近年、クラウドサービスの利用拡大に伴い、Google Workspace のような便利なツールが多くの企業で導入されています。しかしその一方で、悪意のある第三者によるアカウント乗っ取りのリスクも高まっており、ひとたび被害に遭えば、機密情報の漏洩や業務停止など、企業活動に深刻な影響を及ぼしかねません。
「自社の Google Workspace アカウントは大丈夫だろうか?」「具体的な対策方法がよくわからない」といった不安や疑問をお持ちのDX推進担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、Google Workspace のアカウント乗っ取りを防ぐために、従業員および管理者が行うべき具体的なセキュリティ対策について、その考え方や重要なポイント、留意点などを網羅的かつ分かりやすく解説します。この記事を読むことで、セキュリティ対策の第一歩を踏み出し、企業の情報資産を保護するための具体的な知識を得ることができます。
Google Workspace は、メール、カレンダー、オンラインストレージ、ビデオ会議など、企業のコミュニケーションとコラボレーションを支える多様な機能を提供しています。これらのサービスには、企業の機密情報や個人情報、業務上の重要なデータが数多く保管されているため、攻撃者にとって非常に魅力的なターゲットとなります。
攻撃者は、Google Workspace アカウントを乗っ取ることで、企業の内部情報、顧客データ、財務情報、開発中の製品情報など、価値の高い情報へのアクセスを試みます。これらの情報が外部に流出すれば、企業は経済的な損失だけでなく、社会的な信用失墜という大きなダメージを受ける可能性があります。
乗っ取ったアカウントは、さらなるサイバー攻撃の踏み台として悪用されることもあります。例えば、取引先や従業員になりすましてフィッシングメールを送信したり、マルウェアを拡散したりするケースです。これにより、自社だけでなく、取引先や顧客にも被害が拡大する恐れがあります。
実際にアカウント乗っ取りが発生した場合、企業はどのような被害を被るのでしょうか。具体的な例とリスクを理解することで、対策の重要性を再認識しましょう。
これらのリスクは、企業の規模を問わず、あらゆる組織に共通するものです。
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具体的な対策を講じる前に、セキュリティに対する基本的な考え方を組織全体で共有することが、効果的かつ継続的な安全確保につながります。
「社内だから安全」「一度認証したから安全」という従来の境界型セキュリティの考え方ではなく、「いかなる通信も信頼しない」というゼロトラストの概念を取り入れることが重要です。全てのアクセス要求に対して検証を行い、最小限の権限を付与するアプローチが、クラウド時代には求められます。Google Workspace を利用する上でも、この考え方を基本に据え、各機能のアクセス権限設定や認証方法を見直すことが推奨されます。
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セキュリティ対策は一度行えば終わりではありません。新たな脅威は日々生まれており、攻撃手法も巧妙化しています。Google Workspace 自体も常にアップデートされ、新しいセキュリティ機能が追加されることがあります。したがって、常に最新の情報を収集し、自社のセキュリティ設定や運用体制を見直し、改善していく継続的な取り組みが必要です。
どれだけ対策を講じても、100%の安全を保証することは困難です。万が一、アカウント乗っ取りや情報漏洩の疑いが発生した場合に備え、事前に対応計画(インシデントレスポンスプラン)を策定し、関係者の役割分担や連絡体制、初動対応の手順を明確にしておくことが極めて重要です。迅速かつ適切な対応が、被害の拡大を防ぎ、事業への影響を最小限に抑える鍵となります。
企業のセキュリティは、従業員一人ひとりの意識と行動によって大きく左右されます。ここでは、Google Workspace を利用する全ての従業員が実践すべき基本的なセキュリティ対策をご紹介します。
パスワードだけに頼る認証は、もはや安全とは言えません。多要素認証(MFA)は、パスワード(知識情報)に加えて、スマートフォンアプリによる確認コード(所持情報)やセキュリティキー(所持情報)など、複数の認証要素を組み合わせることで、不正アクセスのリスクを大幅に低減します。Google Workspace では2段階認証プロセスとして提供されており、必ず有効にしましょう。
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カフェや空港などの公共Wi-Fiは、通信が暗号化されていない場合があり、第三者に通信内容を盗み見られる危険性があります。業務に関する重要な情報のやり取りは、公共Wi-Fi環境下では極力避けるか、VPN(仮想プライベートネットワーク)を利用して通信を暗号化するなどの対策を講じましょう。
利用しているパソコンやスマートフォンのOS、ブラウザ、セキュリティソフトは、常に最新の状態に保ちましょう。ソフトウェアの脆弱性を放置すると、サイバー攻撃の標的となりやすくなります。
社内で定められた情報共有のルールやポリシーを理解し、遵守することが重要です。例えば、機密性の高い情報を扱う際の共有範囲や、外部とのファイル共有方法など、定められた手順に従いましょう。
従業員のセキュリティ意識向上と並行して、管理者側で実施すべきシステム的な対策と運用体制の構築が不可欠です。これにより、組織全体のセキュリティレベルを底上げします。
Google Workspace の利用に関する明確なセキュリティポリシーを策定し、全従業員に周知徹底することが基本です。パスワードポリシー、データアクセスに関するルール、インシデント発生時の報告手順などを定め、定期的な見直しも行いましょう。
管理コンソールから、従業員が設定するパスワードの最低文字数や複雑性の要件(大文字・小文字、数字、記号の使用強制など)を設定できます。定期的なパスワード変更を強制する設定も検討しましょう。
管理者は、従業員に対して多要素認証(2段階認証プロセス)の利用を必須にする設定を行うべきです。また、従業員が設定で困らないように、導入支援やマニュアル提供も重要です。リカバリー方法についても事前に周知しておきましょう。
従業員のアカウントには、業務に必要な最小限のアクセス権限のみを付与する「最小権限の原則」を徹底しましょう。退職者や異動者のアカウントは速やかに無効化または削除することも重要です。Google Workspace の管理コンソールでは、役割ベースでの権限設定が可能です。
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不審なログイン試行や通常とは異なるアクティビティ(例:深夜のアクセス、海外からのアクセス)を検知するためのアラート設定を行い、定期的にアクティビティログを監視することが重要です。これにより、不正アクセスの兆候を早期に発見し、対応することができます。Google Workspace のレポート機能やアラートセンターを活用しましょう。
従業員が Google Workspace アカウントで連携を許可したサードパーティ製アプリの権限を定期的に確認し、不要なアプリや信頼性の低いアプリへのアクセス許可は取り消すように指導、または管理者が一元的に管理しましょう。過度な権限を持つアプリは情報漏洩のリスクとなります。
自社の Google Workspace 環境のセキュリティ設定が適切であるか、定期的に診断や評価を行うことが推奨されます。Google が提供する「セキュリティチェックリスト」や「セキュリティセンター」(上位エディションでのみ利用可能)を活用するほか、専門のベンダーによる診断も有効です。
セキュリティ対策は、技術的な対策だけでなく、従業員の意識と知識が不可欠です。フィッシング詐欺の手口、安全なパスワード管理方法、インシデント発生時の対応などについて、定期的な教育や訓練を実施し、セキュリティ意識の向上を図りましょう。
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ここまで、Google Workspace のアカウント乗っ取りを防ぐための基本的な考え方や具体的な対策について解説してきました。これらの対策を自社だけで全て実施し、継続的に運用していくことには、専門知識やリソースの面で課題を感じる企業様もいらっしゃるかもしれません。
特に、
私たちXIMIX では、Google Cloud および Google Workspace の導入支援から、運用、セキュリティ対策、コンサルティングまで、お客様のビジネスをトータルでサポートいたします。
長年にわたる豊富な実績と Google Cloud 認定資格を持つ専門家が、お客様の現状の課題やニーズを丁寧にヒアリングし、最適なセキュリティ対策のプランニング、設定代行、運用支援、従業員向けトレーニングなどを提供します。多くの企業様をご支援してきた経験から、お客様の状況に合わせた実践的なアドバイスが可能です。
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本記事では、Google Workspace のアカウント乗っ取りを防ぐための基本的な考え方、そして管理者と従業員それぞれが実践すべき具体的なセキュリティ対策について解説しました。
アカウント乗っ取りは、他人事ではありません。今日の巧妙化するサイバー攻撃から企業の重要な情報資産を守るためには、技術的な対策と人的な対策の両輪で、継続的にセキュリティレベルを向上させていくことが不可欠です。
まずは、本記事で紹介した対策の中で、自社でまだ実施できていないものがないか確認し、一つひとつ着実に取り組んでいくことから始めましょう。そして、より専門的な支援が必要な場合は、お気軽にXIMIXまでお問い合わせください。お客様のビジネスの安全と成長をサポートいたします。