なぜ優れた顧客体験(CX)は従業員体験(EX)から生まれるのか?DXで実現する好循環の作り方【入門編】

 2025,07,16 2025.12.24

はじめに:投資対効果が出ないCX施策の「盲点」とは

多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として顧客体験(CX)の向上に取り組み、MAツールやCRM、Webサイトのリニューアルに多額の投資を行っています。しかし、「システムは導入したが、顧客満足度(CS)や売上が期待通りに上がらない」という悩みを抱える経営者や事業責任者は少なくありません。

その根本原因の多くは、従業員体験(EX:Employee Experience)の軽視にあります。

「顧客に最高のサービスを」と叫ぶ一方で、従業員が使いにくいシステム、非効率な業務プロセス、サイロ化された情報環境で疲弊していては、良質なサービスを提供することは不可能です。CXとEXは、コインの表裏のように密接に関係しています。

本記事では、XIMIXが多くの企業のDX支援で培った知見をもとに、以下のポイントを解説します。

  • データで見る「CXとEX」の相関関係とメカニズム

  • 両者の連携を阻む「データのサイロ化」という壁

  • Google Cloud / Google Workspace を活用した、実践的な好循環の作り方

CX(顧客体験)とEX(従業員体験)の定義と深い相関関係

まずは言葉の定義と、ビジネスにおける両者の関係性を明確にします。これらを切り離して考えること自体が、現代のビジネスにおいてはリスクとなり得ます。

CXとEXの違いと定義

  • CX(Customer Experience): 顧客が製品やサービスの認知から、購入、利用、サポート、解約に至るまでの「全プロセス」で感じる体験の総体です。機能的価値だけでなく、「問い合わせへの対応が心地よかった」「Webサイトが使いやすかった」といった感情的価値も含まれます。CXの向上は、LTV(顧客生涯価値)の最大化に直結します。

  • EX(Employee Experience): 従業員が入社してから退社するまでの間に、組織の中で経験するすべての体験です。給与や福利厚生だけでなく、ITツールの使いやすさ、業務の効率性、心理的安全性、成長実感などが含まれます。EXの向上は、エンゲージメントと生産性の向上に直結します。

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「サービス・プロフィット・チェーン」が示す因果関係

ハーバード・ビジネス・スクールのへスケット教授らが提唱した「サービス・プロフィット・チェーン」は、従業員満足、顧客満足、そして企業の利益因果関係を論理的に証明しています。

  1. EXの質が高まる(働きやすい環境・ツール・評価)

  2. 従業員満足度(ES)とロイヤリティが向上する

  3. サービスの品質・生産性が向上する(迅速で丁寧な対応)

  4. 顧客満足度(CS)とCXが向上する

  5. 顧客ロイヤリティが高まり、企業の収益・成長につながる

実際に、従業員エンゲージメントが高い企業は、そうでない企業と比較して顧客評価が明らかに高いという調査結果も多数存在します。従業員は、企業の価値を顧客に届ける「ラストワンマイル」であり、彼らのコンディションこそがCXの天井を決めるのです。

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なぜ多くの企業でCXとEXは分断されてしまうのか

理論上は理解していても、実践できている企業はわずかです。なぜなら、企業の構造そのものがCXとEXを分断するようにできているからです。

組織とデータの「サイロ化」という壁

最も大きな障壁は「サイロ化(縦割り)」です。

  • 組織の分断: マーケティング部は「顧客獲得」のみ、人事は「採用・労務」のみ、情シスは「守り」のみを管轄し、横串で「体験」を設計する責任者が不在です。

  • データの分断: 

    • 顧客データ(CRM, Webログ)

    • 従業員データ(人事システム, 勤怠)

    • コミュニケーションデータ(メール, チャット)

これらが別々のデータベースに格納されており、「どの従業員のどのような働きが、高い顧客満足を生んだのか」という因果関係が見えなくなっています。

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現場の声が経営に届かない「フィードバックの断絶」

例えば、カスタマーサポートの現場で「検索システムが遅くて顧客を待たせている」というEXの課題があったとします。しかし、データが連携されていないため、経営層には単に「対応時間が長い(オペレーターのスキル不足)」と誤って伝わり、無意味な研修が行われるといったミスマッチが頻発します。

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Google Cloud で実現する「CX-EX連携」具体的アプローチ

この分断を解消し、CXとEXを統合的に向上させるためには、強力な「データ基盤」と「コラボレーション環境」が不可欠です。Google Cloud と Google Workspace を活用した、XIMIX推奨の具体的アプローチを紹介します。

アプローチ1:BigQueryによる「体験データ」の統合分析

CXとEXの相関を可視化するには、散在するデータを一箇所に集める必要があります。Google Cloud のデータウェアハウス BigQuery は、ペタバイト規模のデータを高速に処理できるため、この基盤として最適です。

【具体的な活用シナリオ】

  • データの統合: コールセンターの通話ログ(CXデータ)と、担当オペレーターの勤怠・研修受講歴・使用ツールログ(EXデータ)をBigQueryに集約します。

  • 因果の発見: BIツール Looker で可視化することで、「特定の研修を受けた従業員は、顧客からの感謝の言葉が多い」「残業時間が一定を超えた週は、対応品質スコアが下がる」といった具体的な相関関係を発見できます。

  • アクション: データに基づき、ハイパフォーマーの行動特性を横展開したり、疲弊している部署へ即座に人員を補充したりと、根拠のある改善が可能になります。

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アプローチ2:生成AI(Gemini)による「ムダ業務」の削減

従業員の時間を奪う「付加価値の低い作業」を減らすことは、EX向上の特効薬であり、結果として顧客に向き合う時間を生み出しCX向上に繋がります。ここでは Google の生成AI、Gemini (on Vertex AI / Workspace) が活躍します。

【具体的な活用シナリオ】

  • 問い合わせ対応の自動化: 過去の膨大なマニュアルや対応履歴をAIに学習させ、従業員向けの「対話型ナレッジ検索」を構築。顧客からの難解な質問に対し、AIが瞬時に回答案を提示することで、保留時間を短縮(CX↑)し、担当者の心理的負担を軽減(EX↑)します。

  • 事務作業の代行: 議事録作成、日報作成、メール下書きなどをAIが支援。従業員は「人間にしかできない創造的な業務」や「丁寧な顧客対応」に集中できるようになります。

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アプローチ3:Google Workspace による「組織の壁」の破壊

情報共有の遅れは、そのまま顧客への回答遅延に直結します。Google Workspace は、単なる事務ツールではなく、組織の壁を越えるためのコミュニケーション基盤です。

【具体的な活用シナリオ】

  • リアルタイムなトラブルシューティング: 顧客からクレームが入った際、Google Chat のスペースに関連部署(営業、開発、サポート)を即座に招集。Google ドキュメントで状況を共同編集しながらリアルタイムに情報共有し、Google Meet で対策を決定します。

  • サイロの解消: メールのような「宛先への一方通行」ではなく、クラウド上のドキュメントを中心とした「全員が同じ情報を見る」スタイルに変革することで、部門間の伝言ゲームをなくし、組織全体の即応力を高めます。

成功へのロードマップ:ツール導入で終わらせないために

優れたツールも、導入するだけでは効果を発揮しません。CXとEXの好循環を生み出すための、プロジェクト推進のポイントを解説します。

①EXとCXを連動させたKPI設計

「従業員満足度」と「顧客満足度」を別々に評価するのではなく、連動したKPIを設計しましょう。

  • 例:従業員の「ツール検索時間」を削減し、それを顧客の「待ち時間」短縮とセットで評価する。

  • 例:従業員の「提案件数」だけでなく、その提案による顧客の「成功度(利用率向上など)」を評価指標に組み込む。

②小さな成功(クイックウィン)の積み上げ

全社一斉の改革はリスクが高く、現場の反発を招きがちです。まずは「カスタマーサポート部門」や「特定の営業チーム」など、CXとEXの接点が明確な領域からスモールスタートを切ることを推奨します。そこで「働きやすくなり、顧客からも褒められた」という成功事例を作り、他部署へ波及させていくアプローチが有効です。

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③経営層のコミットメント

EXへの投資(IT環境整備や待遇改善)はコストではなく、将来の売上(CX)を生むための「投資」です。この視点の切り替えは現場だけでは困難であり、経営層が「従業員体験こそが競争力の源泉である」と明言し、コミットし続ける必要があります。

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まとめ:パートナーと共に踏み出す、持続的成長への第一歩

本記事では、CXとEXの密接な関係性と、Google Cloud / Google Workspace を活用した解決策について解説しました。

  • CXとEXは表裏一体: 従業員の体験(EX)を無視して、顧客体験(CX)のみを向上させることはできない。

  • 阻害要因は分断: データと組織のサイロ化が、負の連鎖を生んでいる。

  • 解決策は統合: BigQueryによるデータ統合、Geminiによる業務効率化、Workspaceによるコラボレーションが、好循環の起点となる。

しかし、既存システムとクラウドの連携、セキュリティ設計、AI活用におけるガバナンス、そして何より組織文化の変革は、自社だけのリソースでは困難な道のりです。

XIMIXによるご支援

私たち『XIMIX』は、単なるライセンス販売やシステム構築に留まらない、ビジネス変革のパートナーです。 お客様の現状における「CXとEXのギャップ」を分析し、データ基盤の構築から、現場へのツール定着化、生成AIの実践的な活用支援まで、一気通貫でサポートいたします。

「従業員の負担を減らしながら、顧客満足度を上げたい」「社内のデータ活用が進まない」といった課題をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。貴社に最適なDXの第一歩をご提案いたします。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。


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