時の対応といった運用管理作業の全てを、自社の担当者が行う必要がありました。

これに対し、「マネージドサービス」とは、これらの煩雑で専門知識が必要な運用管理作業の多くを、クラウドサービス提供事業者(この場合はGoogle Cloud)が肩代わりしてくれるサービス形態のことです。

Cloud SQLは、まさにこのフルマネージドなリレーショナルデータベースサービスなのです。ユーザーは、面倒なインフラ管理や運用タスクから解放され、データベースの利用そのもの、つまりアプリケーションからのデータの読み書きやデータ分析といった、ビジネス価値に直結する活動にリソースを集中させることができます。

Cloud SQLがサポートするデータベースエンジン

Cloud SQLは、世界中で広く利用されている以下の3つの主要なリレーショナルデータベースエンジンに対応しています。

  • MySQL
  • PostgreSQL
  • SQL Server

これにより、多くの企業が既存のシステムで利用しているデータベースや、開発者が使い慣れたデータベースエンジンを、そのままGoogle Cloudのマネージドサービスとして利用開始できます。

Cloud SQLの主な特徴 - Google Cloudならではの強み

Cloud SQLは、単に運用を楽にするだけでなく、Google Cloudの強力なインフラと先進技術に基づいた、以下のような優れた特徴を備えています。

  • フルマネージドで運用が圧倒的に楽に: データベースソフトウェアのインストールや設定はもちろん、セキュリティパッチの適用、マイナーバージョンのアップデート、日次での自動バックアップ、ポイントインタイムリカバリ(誤操作などでデータを失う前の特定の時点に復元する機能)などが自動化されています。「データベースの面倒な運用管理はGoogleにお任せ」できるのです。

  • 高可用性(HA)構成でダウンタイムを最小化: 簡単な設定で高可用性(HA: High Availability)構成を組むことができます。これは、本番用(プライマリ)のデータベースインスタンスとは別に、リアルタイムで同期された待機用(スタンバイ)のインスタンスを、物理的に異なる場所(ゾーン)に自動で用意する仕組みです。万が一、プライマリインスタンスに障害が発生しても、自動的にスタンバイインスタンスに処理が切り替わる(自動フェイルオーバー)ため、データベースの停止時間を最小限に抑え、ビジネスの継続性を高めます。

  • 柔軟なスケーラビリティでビジネス成長に対応: アプリケーションの負荷(アクセス数やデータ量)の増減に合わせて、データベースインスタンスのCPUコア数、メモリ容量、ストレージ容量を、Google Cloudコンソールやコマンドラインツールから簡単に、かつ多くの場合オンライン(サービスを停止せずに)で変更(スケールアップ/ダウン)できます。ストレージ容量は、設定した上限まで自動で拡張させることも可能です。これにより、初期に過大なリソースを用意する必要がなく、ビジネスの成長に合わせて柔軟にリソースを最適化できます。

  • 堅牢なセキュリティ機能: Google Cloudが提供する多層的なセキュリティ機能を利用できます。VPC(Virtual Private Cloud)によるプライベートネットワーク接続、保存データ(ディスク上のデータ)と転送中データの自動暗号化、Cloud IAM (Identity and Access Management) と連携した詳細なアクセス権限管理、ファイアウォール設定などにより、データベースを不正アクセスや脅威から保護します。

  • 他のGoogle Cloudサービスとのシームレスな連携: Cloud SQLは、他のGoogle Cloudサービスとスムーズに連携できるように設計されています。Compute Engine上の仮想マシン、Google Kubernetes Engine (GKE) 上のコンテナ、App Engine上のアプリケーションなどから容易に接続できます。また、BigQueryと連携し、Cloud SQLのデータをBigQueryにロードして高度なデータ分析を行うといった活用も可能です。

Cloud SQLを利用する5つの大きなメリット

これらの特徴により、Cloud SQLを利用することで企業は以下のような大きなメリットを享受できます。

  1. メリット1: 運用管理コスト(人・時間)の大幅削減: これが最大のメリットと言えるでしょう。サーバー管理、OS管理、DBパッチ適用、バックアップ運用といった、これまでインフラエンジニアやDB管理者が行っていた定常的な運用作業から解放されます。これにより、担当者はより戦略的で付加価値の高い業務(アプリケーション開発の支援、データ活用推進、パフォーマンス改善など)に時間と労力を振り向けることができます。

  2. メリット2: 高い信頼性とビジネス継続性の確保: Googleのグローバルなインフラストラクチャ上で稼働するため、高い安定性と信頼性が期待できます。さらに、自動バックアップや容易に設定できるHA構成により、データ損失のリスクを低減し、万が一の障害発生時にも迅速な復旧が可能となり、ビジネスの継続性を高めます。

  3. メリット3: ビジネスの要求に応じた柔軟な拡張性: トラフィックの急増やデータ量の増大にも、迅速かつ容易にデータベースリソースを拡張して対応できます。これにより、ビジネスチャンスを逃すことなく、サービスの成長を支えることができます。スモールスタートして、必要に応じて拡張できるため、初期投資を抑えられる点も魅力です。

  4. メリット4: セキュリティ対策の強化と維持負担の軽減: Google Cloudが提供する最新のセキュリティ技術と専門知識を活用できます。暗号化やアクセス制御、パッチ適用などが標準で提供・自動化されるため、自社で高度なセキュリティ対策を構築・維持する負担とリスクを大幅に軽減できます。

  5. メリット5: トータルコスト(TCO)の最適化: Cloud SQLは利用した分だけ料金が発生する従量課金制が基本です。初期のハードウェア投資が不要な点や、運用管理コスト(人件費、ツール費用など)の大幅な削減効果を考慮すると、データベース運用にかかる総所有コスト(TCO: Total Cost of Ownership)を削減できる可能性が高くなります。

どんな場合にCloud SQLが適しているか? (ユースケース例)

Cloud SQLは、その特徴とメリットから、以下のような様々なシーンで有効な選択肢となります。

  • WebアプリケーションやモバイルアプリのバックエンドDBとして: ユーザー認証情報、商品カタログ、注文履歴、投稿データなど、動的なコンテンツを管理するためのデータベースとして広く利用されています。スケーラビリティと可用性が求められるサービスに最適です。

  • 社内業務システム(基幹システム、情報系システム)のDBとして: 顧客管理(CRM)、販売管理、在庫管理、人事管理など、様々な業務システムのデータベース基盤として利用できます。安定稼働と運用負荷軽減のメリットが活きます。

  • オンプレミスDBからの移行先として: 現在オンプレミス環境で稼働しているMySQL、PostgreSQL、SQL Serverのデータベースを、大きなアプリケーション改修なしにクラウドへ移行したい場合に、有力な移行先候補となります。Google Cloudへの移行を検討する際の最初のステップとしても適しています。

  • 開発・テスト環境のDBとして: 開発者が必要な時に迅速にデータベース環境を構築し、不要になったら簡単に削除できるため、開発・テストサイクルの効率化に貢献します。

  • CMS(WordPressなど)のDBとして: ブログや企業のウェブサイトを構築するためのCMS(コンテンツ管理システム)であるWordPressなどのデータベースとしても利用できます。

Cloud SQLを始めるには (簡単な流れ)

Cloud SQLの利用開始は、比較的簡単なステップで進められます。

  1. Google Cloud プロジェクトの準備: まだGoogle Cloudを利用していない場合は、プロジェクトを作成します。
  2. Cloud SQL APIの有効化: プロジェクト内でCloud SQLを利用するために、APIを有効にします(通常、初回利用時に促されます)。
  3. Cloud SQLインスタンスの作成: Google Cloudコンソール(Web管理画面)から、「Cloud SQL」サービスを選択し、「インスタンスを作成」ボタンをクリックします。
    1. 利用したいデータベースエンジン(MySQL, PostgreSQL, SQL Server)を選択します。
    2. インスタンス名、管理者パスワード、データベースのバージョン、デプロイするリージョン(地域)、マシンタイプ(CPUやメモリのスペック)などを画面の指示に従って設定します。高可用性(HA)などのオプションもここで選択できます。
  4. 接続情報の確認とアプリケーションからの接続: インスタンスが作成されると、接続用のIPアドレスなどの情報が表示されます。この情報を使って、Compute EngineやGKE、App Engine上のアプリケーション、あるいはローカルの開発環境などからデータベースに接続します。

もちろん、詳細な設定項目は多岐にわたりますが、基本的なインスタンス作成までの流れは上記のようにシンプルです。

(補足)他のGoogle Cloudデータベースとの使い分け

Google Cloudには、Cloud SQL以外にも多様なデータベースサービスが存在します。それぞれに得意な領域があるため、用途に応じて最適なサービスを選択することが重要です。

  • Cloud Spanner: 無制限のスケーラビリティとグローバルな分散、かつ強い整合性(トランザクションの一貫性)が求められる、極めてミッションクリティカルな大規模システム向けのリレーショナルデータベースサービス。
  • Cloud Bigtable: ペタバイト級の超大規模データを扱い、非常に高いスループットでの読み書きが必要な、リアルタイム分析やIoTデータの処理などに適したNoSQL(Key-Valueストア)データベース。
  • Firestore / Firebase Realtime Database: Webアプリやモバイルアプリ開発に特化し、柔軟なデータ構造(ドキュメント形式)とリアルタイム同期機能を持つNoSQLデータベース。オフラインサポートなども充実。

一般的なWebアプリケーションや業務システムで、使い慣れたMySQL、PostgreSQL、SQL Serverを利用したい、かつ運用管理の手間を削減したい、という場合には、Cloud SQLが最も有力な第一候補となるでしょう。

XIMIXによる導入・移行・運用支援

Cloud SQLは、データベース運用のあり方を大きく変革する可能性を秘めた強力なサービスです。しかし、そのメリットを最大限に引き出すためには、適切なサイジング、既存システムからのスムーズな移行計画、セキュリティやネットワークの適切な設計、そして導入後のパフォーマンス監視と最適化が不可欠です。

特に、

  • 「自社のアプリケーションに最適なCloud SQLの構成(エンジン、バージョン、サイズ、HA設定など)が分からない」
  • 「数十GB、数百GBを超える既存データベースからのダウンタイムを最小限にした移行方法を知りたい」
  • 「オンプレミス環境や他のクラウド環境との安全なネットワーク接続をどう設計すればよいか?」
  • 「Cloud SQLのパフォーマンスを最大限に引き出すための設定やクエリチューニングについてアドバイスが欲しい」

といった課題や疑問をお持ちの場合、専門家の支援が有効です。

私たちXIMIX は、Google Cloudのプレミアパートナーとして、Cloud SQLをはじめとするGoogle Cloudの導入・移行・運用において豊富な実績と専門知識を有しています。

お客様のビジネス要件、技術的要件を詳細にヒアリングさせていただき、最適な構成のご提案、既存環境からの安全かつ効率的なデータベース移行計画の策定・実行支援、セキュアなネットワーク環境の設計・構築、そして導入後の運用監視体制の構築やパフォーマンスチューニング、コスト最適化まで、お客様の活用をトータルでサポートいたします。

Google Cloud認定資格を持つ経験豊富なエンジニアが、お客様のデータベース環境のクラウド化、そしてその先のデータ活用までを視野に入れたご支援を提供します。

まとめ

Cloud SQLは、Google Cloudが提供するフルマネージドなリレーショナルデータベースサービスであり、MySQL、PostgreSQL、SQL Serverといった広く使われているデータベースエンジンに対応しています。

その最大のメリットは、パッチ適用、バックアップ、高可用性構成といった煩雑な運用管理作業から解放され、開発者や管理者が本来注力すべき業務に集中できる点にあります。加えて、Google Cloudの堅牢なインフラ上で稼働することによる高い信頼性・可用性、柔軟なスケーラビリティ、強固なセキュリティも大きな魅力です。

Webアプリケーションのバックエンドから社内業務システム、オンプレミスDBの移行先まで、幅広い用途で活用でき、データベース運用管理の負荷軽減やクラウド化を検討している企業にとって、非常に有力な選択肢となります。

Cloud SQLの導入や、既存データベースからの移行、より高度な活用にご興味をお持ちでしたら、ぜひお気軽にXIMIXまでお問い合わせください。


Cloud SQLとは? Google CloudのマネージドDB入門 - 特徴・メリットを分かりやすく解説

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