AppSheetで問い合わせ管理をDX!脱Excelでクレーム対応を効率化する入門ガイド

 2025,06,20 2025.06.20

はじめに

「あのクレーム、誰が対応しているんだ?」「お客様からの問い合わせ状況が担当者しかわからず、対応が遅れてしまった」 このような、顧客からの問い合わせやクレーム対応に関する課題は、多くの企業が抱える悩みではないでしょうか。特に、Excelやスプレッドシートでの管理は、手軽さの一方で属人化や情報共有の遅れといった問題を生みがちです。

これらの課題を解決し、顧客対応の品質を向上させる強力なツールが、Google の AppSheet です。プログラミングの知識がなくても、自社の業務に合わせたアプリケーションを迅速に開発できます。

本記事では、AppSheetを用いて顧客からの問い合わせやクレームを一元管理し、対応状況を全社でリアルタイムに共有する方法を具体的に解説します。AppSheetで何ができるのか、導入のメリットから具体的な作成ステップ、そして活用を成功させるためのポイントまで、網羅的にご紹介します。

そもそもAppSheetとは?

AppSheetは、Google Cloudが提供するノーコード開発プラットフォームです。プログラミングの専門知識がなくても、まるで文書を作成するような手軽さで、ビジネス用のカスタムアプリケーションを開発できます。

最大の特長は、GoogleスプレッドシートやExcel、Cloud SQLといった既存のデータソースから、自動でアプリケーションの雛形を生成できる点です。GmailGoogleカレンダーGoogle ChatといったGoogle Workspaceとの連携もスムーズで、データの入力から通知、レポート作成まで、一連の業務フローを自動化できます。

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Excelやスプレッドシートによる問い合わせ管理の限界

多くの現場で利用されているExcelやスプレッドシートでの管理は、なぜ課題を生むのでしょうか。 AppSheetのメリットを理解するために、まずは従来の管理方法が抱える限界を整理してみましょう。

  • リアルタイムでの情報共有が困難: ファイルが個人のPCに保存されていたり、複数人が同時に編集できなかったりするため、最新の対応状況を全社でリアルタイムに把握することが困難です。
  • 属人化の進行: 特定の担当者しか入力・更新ルールを知らない「秘伝のタレ」化したファイルが生まれがちです。その担当者が不在の場合、業務が滞ってしまうリスクがあります。
  • 入力ミスやデータ破損のリスク: 誰でも簡単にセルを編集できてしまうため、誤ったデータ入力や数式の破損といったヒューマンエラーが発生しやすくなります。
  • データの蓄積と分析が非効率: 問い合わせ内容や対応履歴は貴重な資産ですが、シートが分散したり形式が統一されていなかったりすると、傾向分析やナレッジの蓄積に活用することが難しくなります。

これらの課題は、対応の遅延や漏れ、二重対応といったミスを引き起こし、顧客満足度の低下に直結しかねません。

AppSheetで問い合わせ・クレーム管理を実現する4つのメリット

Excelやスプレッドシートの課題を、AppSheetはどのように解決するのでしょうか。AppSheetで問い合わせ管理アプリを構築することで得られる、代表的なメリットを4つご紹介します。

メリット1:リアルタイムでの情報共有と属人化の解消

AppSheetで作成したアプリは、スマートフォンやタブレット、PCなど様々なデバイスからアクセス可能です。担当者が外出先から対応状況を更新すれば、その内容は即座に関係者全員に共有されます。これにより、「誰が」「いつ」「何を」対応しているのかが一目瞭然となり、問い合わせ管理の全社共有が実現。属人化を防ぎ、業務の透明性を高めます。

メリット2:入力フォーマットの統一とデータ品質の向上

入力フォームを自由にカスタマイズし、入力必須項目や選択式(プルダウン)の設定が可能です。これにより、担当者による表記の揺れや入力漏れを防ぎ、データの品質と一貫性を担保します。常に整理された正確なデータは、その後の分析や活用において大きな価値を持ちます。

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メリット3:Google Workspace連携による業務自動化

AppSheetはGoogle Workspaceとの連携を得意としています。例えば、「新規クレームが登録されたら、担当部署のGoogle Chatスペースに自動で通知する」「対応が完了したら、お客様にGmailで自動的にお礼メールを送信する」といった自動化(Automation)が設定可能です。これにより、手動での連絡や報告の手間が削減され、担当者は本来注力すべき顧客対応に集中できます。

メリット4:蓄積データの可視化とサービス改善への活用

アプリに蓄積された問い合わせデータは、グラフやダッシュボード形式でリアルタイムに可視化できます。「どの製品に関する問い合わせが多いのか」「特定の期間にクレームが増加していないか」といった傾向を直感的に把握することが可能です。これらの分析結果は、製品開発やサービス改善、FAQの充実化といった次のアクションに繋がる貴重なインサイトとなります。

【3ステップ】AppSheetで問い合わせ管理アプリを作成する基本の流れ

それでは、実際にAppSheetで問い合わせ管理アプリを作成する基本的な流れを見ていきましょう。ここでは、データソースとしてGoogleスプレッドシートを利用するケースを想定します。

ステップ1:データソースとなるGoogleスプレッドシートを準備する

まずは、管理したい項目を列にしたGoogleスプレッドシートを作成します。これがアプリのデータベースとなります。

<スプレッドシートの項目例>

ID (自動採番) 受付日 顧客名 連絡先 種別 (問い合わせ/クレーム/要望) 件名 詳細内容 担当者 ステータス (未着手/対応中/完了) 対応履歴
1 2025/06/19 A株式会社 a-corp@example.com クレーム 製品Xの不具合 ... 山田 対応中 6/19 15:00 状況確認の連絡
2 2025/06/20 B様 090-XXXX-XXXX 問い合わせ 納期について ... 鈴木 未着手  
 

ポイント:

  • 各問い合わせを一意に識別するための「ID」列を用意しましょう。
  • 「種別」や「ステータス」のように、選択肢を限定したい項目は、あらかじめ選択肢を決めておくとアプリ作成がスムーズです。

ステップ2:AppSheetでアプリを自動生成する

スプレッドシートが準備できたら、AppSheetにアクセスし、新しいアプリを作成します。

  1. AppSheetの「Create」>「App」>「Start with existing data」を選択。
  2. アプリ名を入力し、カテゴリを選択します。
  3. データソースとして、先ほど作成したGoogleスプレッドシートを指定します。

これだけで、AppSheetがスプレッドシートの構造を自動で分析し、データの閲覧、追加、編集が可能なアプリケーションの雛形を生成してくれます。

ステップ3:アプリの表示(View)や機能(Action)をカスタマイズする

自動生成されたアプリを、より使いやすくカスタマイズしていきます。

  • View(ビュー)の調整: データをどのように表示するかを設定します。「ステータス別」に一覧表示したり、担当者ごとに自分のタスクだけが見えるようにしたりと、用途に応じた画面を作成できます。
  • Form(フォーム)の最適化: データ入力画面を調整します。「種別」や「ステータス」をプルダウン選択式にしたり、受付日を自動で入力するように設定したりすることで、入力の手間とミスを削減します。
  • Action(アクション)とAutomation(自動化)の設定: 「ステータスを『対応中』に変更する」といったワンクリックで実行できるボタン(Action)を追加したり、「担当者が割り当てられたら、その担当者にメールで通知する」といった自動化のルール(Automation)を設定したりします。

これらのカスタマイズも、すべて画面上の設定で行うことができ、コーディングは一切不要です。

活用を成功させるための3つのポイントと留意点

AppSheetは手軽に始められる一方、全社的なツールとして定着させ、効果を最大化するためには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。

ポイント1:スモールスタートで改善を繰り返す

最初から完璧なアプリを目指す必要はありません。まずは必要最低限の機能を持ったシンプルなアプリから運用を開始し、現場の担当者からフィードバックをもらいながら、少しずつ改善を繰り返していくアプローチ(PoC: Proof of Concept)が成功の鍵です。この改善サイクルの速さが、ノーコードツールであるAppSheetの真価を発揮する場面です。

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ポイント2:運用ルールの策定と周知徹底

誰が、どのタイミングで、何を更新するのか、といった基本的な運用ルールを定め、関係者全員で共有することが不可欠です。例えば、「顧客対応が完了したら、必ずステータスを『完了』に変更し、対応履歴を簡潔に記載する」といったルールを徹底することで、情報の鮮度と信頼性が保たれます。

ポイント3:セキュリティと権限管理を適切に行う

顧客情報は機密性の高い情報です。AppSheetでは、ユーザーのメールアドレスに基づいてアクセス権限を細かく設定できます。「閲覧のみ可能なユーザー」「編集も可能なユーザー」「管理者」といった役割(Role)を定義し、必要な人に必要な権限だけを付与することが重要です。これにより、意図しないデータの変更や情報漏洩のリスクを低減できます。

より高度な活用を目指すなら、専門家の支援も選択肢に

AppSheetによる問い合わせ管理は、DX推進の入り口として非常に有効な一手です。しかし、より高度な業務自動化や、基幹システムとのデータ連携、全社規模でのガバナンス設計などを目指す際には、専門的な知見が必要となるケースも少なくありません。

「自社の複雑な業務フローをAppSheetで再現できるか不安」 「より多くのデータを扱うための最適なデータベース設計がわからない」 「全社展開に向けたセキュリティポリシーの策定を相談したい」

このような課題に直面した際には、私たちXIMIXにご相談ください。 XIMIXは、Google Cloudの長年にわたるパートナーとして、数多くの企業様のDX推進をご支援してまいりました。その豊富な活用事例と知見に基づき、お客様の業務課題に最適なAppSheetの導入・活用プランをご提案します。

単なるアプリ開発に留まらず、業務プロセスの見直しから、導入後の運用定着、さらなる活用範囲の拡大まで、お客様に寄り添い、伴走支援いたします。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

まとめ

本記事では、AppSheetを活用して顧客からの問い合わせやクレームを一元管理し、全社で共有する方法について解説しました。Excelやスプレッドシートによる管理の限界を突破し、AppSheetを導入することで、

  • 情報のリアルタイム共有と属人化の解消
  • データ品質の向上と業務の標準化
  • 通知の自動化などによる業務効率の向上
  • データ活用によるサービス品質の改善 
といった、多くのメリットが期待できます。ノーコードツールであるAppSheetは、現場主導でスピーディに業務改善を進められる強力な武器です。まずは、本記事でご紹介したステップを参考に、身近な課題である「問い合わせ管理」からDXの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

AppSheetで問い合わせ管理をDX!脱Excelでクレーム対応を効率化する入門ガイド

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