【入門編】プロセスマイニングとは?DX推進の鍵を握る業務可視化・改善手法をわかりやすく解説

 2025,04,28 2025.06.27

DX推進を阻む「見えない業務プロセス」という課題

多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を最重要課題として掲げる一方、「業務プロセスが複雑化・ブラックボックス化し、どこに真の課題があるか把握できない」「勘や経験に頼った部分的な改善活動から脱却できない」といった壁に直面しています。これら「見えない業務プロセス」は、非効率な作業や承認の遅延(ボトルネック)の温床となり、DX推進の実行を妨げる深刻な足かせとなります。

貴社においても、部門間にまたがるプロセスの全体像が見えず、根本的な原因特定に至らないまま、対症療法的な改善に留まってはいないでしょうか。

本記事では、こうした課題を解決する鍵として注目される「プロセスマイニング」について、その基本からDX推進における重要性、具体的なメリット、導入成功のポイントまでを、専門家の視点から分かりやすく解説します。

プロセスマイニングとは?データで業務を解明するアプローチ

プロセスマイニングとは、ERPやCRMといった様々な業務システムに蓄積された「イベントログ」と呼ばれる客観的なデータを活用し、実際の業務プロセスをありのままに可視化・分析する技術です。

勘と経験から「事実」に基づく業務把握へ

従来、業務プロセスの把握は、担当者へのヒアリングやワークショップが主流でした。しかし、この手法では回答者の主観や記憶の曖昧さが入り込み、理想的なプロセスや例外的なケースのみが語られ、業務の全体像や実態を正確に捉えきれないという限界がありました。

プロセスマイニングは、この課題を「データ」によって解決します。システム上に記録された「いつ(タイムスタンプ)」「誰が(担当者)」「何を(アクティビティ)」「どの案件で(ケースID)」といった事実情報に基づき、プロセスフローを自動で描き出します。これにより、思い込みや理想論ではない、不都合な真実も含めた現実の業務プロセスを、誰もが客観的に把握できるようになるのです。

「プロセス」と「タスク」:分析範囲の違い

プロセスマイニングと類似する用語に「タスクマイニング」があります。両者の違いは、分析の視点にあります。

  • プロセスマイニング(森を見る): 複数の担当者やシステムにまたがる、エンドツーエンドのビジネスプロセス全体の流れを分析します。(例: 受注から納品まで)

  • タスクマイニング(木を見る): PC上で行われる個人のデスクワーク(操作内容)を分析します。(例: Excelへのデータ入力、システム間のコピー&ペースト)

プロセスのボトルネック特定にはプロセスマイニング、個々の作業の非効率発見やRPA化の検討にはタスクマイニングが適しており、両者を組み合わせることで、より網羅的な業務改善が可能になります。

なぜ、プロセスマイニングがDX推進の鍵となるのか

プロセスマイニングは新しい概念ではありませんが、現在、その重要性はかつてなく高まっています。その背景には、企業経営における大きな変化があります。

①データドリブン経営への移行

DXの本質は、データを活用してビジネスモデルや業務を変革し、競争優位性を確立することにあります。著名な調査会社であるGartner社も、データとアナリティクス活用への取り組みが企業の成長を左右すると指摘しており、客観的なデータに基づいた意思決定(データドリブン)は、もはや経営の必須要件です。プロセスマイニングは、業務プロセスの領域において、このデータドリブン経営を具体化する最も強力な手法の一つと位置づけられています。

②従来型業務改善の限界とデジタル化の進展

前述の通り、ヒアリングベースの業務改善は時間とコストを要する上、属人化しやすく、正確性にも課題がありました。特に、グローバル化やM&Aによって複雑化したプロセスでは、人手による全体像の把握は不可能です。

一方で、企業活動のデジタル化が進んだことで、分析の源泉となるイベントログデータが様々なシステムに大量に蓄積されるようになりました。この潤沢なデータを活用し、従来手法の限界を超える客観的かつ網羅的な分析を可能にするプロセスマイニングが、DX時代の必然的なアプローチとして注目を集めているのです。

プロセスマイニング導入がもたらす5つの具体的なメリット

プロセスマイニングを導入することで、企業は具体的にどのような価値を得られるのでしょうか。NI+Cの支援実績においても、多くのお客様が以下のメリットを実感されています。

メリット1:業務プロセスの客観的な可視化

最大のメリットは、実際の業務プロセスを「事実ベース」で正確に可視化できる点です。理想や建前ではなく、現場で実際に行われている非効率な手戻りや、誰も把握していなかった逸脱ルートまでが明らかになり、議論の出発点を統一できます。

メリット2:ボトルネックや非効率業務の迅速な特定

可視化されたプロセスを分析することで、リードタイムを長期化させているボトルネック工程、想定外の手戻り、標準プロセスからの逸脱などを定量的に特定できます。これにより、改善インパクトの大きい領域に優先的に着手することが可能になります。

メリット3:コンプライアンス遵守と内部統制の強化

定められた社内ルールや承認フロー通りに業務が行われているかを、全件データで客観的に検証できます。不正なプロセスやルールからの逸脱を検知し是正することで、内部統制を強化し、事業リスクを低減します。

メリット4:コスト削減と生産性の向上

ボトルネックの解消、非効率な手作業の自動化、手戻りの削減は、業務プロセス全体のリードタイム短縮、ひいては人件費や機会損失といったコストの削減に直結します。これにより創出されたリソースを、より付加価値の高い業務へ再配分し、組織全体の生産性を向上させます。

メリット5:データに基づく的確な意思決定の実現

「おそらく、ここが問題だろう」といった憶測ではなく、「この工程で全体の40%の時間が費やされている」といったデータに基づき、改善施策の優先順位を判断できます。また、施策実行後の効果も同様にデータで測定できるため、継続的な改善サイクル(PDCA)の精度が飛躍的に向上します。

プロセスマイニングの仕組みと実践ステップ

プロセスマイニングは、一般的に以下の4つのステップで進められます。

ステップ1:イベントログデータの収集・準備

分析対象のプロセスに関連するシステム(ERP, CRM, SFA, ワークフロー等)からイベントログを抽出します。ログには最低限、以下の3つの情報が必要です。

  • ケースID: プロセスを一意に識別するID(例: 受注番号、申請ID)

  • アクティビティ: 実行された作業内容(例: 受注登録、与信確認、出荷指示)

  • タイムスタンプ: 各アクティビティの実行日時

ステップ2:ツールによるプロセスの分析と可視化

収集したデータをプロセスマイニングツールに取り込み、アルゴリズムを用いてプロセスフロー図を自動生成します。主要なツールでは、処理時間、頻度、手戻り回数などが色や線の太さで直感的に表現され、問題箇所が一目で分かります。

ステップ3:課題の特定と改善策の立案

可視化された結果を基に、関係者で分析セッションを行います。「なぜこの工程で時間がかかっているのか」「なぜこれほど多くの手戻りが発生しているのか」といった原因を深掘りし、具体的な改善策(プロセスの変更、RPAによる自動化、人員配置の見直し等)を立案します。

ステップ4:改善策の実行と効果測定(モニタリング)

立案した改善策を実行します。プロセスマイニングの価値は、実行後の効果を定量的に測定できる点にもあります。再度データを分析し、施策によってリードタイムやコストがどれだけ削減されたかを評価し、次の改善アクションへと繋げます。

導入を成功に導くための実践的ポイント

プロセスマイニングは強力なツールですが、導入するだけでは成果は出ません。成功のためには、以下のポイントが不可欠です。

明確な目的設定が成否を分ける

「コストを10%削減したい」「受注から納品までのリードタイムを2営業日短縮したい」など、何のためにプロセスマイニングを行うのか、具体的かつ測定可能な目的を最初に設定することが最も重要です。目的が曖昧なままでは、分析結果をどう活かせばよいか判断できません。

関連記事:DXにおける適切な「目的設定」入門解説 ~DXを単なるツール導入で終わらせないために~

スモールスタートで確実な成果を

最初から全社規模の複雑なプロセスに挑むのは得策ではありません。課題が比較的明確で、関係者も少ないプロセスからスモールスタートし、成功体験とノウハウを蓄積しながら段階的に対象を拡大していくアプローチが、結果的に全社展開への近道となります。

【関連記事】 なぜDXは小さく始めるべきなのか? スモールスタート推奨の理由と成功のポイント、向くケース・向かないケースについて解説

現場部門を巻き込んだ全社的な協力体制の構築

プロセスマイニングは、IT部門だけでは推進できません。データの意味を理解し、分析結果から真の示唆を得るためには、業務に精通した現場部門の協力が不可欠です。プロジェクトの初期段階から目的を共有し、分析、改善策の立案・実行まで一貫して連携する体制を築きましょう。

自社に最適なツールの選定と専門家の活用

プロセスマイニングツールは多岐にわたり、機能や価格も様々です。自社の目的やシステム環境、分析スキルに応じて最適なツールを選ぶ必要があります。また、導入初期においては、データ抽出・加工の技術や分析ノウハウを持つ専門家の支援を受けることも、プロジェクトを円滑に進める上で非常に有効な選択肢です。

まとめ:プロセスマイニングでデータドリブンな業務改革へ

本記事では、DX推進の鍵となるプロセスマイニングについて、その概念からメリット、成功のポイントまでを解説しました。

プロセスマイニングは、システムに眠る客観的なデータを活用し、業務プロセスの「不都合な真実」を可視化することで、的確な改善へと導く強力な羅針盤です。勘と経験に依存した従来の改善活動を脱し、データドリブンな業務改革を実現することは、変化の激しい時代を勝ち抜くための必須条件と言えるでしょう。

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「自社のどの業務から始めればよいか分からない」「ツール選定や導入に不安がある」といったお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。この記事が、貴社のDX推進の一助となれば幸いです。

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