はじめに
DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する中堅・大企業において、避けて通れないのが「事業部門」と「IT部門」の深刻な摩擦です。
事業部門は「市場の変化に対応するため、新しいクラウドサービスやAIを今すぐ使いたい」と主張し、IT部門は「セキュリティリスクが不明確で、ガバナンスが保てない」とブレーキをかける。この平行線は、企業の成長スピードを削ぐだけでなく、優秀な人材の離職やシャドーITの蔓延といった二次被害を招いています。
なぜ、これほどまでに両者の理解は得られないのでしょうか。そして、どうすれば「強固な守り」を維持したまま「圧倒的なスピード」を手に入れられるのか。Google Cloud/Google Workspaceのチームとして多くの現場を見てきた知見から、その解決策を紐解きます。
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共有されない「リスク」の定義と評価制度の歪み
事業部門がIT部門の警告を「過剰な制限」と感じてしまう最大の理由は、両者が追っている「KPI(重要業績評価指標)」の断絶にあります。
事業部門の使命は、売上と市場シェアの拡大です。彼らにとっての最大のリスクは、競合に遅れを取る「機会損失」です。一方でIT部門は、システムを安全かつ安定的に稼働させることが使命であり、彼らにとっての最大のリスクは「情報漏洩」や「システムダウン」です。
この「リスク」に対する定義のズレが、対話の質を下げています。
セキュリティを「コスト」や「制限」としてしか説明できないIT部門と、それを「自分たちのスピードを奪う敵」と見なす事業部門。この構造を打破するには、「セキュリティは事業継続と攻めのための投資である」という共通言語を組織に浸透させる必要があります。
現場がガバナンスを「邪魔者」扱いする3つの本質的な理由
支援してきた中で見えてきた、現場がガバナンスを拒絶する具体的な要因は以下の3点に集約されます。
1. 業務プロセスを無視した一律の制限
「一律で外部ストレージ利用禁止」「社外からのアクセスは全てVPN経由」といったルールは、管理側には効率的ですが、現場のワークフローを寸断します。
代替手段が不便であれば、現場は「仕事にならない」と判断し、独自の判断でルールを形骸化させます。
2. 専門用語の壁と「ビジネスインパクト」の欠如
「ゼロトラスト」や「IAM」といった用語を並べても、事業部門には響きません。そのリスクが顕在化した際に、プロジェクトにどのような損害(損害賠償、ブランド失墜、事業停止期間など)が出るのか。
逆に、ガバナンスを整えることで、どれだけ迅速に新しい顧客データ活用が可能になるのか。ビジネス価値への変換が不足しているケースが目立ちます。
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3. 意思決定の「ブラックボックス化」
新しいツールを試したいという要望に対し、審査に数ヶ月を要し、進捗も見えない。こうした体制では、変化の激しい現代のビジネスには対応できません。
「ルールを守ること」自体が目的化し、事業の成功を支援するというIT部門本来の役割が見失われていると感じられたとき、信頼関係は崩壊します。
Google Cloudが実現する「ガードレール型ガバナンス」への転換
対立を解消する鍵は、従来の「門番(ゲートキーパー)」としてのガバナンスから、自由に走れる範囲を定義する「ガードレール」としてのガバナンスへの転換です。ここで、Google Cloudのエコシステムが大きな力を発揮します。
例えば、Google Cloudの「組織ポリシー」を活用すれば、各事業部門にはプロジェクトの管理権限を委譲しつつ、セキュリティ上の致命的な設定ミス(ストレージの公開設定など)はシステム側で自動的に禁止することが可能です。
これは、高速道路にガードレールを設置するようなものです。運転手(事業部門)は、コースアウトの心配をせずにアクセルを踏むことができます。IT部門は、一台一台の車を検問するのではなく、道路全体の安全設計(ガードレール)を維持することに注力すればよいのです。
このように、テクノロジーによって「統制」を「自動化・透明化」することで、現場の負担を最小限に抑えながら、高度なガバナンスを実現できます。
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意思決定者が理解すべきセキュリティの投資対効果(ROI)
セキュリティやガバナンスは、守りのためのコストではありません。
中堅・大企業の決裁者層が意識すべきは、ガバナンスを高度化することが「事業の俊敏性(アジリティ)」を向上させるという視点です。
①事故対応コストの回避と信頼維持
一度の重大な情報漏洩による損害賠償や事後対応コストは、数億円に上ることも珍しくありません。
しかし、真に考慮すべきは、ブランド価値の毀損による将来的な利益の喪失です。堅牢なガバナンスは、これらを未然に防ぐ「保険」以上の価値を持ちます。
②攻めのDXを支える基盤としての安心感
強固なガバナンス基盤があるからこそ、企業は安心して生成AIのような最新技術をスピーディーに全社展開できます。
土台が不安定なままでは、どれほど優れたツールも「リスクが怖いから」という理由で検証段階に留まり、競合他社に先を越されることになります。
外部パートナーと共に創る「共存共栄」のIT体制
事業部門とIT部門の溝を埋め、理想的なガバナンス体制を構築するには、社内調整だけでは限界があるのも事実です。特に、既存のレガシーなルールを最新のクラウドネイティブなルールにアップデートする工程では、客観的な視点と豊富な他社事例を持つ専門家の存在が不可欠です。
『XIMIX』は、単なるツールの導入支援ではなく、お客様の組織構造や文化に踏み込んだ「ガバナンスのグランドデザイン」から伴走します。
「事業部門が使いやすいと感じる環境」と「IT部門が安心できる統制」を、Google Cloudの知見を活かしてどう具体化するか。私たちは、技術的な実装だけでなく、社内の合意形成や、決裁者層に向けたROIの可視化においても実績を持っています。
もし、貴社において「セキュリティがDXのブレーキになっている」という懸念があるならば、それは体制を見直す絶好のチャンスです。
XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
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まとめ:対立を終わらせ、ビジネスを加速させるために
事業部門とIT部門の対立は、一見するとコミュニケーションの齟齬に見えますが、その本質は「ガバナンスの考え方」のアップデート不足にあります。
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評価指標(KPI)の共通化を図る
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「制限」ではなく「ガードレール」としてのシステムを構築する
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ガバナンスを事業スピード向上のための投資と再定義する
これらを実現することで、企業は初めて、安全かつ高速なDXへと舵を切ることができます。
私たちは、お客様のビジネスが次のステージへ進むための強力なパートナーとして、最適なソリューションを共に模索します。まずはお気軽に、貴社の現状の課題をお聞かせください。
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