クラウド導入後にやるべきこととは?安定稼働と効果最大化のための運用タスクを解説

 Apr 22, 2025 8:00:25 PM 2025.04.22

はじめに

「ようやくクラウドサービスを導入できた!これで一安心…」そう思っていませんか? しかし、クラウド導入はゴールではなく、むしろ新たなスタートラインです。特にGoogle CloudGoogle Workspaceのような多機能なクラウドサービスを導入した場合、「導入したのはいいけれど、この後、具体的に何をすべきか?」と戸惑う担当者の方は少なくありません。

クラウドのメリットを最大限に引き出し、安定したサービス利用を継続するためには、導入後の「運用」フェーズが極めて重要になります。運用を怠ると、予期せぬコスト増加やセキュリティリスクの発生、さらにはせっかく導入したクラウドサービスを十分に活用しきれない、といった事態を招きかねません。

この記事では、クラウド導入後に特に押さえておきたい運用の基本に焦点を当て、何をすべきかを具体的に解説します。クラウド運用の基本的なタスクから、効果的な運用体制の考え方、コスト管理やセキュリティ対策の基本まで、初心者の方にも分かりやすく説明します。本記事を通じて、クラウド運用の第一歩を踏み出し、安定稼働と導入効果の最大化を目指しましょう。

なぜクラウド導入後の「運用」が重要なのか?

クラウド導入によるメリット(俊敏性向上、コスト削減、スケーラビリティなど)を享受し続けるためには、継続的な運用管理が不可欠です。導入して終わりではなく、むしろ導入してからが本番と言えます。

導入効果の最大化と継続的な改善の必要性

クラウド環境は常に変化しています。新しいサービスが登場したり、既存サービスの機能がアップデートされたり、利用状況に応じて最適な構成も変わってきます。導入時の設計が、数ヶ月後、数年後も最適であるとは限りません。

定期的に利用状況を評価し、コスト効率やパフォーマンス、セキュリティの観点から改善を続けることで、初めてクラウド導入の効果を最大化できます。例えば、よりコスト効率の高いインスタンスタイプへの変更、不要になったリソースの削除、新たなセキュリティ機能の活用などが考えられます。

放置によるリスク(コスト増、セキュリティインシデントなど)

適切な運用が行われない場合、様々なリスクが発生します。

  • コストの無駄遣い: 使われていない仮想マシンやストレージを放置すれば、不要なコストが発生し続けます。利用状況に応じたリソース調整を怠ると、想定以上の請求に驚くことになるかもしれません。
  • セキュリティリスクの増大: OSやミドルウェアの脆弱性対策(パッチ適用)を怠ったり、不適切なアクセス権限設定を放置したりすると、不正アクセスや情報漏洩のリスクが高まります。クラウド特有の設定ミスが重大なインシデントにつながるケースも少なくありません。
  • パフォーマンスの低下: 利用量の増加に対応できず、システムの応答速度が遅くなったり、サービスが停止したりする可能性があります。
  • 機会損失: クラウドの新しい機能を活用できず、競合他社に比べてDX推進で後れを取る可能性もあります。

これらのリスクを回避し、クラウドを安全かつ効果的に活用し続けるために、計画的な運用活動が求められるのです。

クラウド導入後にまず着手すべき運用タスク【基本編】

では、具体的にクラウド導入後には何をすべきなのでしょうか。ここでは、まず取り組むべき基本的な運用タスクを5つ紹介します。

①アカウント・権限管理:セキュリティの基礎固め

クラウド環境におけるセキュリティの第一歩は、適切なアカウント管理と権限設定です。誰が、どのリソースに、どの程度の操作権限を持つのかを厳密に管理する必要があります。

  • 最小権限の原則: ユーザーやサービスアカウントには、業務に必要な最低限の権限のみを付与します。不要な権限を与えないことで、操作ミスや不正利用によるリスクを低減できます。Google CloudではIAM (Identity and Access Management) を用いて、きめ細かな権限設定が可能です。
  • 定期的な見直し: 人事異動や組織変更、プロジェクトの終了などに伴い、不要になったアカウントの削除や権限の見直しを定期的に実施します。放置されたアカウントは、セキュリティリスクの原因となり得ます。
  • アクセス管理の重要性: 多要素認証 (MFA) の導入や、アクセス元IPアドレス制限などを活用し、不正アクセス対策を強化することも重要です。

②コスト管理:予期せぬ請求を防ぐために

クラウドは利用した分だけ料金が発生する従量課金制が基本ですが、それゆえに利用状況を把握・管理しないと、想定外の高額請求につながる可能性があります。クラウドコスト管理基本を押さえましょう。

  • 利用状況のモニタリングと可視化: クラウドプロバイダーが提供するコスト管理ツール(例: Google Cloud Billing)を活用し、どのサービスでどれくらいのコストが発生しているかを定期的に確認します。部署別やプロジェクト別など、コストの内訳を把握できるようにタグ付けなどを活用することも有効です。
  • 予算アラートの設定: あらかじめ設定した予算額を超過しそうになった場合に通知を受け取る設定を行います。これにより、コストの異常な増加を早期に検知できます。
  • 不要リソースの棚卸し: 開発環境で一時的に作成した仮想マシンや、テスト用にアップロードした大量のデータなどが放置されていないか、定期的に確認し、不要なものは削除します。

コスト管理は、単に費用を削減するだけでなく、リソースの利用状況を把握し、投資対効果を最大化するためにも重要です。より詳細なコスト最適化については、別の機会にご紹介できればと思いますが、まずは現状把握と基本的な管理から始めましょう。

③セキュリティ対策:基本的な設定と意識向上

クラウド環境のセキュリティは、クラウド事業者と利用者の双方の責任において確保されます(責任共有モデル)。利用者は、自らが管理する範囲において、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。特に初心者が意識すべき点を挙げます。

  • セキュリティ診断ツールの活用: Google Cloud の Security Command Center のようなツールを活用し、設定ミスや脆弱性がないか定期的にチェックします。多くのクラウドプロバイダーは、基本的なセキュリティチェック機能を提供しています。
  • OS・ミドルウェアのパッチ適用: 仮想マシンなどを利用している場合、OSやミドルウェアのセキュリティパッチを速やかに適用することが重要です。脆弱性を放置すると、攻撃の標的となるリスクが高まります。
  • 従業員へのセキュリティ教育: フィッシング詐欺対策、パスワード管理の徹底、機密情報の取り扱いルールなど、従業員のセキュリティ意識を高めるための教育も欠かせません。人的ミスによるインシデントも少なくありません。

ご参考:【入門編】Google Cloudセキュリティ対策の基本 - まずやるべき5つのこと

④監視・モニタリング:システムの安定稼働のために

システムが正常に稼働しているか、パフォーマンスに問題はないかなどを継続的に監視することも、重要な運用タスクです。

  • 基本的な監視項目の設定: CPU使用率、メモリ使用量、ディスクI/O、ネットワークトラフィックなど、システムの健全性を測る基本的な指標を監視対象とし、閾値を設定します。Google Cloud Monitoring などのサービスを利用できます。
  • ログの収集と基本的な分析: システムログやアプリケーションログを収集・保管し、エラー発生時の原因調査や不正アクセスの兆候検知に役立てます。ログ管理は、トラブルシューティングの基本となります。
  • 障害発生時の通知設定: 設定した閾値を超過した場合や、システムに異常が発生した場合に、担当者に速やかに通知(メール、チャットなど)が届くように設定します。早期発見・早期対応が、被害を最小限に抑える鍵となります。

⑤バックアップ・リストア:万が一の備え

システム障害や操作ミス、ランサムウェア攻撃など、予期せぬ事態によってデータが失われるリスクに備え、定期的なバックアップと、必要時にデータを復旧(リストア)できる体制を整えておくことは極めて重要です。

  • バックアップポリシーの策定と実行: どのデータを、どのくらいの頻度で、どこに、どのくらいの期間保存するかを定めたバックアップポリシーを策定し、それに従ってバックアップを確実に実行します。データの重要度に応じてポリシーを分けることも有効です。
  • 定期的なリストア訓練の重要性: バックアップを取得しているだけでは不十分です。実際にデータをリストアできるか、手順に問題はないかなどを確認するために、定期的にリストア訓練を実施することが推奨されます。いざという時に復旧できない、という事態を防ぎます。

効果的なクラウド運用のための体制づくり

ここまで基本的な運用タスクを見てきましたが、これらのタスクを誰が、どのように実行していくのか、という運用体制を整備することも重要です。

①運用担当者の役割と責任分担

クラウド運用には、インフラ管理、ネットワーク、セキュリティ、コスト管理、アプリケーション運用など、多岐にわたるスキルが求められます。これらの業務を誰が担当するのか、役割と責任を明確にする必要があります。

  • 必要なスキルセット: 全てのスキルを一人の担当者が持つことは困難な場合が多いでしょう。チーム内でスキルを分担したり、必要に応じて外部の専門家の支援を受けたりすることを検討します。
  • 兼任か専任か?: 企業の規模やクラウドの利用状況にもよりますが、本格的にクラウド活用を進めるのであれば、専任の担当者またはチームを設置することが理想的です。兼任の場合、他の業務との兼ね合いで運用業務が後回しになりがちです。クラウド運用体制の構築は、経営層の理解とコミットメントも重要になります。

②ドキュメント整備

運用業務を円滑に進め、属人化を防ぐためには、ドキュメントの整備が欠かせません。

  • 構成情報、手順書、インシデント記録: クラウド環境の構成図、各種設定手順、監視項目一覧、障害発生時の対応手順、過去のインシデント記録などを文書化し、関係者間で共有できるようにします。
  • 属人化を防ぐための取り組み: ドキュメントを常に最新の状態に保ち、担当者が変更になっても業務を引き継げるようにしておくことが重要です。

③パートナー企業との連携

自社だけですべての運用業務をカバーするのが難しい場合、専門知識を持つパートナー企業との連携が有効な選択肢となります。

  • 専門知識の活用とリソース補完: 特にセキュリティやコスト最適化、高度な監視設定など、専門性が求められる分野については、外部パートナーの知見を活用することで、より高品質な運用を実現できます。また、運用業務の一部をアウトソースすることで、自社の担当者はより戦略的な業務に集中できます。
  • 自社でどこまで対応するか?: どこまでの範囲を自社で行い、どこからをパートナーに委託するのか、自社のリソースやスキルレベル、クラウド活用の戦略などを考慮して決定する必要があります。

XIMIXによる支援サービス

ここまでクラウド導入後の基本的な運用タスクや体制づくりについて解説してきましたが、実際にこれらすべてを自社だけで、特に導入初期段階から完璧に行うのは、多くの企業にとって大きな負担となり得ます。

「運用に十分なリソースを割けない」「専門知識を持つ人材が不足している」「コスト管理やセキュリティ対策に不安がある」といった課題をお持ちではないでしょうか?

私たちXIMIXは、お客様のクラウド導入後の運用フェーズを強力にサポートします。

多くの企業様のDX推進をクラウド導入からご支援してきた豊富な実績と知見に基づき、お客様の状況や課題に合わせた最適なクラウド運用プランをご提案します。

  • 導入支援から運用までワンストップ: Google Cloud / Google Workspace の導入コンサルティングから設計・構築、そして導入後の運用設計、監視、コスト管理・最適化、セキュリティ対策強化まで、一貫したサービスを提供します。
  • 専門家による伴走支援: 経験豊富なエンジニアが、お客様の運用体制構築をサポートし、日々の運用タスクを代行・支援します。単なるアウトソースではなく、お客様社内のスキル向上にも貢献します。
  • 柔軟なサービスメニュー: 定期的なレポーティング、セキュリティ診断、コスト最適化コンサルティングなど、お客様のニーズに合わせて必要なサービスを選択いただけます。

クラウド導入後の運用に関するお悩みは、ぜひXIMIXにご相談ください。

XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

※Google Cloud については、こちらのコラム記事もご参照ください。 
【基本編】Google Cloudとは? DX推進の基盤となる基本をわかりやすく解説
【基本編】Google Cloud導入のメリット・注意点とは? 初心者向けにわかりやすく解説

まとめ

クラウド導入は、ビジネス変革の大きな一歩ですが、その効果を持続させ、最大化するためには、導入後の「運用」が不可欠です。本記事では、クラウド導入後に何をすべきか、その基本的な運用タスクと体制づくりのポイントを解説しました。

  • アカウント・権限管理: セキュリティの基本。最小権限の原則と定期的な見直しを。
  • コスト管理: 利用状況の可視化と予算アラート、不要リソースの棚卸しが基本
  • セキュリティ対策: 基本設定の確認とパッチ適用、従業員教育を忘れずに。初心者も取り組みやすいことから始めましょう。
  • 監視・モニタリング: システムの安定稼働状況を把握し、異常を早期検知。
  • バックアップ・リストア: 万が一に備えたデータ保護と復旧訓練を。
  • 運用体制: 役割分担の明確化、ドキュメント整備、必要に応じたパートナー連携が鍵。

これらの運用タスクを地道に継続していくことが、安全で効率的なクラウド活用につながります。「クラウドの運用は何をすべきか」という問いへの答えは、これらの基本的な活動を計画的に実行していくことにあると言えるでしょう。

自社での対応が難しいと感じる場合は、無理せず外部の専門家の力を借りることも有効な手段です。まずはこの記事で紹介した基本的なクラウド運用から着実にスタートし、クラウドのメリットを最大限に引き出していきましょう。


クラウド導入後にやるべきこととは?安定稼働と効果最大化のための運用タスクを解説

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