プロアクティブセキュリティとは?DX時代に不可欠な「先手」のサイバー対策をGoogle Cloud / Workspace 活用と共に解説

 2025,05,07 2025.07.11

はじめに

デジタルトランスフォーメーション(DX)が企業の成長に不可欠となる一方、サイバー攻撃は日々巧妙化・悪質化し、事業継続を脅かす重大なリスクとなっています。インシデント発生後の対応に追われる従来型のセキュリティ対策だけでは、もはや企業の情報資産を守り抜くことは困難です。

そこで今、重要性が高まっているのが「プロアクティブセキュリティ」という考え方です。本記事では、DX時代に必須の「先を見越した」セキュリティ対策であるプロアクティブセキュリティについて、その基本から具体的なアプローチ、そしてGoogle Cloud / Google Workspaceを活用した実現方法まで、専門家の視点から分かりやすく解説します。

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プロアクティブセキュリティの基本概念

まず、プロアクティブセキュリティがどのような考え方なのか、従来のアプローチとの違いを明確にしましょう。

プロアクティブセキュリティとは「先手の対策」

プロアクティブセキュリティとは、脅威が現実化する前にそれを予測・検知し、事前に対策を講じることで、インシデントの発生を未然に防ぐ、あるいは被害を最小限に抑えることを目指すセキュリティアプローチです。「プロアクティブ(Proactive)」が「先を見越した、事前に行動を起こす」といった意味を持つ通り、「先手のセキュリティ」と言い換えることができます。

攻撃者の視点に立ち、自社のシステムにどのような脆弱性が存在するのか、どのような攻撃を受ける可能性があるのかを事前に洗い出し、対策を講じておくことが基本となります。

リアクティブセキュリティとの根本的な違い

プロアクティブセキュリティの対義語となるのが「リアクティブセキュリティ」です。これは、問題が発生した「後」に対応(React)するアプローチで、「後手のセキュリティ」と言えます。

 

プロアクティブセキュリティ(先手)

リアクティブセキュリティ(後手)

目的

インシデントの予防・被害の極小化

インシデント発生後の検知・復旧

主な活動

脆弱性診断、脅威予測、スレットハンティング、セキュリティ教育

不正侵入検知、マルウェア駆除、バックアップからの復元

思考

「いつ攻撃されてもおかしくない」を前提に脅威を探しに行く

「何かあったら対応する」という受け身の姿勢

メリット

ビジネスインパクトの低減、ブランドイメージの維持

脅威が顕在化してから対応するため、平時の負荷は少ない

デメリット

専門知識やコストが必要、継続的な活動が求められる

被害の発生が前提となり、事業停止などの甚大な損害に繋がりやすい

 

リアクティブな対策も依然として重要ですが、DXを安全に推進するためには、プロアクティブな視点を取り入れた多層的な防御体制の構築が不可欠です。

なぜ今、プロアクティブセキュリティが重要なのか

近年、プロアクティブセキュリティの重要性が急速に高まっています。その背景にある3つの理由を解説します。

①DX推進による攻撃対象領域の拡大

クラウドサービスの利用、リモートワークの普及、IoT機器の導入など、DXの進展は企業の生産性を飛躍的に向上させる一方、外部からアクセス可能なIT資産、すなわち「攻撃対象領域(アタックサーフェス)」を増大させます。管理すべき対象が広がり、従来の境界線型防御モデルだけでは守りきれなくなっているのが実情です。

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②サイバー攻撃の高度化・巧妙化

ランサムウェア攻撃やサプライチェーン攻撃に代表されるように、サイバー攻撃は年々その手口を高度化させています。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表する「情報セキュリティ10大脅威」でも、毎年深刻な被害をもたらす攻撃が上位を占めており、侵入されることを前提とした対策の必要性が浮き彫りになっています。

③ビジネスインパクトの甚大化

ひとたび大規模なセキュリティインシデントが発生すれば、事業停止による直接的な損失だけでなく、顧客からの信頼失墜、ブランドイメージの低下、賠償問題など、計り知れないビジネスインパクトをもたらします。インシデントによる被害を未然に防ぐプロアクティブな取り組みは、もはやコストではなく、事業継続のための「投資」と捉えるべきです。

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プロアクティブセキュリティの具体的なアプローチ

プロアクティブセキュリティは、具体的にどのような活動を通じて実現されるのでしょうか。ここでは主要な4つのアプローチを紹介します。

①脆弱性管理

自社のシステムやソフトウェアに存在するセキュリティ上の欠陥(脆弱性)を継続的に特定、評価し、優先順位を付けて対処するプロセスです。OSやミドルウェアのバージョンアップ、セキュリティパッチの適用などが含まれます。脆弱性を放置することは、攻撃者に侵入経路を明け渡すことと同義であり、その管理はプロアクティブセキュリティの基本中の基本です。

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②脅威インテリジェンスの活用

世界中で発生しているサイバー攻撃に関する情報を収集・分析し、自社に対する脅威を予測するために活用する取り組みです。新たな攻撃手法、攻撃者の動向、特定の業界を狙ったキャンペーンなどの情報を早期にキャッチすることで、防御策を先んじて強化することが可能になります。

③スレットハンティング

脅威が侵入してくるのを待つのではなく、セキュリティ担当者が「既にネットワーク内部に脅威が潜んでいるかもしれない」という仮説に基づき、能動的に脅威の痕跡を探し出す活動です。ログ分析やネットワークトラフィックの監視を通じて、通常の検知システムでは見つけにくい未知の脅威や、潜伏している攻撃者を発見することを目的とします。

④セキュリティ診断(ペネトレーションテストなど)

専門家が攻撃者と同じ視点・手法を用いてシステムに疑似的な攻撃を仕掛け、セキュリティ上の問題点を発見・検証する手法です。特にペネトレーションテスト(侵入テスト)では、特定の脆弱性を見つけるだけでなく、複数の脆弱性を組み合わせてシステム内部へ侵入し、最終的な目的(機密情報の窃取など)を達成できるかまでを検証します。これにより、机上の空論ではない、実践的なリスクを把握できます。

Google Cloud / Workspace で実現するプロアクティブセキュリティ

Google Cloud や Google Workspace は、プロアクティブなセキュリティ対策を強力に支援する機能を数多く提供しています。ここでは「目的別」に、主要なソリューションとその活用法を解説します。

①脅威と脆弱性の網羅的な可視化・管理

Security Command Center は、Google Cloud環境全体のセキュリティ状況とリスクを一元的に可視化・管理するプラットフォームです。クラウド資産の脆弱性や設定ミスを自動的にスキャンし、脅威を検知して優先順位付けを行います。これにより、セキュリティチームはどこにリスクが潜んでいるかをプロアクティブに把握し、迅速に対策を講じることができます。

②高度な脅威インテリジェンスとインシデント対応の自動化

Chronicle Security Operations は、Googleの膨大な脅威インテリジェンスを活用できるクラウドネイティブなSIEM/SOARソリューションです。組織内の膨大なログデータを大規模に収集・分析し、高度な脅威を迅速に検知します。検知された脅威に対し、事前に定義したプレイブックを自動実行するSOAR機能も備えており、スレットハンティングの効率化とインシデント対応の迅速化・自動化を両立させ、プロアクティブな運用体制を支えます。

③ゼロトラストモデルによる攻撃対象領域の削減

BeyondCorp Enterprise は、「決して信頼せず、常に検証する」というゼロトラストの原則に基づいたセキュアなアクセスを実現するソリューションです。ユーザーとデバイスのコンテキスト(場所、時間、セキュリティ状態など)に応じてアクセスを動的に制御し、社内ネットワークという概念をなくします。これにより、攻撃対象領域そのものを大幅に削減し、脅威が侵入・拡散するリスクを根本から低減する、究極のプロアクティブ対策と言えます。

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④Google Workspace の高度なセキュリティ機能

Google Workspace にも、メールの脅威分析、データ損失防止(DLP)、セキュリティセンターのダッシュボードなど、プロアクティブな対策に繋がる機能が組み込まれています。これらの機能を適切に設定・運用することで、従業員が日々利用するコラボレーション環境の安全性を確保できます。

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プロアクティブセキュリティ導入のポイントとXIMIXの支援

プロアクティブセキュリティへの移行は、ツールの導入だけで完結するものではありません。ここでは成功のためのポイントと、私たちXIMIX(NI+C)が提供する支援についてご紹介します。

導入を成功させるための3つのステップ

  1. ステップ1: 現状把握とリスク評価 まずは自社のどこにどのようなリスクが存在するのかを客観的に評価することが出発点です。攻撃対象領域の棚卸しや、簡易的な脆弱性診断などから始めます。

  2. ステップ2: 目標設定と段階的な計画策定 全てを一度に行うのは現実的ではありません。評価したリスクに優先順位を付け、「まずは重要なシステムの脆弱性管理を徹底する」「次に脅威インテリジェンスの活用を始める」といった段階的なロードマップを描くことが重要です。

  3. ステップ3: 運用と継続的な改善 プロアクティブセキュリティは一過性のイベントではなく、継続的なプロセスです。PDCAサイクルを回し、新たな脅威やビジネスの変化に対応しながら、常に対策を見直し、改善していく体制を構築する必要があります。

導入における課題と専門家の活用

プロアクティブセキュリティの推進には、「セキュリティ人材の不足」や「何から手をつければ良いかわからない」といった課題が伴います。こうした課題を解決し、実効性のある対策を推進するためには、専門的な知見を持つ外部パートナーの活用が極めて有効です。

私たちXIMIX(NI+C)は、Google Cloud と Google Workspace の認定パートナーとして、お客様のプロアクティブセキュリティ強化をエンドツーエンドでご支援します。

XIMIXのプロアクティブセキュリティ関連サービス例:

  • セキュリティアセスメントサービス: お客様の現在のセキュリティ状況(Google Cloud, Google Workspace の設定状況を含む)を詳細に分析・評価し、潜在的なリスクと優先的に取り組むべき課題を明確にします。(ステップ1に貢献)

  • Google Cloud 環境におけるセキュリティ設計・構築支援: Security Command Center、Chronicle Security Operations、BeyondCorp Enterprise といった Google Cloud の先進的なセキュリティソリューションを活用し、お客様の環境に最適化された堅牢なセキュリティ基盤を設計・構築します。(ステップ2, 3に貢献)

  • Google Workspace セキュリティ強化支援: 最新のセキュリティ機能の活用提案、適切なポリシー設定、監査ログ分析支援、データ損失防止(DLP)ルールの策定など、Google Workspace 環境のプロアクティブなセキュリティ強化をサポートします。(ステップ2, 3に貢献)

DXを推進する上で、セキュリティはブレーキではなくアクセルとなるべきです。Google Cloud や Google Workspace を活用したプロアクティブなセキュリティ対策を講じることで、企業は安心して新たな挑戦に取り組むことができます。

「何から相談して良いかわからない」という段階でも結構です。まずはお気軽にご相談ください。お客様の課題に寄り添い、最適なセキュリティ対策をご提案いたします。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

まとめ

本記事では、「プロアクティブセキュリティ」をテーマに、その基本的な概念、従来型との違い、重要性、具体的なアプローチ、導入のメリットとポイントについて、Google Cloud や Google Workspace の活用例を交えながら解説しました。

DXが加速し、サイバー攻撃がますます巧妙化する現代において、問題が発生してから対応するリアクティブなアプローチだけでは不十分です。脅威を予測し、事前に対策を講じるプロアクティブセキュリティの考え方を取り入れることが、企業の情報資産を守り、事業継続性を確保し、さらには競争優位性を確立するための鍵となります。

プロアクティブセキュリティへの取り組みは、一朝一夕に完成するものではありません。しかし、自社の現状を正しく理解し、優先順位をつけ、段階的にでも対策を進めていくことが重要です。Google Cloud や Google Workspace が提供する強力なセキュリティ機能を活用しつつ、専門家の支援も視野に入れることで、より効果的な体制を構築できるでしょう。

この記事が、皆様のセキュリティ対策を見直し、より安全なDX推進を実現するための一助となれば幸いです。


プロアクティブセキュリティとは?DX時代に不可欠な「先手」のサイバー対策をGoogle Cloud / Workspace 活用と共に解説

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