Google Cloudの「プロジェクト」とは? 利用の基礎となる管理単位を理解しよう

 Apr 22, 2025 8:32:08 PM 2025.04.22

はじめに

Google Cloud を利用して企業のDXを推進しようとする際、多くの担当者が最初に出会う概念の一つが「プロジェクト」です。コンソール画面やドキュメントで頻繁に登場しますが、「このプロジェクトとは一体何なのか?」「なぜ必要なのか?」「どのように使えばいいのか?」といった疑問を持つ方も少なくないでしょう。特に、オンプレミス環境でのインフラ管理に慣れている方にとっては、少し戸惑う概念かもしれません。

Google Cloudにおける「プロジェクト」は、単なる作業フォルダのようなものではなく、リソースの管理、請求、権限設定など、クラウド利用における様々な側面を整理・制御するための基本的な組織単位です。この「プロジェクト」を正しく理解し、適切に活用することが、セキュアで効率的なGoogle Cloud環境を構築・運用するための第一歩となります。

この記事では、Google Cloudをこれから利用し始める方や、プロジェクトの概念について改めて理解を深めたいと考えている担当者の方に向けて、「プロジェクト」とは何か、その基本的な役割や機能、そして企業で活用する上でのポイントを入門レベルで分かりやすく解説します。

Google Cloud プロジェクトとは何か?

Google Cloudにおける「プロジェクト」とは、Google Cloudのすべてのリソース(仮想マシン、ストレージ、データベース、ネットワークなど)を作成、管理、利用するための基本単位です。言い換えるなら、プロジェクトは、関連するリソース、API、権限、請求などをまとめて管理するための「容器」や「区画」のようなものと考えることができます。

一つのGoogleアカウント(またはGoogle Workspace/Cloud Identityアカウント)で複数のプロジェクトを作成・管理することが可能です。

プロジェクトが持つ主な役割は以下の通りです。

①リソースの整理と分離

プロジェクトは、特定の目的やチーム、環境(開発、ステージング、本番など)に関連するリソースをグループ化し、他のプロジェクトのリソースと論理的に分離する役割を果たします。例えば、「WebサービスAの本番環境」「データ分析基盤の開発環境」「マーケティング部門のサンドボックス」といった単位でプロジェクトを分けることで、管理対象が明確になり、意図しないリソースの混在や干渉を防ぐことができます。

②請求の管理単位

Google Cloudの利用料金は、プロジェクト単位で発生し、追跡されます。どのプロジェクトでどれだけのコストが発生しているかを明確に把握できるため、コスト管理や部門への請求割り当てが容易になります。予算アラートなどもプロジェクト単位で設定可能です。

③APIの有効化と管理

Compute Engine API, Cloud Storage API, BigQuery APIなど、Google Cloudの各種サービスを利用するには、まずプロジェクト単位で該当するAPIを有効にする必要があります。プロジェクトごとに利用するサービスAPIを管理します。

④IAM(Identity and Access Management)による権限管理の基盤

誰が(どのユーザーやサービスアカウントが)、どのリソースに対して、どのような操作(閲覧、編集、削除など)を行えるかという権限(ロール) は、プロジェクト単位で設定するのが基本です。(より上位の組織やフォルダレベルでの設定も可能ですが、プロジェクトが基本的なスコープとなります)。これにより、職務に応じた最小権限の原則に基づいたアクセス制御を実現できます。

Google Cloud プロジェクトの主な機能

プロジェクトが持つ基本的な役割を支える、具体的な機能をいくつか見ていきましょう。

①リソース管理

Compute EngineのVMインスタンス、Cloud Storageのバケット、BigQueryのデータセットなど、作成するほぼすべてのGoogle Cloudリソースは、いずれかのプロジェクトに属します。プロジェクトを切り替えることで、管理対象のリソースを絞り込むことができます。

②請求管理(Billing)

各プロジェクトを特定の請求先アカウント(Billing Account)に関連付けることで、利用料金の請求と支払いを管理します。プロジェクトごとのコスト詳細レポートを確認したり、予算を設定したりする機能も提供されます。

請求先アカウントについてはこちらの記事をご参照ください:【入門編】Google Cloud 請求アカウントとは? 支払いとコスト管理の基本をわかりやすく解説

③APIとサービス

プロジェクトで使用したいGoogle Cloudのサービス(API)を選択し、有効化/無効化します。これにより、不要なサービスの誤利用を防いだり、利用状況を把握したりできます。

④IAMと管理

プロジェクトに対して、ユーザー、グループ、サービスアカウントを追加し、それぞれに適切な役割(ロール)を割り当てることで、アクセス権限を管理します。事前定義された多くのロール(例:閲覧者、編集者、オーナー)が用意されているほか、カスタムロールを作成することも可能です。

Google CloudのIAMについてはこちらの記事をご参照ください:【入門編】Google CloudのIAMとは?権限管理の基本と重要性をわかりやすく解説

⑤メタデータ

各プロジェクトには、プロジェクト名、プロジェクトID(グローバルで一意)、プロジェクト番号といった固有の識別情報が付与されます。これらはリソースの識別やAPI呼び出しなどで使用されます。

プロジェクトの上位概念:組織とフォルダ

中堅〜大企業でGoogle Cloudを利用する場合、多数のプロジェクトを効率的に管理するために、プロジェクトの上位階層として「組織(Organization)」と「フォルダ(Folder)」という概念を理解しておくことが重要です。これらはGoogle Cloudのリソース階層を構成します。

①組織(Organization)

「組織」は、企業全体を表すリソース階層のルートノードです。通常、Google WorkspaceアカウントまたはCloud Identityアカウントに関連付けられ、そのドメインに属するすべてのGoogle Cloudリソース(プロジェクト、フォルダを含む)を包含します。組織レベルでIAMポリシー(アクセス権限)や組織のポリシー(セキュリティや構成に関する制約)を一元的に管理できるため、企業全体のガバナンスを強化する上で不可欠です。

②フォルダ(Folder)

「フォルダ」は、組織とプロジェクトの中間に位置する、オプションのグループ化単位です。組織の下に部門やチーム、事業単位などでフォルダを作成し、その中に複数の関連プロジェクトを格納することができます。フォルダ単位でIAMポリシーや組織のポリシーを設定することも可能なため、より細かい粒度での管理や権限委譲が実現できます。例えば、「開発本部」フォルダの下に「サービスA開発プロジェクト」「サービスB開発プロジェクト」を配置する、といった使い方が考えられます。

リソース階層のイメージ:

組織 (例: example.com)

├── フォルダ (例: 開発本部)
│ │
│ ├── プロジェクト (例: WebサービスA-開発)
│ ├── プロジェクト (例: WebサービスA-本番)
│ └── ...

├── フォルダ (例: 営業本部)
│ │
│ ├── プロジェクト (例: CRMシステム)
│ └── ...

└── プロジェクト (例: 全社共通基盤)

このように、組織とフォルダを活用することで、企業規模でのGoogle Cloud利用において、リソース、権限、ポリシーを体系的に管理することが可能になります。

Google Cloud プロジェクト作成と管理の基本

新しいプロジェクトは、Google Cloud Console(Web UI)、gcloudコマンドラインツール、またはCloud APIを通じて作成できます。

プロジェクトを作成する際には、以下の情報を決定する必要があります。

  • プロジェクト名: 人間が識別しやすい名前(後から変更可能)。
  • プロジェクトID: グローバルで一意な識別子(作成後は変更不可)。自動生成も可能ですが、命名規則を決めて指定することが推奨されます。
  • 請求先アカウント: プロジェクトの利用料金を支払うアカウント。
  • 場所(親リソース): プロジェクトを組織またはフォルダの下に作成するか、あるいは組織なしで作成するかを選択します。企業利用の場合は、通常、組織の下に作成します。

作成されたプロジェクトは、Cloud Consoleのプロジェクトセレクターから切り替えてアクセスします。プロジェクトの削除も可能ですが、削除されたプロジェクトは一定期間後に完全に消去され、中のリソースもすべて失われるため、慎重に行う必要があります。

Google Cloud プロジェクト活用のポイント(入門)

Google Cloudを効果的に活用するためには、プロジェクトをどのように設計し、運用していくかが重要になります。入門レベルとして、以下のポイントを意識すると良いでしょう。

  • 目的や環境に応じた分割: まずは「何のために使うか」を明確にし、プロジェクトを分割することを検討しましょう。例えば、本番環境と開発環境は必ず別のプロジェクトに分離するのが基本です。チームごと、サービスごとなど、管理しやすい単位で分けることをお勧めします。
  • 命名規則の導入: プロジェクトIDやプロジェクト名に一貫した命名規則を設けることで、管理性が大幅に向上します。例えば、「<部門名>-<サービス名>-<環境>」のようなルールを決めると分かりやすくなります。
  • 最小権限の原則: プロジェクトに関わるユーザーやサービスアカウントには、必要最小限の権限(ロール)のみを付与するように心がけましょう。IAMの設定を適切に行うことがセキュリティの基本です。
  • コスト意識: プロジェクト単位でコストが発生することを意識し、不要になったプロジェクトやリソースは整理・削除することを習慣づけましょう。予算アラートの活用も有効です。
  • 組織/フォルダの活用(企業利用の場合): 企業としてGoogle Cloudを導入する場合は、早期に組織リソースを設定し、フォルダを活用した階層的な管理体制を検討することが、将来的なガバナンス強化につながります。

これらのポイントを押さえることで、Google Cloudのプロジェクトを効果的に活用し、DX推進の基盤を整えることができます。

XIMIXによる支援サービス

Google Cloudの「プロジェクト」の概念や基本的な役割について解説してきましたが、実際に企業でGoogle Cloudを導入・運用する際には、「自社に最適なプロジェクト構成はどうすれば良いか?」「組織やフォルダをどう設計すればガバナンスを効かせられるか?」「プロジェクト間の連携や権限管理をどう実装すれば安全か?」といった、より実践的な課題に直面することがあります。特に、プロジェクト設計は初期段階での検討が重要であり、後からの大規模な変更は困難を伴う場合があります。

私たち「XIMIX」は、このようなお客様の課題に対し、豊富な導入・運用支援の実績に基づいた最適なソリューションを提供します。多くの企業様のGoogle Cloud活用をご支援してきた経験から、お客様の組織構造、開発体制、セキュリティ要件、ガバナンスポリシーを踏まえ、拡張性と管理性に優れたプロジェクト構成、組織・フォルダ設計をご提案します。

XIMIXが提供する支援の一部をご紹介します。

  • 導入計画策定支援: お客様の利用目的や規模に合わせた最適なプロジェクト構成、組織/フォルダ構造、命名規則などを定義します。
  • 環境構築支援: 定義された設計に基づき、プロジェクト、ネットワーク(VPC)、IAM設定などの初期環境構築を支援します。
  • ガバナンス・セキュリティ設計/導入支援: 組織ポリシーの設定、IAMによる適切な権限管理モデルの設計・実装、セキュリティ監視体制の構築などを支援します。
  • 請求管理・コスト最適化支援: 請求代行サービスや、プロジェクトごとのコスト分析、最適化提案を行います。
  • 運用・伴走支援: 導入後の運用に関するご相談や、技術的なサポート、活用促進のためのトレーニングなどを提供します。

XIMIXは、お客様のGoogle Cloud活用における頼れるパートナーとして、初期の設計・導入から運用、そしてさらなる活用まで、継続的にご支援します。Google Cloudのプロジェクト管理や環境構築に関するお悩みは、ぜひXIMIXにご相談ください。

XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

※Google Cloud については、こちらのコラム記事もご参照ください。 
【基本編】Google Cloudとは? DX推進の基盤となる基本をわかりやすく解説
【基本編】Google Cloud導入のメリット・注意点とは? 初心者向けにわかりやすく解説

まとめ

この記事では、Google Cloudを利用する上で基本となる管理単位「プロジェクト」について、その役割、機能、上位概念である組織・フォルダ、そして活用のポイントを解説しました。

Google Cloud プロジェクトは、リソース、請求、API、権限などを管理するための中心的な「容器」であり、これを適切に設計・運用することが、セキュアで効率的なクラウド活用に不可欠です。特に企業での利用においては、組織やフォルダといった階層構造も理解し、ガバナンスを意識した管理体制を構築することが重要となります。

今回ご紹介した内容が、皆様のGoogle Cloudプロジェクトへの理解を深め、より効果的なクラウド活用を進めるための一助となれば幸いです。プロジェクトの設計や管理、あるいはGoogle Cloud導入全般に関して、さらに詳しい情報や専門家による支援が必要な場合は、どうぞお気軽にXIMIXまでお問い合わせください。


Google Cloudの「プロジェクト」とは? 利用の基礎となる管理単位を理解しよう

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