Compute Engine(GCE)とは?仮想サーバーの基本からメリット、用途まで【入門編】

 2025,04,22 2025.06.27

はじめに

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進において、クラウドコンピューティングの活用は今や不可欠です。中でも、Google Cloud はその柔軟性、拡張性、そして先進性から多くの企業に選ばれています。しかし、「クラウド」や「仮想サーバー」と聞いても、具体的に自社のビジネスにどう役立つのか、イメージが湧きにくいと感じる方も少なくないでしょう。

この記事では、DX推進を検討されている企業の決裁者層の方々を対象に、Google Cloud の中核サービスである Compute Engine (GCE) とは何か、その基礎となる仮想サーバーの概念から、ビジネス上のメリット、具体的な料金体系、そしてAWSとの違いまで、網羅的かつ分かりやすく解説します。

この記事を最後まで読めば、GCEの全体像を深く理解し、自社でのクラウド活用に向けた具体的な一歩を踏み出すことができるでしょう。

Compute Engine (GCE) とは?

Compute Engine (GCE) とは、Google Cloud が提供する IaaS (Infrastructure as a Service) の一つで、Googleの高性能なインフラ上で仮想サーバー(仮想マシン、VMとも呼ばれる)を作成・実行できるサービスです。

物理的なサーバーを購入・管理することなく、必要な時に必要な分だけコンピュータリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)を迅速に調達できるのが最大の特徴です。

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そもそも「仮想サーバー」とは?

「仮想サーバー」とは、物理的な1台の高性能コンピューター(サーバー)のリソースを、ソフトウェアによって論理的に分割し、あたかも複数台の独立したサーバーのように見せる技術です。

従来の物理サーバー(オンプレミス)では、機器の購入、設置場所の確保、OSのインストール、保守運用など、多くの手間とコストが発生していました。仮想サーバーは、こうした物理的な制約から解放され、ビジネスの要求に応じて迅速かつ柔軟にITインフラを利用することを可能にします。GCEは、この仮想サーバーをGoogleの堅牢なインフラ上で手軽に利用できるサービスとご理解ください。

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なぜGCEが選ばれるのか?ビジネスにおけるメリット

GCEを導入することは、特にDXを推進する中堅〜大企業にとって、計り知れないメリットをもたらします。

①インフラ管理の負担軽減とコスト最適化

物理サーバーの購入、設置、保守といった煩雑な業務とコストから解放されます。サーバー管理に割いていた人的リソースを、より付加価値の高い戦略的なIT業務へシフトできます。さらに、後述する多様な割引オプションを活用することで、TCO(総所有コスト)の大幅な削減が期待できます。

②ビジネスの変化に即応できる圧倒的な俊敏性

新規事業の立ち上げやサービスの急拡大時にも、必要なITリソースを数分で調達・拡張できます。これにより、市場投入までの時間を劇的に短縮し、貴重なビジネスチャンスを逃しません。

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③Googleの高性能インフラによる高いパフォーマンスと安定性

GCEは、YouTubeやGoogle検索といった巨大サービスを支えるGoogleの高性能インフラとグローバルネットワーク上で稼働します。これにより、ミッションクリティカルなシステムでも安心して利用できる高いパフォーマンスと安定性を確保できます。特にライブマイグレーション機能は、インフラのメンテナンス時にもVMを停止させることなく運用を継続できるため、可用性を重視するシステムには不可欠です。

関連記事:なぜGoogle Cloudはグローバル展開の最適解なのか?理由を解説

④多層的なセキュリティ対策

Google Cloudは、多層的なセキュリティによって保護されており、専門的な知識がなくても、デフォルトで高度なセキュリティ環境を利用できます。VPC(Virtual Private Cloud)によるネットワーク分離や、詳細なIAM(Identity and Access Management)設定により、セキュアな環境を容易に構築できます。

関連記事:
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⑤高度なDXを実現するGoogle Cloudサービスとの連携

GCEは、データ分析の「BigQuery」、AI/機械学習プラットフォームの「Vertex AI」、コンテナ管理の「Google Kubernetes Engine (GKE)」など、他のGoogle Cloudサービスとシームレスに連携できます。これにより、単なるインフラ利用に留まらず、データ活用やAI導入といった、より高度なDXの実現を加速させます。

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Compute Engineの主な機能と特徴

GCEのメリットを支える、代表的な機能と特徴を見ていきましょう。

①柔軟なカスタマイズが可能な「マシンタイプ」

ワークロードの要件に合わせて、CPU、メモリ、ストレージを柔軟に組み合わせることができます。汎用的なタイプから、計算処理に特化した「コンピューティング最適化」、メモリを大量に消費するタスク向けの「メモリ最適化」まで、多種多様なマシンタイプが用意されており、常に最適なスペックでVMを稼働させられます。

②高品質な「グローバルネットワーク」

Googleが独自に敷設した高品質なグローバル光ファイバーネットワークを利用できるため、世界中のリージョン間で高速かつ安定した通信が可能です。これにより、グローバル展開するサービスのレスポンス向上や、海外拠点とのデータ連携をスムーズに行えます。

③可用性を高める「ライブマイグレーション」

Google側でのハードウェアメンテナンスやソフトウェアアップデートが必要になった際、GCEは稼働中の仮想マシンを停止させることなく、別のホストマシンに自動で移動させます。ユーザーはメンテナンスを意識することなく、サービスを継続できるため、高い可用性が求められるシステムにおいて絶大な効果を発揮します。

GCEの料金体系:コストを最適化する仕組み

GCEの料金は、利用した分だけ秒単位で課金される「従量課金制」が基本ですが、継続的な利用に対して大幅な割引が適用される仕組みが充実しています。

①継続利用割引 (SUDs)

特定のVMインスタンスを1ヶ月のうち一定期間以上利用するだけで、申し込み不要で自動的に適用される割引です。使えば使うほどお得になるため、継続的に稼働させるシステムに適しています。

②確約利用割引 (CUDs)

1年または3年の継続利用を約束(コミット)することで、最大で70%以上もの大幅な割引を受けられる制度です。CPUコア数とメモリ量を対象にコミットメントを行うため、VMのインスタンスタイプを変更しても割引が継続される柔軟性があります。予算計画が立てやすく、コストを劇的に削減できるため、多くの企業で活用されています。

③Spot VMs (旧プリエンプティブルVM)

Google Cloudの余剰リソースを最大91%割引という非常に安価な価格で利用できるインスタンスです。ただし、システム側でリソースが必要になった場合は最大30秒前の通知で停止(プリエンプト)される可能性があります。バッチ処理やデータ分析、CI/CD環境など、中断が許容されるワークロードで活用することで、コンピューティングコストを大幅に抑えられます。

【比較】Compute Engine と AWS EC2 の違いは?

クラウドサービスを検討する上で、Amazon Web Services (AWS) の「EC2 (Elastic Compute Cloud)」との比較は避けられません。どちらも優れたサービスですが、いくつかの重要な違いがあります。

項目

Google Compute Engine (GCE)

AWS EC2 (Elastic Compute Cloud)

ネットワーク

Google独自の高品質なグローバルネットワーク。リージョン間通信が高速・低遅延。

標準的なインターネットインフラ。リージョン間通信はGCEに比べて高コストになる傾向。

ライブマイグレーション

標準機能として提供。メンテナンス時の無停止運用が可能。

標準では提供されず、可用性担保にはシステム側での作り込みが必要。

料金体系

秒単位の課金。継続利用割引(SUD)が自動適用されるなど、柔軟性が高い。

秒単位または時間単位。Savings Plansやリザーブドインスタンスによる割引がある。

カスタム性

カスタムマシンタイプにより、CPUとメモリを自由に組み合わせ可能。

インスタンスタイプが固定されており、GCEほどの柔軟性はない。

起動時間

インスタンスの起動が非常に高速であると定評がある。

GCEと比較すると、起動にやや時間がかかる場合がある。

XIMIX (NI+C) の視点: どちらを選ぶべきかは、既存のシステム環境や重視するポイントによって異なります。例えば、グローバル展開を前提とし、高品質なネットワークと無停止運用を重視する場合はGCEが優位です。一方で、AWSのエコシステムに慣れている、あるいは特定のAWSサービスとの連携が必須な場合はEC2が選択肢となります。お客様の状況に合わせた最適な選定をご支援します。

Compute Engineの主な用途

GCEの柔軟性と拡張性は、様々なビジネスシーンで活用されています。

  • Webサイト・Webアプリケーションのホスティング: コーポレートサイトやECサイト、業務アプリケーションの基盤として。アクセス数に応じたスケーリングが容易です。

  • 基幹システム(ERP, CRMなど)の実行環境: オンプレミスで稼働していた基幹システムをクラウドへ移行(リフト&シフト)する際の有力な選択肢です。

  • 大規模データ処理・バッチ処理: 一時的に高い計算能力が必要なタスクにSpot VMsなどを活用し、コストを抑えながら高速処理を実現します。

  • 開発・テスト環境: 必要な時にだけ環境を構築し、不要になったらすぐに破棄することで、開発サイクルの高速化とコスト効率化を両立できます。

  • リモートデスクトップ・仮想デスクトップ (VDI) 基盤: セキュアなリモートワーク環境を迅速に構築・提供します。

デメリットと注意点

非常に強力なGCEですが、導入・運用にあたってはいくつかの注意点があります。

①専門知識の必要性

GCEの機能を最大限に引き出し、コストを最適化するには、マシンタイプの適切な選定、VPCネットワークの設計、セキュリティ設定など、ある程度の専門知識が求められます。設定を誤ると、パフォーマンスが出なかったり、不要なコストが発生したりする可能性があります。

②コスト管理の複雑さ

従量課金制と多様な割引はメリットである一方、管理が複雑になる側面もあります。意図しないリソースの起動や設定ミスが思わぬ高額請求に繋がるリスクもあるため、利用状況を常にモニタリングし、コストを最適化する仕組みが重要です。

③運用・監視体制の構築

クラウドを利用するとインフラの物理的な管理は不要になりますが、OSやミドルウェアのアップデート、セキュリティパッチ適用、パフォーマンス監視といった運用業務は依然として必要です。これらの継続的な運用管理体制をどう構築するかは重要な課題です。

GCEの始め方(基本3ステップ)

専門知識が必要とはいえ、基本的なVMを起動するまでの手順は非常にシンプルです。

  1. Google Cloudプロジェクトの作成: 全てのリソースを管理する単位となる「プロジェクト」を作成します。

  2. Compute Engine APIの有効化: プロジェクト内でGCEを利用できるよう、APIを有効にします。

  3. VMインスタンスの作成: リージョン(地域)とゾーン(データセンター)、マシンタイプ、OSイメージなどを選択し、数クリックで仮想サーバーを作成・起動できます。

この手軽さがGoogle Cloudの魅力ですが、本番環境での利用には前述したような設計やセキュリティ設定が不可欠です。

GCEの導入・運用はパートナーとの連携が成功の鍵

GCEを戦略的に活用し、ビジネスの成果に繋げるには、深い知識と経験を持つパートナーとの連携が極めて有効です。

XIMIX は中堅〜大企業様をご支援してきた豊富な実績に基づき、お客様の課題を解決します。

  • 最適なアーキテクチャ設計: お客様のビジネスとシステム要件をヒアリングし、GCEのサイジング、ネットワーク設計、移行計画などを具体化します。確約利用割引 (CUD) を活用したコスト最適化シミュレーションもご提供可能です。

  • セキュアな環境構築・移行 (SI): 設計に基づき、セキュアで効率的なGCE環境を構築します。オンプレミスからの移行も、豊富な実績を持つNI+Cにお任せください。

  • 継続的な運用・保守とコスト最適化: 構築後の監視、障害対応、セキュリティ管理といった運用負荷を軽減します。さらに、利用状況を分析し、継続的なコスト削減やパフォーマンス向上をご支援します。

GCEやGoogle Cloudの導入にご興味のある方、あるいは現在利用中の環境に課題を感じている方は、ぜひお気軽にXIMIXにご相談ください。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

よくある質問 (FAQ)

Q1. GCEの料金はどれくらいかかりますか?

A1. 料金は利用するVMのスペック(CPU, メモリ)、稼働時間、ストレージ容量、ネットワーク利用量などによって決まります。継続利用割引や確約利用割引を適用することで大幅にコストを削減できます。具体的な料金は、Google Cloudの公式サイトにある料金計算ツールでシミュレーション可能です。

関連記事:Google Cloud 料金計算ツールの使い方 - Pricing Calculatorでコストを簡単見積もり!

Q2. セキュリティは本当に大丈夫ですか?

A2. はい。Google Cloudは世界最高レベルのセキュリティ専門家チームによって24時間365日保護されています。データは保存時も転送時も暗号化され、多層的な防御機構により保護されます。適切な設定を行うことで、オンプレミスよりも堅牢なセキュリティ環境を構築することも可能です。

Q3. GCEを学ぶにはどうすればよいですか?

A3. Google Cloudが提供する公式ドキュメントや、無料で学習できる「Google Cloud Skills Boost」などのトレーニングプログラムが充実しています。しかし、ビジネスで迅速に成果を出すためには、XIMIXのような経験豊富なパートナーにご相談いただくのが最も効率的です。

まとめ

今回は、Google Cloudの中核サービスであるCompute Engine (GCE)について、基本概念からメリット、料金体系、AWSとの比較、そして具体的な用途までを網羅的に解説しました。

GCEは、インフラ管理の負担をなくし、ビジネスの俊敏性を高め、コスト効率の良いIT基盤を実現する強力なサービスです。Webサイトのホスティングから基幹システムのクラウド移行、データ分析基盤まで、企業のDXをあらゆる側面から支えます。

この記事が、皆様のクラウド活用検討の一助となれば幸いです。Google CloudやGCEの導入・活用をさらに加速させたい、専門家の知見を借りたいと感じられた際には、ぜひXIMIXまでお声がけください。


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