データ分析基盤はどう構築する?失敗しないための基本的な考え方【BigQuery】

 Apr 22, 2025 11:07:06 PM 2025.04.22

はじめに

データ分析の重要性を理解し、具体的な目的を設定し、分析したいデータも見えてきた。さて、次に考えるべきは「どこで、どのようにデータを分析するか?」という、データ分析を実行するための環境=データ分析基盤の構築です。

「データ分析基盤と言われても、何のことかよく分からない…」 「Excelだけでは限界を感じるが、どんな環境を用意すれば良いのだろうか?」 「自社に合った分析基盤を構築するための、基本的な考え方を知りたい」

このような疑問や課題をお持ちの中堅・大企業の担当者様も多いのではないでしょうか。データ分析基盤は、データ活用の成否を左右する重要な「土台」ですが、その構築には専門的な知識も必要となり、どこから手をつければ良いか迷ってしまうのも無理はありません。

この記事では、データ分析基盤の構築を検討し始めた方々を対象に、「入門編」として以下の点について分かりやすく解説します。

  • データ分析基盤とは何か、なぜ必要なのか?
  • データ分析基盤を構成する主な要素
  • 構築アプローチの選択肢(オンプレミス vs クラウド)
  • クラウド(特にGoogle Cloud)で始めるメリット
  • データ分析基盤構築で押さえるべき基本的な考え方(考慮ポイント)

この記事を通じて、データ分析基盤構築に関する基本的な知識と考え方を理解し、貴社にとって最適な「土台」づくりに向けた具体的な一歩を踏み出すためのヒントを得ていただければ幸いです。

データ分析基盤とは? なぜ必要なのか?

データ分析基盤とは、企業が保有する様々なデータを効率的に「収集・蓄積・加工・分析・活用」するために整備された、一連のシステムやツールの組み合わせ、そしてその運用ルール全体を指します。単一のソフトウェアを指すのではなく、データ活用のプロセス全体を支える環境と捉えると分かりやすいでしょう。

多くの企業では、日々の業務で様々なデータが発生しています。しかし、それらのデータが各部門のシステムや個人のPC内に散在(サイロ化)しているケースは少なくありません。このような状態では、

  • 必要なデータを探すのに時間がかかる
  • 部門を横断した分析ができない
  • 同じようなデータを各部署がバラバラに管理し、非効率
  • Excelなどでの手作業による集計・分析に限界がある(データ量、速度、属人化)
  • データガバナンス(品質管理、セキュリティ統制)が効かない

といった問題が発生しがちです。

データ分析基盤を構築することで、これらの課題を解決し、以下のようなメリットが期待できます。

  • データの一元管理: 散在するデータを一箇所に集約し、必要な時に必要なデータへ容易にアクセスできるようになります。
  • 分析効率の向上: 大容量データも高速に処理できる環境を整え、分析にかかる時間と手間を大幅に削減します。
  • 属人化の解消: 分析プロセスやレポート作成を標準化・自動化することで、特定の担当者に依存しない体制を構築できます。
  • データガバナンスの強化: データの品質を担保し、セキュリティポリシーを適用することで、信頼性の高いデータを安全に活用できます。
  • データドリブンな意思決定の促進: 誰もがデータに基づいた洞察を得やすくなり、勘や経験だけに頼らない、客観的な意思決定を組織全体で推進できます。

つまり、データ分析基盤は、企業がデータを真の「資産」として活用し、DXを推進していく上で不可欠なインフラなのです。

データ分析基盤の主な構成要素 -

データ分析基盤は、一般的に以下のような機能を持つ要素(コンポーネント)で構成され、データが流れるプロセスを形成しています。

  1. データソース: 分析の元となるデータ。社内の基幹システム(販売、会計、生産など)、CRM、Webサイトのアクセスログ、IoTデバイスのセンサーデータ、Excelファイル、さらには外部の公開データなど、多岐にわたります。
  2. データ収集/連携 (ETL/ELT): 様々なデータソースから必要なデータを抽出し、後段のデータ蓄積層へ転送・統合する役割を担います。
    1. ETL (Extract, Transform, Load): データを抽出(Extract)し、使いやすい形に変換(Transform)してから、データウェアハウスなどに読み込む(Load)方式。
    2. ELT (Extract, Load, Transform): まずデータを抽出(Extract)してデータレイクなどに読み込み(Load)、その後必要に応じて変換(Transform)する方式。近年、クラウドの処理能力向上により注目されています。
  3. データ蓄積: 収集したデータを保管する場所です。主な形態として、データレイクとデータウェアハウスがあります。
    1. データレイク (Data Lake): 加工されていない生データ(構造化、半構造化、非構造化データ)をそのままの形で大量に蓄積できる貯水池のような場所。柔軟性が高い反面、管理が煩雑になる可能性も。
    2. データウェアハウス (Data Warehouse - DWH): 分析しやすいように整理・加工(構造化)されたデータを、目的別に保管する倉庫のような場所。分析用途に最適化されています。
    3. 【補足】データレイクとDWHの違い: データレイクは「とりあえず何でも貯めておく場所」、DWHは「分析用に綺麗に整理された棚」とイメージすると分かりやすいでしょう。両者を組み合わせて使うケースも増えています。
  4. データ加工/処理: 蓄積されたデータを、分析目的に合わせてさらに加工・集計する工程。SQL(データベース言語)や、Apache Sparkなどの分散処理エンジンが使われることがあります。
  5. データ分析/可視化: 加工されたデータを分析し、その結果を人間が理解しやすい形(グラフ、ダッシュボードなど)で表現する役割。BIツール(Looker Studio、Tableauなど)や統計解析ツールが使われます。
  6. データ活用: 分析結果や可視化されたレポートを、意思決定、業務改善、新サービス開発、マーケティング施策などに活かす最終段階。他のシステムとの連携なども含まれます。

これらの要素をすべて最初から完璧に揃える必要はありません。自社の目的やデータの状況に合わせて、必要な要素から段階的に構築していくことが可能です。

構築アプローチの選択肢:オンプレミス vs クラウド

データ分析基盤を構築する際、大きく分けて「オンプレミス」と「クラウド」という2つのアプローチがあります。

  • オンプレミス: 自社内にサーバーやストレージなどのハードウェアを設置し、ソフトウェアを導入して、自社で管理・運用する方式。
    • メリット: 自社のセキュリティポリシーに合わせた厳格な管理が可能、既存システムとの連携がしやすい場合がある。
    • デメリット: 初期投資(ハードウェア購入費など)が大きい、構築・運用に専門知識と人員が必要、需要変動に合わせたリソースの増減が難しい(拡張性が低い)、災害対策なども自社で行う必要がある。
  • クラウド: AWS、Google Cloud、Microsoft Azureなどのクラウド事業者が提供するサービスを利用して、インターネット経由でデータ分析基盤を構築・利用する方式。
    • メリット: 初期投資を抑えられる(ハードウェア購入不要)、必要な時に必要なだけリソースを利用できる(高いスケーラビリティ)、最新の技術やサービスを容易に利用できる、インフラ管理の手間が少ない、災害対策も事業者に任せられる。
    • デメリット: ランニングコスト(利用料)が発生する、セキュリティポリシーの適合性確認が必要、インターネット接続が必須。

現在の主流はクラウド:

近年、データ分析基盤の構築においては、クラウドを選択する企業が圧倒的に増えています。特に、データ量の増加や分析ニーズの変化に柔軟に対応できるスケーラビリティ、そしてコスト効率の高さが大きな魅力です。初期投資を抑えてスモールスタートし、状況に合わせて拡張していくことが容易なため、多くの企業にとって現実的な選択肢となっています。

※クラウドについて

クラウド(Google Cloud)で始めるデータ分析基盤

数あるクラウドプラットフォームの中でも、Google Cloud はデータ分析・活用に強みを持つサービスを豊富に提供しており、データ分析基盤構築の有力な選択肢となります。

Google Cloud を利用する主なメリットは以下の通りです。

  • 強力なデータ分析サービス:
    • BigQuery: ペタバイト級のデータも高速に分析できる、サーバーレスのデータウェアハウス。SQLで簡単に操作でき、機械学習機能も組み込まれています。従量課金制でコスト効率も高いのが特徴です。
    • Cloud Storage: 高い耐久性とスケーラビリティを持つオブジェクトストレージ。データレイクとして、あらゆる種類のデータを低コストで蓄積できます。
    • Dataflow / Dataproc: 大規模データのETL/ELT処理やバッチ/ストリーミング処理を実現するフルマネージドサービス。
    • Looker Studio: 無料で利用できる高機能なBIツール。BigQueryなど様々なデータソースに接続し、インタラクティブなダッシュボードを作成できます。
  • サーバーレス・フルマネージド: サーバーの管理や運用を意識する必要がないサービスが多く、インフラ管理の負担を大幅に軽減できます。
  • AI/機械学習機能の統合: データ分析だけでなく、高度なAI/機械学習モデルの開発・活用も同じプラットフォーム上でシームレスに行えます (Vertex AIなど)。
  • スモールスタートと拡張性: 無料枠や低価格のサービスから始め、ビジネスの成長に合わせて柔軟にスケールアップできます。

Google Cloud を活用することで、企業はインフラ構築・管理の複雑さから解放され、本来注力すべきデータの分析と活用に集中できるようになります。

※Google Cloud については、こちらのコラム記事もご参照ください。 
【基本編】Google Cloudとは? DX推進の基盤となる基本をわかりやすく解説
【基本編】Google Cloud導入のメリット・注意点とは? 初心者向けにわかりやすく解説

データ分析基盤 構築時の重要な考慮ポイント(入門編)

実際にデータ分析基盤を構築する際には、技術的な側面だけでなく、ビジネス的な観点からもいくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。ここでは、入門編として特に押さえておきたい基本的な考え方をご紹介します。

  • 目的との整合性:
    • 「何のためにデータ分析基盤を構築するのか?」という**目的(ビジネス課題の解決、達成したい目標)**を常に念頭に置くことが最も重要です。目的達成に必要な機能は何か、オーバースペックになっていないか、などを検討します。基盤構築そのものが目的化しないように注意しましょう。
  • スケーラビリティ(拡張性):
    • 将来的に扱うデータ量が増加したり、分析ニーズが変化したりすることを見越して、柔軟に拡張できる設計になっているかを確認します。クラウドサービスは基本的にスケーラビリティが高いですが、アーキテクチャ設計によってはボトルネックが生じる可能性もあります。
  • セキュリティ:
    • データの機密性・完全性・可用性を確保するためのセキュリティ対策は万全かを検討します。アクセス権限の管理、データの暗号化、不正アクセス対策など、企業のセキュリティポリシーに準拠した設計が必要です。クラウド利用の場合は、クラウド事業者のセキュリティ対策と自社で責任を持つ範囲(責任共有モデル)を理解することも重要です。
  • コスト:
    • 導入時の初期コストだけでなく、運用にかかるランニングコストも考慮して、費用対効果を評価します。クラウドの場合は、利用するサービスやデータ量によってコストが変動するため、コスト最適化の視点も重要になります。
  • 運用体制:
    • 構築したデータ分析基盤を誰が、どのように維持・管理していくのかという運用体制を事前に検討しておく必要があります。必要なスキルセットを持つ人材の確保や育成、外部パートナーとの連携なども視野に入れます。
  • 使いやすさ(利用者視点):
    • 実際にデータを分析・活用する**エンドユーザー(ビジネス部門の担当者など)**にとって、使いやすいインターフェースやツールが提供されているかも重要なポイントです。専門家でなくても、ある程度データを扱えるような環境を目指すことが、データ活用の浸透に繋がります。

これらのポイントを総合的に考慮し、自社の状況に合った最適なデータ分析基盤を設計・構築していくことが成功の鍵となります。

XIMIXによるデータ分析基盤構築支援

ここまで、データ分析基盤構築の基本的な考え方について解説してきました。しかし、実際に自社に最適な基盤を設計し、構築・運用していくには、やはり専門的な知識と経験が求められます。

「何から手をつければ良いか、具体的なアドバイスが欲しい」 「自社の状況に合ったクラウドサービスの選定や設計をお願いしたい」 「セキュリティやコスト面での不安を解消したい」 「構築後の運用までサポートしてほしい」

このようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ私たち XIMIX (サイミクス) にお任せください。XIMIXは、Google Cloud 導入・活用支援のプロフェッショナルとして、お客様のデータ分析基盤構築を強力にサポートします。

XIMIXが提供するデータ分析基盤構築支援:

  • アセスメント・要件定義: お客様のビジネス目的、現状の課題、データ状況などを詳しくヒアリングし、最適なデータ分析基盤の要件を明確化します。
  • アーキテクチャ設計: Google Cloud のベストプラクティスに基づき、スケーラビリティ、セキュリティ、コスト効率を考慮した最適な基盤アーキテクチャを設計します。
  • 構築・実装: BigQuery、Cloud Storage、Dataflow、Looker Studioなどを活用し、設計に基づいたデータ分析基盤を迅速かつ確実に構築します。既存システムとの連携もお任せください。
  • データ移行・連携支援: オンプレミス環境や他のクラウドからのデータ移行や、様々なデータソースとの連携設定を支援します。
  • 運用・保守サポート: 構築後の安定稼働のための監視、パフォーマンスチューニング、トラブルシューティングなど、運用フェーズもしっかりサポートします。
  • 内製化支援: お客様自身でデータ分析基盤を運用・活用していけるよう、トレーニングや技術支援も行います。

XIMIXは、多くの企業様における Google Cloud を活用したデータ分析基盤の構築・運用実績がございます。お客様のビジネスゴール達成に向けて、構想策定から実装、運用まで、一気通貫で最適なソリューションをご提供します。

XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのデータ分析サービスについてはこちらをご覧ください。
XIMIXのデータ可視化サービスについてはこちらをご覧ください。

まとめ:目的を見据え、最適な「土台」づくりを

この記事では、データ分析基盤の構築に関する基本的な考え方、構成要素、選択肢、そしてGoogle Cloudを活用するメリットについて解説しました。

データ分析基盤は、データという資産を最大限に活用し、ビジネスを成長させるための重要な「土台」です。しかし、その構築は目的達成のための「手段」であり、基盤を作ること自体がゴールではありません。

重要なのは、「何のために分析するのか」という目的を常に見据え、自社の状況に合わせて段階的に、かつ拡張可能な形で構築していくことです。特にクラウドを活用すれば、スモールスタートで始め、ビジネスの成長に合わせて柔軟に基盤を進化させていくことが可能です。

データ分析基盤の構築は、専門的な知識も必要となるため、最初の一歩に不安を感じるかもしれません。そんな時は、ぜひ経験豊富なパートナーにご相談ください。私たちXIMIXは、貴社のデータ活用戦略を成功に導くための最適な「土台」づくりを、全力でご支援いたします。


データ分析基盤はどう構築する?失敗しないための基本的な考え方【BigQuery】

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