企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する現代において、ソフトウェア開発のスピードと効率は、競争優位性を左右する重要な要素となっています。しかし、クラウドネイティブ技術の普及やマイクロサービス化の進展により、開発環境は複雑化の一途をたどり、開発者が本来注力すべきアプリケーション開発以外の作業(インフラ構築、運用、ツール選定など)に多くの時間を費やさざるを得ない状況も生まれています。
「開発プロセスをもっと効率化したい」 「開発者がより創造的な作業に集中できる環境を作りたい」 「変化に迅速に対応できる、柔軟でスケーラブルな開発基盤を構築したい」
このような課題を感じている企業は少なくないでしょう。こうした背景から、近年注目を集めているのが「プラットフォームエンジニアリング」という考え方です。
本記事では、「プラットフォームエンジニアリングとは何か?」という基本的な疑問にお答えするとともに、その目的、メリット、そしてDX推進においてなぜ重要なのかを、入門者向けにわかりやすく解説します。Google Cloudのようなクラウドプラットフォームとの関連性にも触れながら、次世代の開発基盤構築に向けた第一歩をサポートします。
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プラットフォームエンジニアリングとは、簡単に言えば、ソフトウェア開発者が必要なツールや機能、インフラストラクチャを、セルフサービスで簡単に利用できるようにするための「開発者向けプラットフォーム」を設計・構築・運用する取り組みのことです。
Gartner社は、プラットフォームエンジニアリングを「ソフトウェアの開発とデリバリを目的とした、セルフサービス型の開発者プラットフォームの構築と運用に関する専門分野」と定義しています[出典: https://www.gartner.co.jp/ja/articles/what-is-platform-engineering]。
開発者は、このプラットフォームを通じて、コーディング、ビルド、テスト、デプロイ、モニタリングといった開発ライフサイクル全体に必要なリソースやサービスへ、オンデマンドでアクセスできるようになります。まるで高速道路(舗装された道=Golden Path)が整備されているかのように、開発者は複雑なインフラやツールチェインの詳細を意識することなく、スムーズに開発を進めることができるのです。
この開発者向けプラットフォームは、「Internal Developer Platform(IDP)」と呼ばれることもあります。プラットフォームエンジニアリングは、このIDPをプロダクトとして捉え、継続的に改善していく活動とも言えます。
プラットフォームエンジニアリングが注目される背景には、いくつかの要因があります。
クラウド、コンテナ、マイクロサービス、サーバーレスといった技術の普及は、開発の自由度を高める一方で、扱うべきツールや知識の範囲を広げ、開発環境の複雑性を増大させました。これにより、開発者はアプリケーション開発そのものだけでなく、インフラの管理や運用、セキュリティ対策、各種ツールの連携など、多岐にわたるタスクに対応する必要に迫られ、「認知負荷(Cognitive Load)」が増大しています。
開発(Development)と運用(Operations)が協力し、ソフトウェア開発ライフサイクル全体のスピードと品質を向上させるDevOpsの考え方は広く浸透しました。しかし、開発者に運用タスクの責任まで負わせる「You build it, you run it」のモデルは、時として開発者の負担を過度に増加させる結果を招くこともありました。プラットフォームエンジニアリングは、DevOpsの文化を維持しつつ、開発者の負担を軽減し、生産性を最大化するための一つの解決策として期待されています。
市場の変化に迅速に対応し、継続的に新しい価値を提供するためには、ソフトウェア開発のアジリティ(俊敏性)が不可欠です。プラットフォームエンジニアリングは、開発プロセスを標準化・自動化し、セルフサービス化することで、開発リードタイムの短縮とデプロイ頻度の向上を実現し、企業のDX推進を強力に後押しします。
これらの背景を踏まえ、プラットフォームエンジニアリングは主に以下の目的を達成することを目指します。
プラットフォームエンジニアリングを導入することで、企業は以下のようなメリットを享受できます。
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プラットフォームエンジニアリングは、DevOpsやSRE(Site Reliability Engineering)といった概念と密接に関連していますが、それぞれ焦点が異なります。
プラットフォームエンジニアリングは、これらの概念を補完し、特に「開発者エクスペリエンスの向上」を通じて開発組織全体の生産性を高めることに重点を置いていると言えるでしょう。
Google Cloudは、プラットフォームエンジニアリングを実現するための強力な基盤となるサービスを豊富に提供しています。
これらのサービスを組み合わせることで、企業は自社のニーズに合わせた最適な「DX プラットフォーム」としてのInternal Developer Platform(IDP)を効率的に構築・運用できます。Google Cloudは、開発者がインフラを意識せず、迅速かつ安全にアプリケーションを開発・デプロイできる環境、「Golden Path」の実現を支援します。
プラットフォームエンジニアリングの概念は理解できても、「自社にどう適用すれば良いのか?」「何から始めれば良いのか?」といった具体的な導入ステップで悩む企業は少なくありません。また、最適なツール選定、プラットフォームの設計・構築、そして継続的な運用・改善には専門的な知識と経験が不可欠です。
これまでの解説で、プラットフォームエンジニアリングが開発効率化やDX推進に有効であることはご理解いただけたかと思います。しかし、その実現には、現状の課題分析、適切な技術選定、組織文化の変革など、乗り越えるべきハードルも存在します。特に、自社の状況に合わせた「Golden Path」を定義し、開発者にとって本当に価値のあるプラットフォームを構築することは容易ではありません。
私たちXIMIXは、Google Cloudに関する豊富な知見と、多くの企業様のDX推進をご支援してきた経験に基づき、導入・活用を強力にサポートします。
「プラットフォームエンジニアリングに関心があるが、何から手をつけるべきかわからない」 「Google Cloudを活用して開発環境をモダナイズしたい」 「開発者の生産性を向上させ、DXを加速させたい」
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本記事では、プラットフォームエンジニアリングの基本的な概念、注目される背景と目的、そして主なメリットについて解説しました。
プラットフォームエンジニアリングは、複雑化する開発環境において、開発者の負担を軽減し、生産性を最大化するための重要なアプローチです。標準化され、セルフサービスで利用可能な開発者プラットフォーム(IDP)を提供することで、開発スピードの向上、品質とセキュリティの確保、そして開発者エクスペリエンスの向上を実現します。
これは、単なるツール導入の話ではなく、開発文化そのものを変革し、企業のDX推進を加速させるための戦略的な取り組みと言えるでしょう。Google Cloudのような先進的なクラウドプラットフォームを活用することで、その実現可能性は大きく高まります。
まずは自社の開発プロセスにおける課題を特定し、プラットフォームエンジニアリングがどのように貢献できるかを検討してみてはいかがでしょうか。この記事が、その第一歩となれば幸いです。