Google WorkspaceとGoogle Cloudの運用は分けるべきか?活用を加速させる組織設計の最適解

 2026,01,28 2026.01.28

はじめに:運用体制の選択が企業のDXスピードを左右する

クラウドシフトが加速する中、多くの情報システム部門が直面するのが「組織の境界線」の問題です。特に、ビジネスインフラとして不可欠なGoogle Workspaceと、システム基盤であるGoogle Cloudの運用体制は、その企業のITガバナンスと機動力を象徴します。

「同じGoogle製品なのだから、一つのチームで管理すべきではないか」 「専門性が異なるため、明確に分けるべきだ」

こうした議論が社内で繰り返される背景には、リソース不足という切実な問題と、技術領域の高度化という現実があります。

結論から申し上げれば、中堅・大企業においては「論理的なID基盤の統合」を前提としつつ、「実運用の役割は専門性に応じて分離する」のが、ROI(投資対効果)を最大化する最短ルートです。

本記事では、数多くのエンタープライズ企業を支援してきた経験に基づき、なぜ安易な兼任が「DXの足かせ」になるのか、そして最新の生成AI活用やコンプライアンス対応まで見据えた理想的な運用体制とは何かを解説します。

兼任体制が招く「見えないコスト」とリスクの正体

多くの現場では、初期段階においてGoogle Workspaceの管理者が流れでGoogle Cloudの管理も兼ねるケースが見受けられます。

しかし、事業規模が拡大し、扱うデータの重要性が増すにつれ、この「兼任」という状態はボトルネックへと変貌します。

①専門性のミスマッチによるセキュリティの脆弱化

Google Workspaceは「コラボレーションの最適化」を主眼に置いており、権限管理やデータ共有のルール作りが運用の中心です。

一方でGoogle Cloudは、ネットワーク設計、IAMの細粒度な制御、リソースのコスト最適化など、インフラエンジニアリングの深い知識が求められます。

兼任体制では、複雑なセキュリティ設定が後回しになりやすく、設定ミスによる情報漏洩リスクが高まります。これは、中堅・大企業にとって取り返しのつかないブランド毀損を招く恐れがあります。

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②意思決定の遅延とビジネスチャンスの喪失

事業部門から「新しい分析基盤(BigQuery)を使いたい」「Vertex AIで生成AIを活用したい」という要望が上がった際、運用の兼任者が日々のWorkspaceのトラブル対応に追われていれば、検討は停滞します。

この「数週間の遅延」が、競合他社に対する競争優位性を失わせる直接的な要因となります。

「兼任」を脱却し、職務分掌(SoD)を確立すべき理由

ここで言う「兼任の解消」とは、必ずしも物理的な人数を増やすことだけを指すのではありません。

重要なのは、「特権IDの職務分掌(SoD: Segregation of Duties)」が論理的になされているかという点です。

①権限レベルでの分離:IAM設計の重要性

一人の担当者が「Workspaceの特権管理者」と「Google Cloudの組織管理者」の両方の権限を常時保持している状態は、ガバナンス上危険です。

万が一、そのアカウントが乗っ取られた場合、全社のメールデータから基幹システムのインフラまで、すべての制御権を失うことになります。

理想的なのは、たとえ担当者が同じであっても、「Workspace管理用」と「Google Cloud管理用」のアカウントを分ける、あるいは「Just-In-Time(JIT)アクセス」を活用して、必要な時だけ権限を昇格させる運用です。

このように権限を論理的に分離することで、操作ミスや不正利用による被害を最小限に食い止めることができます。

②外部監査とコンプライアンスへの対応

中堅・大企業においては、ISMSやPマーク、あるいは上場企業としてのJ-SOX対応など、外部監査への適合が不可欠です。近年の監査基準では、「特権アクセスの適切な分離と監視」が厳格にチェックされます。

「一人の担当者がインフラの全権限を握っている」状態は、監査における不適合や改善指摘の対象となりやすく、その対応コスト(説明責任や是正措置)は、最初から体制を分けて運用するコストを容易に上回ります。

法規制遵守の観点からも、管理の分離は避けて通れない課題です。

統合すべきは「人」ではなく「ID基盤」である

体制や権限を分けるといっても、完全に断絶させてはいけません。ここで重要になるのが「Cloud Identity」によるIDの統合管理です。

①シングルサインオン(SSO)を核とした一元管理

Google WorkspaceのユーザーIDをそのままGoogle Cloudの権限割り当てに使用し、退職や異動に伴う権限削除の漏れを防ぐことができます。

これは、ゼロトラスト・セキュリティ(BeyondCorp)を実現するための大前提です。

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②共通のガバナンス・ガードレールの策定

運用チームは分かれていても、企業としての「クラウド利用ガイドライン」は共通であるべきです。

例えば、「多要素認証(MFA)の強制」や「外部共有の制限ルール」などは、両チームが連携して策定する必要があります。この「ポリシーの統合」こそが、大企業が求める統制の正体です。

生成AI時代の到来で加速する運用の高度化

現在、Gemini for Google Cloudの進化により、運用のあり方は劇的に変化しています。生成AIを業務に組み込む際、Workspace(メール、ドキュメント)とGoogle Cloud(独自のビジネスデータ)を横断したデータ活用が加速しています。

Vertex AIとWorkspaceの連携が生む「境界線」の管理

例えば、Google Drive内の社内文書をVertex AIで検索・要約する「RAG(検索拡張生成)」の構築。ここでは、Workspace側のファイルアクセス権限を、いかにGoogle Cloud上のAIモデルへ安全に引き継ぐかという権限設計が求められます。

このような「クロスドメイン」のプロジェクトが増える中で、運用体制が曖昧なままでは、情報漏洩を恐れてAI活用を制限せざるを得なくなり、結果としてビジネスの停滞を招きます。

成功へのロードマップ:外部パートナーとの協調

自社リソースだけで「完全な分離」と「最新技術への追随」を両立させるのは、容易ではありません。そこで検討すべきなのが、戦略的なアウトソーシングの活用です。

専門家の知見を借りる「ハイブリッド運用」

単に運用を丸投げするのではなく、自社の担当者がコアな意思決定に集中できるよう、高度なIAM設計や技術検証を外部の専門家に委託するスタイルが主流となっています。

これにより、ガバナンスを維持しつつ、最新のAI技術をいち早くビジネスに取り入れることが可能になります。

XIMIXが提供する支援

XIMIXでは、Google WorkspaceとGoogle Cloudの両方に精通したエンジニアが、お客様の組織フェーズに合わせた最適な体制構築を支援します。

  • 現状分析とIAM再設計: 兼任リスクを可視化し、職務分掌に基づいたセキュアな権限モデルを提案します。

  • AI活用を見据えた基盤整備: Gemini導入を前提とした、データ利活用とセキュリティの両立を支援します。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

まとめ:競争力を生むための「攻め」の組織設計を

Google WorkspaceとGoogle Cloudの運用体制をどう構築するか。その答えは、単なる業務分担ではなく、自社がクラウドを通じてどのようなビジネス価値を創出したいかという「戦略」に直結しています。

  1. ガバナンスとコンプライアンスの観点から、論理的な権限分離(SoD)を徹底する。

  2. ID基盤(Cloud Identity)を統合し、ライフサイクル管理を一元化する。

  3. 生成AI活用の加速に向け、領域横断的な知見を持つ外部パートナーを戦略的に活用する。

この3点を軸に体制を再編することで、情報システム部門は「守りのコストセンター」から「攻めのビジネスパートナー」へと進化を遂げることができます。

運用体制の最適化や、監査対応を見据えた権限設計についてお悩みの際は、ぜひ一度XIMIXにご相談ください。貴社の組織規模と目指すべきゴールに合わせた、最適なロードマップを共に描きます。


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