生成AIの業務利用ルールと就業規則の見直しポイント:シャドーAIと情報漏洩を防ぐ具体策

 2026,02,27 2026.02.27

はじめに

生成AIがビジネスの生産性を飛躍的に向上させることは、もはや疑いようのない事実です。多くの企業が導入に向けて動き出す一方で、経営層や情報システム、人事・労務の責任者を悩ませているのが「社内ルールの未整備によるリスク」です。

従業員が良かれと思って業務データを個人のAIアカウントに入力してしまったり、生成された著作物をそのまま商用利用してしまったりする危険性は常に潜んでいます。

こうしたリスクを前に、「とりあえず利用を全面禁止にする」か、あるいは「現場のモラルに任せて黙認する」かという極端な二者択一に陥っているケースも少なくありません。

この記事では、生成AIの社内導入を成功させるために不可欠な「就業規則および労務ルールの見直しポイント」について解説します。単に罰則を設けて従業員を縛るのではなく、従業員が安心してAIを使い倒せる環境を作り、ビジネスの投資対効果(ROI)を最大化するための「攻めのガバナンス構築法」を紐解いていきましょう。

生成AI利用において直面する労務・コンプライアンスリスク

就業規則を見直す前に、まずは生成AIの不適切な利用がどのような企業リスクを引き起こすのか、その本質を正確に把握しておく必要があります。

➀シャドーAIによる機密情報の漏洩

最も警戒すべきは、会社が許可・管理していないコンシューマー向けの生成AIツールを従業員が勝手に業務で利用する「シャドーAI」の実態です。

無料版の生成AIサービスの多くは、入力されたプロンプト(データ)をAIモデルの再学習に利用する規約となっています。

もし従業員が、未発表の製品仕様、顧客の個人情報、または経営会議の議事録などを要約させるためにツールへ入力してしまった場合、その機密情報が他社のAI回答として意図せず出力されてしまう重大なセキュリティインシデントに発展します。

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②著作権侵害とブランドの毀損

生成AIが出力したテキスト、画像、プログラムコードなどの生成物が、第三者の著作権や商標権を侵害している可能性は完全にゼロではありません。

従業員がAIの出力結果の真偽や権利関係を確認(ファクトチェック)せずに、そのまま自社のオウンドメディアや営業資料、ソフトウェアに組み込んでしまった場合、企業として巨額の損害賠償請求を受けたり、社会的信用を失墜させたりするリスクがあります。

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「生成AIでブランドを壊さない」企業の守りと攻めの要諦──リスクを制御し、信頼を勝ち取る導入戦略

ガイドラインと就業規則の役割分担

ルール整備を進める際、「生成AI利用ガイドライン」と「就業規則」を混同してしまうケースが散見されます。

これら2つは役割と法的な拘束力が異なるため、明確に切り分けて設計することが成功の秘訣です。

➀変化に強いアジャイルなガイドライン

生成AIの技術進化や法整備(著作権法の解釈など)は、極めて速いスピードで変化しています。

そのため、「どのツールを使って良いか」「どのようなプロンプトを入力すべきか」といった具体的な運用ルールは、改定の手続きが煩雑な就業規則ではなく、柔軟に変更・周知が可能な「ガイドライン」として別途定めるのが定石です。

参考:
生成AIガイドライン策定の進め方|リスク対策と生産性向上を両立するポイント

②最終的な防波堤となる強固な就業規則

一方、就業規則は「労働条件」や「職場の規律」を定めた、法的な拘束力を持つ根本原則です。

ガイドラインで定めたルールに違反した場合の「根拠」となるのが就業規則の役割です。技術トレンドに左右されない普遍的なルール(機密保持義務や情報機器の適切な利用など)を就業規則に包括的に規定し、詳細な運用はガイドラインに委任する、という二段構えの構造をとることが最も実務的です。

就業規則や社内規程に見直すべき具体的な規定ポイント

では、具体的に就業規則や関連規程(情報セキュリティ規程など)のどの部分を見直すべきなのでしょうか。

➀許可されたツールの利用とシャドーAIの禁止

まず、会社が公式に導入・許可した生成AIツール(エンタープライズ版など)以外の利用を明確に制限する条文が必要です。

「会社が指定する以外の情報システムや外部サービスを、業務目的で無断使用してはならない」といった文言を追加または補強し、シャドーAIを抑止する根拠を持たせます。

②機密保持義務とデータ入力の制限

既存の機密保持規定(守秘義務)が、生成AIへのデータ入力という新しい行為もカバーできているかを確認します。

「機密情報や個人情報を、会社が許可していない外部の生成AIサービス等に入力・送信してはならない」といった、具体的なデータ取り扱いに関する条文を情報セキュリティ規程等に明記します。

③人間による最終確認の義務化

AIの出力結果に対する責任は、AIではなく「それを利用した従業員および企業」にあることを明確にする必要があります。

業務の成果物として生成AIの出力を利用する場合、「必ず従業員自身が事実確認(ファクトチェック)および権利侵害の有無を確認する責任を負う」旨を明記し、ハルシネーション(もっともらしい嘘)による業務品質の低下を防ぎます。

④懲戒事由への明記

ガイドラインや規程に重大な違反があり、企業に損害を与えた場合の処分について、就業規則の「懲戒事由」に該当することを確認します。

「情報セキュリティ規程に反して機密情報を漏洩させた場合」や「会社の許可なく外部システムを業務利用し、重大なリスクを生じさせた場合」といった規定が、生成AIの不適切利用にも適用される状態を整えておきます。

ルールだけで終わらせない技術的統制の融合

ここまでルールの重要性を解説してきましたが、実務の現場で頻繁に目にするのが「厳格すぎるルールを作った結果、誰もAIを使わなくなり、DXプロジェクトが頓挫する」という失敗パターンです。

人間の注意力やモラルだけに依存するガバナンスには限界があります。「使ってはいけない」という禁止事項の羅列は、現場の生産性向上に対する意欲を削ぎます。

ROIを最大化する真のガバナンスとは、人事・労務による「ルールの守り」と、IT部門による「システムの守り」を融合させることです。

エンタープライズ向けAI環境の提供

従業員がシャドーAIを使ってしまう最大の理由は、「会社が安全で便利なAI環境を提供していないから」です。

例えば、Google Workspaceを導入している企業であれば、エンタープライズ向けのAIアシスタントである「Gemini for Google Workspace」を活用することが強力な解決策となります。

エンタープライズ版のGeminiは、入力したプロンプトや企業データがAIモデルの学習に利用されないアーキテクチャとなっており、既存のアクセス権限も厳格に引き継がれます。

つまり、「このツールなら、業務データを入力しても絶対に情報漏洩しない」という安全な箱(システム)を会社が公式に用意してあげることで、就業規則で「あれもダメ、これもダメ」と過剰に縛る必要がなくなり、従業員は安心して業務効率化に邁進できるのです。

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XIMIXが伴走するセキュアな生成AI導入支援

生成AIの導入は、ツールを契約して終わりではありません。自社のビジネス特性に合わせたガイドラインの策定から、就業規則との整合性の確認、そして情報漏洩を防ぐためのGoogle Cloud環境のセキュアな構築まで、多角的なアプローチが求められます。

XIMIXでは、技術的な導入支援(Gemini for Google WorkspaceやVertex AIの環境構築)にとどまらず、現場での具体的なユースケースの策定や、従業員が迷わず安全に利用できるためのガバナンス構築まで、中堅・大企業のDX推進を一気通貫でサポートしています。

「ルール整備が追いつかず導入に踏み切れない」「シャドーAIの実態が把握できていない」とお悩みの決裁者の方は、ぜひ一度、XIMIXご相談ください。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

まとめ

生成AIの社内導入において、就業規則やルールの見直しは「リスクを恐れて蓋をする」ためのものではなく、「従業員が迷いなくAIを活用し、ビジネス価値を創出するためのスタートライン」です。

  • ガイドラインと就業規則の役割を明確に分けること
  • 機密保持やシャドーAI禁止の根拠となる条文を整備すること
  • ルールだけでなく、Geminiなどの「安全なエンタープライズAI環境」をセットで提供すること

これら「人(ルール)」と「システム(技術)」の両輪を回すことで、初めて競争優位性を高めるDXが実現します。自社のルールとシステム環境が現在どのような状態にあるのか、この機会に改めて点検してみてはいかがでしょうか。


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