データ活用で、一定の成果を上げた企業が次に目指すべきステップとは?成果を最大化する戦略とDXの高度化

 2025,05,26 2025.10.28

はじめに

多くの企業がデータ活用の重要性を認識し、分析基盤の構築やBIツールの導入によって「データの可視化」や「現状把握」といった一定の成果を実感されていることでしょう。

しかし、その成果に満足し、歩みを止めてしまうケースも少なくありません。真のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現し、持続的な競争優位性を確立するためには、データ活用をさらに深化させ、次のステージへと進む戦略が不可欠です。

「データからインサイトは得られるようになったが、次は何を目指すべきか」 「部分的な成功を全社的な成果にどう繋げるか」 「AIのような先進技術を本格的に活用したいが、何から始めるべきか」

こうした課題意識をお持ちのDX推進担当者様、経営層の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、データ活用で一定の成果を上げた企業が「次のステップ」へ進むためのロードマップを提示します。

自社の現在地を把握した上で、次に直面する課題、データドリブン経営を高度化するための目標設定、戦略、そして具体的なアクションプランについて、Google Cloud のような先進技術の活用法も交えて解説します。貴社のDX推進をさらに加速させる一助となれば幸いです。

データ活用の現在地を知る「成熟度モデル」

「次のステップ」を考える前に、まずは自社がデータ活用のどの段階にいるのかを客観的に把握することが重要です。、データ活用の成熟度を以下の4つのレベルに分類できます。

レベル1:可視化 (現状把握)

  • 状態: 業務システムに蓄積されたデータを抽出し、BIツールなどでグラフ化・ダッシュボード化している段階。

  • 主な目的: 「何が起こったか」を把握する(売上実績、KPIのモニタリングなど)。

  • 課題: データがサイロ化しており、部門横断的な分析が難しい。

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レベル2:分析 (原因究明)

  • 状態: 可視化されたデータに基づき、「なぜそれが起こったか」を分析官やデータサイエンティストが深掘りしている段階。

  • 主な目的: 課題の原因を特定し、業務改善や施策立案に繋げる。

  • 課題: 分析が属人化しやすい。分析結果が必ずしもスピーディな意思決定に結びつかない。

なお、本記事の読者の多くは、このレベル、あるいはレベル3への移行期にあると想定されます

レベル3:予測 (未来予測)

  • 状態: 過去のデータに基づき、AIや機械学習モデルを用いて「次に何が起こるか」を予測しようとする段階。

  • 主な目的: 需要予測、顧客の離反予測、設備の故障予知など、先手必勝の戦略判断を行う。

  • 課題: AIモデルの精度維持、予測結果を業務プロセスに組み込むことの難しさ。

レベル4:最適化・自動化 (価値創出)

  • 状態: 予測モデルに基づき、取るべきアクションをAIが推奨、あるいは自動的に実行する段階。

  • 主な目的: サプライチェーンの全体最適化、マーケティングオートメーションの高度化、動的な価格設定(ダイナミックプライシング)など、ビジネスプロセス自体を変革し、新たな価値を創出する。

  • 課題: 高度なデータガバナンスと、変化に対応し続けるアジャイルな組織体制が求められる。

レベル1や2で一定の成果が出た企業が次(レベル3、4)を目指す時、多くの場合、共通の「壁」に直面します。

データ活用で成果が出た後の「次なる壁」

初期の目標を達成し、業務効率化やコスト削減といった成果が出始めると、組織内には一定の達成感が生まれます。しかし、その先に待ち受けているのが、データ活用の高度化を阻む「次なる壁」です。

①部分最適の限界と全社展開の難しさ

特定の部門やプロジェクトでデータ活用が成功しても、それが必ずしも全社的な成果に直結するとは限りません。

部門ごとにデータ基盤がサイロ化していたり、部門間の連携が不足していたりすると、部分最適の成功体験が横展開されず、企業全体のDXが進まないという事態に陥ります。

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②データドリブンの形骸化と戦略の陳腐化

定期的なレポート作成やKPIモニタリングは定着したものの、「そこから新たな示唆を得て戦略的な意思決定に繋げる」という、本来のデータドリブンな活動が形骸化してしまうこともあります。

市場環境やビジネスモデルが変化する中で、初期に設定したデータ活用戦略が陳腐化し、新たな価値創造に至らないという課題も生じがちです。

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③先進技術への追随と高度人材の不足

AI、機械学習といった先進技術の進化は著しく、これらの技術を組み込むことで、より高度な分析や予測、自動化が可能になります。

しかし、これらの新技術を効果的に導入・運用するためには、専門知識を持つ人材の育成や獲得、そして適切な技術選定が不可欠です。多くの企業がこの「人材の壁」と「技術選定の壁」に直面しています。

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データ活用を高度化する「次のステップ」への戦略

これらの「壁」を乗り越え、データ活用をレベル3(予測)、レベル4(最適化)へと深化させるためには、明確な戦略の再構築が必要です。

戦略1:AIによる「未来予測」と「自動化」へのシフト

「現状把握(レベル1)」から「原因究明(レベル2)」へ進んだ次のステップは、AI・機械学習を活用した「未来予測(レベル3)」です。

やみくもにAIを導入するのではなく、明確な目的意識と段階的なアプローチが成功の鍵となります。まずは「需要予測」「解約率予測」など、ビジネスインパクトの大きい課題を特定し、PoC(概念実証)からスモールスタートすることが重要です。 

AIモデルの学習には、質の高い大量のデータが不可欠です。全社に散らばったデータを整備・統合し、AIモデルを効率的に開発・運用するためのデータ基盤(例:Google Cloud の BigQuery や Vertex AI)の構築が、このステップの核となります。

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戦略2:全社最適を実現する「データガバナンス」の確立

データ活用を高度化し、特にAI(レベル3、4)を本格導入する上で、強固な「データガバナンス」は避けて通れない土台となります。データガバナンスとは、データ資産の品質、セキュリティ、可用性、そして法令遵守を維持・向上させるための組織的な取り組みやルールです。

信頼できないデータ(品質が低い、出所が不明)をAIに学習させても、信頼できる予測結果は得られません。それどころか、誤った経営判断や、個人情報保護法違反などのコンプライアンスリスクを引き起こす可能性さえあります。

信頼できるデータを全社で安全に活用するために、データオーナーの明確化、データ品質基準の策定、データカタログの整備などを進める必要があります。信頼できる調査機関(Gartnerなど)の報告でも、データガバナンスに早期に着手した企業は、データ活用のROI(投資対効果)が著しく向上する傾向が示されています。

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戦略3:データ活用文化の醸成とアジャイルな運用

データ活用は、基盤やツールを導入して終わりではありません。経営層から現場まで、全ての従業員がデータに基づいて意思決定を行う「データ活用文化」を醸成することが不可欠です。

また、市場の変化は激しく、一度構築したAIモデルや戦略もすぐに陳腐化します。小さく始めて迅速に改善を繰り返すアジャイルなアプローチを取り入れ、変化に柔軟に対応できるデータ活用プロセスを定着させることが、持続的な成功に繋がります。

従業員のデータリテラシー向上に向けた継続的な教育・啓発活動も、文化醸成の重要な柱となります。

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戦略4:新たな価値創出への挑戦 (パーソナライズ、データマネタイズ)

レベル3、4の最終的な目標は、データを活用して「新たなビジネス価値を創出」することです。

顧客一人ひとりのニーズや嗜好に合わせて最適な体験を提供する「パーソナライゼーションの深化」や、データを活用して既存事業の枠を超えた「新たなビジネスモデルの模索」、さらにはデータ自体を収益化する「データマネタイゼーション」も視野に入ってきます。

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Google Cloud が実現するデータ活用の高度化

データ活用の「次のステップ」で求められる高度な分析、AI活用、そして厳格なデータガバナンスを実現する上で、Google Cloud は極めて強力なプラットフォームです。

①BigQuery:分析からAI(予測)までをシームレスに

ペタバイト級のデータも高速に分析できるフルマネージドのデータウェアハウス(DWH)です。

特筆すべきは機械学習機能(BigQuery ML)が組み込まれている点です。使い慣れたSQLだけでAIモデルを作成・実行でき、DWHからデータを移動させることなく、シームレスに「分析(レベル2)」から「予測(レベル3)」へとステップアップできます。

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②Vertex AI:高度なAIモデル開発・運用を統合管理

機械学習モデルの開発からデプロイ、管理までを統合的に行えるプラットフォームです。AutoML機能により、データサイエンティストでなくてもカスタムAIモデルを構築可能であり、高度な専門人材が不足しがちな企業(の壁)を強力にサポートします。

③Dataplex:全社的なデータガバナンスを一元管理

Dataplex は、データレイク、データウェアハウス、データマートにまたがるデータを統合的に管理し、データガバナンスを効かせるためのインテリジェントなデータファブリックです。

データカタログの自動整備、データ品質の監視、セキュリティポリシーの適用などを一元化し、「戦略2」で掲げたデータガバナンス確立のプロセスを大幅に効率化します。

XIMIXが伴走するデータ活用の「次のステップ」

これまで述べてきたように、データ活用の高度化には、戦略の再構築、AI導入、データガバナンス強化といった、より高度な取り組みが求められます。

しかし、多くのお客様が「戦略は描けたが、実行できる人材がいない」「どの技術を選定すべきかわからない」「ガバナンスをどう構築すればよいか」といった課題に直面します。これらは、自社のリソースだけで解決するには非常に困難な壁です。

XIMIXは、単なるツールの導入に留まらず、お客様のビジネス成果の最大化を目的とした継続的なパートナーとして、企画構想から開発、運用、そして更なる高度化まで、あらゆるフェーズでご支援いたします。

高度分析基盤構築・AI導入・PoC支援

BigQuery を活用した大規模DWHの構築、Vertex AI を用いた機械学習基盤の設計・構築など、Google Cloud の最新技術を駆使し、お客様に最適な分析基盤を提供します。

NI+Cの豊富なSIerとしての経験に基づき、既存システムのクラウド移行やモダナイゼーションもご相談ください。 お客様の課題に即したAI活用シナリオの具体化から、PoCの計画・実行、そして本格導入まで、伴走型で支援します。

実践的なデータガバナンス構築支援

データガバナンスの強化は、机上のルール策定だけでは成功しません。XIMIXは、Dataplex などのツール導入・設定支援と合わせ、多くのお客様をご支援してきた経験から得られた知見に基づき、お客様の組織体制や文化に即した実践的なデータポリシーの策定、データオーナーシップの定義などを通じて、実効性のあるガバナンス強化をサポートします。

データ活用の深化やAI導入、データガバナンスの強化にご関心をお持ちでしたら、ぜひXIMIXにご相談ください。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

まとめ

データ活用で一定の成果を上げた企業にとって、「次のステップ」は、DXを真に定着させ、持続的な競争優位性を確立するための重要な岐路となります。

本記事では、まず自社の現在地を「成熟度モデル」で把握した上で、「部分最適から全社最適へ」「現状把握から未来予測へ」と進化するための具体的な戦略として、AIの活用、データガバナンスの確立、そして文化醸成の重要性について解説しました。

これらの取り組みは容易なものではありませんが、Google Cloud のような強力なプラットフォームと、XIMIX(NI+C)のような豊富な経験と専門知識を持つパートナーの支援を活用することで、その実現可能性は大きく高まります。

ぜひ本記事を参考に、貴社のデータ活用戦略を見直し、DX推進をさらに加速させる次の一歩を踏み出してください。


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