データ分析は何から始める?最初の一歩を踏み出すための6ステップ

 2025,04,22 2025.11.10

はじめに

「DX推進のためにデータ活用が不可欠なのは、重々承知している」 「データから新たな知見を得て、ビジネスを次のステージへ進めたい」

中堅〜大企業の決裁者やDX推進担当者の皆様から、こうしたお声を伺う機会が年々増えています。しかしその一方で、「重要性は理解しているが、組織として具体的に何から手をつければ良いのか全く見当がつかない」「高度な専門知識を持つ人材が社内におらず、ハードルが高い」と感じ、貴重な一歩を踏み出せずにいるケースも少なくありません。

データ分析は、決して一部の専門家だけのものではありません。大切なのは、明確なビジネス上の目的を持ち、正しいステップで、まずは小さく始めてみることです。

この記事では、データ分析の世界へこれから組織として足を踏み出す方々のために、具体的な「始め方」を6つのステップに分け、中堅〜大企業が成功するための実践的なノウハウまで、余すところなく解説します。

この記事を読み終える頃には、データ分析を始めるための具体的な道筋が描け、自信を持って最初の一歩を踏み出せるようになっているはずです。

なぜデータ分析が急務なのか?

現代のビジネス環境は、市場の変動が激しく、顧客のニーズも多様化しています。このような状況で企業が持続的に成長するためには、過去の経験や勘だけに頼るのではなく、データという客観的な事実に基づいた迅速な意思決定が不可欠です。

特に中堅〜大企業においては、部門ごとに最適化された既存システムが乱立し、貴重なデータがサイロ化(分断)しているケースが多く見られます。これらのデータを全社横断で分析・活用できれば、それは他社には真似できない強力な競争優位性となります。

実際に、DXに取り組む企業の多くが「データ分析・活用による業務プロセスの効率化」や「新規製品・サービスの開発」を重要課題として挙げています。データ分析は単なるITトレンドではありません。それは、ビジネスの未来を切り拓くための、極めて重要な経営戦略なのです。

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データ分析は「誰が」進めるのか? 成功の鍵を握る体制構築

具体的なステップに入る前に、多くの決裁者が最初に悩む「誰が分析を進めるのか」という体制の問題に触れておきます。「何から始めるか」と「誰がやるか」は、データ分析プロジェクトの両輪です。

体制の選択肢は、大きく分けて3つあります。

①内製化(専門部署の設置)

自社でデータサイエンティストやアナリストを雇用・育成し、専門部署を立ち上げる形態です。

  • メリット: 自社のビジネスを深く理解した人材が育ち、ノウハウが社内に蓄積されます。迅速な分析サイクルを回しやすいのも強みです。

  • デメリット: 専門人材の採用・育成コストと時間がかかります。初期の成功体験がないまま体制構築を進めると、成果が出る前に頓挫するリスクもあります。

②外部支援(専門家への委託)

データ分析の専門知識を持つ外部パートナーに分析業務を委託する形態です。

  • メリット: 不足している専門スキルを即座に補完でき、短期間で成果を出すことが可能です。PoC(概念実証)などで小さく効果を試すのにも適しています。

  • デメリット: 外部に依存しすぎると、社内にノウハウが蓄積されません。また、自社のビジネス課題を深く理解してもらうためのコミュニケーションコストが発生します。

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ハイブリッド型(伴走支援)

最も推奨する形態です。初期段階は外部の専門家が伴走支援し、PoCの実行や基盤構築、分析手法のレクチャーを行います。並行して社内の人材育成も進め、段階的に内製化を目指します。

  • メリット: 外部の知見を活用して迅速に成果を出しつつ、最終的には自走できる組織体制を構築できます。

  • デメリット: 外部パートナーとの緊密な連携と、社内での学習意欲が求められます。

最初から完璧な内製化を目指す必要はありません。まずは外部の知見を活用しながらスモールスタートし、成功体験を積み重ねることが、組織にデータ分析文化を根付かせる近道です。

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企業がデータ分析を成功に導く6つの実践ステップ

それでは、データ分析を始めるための具体的な6つのステップを見ていきましょう。この順番で進めることが、遠回りのようで一番の近道です。

ステップ1:目的を明確にする - ビジネス課題を「分析の問い」に変える

データ分析で最も陥りやすく、そして最も致命的な失敗は、目的が曖昧なまま始めてしまうことです。「とりあえずデータを集めよう」「AIで何かできないか」といったスローガン主導のプロジェクトは、必ず迷走します。

まず自問すべきは、「何のために分析するのか?」「その結果、どのビジネス課題を解決したいのか?」です。

ポイントは、漠然としたビジネス課題を「分析で答えが出せる具体的な問い」に分解することです。

  • 悪い例: 「売上を上げたい」「DXを推進したい」(漠然としすぎている)

  • 良い例 (ビジネス課題 → 分析の問い):

    • (マーケティング) 優良顧客のLTV(生涯顧客価値)を最大化したい

      • → 「優良顧客のリピート購入率が低下している原因は何か?」

      • → 「Webサイトからの問い合わせのうち、成約率が最も高いのはどのチャネル経緯の、どの属性の顧客か?」

    • (営業) 営業活動を効率化したい

      • → 「成約に至る顧客と失注する顧客では、商談プロセス(訪問回数、提案内容)にどのような違いがあるか?」

    • (製造) 品質の安定とコスト削減を図りたい

      • → 「製造ラインAで不良品が多発する特定の時間帯、稼働条件、原材料のロットは存在するか?」

    • (人事) 離職率を改善したい

      • → 「過去の退職者のデータ(勤続年数、残業時間、評価、所属部署)から、退職の兆候を予測できないか?」

私たちXIMIXがご支援する際も、まずはお客様の「分析の問い」を明確に定義することから始めます。この「目的設定」こそが、プロジェクト全体の成否を分ける最も重要なステップです。

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ステップ2:データを特定し、収集する - 社内に眠る「宝」を探す

目的が定まったら、その問いに答えるためのデータを集めます。多くの場合、必要なデータはすでに社内の様々な場所に「宝」のように眠っています。

  • 社内システム: 販売管理システム、顧客管理システム(CRM/SFA)、生産・在庫管理システム、会計システム、人事給与システムなど

  • Web関連データ: Google Analyticsなどのアクセス解析ログ、広告配信データ、SNSのインサイトデータなど

  • ドキュメントファイル: 部署ごとに管理されているExcelシート、過去のアンケート結果、営業日報など

  • 外部データ: 政府が公開する統計データ(e-Statなど)、業界団体の調査レポート、天候データなど

ここで重要なのはデータの品質です。「Garbage In, Garbage Out(ゴミを入れれば、ゴミしか出てこない)」という言葉の通り、不正確なデータからは意味のある結果は得られません。また、個人情報などを扱う際は、個人情報保護法や社内のセキュリティ規定を遵守することも徹底しましょう。

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データ分析の成否を分ける「データ品質」とは?重要性と向上策を解説

ステップ3:分析環境を準備する - 目的と成長に合わせたツール選び

データという「食材」が揃ったら、次は調理するための「キッチン」と「調理器具」を準備します。データ分析ツールは様々ですが、企業の成長フェーズや目的に合わせて段階的に導入していくのが成功の秘訣です。

フェーズ1:まずは手元で始める(Excel / Googleスプレッドシート)

データ分析の第一歩として、最も身近なExcelやGoogleスプレッドシートは非常に強力なツールです。並べ替えやフィルタ、ピボットテーブルを使えば、基本的な集計やクロス集計は十分に行えます。まずは手持ちのデータで試してみましょう。

※なおGoogle Workspace にもGoogleスプレッドシートという表計算ツールがあります。GoogleスプレッドシートでもExcelと同等の事が出来るとお考え下さい。

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フェーズ2:可視化で発見と共有を促す(BIツール)

より直感的でインタラクティブな分析を行いたい、分析結果を関係者とスムーズに共有したい、という段階になればBI(ビジネスインテリジェンス)ツールの出番です。

特に Looker は、Google Workspace や Google Cloud との親和性が高く、強力なBIツールです。専門家でなくてもドラッグ&ドロップで分かりやすいダッシュボードを作成でき、組織内での「データの民主化」を促進します。

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フェーズ3:全社的なデータ基盤を構築する(DWH / クラウドプラットフォーム)

扱うデータが膨大になったり、複数のシステムに散らばるデータを統合して高度な分析を行いたくなったりしたら、データウェアハウス(DWH)の活用が視野に入ります。

ここでXIMIXが強く推奨するのが、Google Cloud の BigQuery です。BigQueryは、サーバーレスで初期投資を抑えてスモールスタートでき、企業の成長に合わせてシームレスに拡張できる点が、中堅〜大企業にとって最大のメリットです。各部門にサイロ化していたデータをBigQueryに統合することで、初めて全社横断的な分析が可能になります。

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ステップ4:データを加工・整理する - 最も地道で、最も重要な工程

収集した生データは、多くの場合、そのままでは分析に使えません。「データ分析作業の8割は、このデータ加工・前処理にかかる」と言われるほど、地味ですが極めて重要な工程です。

  • 表記の揺れを統一: 「(株)XIMIX」「株式会社サイミクス」などを統一します。

  • 欠損値の処理: 空白になっているセルを削除するか、平均値などで補完するかルールを決めます。

  • データ型の変換: 数値であるべき「売上」が文字列になっていたら、数値型に変換します。

  • 外れ値の処理: 入力ミスなどで極端に大きな(または小さな)値があれば、確認・修正します。

  • データの結合: 顧客マスタと売上データを「顧客ID」をキーにして結合します。

この工程は専門知識が必要な場合も多く、多くの企業が挫折しやすいポイントです。XIMIXでは、こうしたデータの準備・加工(データプレパレーション)の技術的なサポートも行い、分析担当者が本来注力すべき「分析」業務に集中できるようご支援します。

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ステップ5:分析し、可視化する - データから「意味」を読み解く

整えられたデータを使って、いよいよステップ1で立てた「問い」に答えていきます。クロス集計や時系列分析、相関分析などの手法でデータを様々な角度から切り取り、パターンや傾向、相関関係を探ります。

そして、分析結果は必ずグラフや表で「可視化」しましょう。数値の羅列では見過ごしてしまうようなインサイトも、グラフにすることで直感的に理解できるようになります。

  • 比較を示したいなら棒グラフ

  • 推移を示したいなら折れ線グラフ

  • 内訳を示したいなら円グラフ積み上げ棒グラフ

  • 関係性を示したいなら散布図

Looker StudioのようなBIツールを活用すれば、これらのグラフをダッシュボード上で連動させ、より深い分析(ドリルダウン)が可能になります。

ただし、綺麗なグラフを作って満足してはいけません。重要なのは、そのグラフが何を物語っているのか、ビジネスの文脈で深く考察することです。

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ステップ6:洞察を得て、アクションに繋げる - 分析を「価値」に変える

データ分析は、分析結果を眺めて終わる「知的エンターテイメント」ではありません。分析から得られた「洞察(インサイト)」を、具体的な「行動(アクション)」に変えてこそ、初めてビジネス価値が生まれます。

  • 洞察: 「広告費を増やしたXチャネルからの若年層の流入は増えているが、成約率はYチャネルより低い」

  • 仮説: 「Xチャネルからの訪問者は、価格よりも機能を重視しているのではないか?」

  • アクション: 「Xチャネル向けのランディングページを、機能訴求型にA/Bテストしてみよう」

  • 効果測定: 「A/Bテストの結果、機能訴求型ページの成約率が20%改善した」

このように、「分析 → 洞察 → アクション → 効果測定」というサイクルを回し続けること(PDCAサイクル)こそが、データドリブンな組織への変革の本質です。

データ分析の「始め方」で失敗しないための3つの鉄則

ステップは分かっても、いざ組織として進めると多くの壁にぶつかります。ここでは、XIMIXがお客様をご支援する中で見えてきた、決裁者が特に注意すべき「失敗しないための鉄則」を3つご紹介します。

鉄則1:最初から完璧を目指さない(スモールスタートの徹底)

完璧なデータを全て集め、完璧な分析モデルを構築しようとすると、プロジェクトは動き出す前に頓挫します。まずはスモールスタート。入手しやすいデータで、小さな課題を一つ解決してみる。

例えば、まずは営業部門のExcelデータとマーケティング部門のWebアクセスデータだけを組み合わせてみる。その小さな成功体験が、あなたと組織の自信になり、次への大きな推進力となります。

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鉄則2:ツール導入をゴールにしない

高機能なBIツールやDWH(データ基盤)を導入しただけで満足してしまうケースは後を絶ちません。ツールはあくまで目的(ステップ1のビジネス課題解決)を達成するための「手段」です。大切なのは、そのツールを使って「ビジネス課題をどう解決するか」であり、常に目的に立ち返ることが重要です。

鉄則3:「なぜ?」を繰り返し問い続ける

「売上が落ちた」という事実(データ)だけを見ていては、次の一手は見えてきません。「なぜ落ちたのか?」「どの顧客層が離れたのか?」「競合に何が起きたのか?」と、表面的な結果の裏側にある背景や要因を「なぜ?」と5回繰り返すくらいの執念で掘り下げることが、本質的な洞察(インサイト)に繋がります。

XIMIXによるデータ分析支援 - 「何から始める?」の不安を「確実な成果」へ

「ステップや鉄則は理解できた。でも、やはり自社だけで進めるのは不安だ…」 データ分析の第一歩には、こうした不安がつきものです。

私たちXIMIX は、長年にわたり中堅〜大企業様のDXをご支援してきたNI+Cの実績と知見を活かし、お客様のデータ分析ジャーニーを強力に伴走支援します。

  •  
  • 「自社の状況に最適なツールや進め方がわからない」 → Googleスプレッドシートでのスモールスタートから、Looker Studio、BigQueryを活用した本格的なデータ基盤構築まで、最適なロードマップをご提案します。

  • 「データの準備や加工で挫折してしまいそうだ」 → 散在するデータの収集や、分析しやすい形へのデータ準備・加工(データエンジニアリング)を技術的にサポートします。

  • 「まずは小さく効果を試して、社内を説得したい」 → 短期間で成果を検証する PoC (概念実証) の計画・実行を支援し、小さな成功体験を創出することで、本格導入への社内コンセンサス形成をお手伝いします。

XIMIXは、お客様がデータ分析の「最初の一歩」を安心して踏み出し、着実に成果を出せるよう、技術と経験の両面から全力でサポートします。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

まとめ:データに基づいた未来へ、まずは勇気ある一歩を

本記事では、データ分析を組織として始めたいと考えている決裁者・DX推進担当者の皆様に向けて、具体的な6つのステップと成功のための鉄則を解説しました。

データ分析は、もはや特別なスキルではありません。正しいステップを踏み、適切なツールを活用し、そして何よりも「ビジネスを良くしたい」という強い目的意識を持って取り組めば、必ず組織に大きな価値をもたらします。

最初から壮大な計画を立てる必要はありません。まずはこの記事を参考に、身近な課題から「スモールスタート」を切ってみてください。その勇気ある一歩が、貴社のDXを加速させ、データに基づいた意思決定が根付く文化を醸成する、大きな原動力となるはずです。

もし、その一歩に不安を感じたり、途中で壁にぶつかったりした際には、いつでも私たちXIMIXにご相談ください。貴社のデータ分析ジャーニーを、全力でサポートいたします。


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