【データ分析】スプレッドシートとBigQueryの最適な使い分けとは?

 2025,05,07 2025.06.27

はじめに

多くの企業でデータに基づいた意思決定が不可欠となる昨今、身近なスプレッドシートはデータ活用の第一歩として広く使われています。しかし、事業の成長とともに扱うデータが複雑化・大容量化し、「ファイルが重くて開かない」「計算が終わらない」「どのファイルが最新か分からない」といった課題に直面していないでしょうか。

その悩みは、ツールの限界が原因かもしれません。

本格的なデータ分析基盤として注目されるGoogle Cloudの「BigQuery」は、こうしたスプレッドシートの課題を解決する強力な選択肢です。しかし、「どこからBigQueryに移行すべきか」「自社にはまだ早いのではないか」という判断は、DX推進担当者にとって大きな悩みどころです。

本記事では、企業のDX推進を担う決裁者の皆様へ、以下の点を明確に解説します。

  • 多くの企業が直面するスプレッドシート分析の限界
  • BigQueryがもたらす具体的なメリットと解決策
  • 自社の状況に合わせた最適な「使い分けの判断基準」
  • データ活用を成功に導くための実践的なステップ

この記事を読めば、貴社のデータ分析における現状課題が整理され、次の一手を具体的に描けるようになります。

そのお悩み、ツールの「限界」が原因かも?身近なスプレッドシート分析の課題

まずは、多くのビジネスパーソンに馴染み深いスプレッドシートの特性を再確認しましょう。その手軽さの裏側には、データ活用の高度化を阻むいくつかの「壁」が存在します。

①データ量の壁:ファイルが重い、固まる

スプレッドシートの最も分かりやすい限界は、扱えるデータ量です。一般的に数万行を超えると動作が著しく遅くなり、数十万行にもなると「ファイルが固まって応答なし」という事態も珍しくありません。GB(ギガバイト)単位のデータを扱うことは、現実的ではないでしょう。

②属人化の壁:あの人でなければ分からない分析シート

複雑な関数やマクロを駆使して作られた「神Excel」や「秘伝のスプレッドシート」は、作成者にしかメンテナンスできない状態に陥りがちです。分析ロジックがブラックボックス化し、担当者の異動や退職が業務停滞に直結するリスクは、多くの組織が抱える課題です。

③品質の壁:コピー&ペーストで失われるデータの信頼性

手入力やコピー&ペーストが容易な反面、入力ミスや表記揺れ(例:「株式会社ABC」「(株)ABC」)が発生しやすく、データの正確性や一貫性を担保することが困難です。信頼できないデータからは、正しいビジネス判断は生まれません。

関連記事:データ分析の成否を分ける「データ品質」とは?重要性と向上策を解説

④セキュリティの壁:重要データの共有は大丈夫か?

ファイル単位のパスワード設定は可能ですが、個人情報や財務データといった機密情報に対し、「この人にはこの列だけ見せる」といった細やかなアクセス権限の管理は困難です。意図しない情報漏洩のリスクと常に隣り合わせと言えます。

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データ分析の「エンジン」- BigQueryが解決するスプレッドシートの限界

スプレッドシートが「手軽な工具」だとすれば、BigQueryは「組織で使う強力なエンジン」です。前述したスプレッドシートの限界を、BigQueryは以下のように解決します。

①大容量データを数秒で処理する圧倒的なパワー

BigQueryは、数億行、あるいはテラバイト級の膨大なデータを対象とした分析(クエリ)を、数秒から数分で完了させる圧倒的な処理能力を誇ります。Googleの強力なインフラを活用したサーバーレスアーキテクチャのため、利用者はインフラ管理を気にすることなく、分析に集中できます。

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②散在するデータを一元管理し、部門横断の分析を実現

販売管理システム、顧客管理(CRM)、Web広告データなど、社内に散在(サイロ化)しがちなデータを一箇所に統合できます。これにより、例えば「どの広告経由の顧客が、最もLTV(顧客生涯価値)が高いか」といった、部門を横断した高度な分析が可能になります。

関連記事:データ分析基盤はどう構築する?事前に把握しておきたい基本的な考え方【BigQuery】

③Google Cloudの高いセキュリティとガバナンス

BigQueryは、Google Cloudの堅牢なセキュリティ基盤の上に構築されています。IAM(Identity and Access Management)による詳細なアクセス権限の設定や、操作ログの監査機能により、企業の厳格なセキュリティポリシーやデータガバナンスに対応した、安全なデータ管理を実現します。

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④AI・機械学習まで見据えた将来性

BigQueryには、SQLの知識だけで機械学習モデルを構築・実行できる「BigQuery ML」が統合されています。将来的に、需要予測や顧客の離反予測といった高度なデータ活用を見据える企業にとって、大きなアドバンテージとなります。

【簡単診断】あなたの会社はどっち?スプレッドシートとBigQueryの使い分け基準

では、具体的にどのような状況であればBigQueryを検討すべきなのでしょうか。以下の基準で自社の状況を診断してみてください。

①データ量と種類で判断する

  • スプレッドシート向き:
    • 扱うデータが主に数万行以下。
    • データソースが単一、または少数で構造がシンプル。
  • BigQuery検討のサイン:
    • 日常的に数十万行以上のデータを扱っている、または将来扱う計画がある。
    • 販売、顧客、Webログなど複数のデータソースを統合して分析したい。
    • JSON形式のような半構造化データも分析対象としたい。

②分析の速度と頻度で判断する

  • スプレッドシート向き:
    • 週次や月次など、手動更新でも間に合う比較的低頻度な分析。
    • レポート作成に多少時間がかかっても許容できる。
  • BigQuery検討のサイン:
    • 日次や時間単位でのデータ集計・レポーティングが求められる。
    • 分析結果をすぐに確認し、次のアクションを考えたい(アドホック分析)。
    • 月初のレポーティング作業に半日以上かかっているなど、分析業務がボトルネックになっている。

③共同作業の規模とセキュリティ要件で判断する

  • スプレッドシート向き:
    • 個人、または数名のチームで利用する。
    • 扱うデータは機密性が比較的低い。
  • BigQuery検討のサイン:
    • 部門をまたいで、多くの関係者が同じデータを参照・分析する必要がある。
    • 個人情報や財務情報など、厳格なアクセス管理が必要なデータを取り扱う。
    • 「誰が・いつ・どのデータにアクセスしたか」という監査ログが求められる。

【発展】「組み合わせる」という選択肢:Connected Sheetsの活用

必ずしも「どちらか一方」を選ぶ必要はありません。実は、BigQueryとスプレッドシートは非常に親和性が高く、両者を「組み合わせる」ことで、それぞれのメリットを最大限に活かすことができます。

その代表的な機能が「Connected Sheets」です。これは、使い慣れたGoogleスプレッドシートのインターフェースから、BigQueryに保存された最大100億行のデータに直接アクセスし、集計や分析ができる機能です。データ分析の専門家がBigQueryで大規模なデータ処理・集計を行い、現場の担当者はその結果を使い慣れたスプレッドシートで確認・活用する、といった効率的な分業体制を構築できます。

データ活用を次の段階へ。BigQuery導入に向けた3つのステップ

BigQueryの必要性を感じたら、次はいよいよ導入です。しかし、いきなり全社展開を目指すのは得策ではありません。私たちXIMIXが数多くの企業をご支援してきた経験から、リスクを抑えつつ着実に成果を出すための「スモールスタート」を強く推奨します。

Step 1: 課題の明確化とスモールスタート(PoC)

まずは、データ活用によって最も解決したいビジネス課題を一つに絞ります。例えば、「広告費用の最適化」や「解約率の改善」など、成果が分かりやすいテーマがおすすめです。

次に、その課題解決に必要な最小限のデータセットで、BigQueryが有効かどうかを検証するPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施します。私たちのご支援実績では、「マーケティング部門の広告データ統合と効果測定」や「営業部門の予実管理の自動化」などが、PoCの典型的なテーマです。

関連記事:データ活用・分析スモールスタートガイド 始め方からGoogle Cloud活用法までDX推進担当者向けに解説

Step 2: 段階的なデータ統合と基盤構築

PoCで効果が確認できたら、対象とするデータや部門を段階的に拡大していきます。このフェーズでは、様々なデータソースからBigQueryへデータを自動連携するための仕組み(ETL/ELT)の構築や、分析しやすいデータ構造の設計(スキーマ設計)が重要になります。専門的な知識が求められる部分であり、外部パートナーの知見を活用することが成功への近道です。

Step 3: BIツール連携と全社的な活用促進

BigQueryに蓄積されたデータは、Looker StudioのようなBIツールと連携させることで、その価値を最大化できます。経営層向けのダッシュボードや現場担当者向けの定型レポートを自動作成することで、誰もがデータに基づいた状況判断を行える「データドリブンな組織文化」の醸成へと繋がります。

関連記事:データドリブン経営の実践:Google Cloud活用によるデータ活用ROI最大化への道筋

専門家と歩むデータ分析基盤構築への最短ルート

ここまでBigQuery導入のステップを解説しましたが、実際に自社で推進しようとすると、 「PoCのテーマ設定や計画の立て方が分からない」 「データ連携やスキーマ設計を担える専門人材が社内にいない」 「導入後のコスト管理や、社内への活用浸透に不安がある」 といった新たな壁に直面することは少なくありません。

私たちXIMIX(NI+C)は、Google Cloudの認定パートナーとして、長年にわたり中堅・大企業のお客様のDX推進、特にデータ分析基盤の構築と活用をご支援してまいりました。

お客様のビジネス課題やデータ活用の成熟度を深く理解し、PoCの計画策定から、BigQueryの設計・構築、BIツール連携、さらには導入後の内製化支援まで、一気通貫で伴走します。Google WorkspaceとGoogle Cloudの両方に精通しているため、前述のConnected Sheets活用のような、業務に即した効率的なワークフロー提案を得意としています。

データ活用の第一歩を踏み出したい、スプレッドシートでの分析に限界を感じている、という企業様は、ぜひ一度XIMIXにご相談ください。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

まとめ:データ活用の成熟度に合わせて最適なツールを選ぼう

本記事では、データ分析におけるスプレッドシートの限界と、BigQueryとの最適な使い分けについて解説しました。

  • スプレッドシート: 手軽で小規模なデータ分析や、定型化されていない個人的な作業に最適。
  • BigQuery: 大容量データの高速処理、複数データの統合、高度な分析、厳格なセキュリティが求められる組織的なデータ分析基盤の核となる。

重要なのは、両者を対立するものと捉えるのではなく、自社の事業フェーズやデータ活用の成熟度に合わせて、賢く「使い分け」「組み合わせる」ことです。スプレッドシートの限界は、データ活用を新たなステージへ引き上げるための絶好のサインです。

この記事が、皆様のDX推進の一助となれば幸いです。データ分析基盤の構築に関して、より具体的なご相談が必要な場合は、お気軽にXIMIXまでお問い合わせください。


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