生成AIでセキュリティはどう変わる?新たな脅威と今すぐやるべき対策を解説

 2025,10,15 2025.12.22

はじめに

生成AI(Generative AI)は、業務効率の劇的な向上や新たなビジネス創出の切り札として、多くの企業で導入検討が進んでいます。しかしその一方で、「情報漏洩のリスクはないのか」「新たなサイバー攻撃に悪用されるのではないか」といった漠然とした不安が、本格的な活用の足かせになってはいないでしょうか。

実際に、許可されていないツールを従業員が独自の判断で業務利用する「シャドーAI」の問題も顕在化しており、企業は「禁止」か「活用」かの二元論ではない、現実的な解を求められています。

本記事では、企業のDX推進を担う意思決定者層に向けて、生成AIがもたらすセキュリティの変化を体系的に解説します。

本記事をお読みいただくことで、以下の点が明確になります。

  • 生成AIによって生まれる新たな脅威と、「シャドーAI」を含む社内利用リスクの実態

  • 経済産業省やデジタル庁の指針に基づいた、信頼性の高いガバナンス策定

  • Google Cloud / Google Workspace などの環境を活かした、具体的かつ実践的な技術的対策

単なるリスク対策に留まらず、生成AIを安全に、かつ最大限に活用し、競合優位性を確立するための「攻めのセキュリティ戦略」の第一歩として、ぜひご一読ください。

生成AIがもたらすセキュリティのパラダイムシフト

生成AIの登場は、サイバーセキュリティの世界に「攻守両面」でのパラダイムシフトを迫っています。これは、単に新しいツールが登場したというレベルの話ではなく、攻撃手法と防御手法の双方に、これまでの常識が通用しなくなるほどの不可逆な変化をもたらすものです。

「攻撃」と「防御」の両面で起こる不可逆な変化

攻撃面では、これまで高度な専門知識が必要だったサイバー攻撃のハードルが劇的に下がります。 例えば、自然な日本語による説得力のあるフィッシングメールの作成や、特定の脆弱性を突く攻撃コードの生成を、高度なハッキングスキルを持たない攻撃者でもAIとの対話を通じて実行できてしまいます。これにより、攻撃の「量」と「質」が共に飛躍的に増大し、従来の境界防御だけでは防ぎきれないケースが増えています。

一方の防御面でも、AIは大きな変革をもたらします。膨大なセキュリティログや脅威情報をAIが瞬時に分析し、人間では見逃してしまうような攻撃の予兆を検知したり、インシデント発生時の対応プロセスを自動化したりすることが可能になります。「AIによる攻撃」には「AIによる防御」で対抗することが、これからのスタンダードとなります。

【攻撃編】警戒すべき生成AIによる新たな脅威

まず、外部の攻撃者が生成AIをどのように悪用するのか、具体的な脅威を見ていきましょう。これらは、自社が攻撃のターゲットとなりうる直接的な脅威です。

①ソーシャルエンジニアリングの高度化(フィッシング・BEC)

ソーシャルエンジニアリングとは、人間の心理的な隙や行動のミスを突いて情報を盗み出す攻撃手法です。生成AIは、この手法をかつてないレベルにまで高度化させます。

  • フィッシングメールの精巧化: 従来のフィッシングメールに見られた「不自然な日本語」や「機械翻訳のような違和感」は、生成AIによって過去のものとなりつつあります。ターゲット企業の業界用語や、個人の役職・業務内容に合わせた、極めて自然で説得力のある文章が自動生成されるため、従業員が偽メールを見抜く難易度は格段に上がっています。

  • ビジネスメール詐欺(BEC): 経営幹部や取引先になりすまし、偽の送金指示などを送るBECも、生成AIによって過去のメール文体まで学習・模倣されるリスクがあり、真偽の判定が困難になっています。

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②ディープフェイクによる「なりすまし」の脅威

特定の個人の声や容姿をAIで模倣する「ディープフェイク」技術の悪用も現実の脅威です

。「社長の声で緊急の振込指示の電話がかかってくる」「Web会議で取引先の担当者が偽の映像で現れる」といった、映画のような攻撃手法がすでに海外では確認されており、日本企業にとっても対岸の火事ではありません。

③マルウェア開発・脆弱性悪用の自動化

これまで攻撃者にとって時間とコストがかかっていたマルウェア(悪意のあるソフトウェア)の開発や、システムの脆弱性を見つけ出すプロセスが、生成AIによって大幅に効率化されています。

特定の企業を狙った「オーダーメイド型マルウェア」が短時間で大量に生成されたり、新たな脆弱性情報(CVE)が公開されてから攻撃コードが作られるまでの時間が極端に短くなったりと、防御側にはより迅速な対応が求められます。

【利用編】生成AI導入時に潜むビジネスリスク

次に、自社が生成AIを業務で利用する際に、内部から発生しうるリスクについて解説します。特に注意すべきは、従業員が悪気なく行ってしまう行動に起因するリスクです。

①「シャドーAI」と機密情報の漏洩

多くの企業で深刻な課題となっているのが「シャドーAI」です。会社が正式に認めていない生成AIツールを、従業員が個人の判断で業務に利用してしまう現象を指します。

「議事録を要約したい」「翻訳を効率化したい」という生産性向上の動機であっても、無料の公開版AIサービスなどに機密情報を入力してしまえば、その情報はAIモデルの学習データとして利用され、他社の回答として出力されてしまう(情報漏洩)リスクがあります。

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②プロンプトインジェクションとOWASP Top 10

生成AI特有の脆弱性として、「プロンプトインジェクション」があります。これは、悪意のある指示(プロンプト)を入力することで、AIが持っている安全装置(ガードレール)を突破し、本来開示してはいけない情報を引き出したり、不適切な動作をさせたりする攻撃です。

国際的なセキュリティコミュニティであるOWASPは「OWASP Top 10 for LLM」を公開し、プロンプトインジェクションや、学習データの汚染(データポイズニング)、サプライチェーンの脆弱性など、LLM(大規模言語モデル)特有のリスクへの警戒を呼びかけています。

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③著作権侵害とハルシネーション(幻覚)

  • 著作権リスク: 生成AIが出力したコンテンツが、既存の著作物と酷似していた場合、意図せず著作権侵害になってしまうリスクがあります。

  • ハルシネーション: 生成AIがもっともらしい嘘(事実に基づかない情報)を出力する現象です。これを検証せずに業務利用や対外発信を行うことで、企業の信頼を損なうリスクがあります。

生成AI時代に企業が取るべきセキュリティ対策の3ステップ

これらの脅威に対し、企業はどのような対策を講じるべきでしょうか。経済産業省やデジタル庁のガイドラインを参考に、XIMIXが推奨する3つのステップを紹介します。

ステップ1: ガバナンスの策定(ガイドラインとルール作り)

技術的な対策の前に、まずは組織としてのルール「生成AI利用ガイドライン」を策定します。

  • 参照すべき指針: 経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン」や、デジタル庁の関連資料が参考になります。

  • 入力データの区分: 「公開情報はOK」「顧客情報はNG」「個人情報はマスキング必須」など、データの重要度に応じた入力ルールを明確にします。

  • 禁止ではなく「安全な道」を示す: 全面禁止はシャドーAIを助長します。「このツールなら安全に使って良い」という公認ツールを用意し、従業員をそこに誘導することが重要です。

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ステップ2: 技術的ガードレールの実装(DLPと可視化)

ガイドラインを実効性のあるものにするためには、技術的な制御(ガードレール)が不可欠です。Google Workspace などの環境を活用している場合、以下のような対策が有効です。

  • DLP(情報漏洩対策)の適用: Google Workspace のDLP機能を活用し、マイナンバーやクレジットカード番号、特定の社外秘キーワードが含まれるデータが、チャットやメールで外部のAIサービスに送信されるのを検知・ブロックします。

  • アクセス制御と可視化: CASB(Cloud Access Security Broker)機能やChrome Enterpriseの機能を使い、従業員がどのAIサービスにアクセスしているかを可視化し、認可されていない危険なAIサービスへのアクセスをブロックします。

  • 学習データへの利用防止:  Gemini for Google Workspace などの企業向け有償プランを利用することで、「入力データがAIの学習に使われない」という契約上の保証を得ることが、最も確実な漏洩対策となります。

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ステップ3: 「AIで守る」セキュリティ運用の高度化

高度化する攻撃に対抗するため、防御側もAIを活用する必要があります。

  • 脅威インテリジェンスの活用: Google Cloud の「Google Security Operations(旧 Chronicle)」などのソリューションは、Googleが持つ膨大な脅威情報をAIが分析し、自社に関連するリスクを即座に提示します。

  • インシデント対応の自動化: アラートが発生した際、AIが関連するログを自動で収集・要約し、対処方法を自然言語で提案してくれるため、セキュリティ担当者の負荷を大幅に軽減し、対応スピードを劇的に向上させます。

成功の鍵はパートナー選び - 専門家の知見を活用する

生成AIのセキュリティ対策は、法規制、技術、組織論が絡み合う複雑な領域です。これらをすべて自社だけで解決しようとすると、多大なリソースと時間を要します。

XIMIXが提供する価値

私たち『XIMIX』は、Google Cloud / Google Workspace の導入・活用支援における豊富な実績を持つ専門家集団です。

  • 現状のアセスメント: お客様のセキュリティ環境を診断し、シャドーAIのリスクやガバナンスの不備を洗い出します。

  • 最適なソリューション選定: Google Workspace の標準機能を活用したコスト効率の良い対策から、Google Security Operations を用いた高度なSOC(Security Operation Center)構築まで、お客様の規模と課題に合わせた最適なプランをご提案します。

  • 「攻め」と「守り」の両立: セキュリティを固めるだけでなく、Gemini などの生成AIツールを業務にどう組み込めば生産性が上がるか、活用定着までをトータルでご支援します。

まとめ

本記事では、生成AIがもたらすセキュリティのパラダイムシフトと、企業が取るべき対策について解説しました。

  1. 脅威の理解: 攻撃の自動化やシャドーAI、プロンプトインジェクションなどの新たなリスクを正しく認識する。

  2. 3層の対策: 「ガイドライン策定(ルール)」「技術的実装(ガードレール)」「AI活用防御(運用)」の3本柱で対策を構築する。

  3. 専門家の活用: 変化の激しい領域だからこそ、信頼できるパートナーと共に継続的な改善を行う。

生成AIは、正しく恐れ、適切に管理すれば、ビジネスに計り知れない価値をもたらす強力な武器となります。リスクを過度に恐れて活用をためらうのではなく、安全な環境を整備して、その恩恵を最大限に引き出すことが、これからの企業競争力の源泉となるでしょう。

生成AIの安全な導入や、セキュリティ対策の強化にご課題をお持ちでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。

XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。


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