Cloud Storage(GCS) とは?Google Cloud のオブジェクトストレージ入門 - メリット・料金・用途をわかりやすく解説

 2025,04,22 2025.06.30

はじめに

デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上で「データ活用」は避けて通れないテーマです。しかし、IoTデバイスの普及やAI技術の進化に伴い、企業が扱うデータ量は爆発的に増加しています。「増え続けるデータをどこに、どう保管・管理すればよいのか」という課題は、多くのDX推進担当者様にとっての悩みではないでしょうか。

この課題に対する強力な解決策が、Google Cloud が提供する Cloud Storage です。本記事では、DX推進を検討されている企業の担当者様に向けて、Cloud Storage の基礎知識から、そのメリット、料金体系、具体的な用途、そして実際の始め方までを分かりやすく解説します。

本記事を通じて Cloud Storage の基礎を深く理解し、自社でのデータ活用やコスト削減に向けた具体的な一歩を踏み出すヒントを得ていただければ幸いです。

Cloud Storage とは?Google Cloud の中核をなすオブジェクトストレージ

Cloud Storage は、Google Cloud が提供する、極めて高いスケーラビリティ(拡張性)と耐久性を持つオブジェクトストレージサービスです。写真や動画、ログファイル、バックアップデータといった、あらゆる形式・容量のデータを、ほぼ上限なく安全かつ低コストで保管できます。

インターネット経由でどこからでもアクセスでき、Google の堅牢なグローバルインフラ上で運用されるため、自社でストレージサーバーを管理・運用する手間やコストを大幅に削減できる点が大きな特徴です。

「オブジェクトストレージ」とは?ファイルストレージとの違い

Cloud Storage を理解する上で欠かせないのが「オブジェクトストレージ」という概念です。これは、従来のファイルサーバーで用いられる「ファイルストレージ」とはデータの管理方法が根本的に異なります。

  • ファイルストレージ データを「フォルダ(ディレクトリ)」という階層構造で管理します。PCのファイル管理と同じで、ファイルパスを指定してアクセスします。共有ファイルサーバーなどがこれにあたります。

  • オブジェクトストレージ データを「オブジェクト」という単位で管理します。オブジェクトは、データ本体と、そのデータを説明する「メタデータ(識別IDや属性情報など)」で構成されます。フォルダのような階層構造がなく、フラットな空間にデータを保存するため、原理的に保存できるデータ量に上限がありません。

このオブジェクトストレージの仕組みにより、Cloud Storage は現代の増大し続ける多様なデータ保管ニーズに応えることができるのです。

Cloud Storage を導入する5つのメリット

Cloud Storage を活用することで、企業はデータ管理において多くのメリットを享受できます。

①圧倒的なスケーラビリティと耐久性

最大のメリットは、そのほぼ無限のスケーラビリティです。将来のデータ増加量を予測し、ストレージの増設を計画する必要はありません。また、年間 99.999999999% (イレブンナイン) という驚異的な耐久性を誇り、データが失われるリスクは極めて低いです。重要な業務データを長期間、安心して保管できます。

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②コスト効率に優れた料金体系

利用した分だけ支払う従量課金制を基本としています。さらに、データのアクセス頻度に応じて複数のストレージクラスが用意されており、アクセス頻度の低いデータを安価なクラスへ自動的に移動させる「ライフサイクル管理」機能を使えば、ストレージコストを大幅に最適化できます。

③グローバルなアクセスと高い可用性

データは世界中のGoogle Cloud データセンターに保管できます。特定の地域(リージョン)を指定することはもちろん、複数のリージョンにまたがってデータを配置することで、災害対策(DR)や、世界中の拠点からの低遅延アクセスを実現します。

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④強力で多層的なセキュリティ

保存されるデータはデフォルトで暗ゆく号化され、誰が・何にアクセスできるかを細かく制御する「IAM」や、組織のセキュリティ境界を定義する「VPC Service Controls」など、多層的なセキュリティ機能を提供。企業の厳しいセキュリティ要件にも対応可能です。

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⑤Google Cloud サービスとのシームレスな連携

Cloud Storage は、データ活用の「入り口」として設計されています。保管したデータを、AI/MLプラットフォームの Vertex AI で分析したり、データウェアハウスの BigQuery で解析したりと、他の Google Cloud サービスとシームレスに連携し、高度なデータ活用をスムーズに実現します。

Cloud Storage の料金体系

Cloud Storage の料金は、主に以下の3つの要素で決まります。

  • データ保管料: 保存しているデータの容量(GB)と、後述する「ストレージクラス」によって決まります。

  • オペレーション料金: データのアップロードやダウンロード、一覧表示などの操作回数に応じて発生します。

  • ネットワーク料金: Cloud Storage からデータをダウンロードする際の通信量に応じて発生します。

コスト最適化の鍵「ストレージクラス」

ストレージクラスは、データのアクセス頻度と保存期間に応じて選択することで、コストを最適化するための重要な要素です。

  • Standard Storage: Webサイトのコンテンツや分析対象データなど、頻繁にアクセスするデータ向け。

  • Nearline Storage: 月に1回程度のアクセス頻度のデータ(バックアップなど)向け。

  • Coldline Storage: 90日に1回程度のアクセス頻度のデータ(アーカイブなど)向け。

  • Archive Storage: 年に1回以下のアクセスが稀なデータ(長期保管アーカイブなど)向け。

これらのクラスを適切に使い分けることが、コスト削減の鍵となります。
注意: 料金体系は変更される可能性があるため、最新の情報は必ず Google Cloud の公式サイトでご確認ください。

Cloud Storage の具体的な用途

Cloud Storage はその柔軟性から、非常に幅広い用途で活用されています。

①バックアップと災害対策(DR)

オンプレミス環境や他社クラウド、データベースなどのバックアップ先として最適です。高い耐久性と低コストなアーカイブ用ストレージクラスを組み合わせることで、安全かつ経済的なデータ長期保管が実現します。

②データレイク基盤の構築

あらゆる形式の生データを一元的に保管する「データレイク」の構築に広く利用されます。Cloud Storage をデータレイクとし、BigQuery と連携させる構成は、現代のデータ分析基盤の王道パターンと言えます。

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③静的コンテンツの高速配信

Webサイトで利用する画像、動画、CSSファイルなどを Cloud Storage に配置し、Cloud CDN と組み合わせることで、世界中のユーザーへ高速かつ安定したコンテンツ配信を実現します。

④大容量ファイルの保管とセキュアな共有

動画ファイルや設計データ、研究データといったサイズの大きなファイルの保管場所として最適です。署名付きURL機能を使えば、有効期限付きの安全な共有リンクを生成し、特定の相手にだけファイルを共有することも可能です。

⑤ハイブリッドクラウド・マルチクラウド環境でのデータ連携

オンプレミス環境とクラウドを連携させるハイブリッドクラウド構成において、データ連携の中継地点として活用できます。また、他のパブリッククラウドとの間でデータを連携させる際のハブとしても利用価値が高いです。

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Cloud Storage の始め方(3ステップ)

Cloud Storage は、以下の簡単なステップで利用を開始できます。

ステップ1: Google Cloud プロジェクトの作成

まず、Google Cloud の管理単位である「プロジェクト」を作成します。Google Cloud コンソールにログインし、新しいプロジェクトを作成してください。

ステップ2: バケットの作成

次に、データの保管場所となる「バケット」を作成します。バケットには、世界で一意な名前を付ける必要があります。作成時に、ロケーション(データを保存する地域)やデフォルトのストレージクラスを選択します。

ステップ3: ファイルのアップロード

バケットが作成できたら、PCからファイルをドラッグ&ドロップするだけで、簡単にデータをアップロードできます。

主要オブジェクトストレージ比較(GCS vs S3 vs Azure Blob)

クラウドストレージを選定する際、AWSの「Amazon S3」やMicrosoftの「Azure Blob Storage」も比較対象となります。ここでは、ごく簡単な特徴の違いを解説します。

  • Google Cloud Storage (GCS): Google の強力なネットワークと、BigQuery や Vertex AI といったデータ分析・AIサービスとの親和性の高さが最大の強みです。グローバルなデータ配信や分析基盤構築で特に優位性を発揮します。

  • Amazon S3: 最も歴史が長く、豊富な機能と幅広い採用実績が特徴です。多くのサードパーティツールとの連携も充実しています。

  • Azure Blob Storage: Microsoft Azure の各サービスとの連携が強みです。特に、Windows Server 環境や Microsoft 365 を利用している企業にとって親和性が高い選択肢となります。

どのサービスが最適かは、既存のシステム環境や、将来的なデータ活用の目的によって異なります。XIMIX のような知見を持つパートナーにご相談いただくことで、お客様の状況に合わせた最適なサービス選定が可能です。

Google Cloud 活用を成功させるために - XIMIXの支援

Cloud Storage は非常に強力なサービスですが、そのメリットを最大化し、コスト効率よく安全に運用するには、専門的な知見が不可欠です。

  • データ移行計画: オンプレミスからの大規模データ移行には、綿密な計画と適切なツールの選定が必要です。

  • コスト最適化: 想定外のコストを防ぎ、継続的に料金を最適化していくには、専門家による分析と設定が効果的です。

  • セキュリティ設計: 企業のセキュリティポリシーに準拠した、堅牢なアクセス権限管理や監視体制の構築が求められます。

XIMIX は、多くの中堅〜大企業様のデータ活用基盤構築やクラウド移行をご支援してきた豊富な経験を活かし、Cloud Storage の導入計画から設計、構築、運用、そしてコスト最適化まで、一貫したサービスを提供します。

データ基盤の課題についてお悩みの場合は、ぜひお気軽に XIMIX にご相談ください。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

※Google Cloud については、こちらのコラム記事もご参照ください。

まとめ

今回は、Google Cloud の中核的サービスである Cloud Storage について、その基本概念からメリット、料金、具体的な用途までを解説しました。

Cloud Storage は、その驚異的なスケーラビリティ、耐久性、コスト効率により、企業のあらゆるデータを安全かつ効率的に管理するための最適なソリューションの一つです。バックアップからデータレイク構築、コンテンツ配信まで、DXを支えるデータ活用の基盤として、今後ますますその重要性は増していくでしょう。

本記事が皆様のデータ戦略の一助となれば幸いです。


Cloud Storage(GCS) とは?Google Cloud のオブジェクトストレージ入門 - メリット・料金・用途をわかりやすく解説

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