コラム

DX「戦略・推進人材」不足をどう乗り越える?確保と育成の具体策【入門編】

作成者: XIMIX Google Cloud チーム|2025,05,02

はじめに

デジタルトランスフォーメーション (DX) が企業競争力を左右する時代となり、多くの企業がその推進に力を入れています。しかし、「DXを進めたいが、旗振り役となる人材がいない」「何から手をつければ良いのかわからない」といった声が後を絶ちません。特に、DXの舵取りを担う「戦略・推進人材」の不足は、多くの企業にとって深刻な課題となっています。

本記事では、DX推進における戦略・推進人材の重要性を改めて確認するとともに、その確保と育成に向けた具体的なアプローチを分かりやすく解説します。社内育成から外部人材の活用、さらには専門パートナーとの連携まで、貴社の状況に合わせた選択肢を検討する一助となれば幸いです。この記事を読むことで、DX人材に関する課題を整理し、次の一歩を踏み出すためのヒントを得られるでしょう。

なぜDX推進に「戦略・推進人材」が不可欠なのか?

DXは単なるツールの導入ではなく、デジタル技術を活用してビジネスモデルや組織文化を変革する取り組みです。この複雑で全社的な変革を成功に導くためには、明確なビジョンを描き、関係者を巻き込みながらプロジェクトを力強く推進する人材が欠かせません。

DXにおける戦略・推進人材の役割

戦略・推進人材は、DXプロジェクトにおいて以下のような重要な役割を担います。

  • 経営戦略と連動したDX戦略の策定: 企業の目指す方向性を理解し、デジタル技術をどのように活用してビジネス価値を創出するか、具体的な戦略を描きます。
  • 部門間の連携促進と合意形成: DXは一部門だけで完結するものではありません。関連部門と連携し、時には意見の対立を乗り越えながら、共通の目標に向かって進むための調整役となります。
  • 変革の推進と定着: 新しい技術やプロセスの導入に伴う現場の抵抗や不安をケアし、変革を組織文化として根付かせるためのリーダーシップを発揮します。
  • 最新技術動向の把握と活用提案: 目まぐるしく変化するデジタル技術のトレンドを常に把握し、自社の課題解決や競争力強化に繋がる技術を選定・提案します。

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人材不足が招くDXの停滞・失敗リスク

これらの役割を担える人材が不足していると、DXは「掛け声倒れ」に終わってしまう可能性があります。

  • 戦略の不在・迷走: 明確な戦略がないまま部分的なツール導入に終始し、期待した効果が得られない。
  • 部門間の壁: 各部門が自部門の最適化に走り、全社的な連携が取れず、サイロ化が進む。
  • 現場の抵抗と形骸化: 新しいやり方への反発が強く、導入したツールやシステムが十分に活用されない。
  • 目的と手段の混同: 最新技術の導入自体が目的化してしまい、本来解決すべき経営課題が見失われる。

こうしたリスクを回避し、DXを成功させるためには、戦略性と実行力を兼ね備えた推進人材の存在が極めて重要です。

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DX推進人材に求められるスキルセットとは?

DX推進を担う人材には、特定の専門知識だけでなく、多様なスキルが求められます。企業の状況やDXのフェーズによって求められる要素は異なりますが、一般的に以下のようなスキルセットが重要とされています。

  • ビジネス構想力: 自社のビジネスモデルや業界動向を深く理解し、デジタル技術を活用して新たな価値を創造するアイデアを発想・具体化する能力。
  • デジタル技術への理解: クラウド、AI、データ分析、IoTなど、DXの核となる技術の基本的な仕組みや可能性を理解し、ビジネス課題と結びつけて考えられる知識。必ずしもプログラミング等の専門技術に精通している必要はありませんが、技術者と円滑にコミュニケーションできるレベルの理解は必要です。
  • プロジェクトマネジメント能力: 目標設定、計画立案、進捗管理、リスク管理など、複雑なDXプロジェクトを計画通りに推進するための管理能力。
  • リーダーシップとコミュニケーション能力: 経営層から現場まで、様々な立場の人々を巻き込み、ビジョンを共有し、変革に向けて動機づける力。異なる意見を調整し、合意形成を図るコミュニケーション能力も不可欠です。
  • 変革推進力・課題解決能力: 前例のない課題や予期せぬ障壁に直面しても、粘り強く解決策を探し、変革を推し進める力。

これらのスキルを全て一人で完璧に備えている必要はありません。チームとしてこれらの能力を補完し合う体制を構築することが現実的です。

課題解決へのアプローチ1:社内での人材確保・育成

DX推進人材を確保する最初の選択肢は、社内にいる潜在的な候補者を発掘し、育成することです。自社のビジネスや文化を深く理解している人材を育成できれば、外部人材よりもスムーズな変革推進が期待できます。

①既存社員からの発掘・育成

まずは、既存社員の中にDX推進の素養を持つ人材がいないか探してみましょう。部署や役職にとらわれず、以下のような視点で候補者を探します。

  • 知的好奇心が旺盛で、新しい技術や知識の習得に意欲的な社員
  • 現状に満足せず、常に改善点を見つけようとする問題意識の高い社員
  • 部署の垣根を越えてコミュニケーションを取り、周囲を巻き込む力のある社員

候補者が見つかったら、DXに関する知識やスキルを習得するための機会を提供します。

  • リスキリングプログラム: DX関連の研修(社内・社外)やeラーニングを提供し、体系的な知識習得を支援します。
  • OJT (On-the-Job Training): 小規模なDXプロジェクトに参加させ、実践を通じて経験を積ませます。経験豊富な社員や外部専門家がメンターとしてサポートすることも有効です。
  • 資格取得支援: Google Cloud 認定資格など、DX関連の資格取得を奨励し、費用補助などの制度を設けます。

②社内公募制度やジョブローテーションの活用

意欲ある社員が自らDX関連部署やプロジェクトに挑戦できるような仕組みも有効です。社内公募制度を設けたり、ジョブローテーションの一環としてDX推進部門への異動を取り入れたりすることで、埋もれていた才能を発掘できる可能性があります。

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③文化醸成の重要性

人材育成と並行して、DXに挑戦しやすい企業文化を醸成することも重要です。失敗を恐れずに新しいことにチャレンジできる雰囲気、部門間で協力し合う風土などが、DX人材が活躍するための土壌となります。

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課題解決へのアプローチ2:外部からの人材確保

社内育成には時間がかかる場合や、特定の高度な専門知識が急遽必要になった場合は、外部から人材を確保することも有効な手段です。

①中途採用

DX経験者やデジタル技術に精通した人材を中途採用で獲得する方法です。即戦力として活躍が期待できますが、採用市場での競争は激しく、求めるスキルや経験を持つ人材を見つけるのは容易ではありません。

  • 求める人物像の明確化: どのようなスキル、経験、マインドセットを持つ人材が必要なのかを具体的に定義することが重要です。
  • 魅力的なオファー: 優秀な人材を惹きつけるためには、報酬だけでなく、裁量権の大きさや挑戦的なプロジェクト、柔軟な働き方など、魅力的な労働条件を提示する必要があります。

②外部専門家の活用 (コンサルタント、フリーランスなど)

特定のプロジェクト期間や課題解決のために、外部のコンサルタントやフリーランスの専門家と契約する方法です。必要なスキルを持つ人材を柔軟に活用できるメリットがあります。

  • 契約形態の検討: プロジェクト単位での業務委託、アドバイザリー契約など、目的に応じた契約形態を選びます。
  • ミスマッチの回避: 依頼したい業務内容や期待する役割を明確に伝え、候補者の実績やスキルを慎重に見極めることが重要です。

外部から人材を確保する場合、自社の文化に馴染み、既存社員と良好な関係を築けるかどうかも重要なポイントとなります。

課題解決へのアプローチ3:外部パートナーとの連携 (SIer等の活用)

社内リソースだけではDX推進体制の構築が難しい場合、あるいは専門的な知見や開発力が必要な場合には、実績豊富な外部パートナー(SIerなど)との連携が有力な選択肢となります。

①外部パートナー活用のメリット

  • 専門知識・ノウハウの補完: 自社に不足している特定の技術領域(例: クラウド構築、データ分析基盤構築、AI活用)に関する深い専門知識や最新ノウハウを活用できます。
  • 推進体制構築の支援: DX戦略の策定段階から参画してもらい、プロジェクトマネジメントや関係部署との調整など、推進体制全体の構築を支援してもらうことも可能です。
  • リソース不足の解消: システム開発やインフラ構築など、大規模なリソースが必要な作業を委託することで、社内リソースをより戦略的な業務に集中させることができます。
  • 客観的な視点の導入: 社内のしがらみにとらわれない客観的な視点から、課題の指摘や新たな解決策の提案が期待できます。

パートナー選定のポイント

DXパートナーを選定する際には、以下の点を考慮することが重要です。

  • 実績と専門性: 自社の業界や課題に近い分野でのDX支援実績が豊富か、特に活用したい技術領域(例: Google Cloud, Google Workspace)に強みを持っているかを確認します。
  • 伴走力とコミュニケーション: 単にシステムを開発・納品するだけでなく、自社の課題に寄り添い、共に汗を流してくれる「伴走型」のパートナーであるかを見極めます。コミュニケーションが円滑で、信頼関係を築けるかどうかも重要です。
  • 柔軟性と提案力: 変化の激しいDXにおいては、状況に応じた柔軟な対応力や、自社の期待を超える提案力が求められます。

外部パートナーは、単なる「外注先」ではなく、共にDXを成功させるための「仲間」として捉え、良好な関係を築くことが成功の鍵となります。

XIMIXによる支援サービス:DX人材・体制の課題を解決

ここまで、DX推進人材の確保・育成に関する様々なアプローチを見てきました。しかし、「具体的に何から始めればよいかわからない」「社内だけではリソースもノウハウも足りない」と感じている企業様も多いのではないでしょうか。

私たち「XIMIX」は、Google Cloud Google Workspace の導入・活用支援を通じて、お客様のDX推進を強力にサポートするサービスです。単なるツール導入に留まらず、お客様のビジネス課題に深く寄り添い、戦略策定から推進体制の構築、人材育成、そして継続的な活用支援まで、伴走型のサポートを提供しています。

XIMIXができること:

  • 専門知識・ノウハウの提供: Google Cloud プレミアパートナーとして培ってきた豊富な知見と技術力で、クラウドネイティブなシステム開発、データ分析基盤構築、AI活用などをサポートします。多くの企業様をご支援してきた経験に基づき、実践的なノウハウを提供します。
  • 人材育成支援: 効果的な活用方法に関するトレーニングを通じて、お客様社内のDX人材育成をサポートします。
  • 伴走型サポート: プロジェクトの立ち上げから運用、さらなる改善まで、お客様と一体となってDXを推進します。技術的な課題だけでなく、組織的な課題に対しても、共に解決策を模索します。

DX推進人材の不足や体制構築にお悩みの場合は、ぜひ一度XIMIXにご相談ください。お客様の状況に合わせた最適な解決策をご提案いたします。

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まとめ

DXの成功は、それを推進する「戦略・推進人材」の存在なくしてはありえません。人材不足という課題に直面している企業は、まず自社の状況を把握し、「社内育成」「外部採用」「外部パートナー連携」といった選択肢の中から、最適な組み合わせを見つけることが重要です。

特に、社内での育成には時間がかかりますが、長期的な視点で見れば組織全体のDXケイパビリティ向上に繋がります。一方で、スピード感が求められる場面や、高度な専門知識が必要な場合には、外部リソースの活用が有効です。

重要なのは、完璧な人材や体制を最初から求めすぎず、まずはスモールスタートで始めること。そして、状況に合わせて柔軟にアプローチを見直していくことです。この記事が、貴社のDX推進における人材戦略を考える上での一助となれば幸いです。DX推進に向けて、まず何から始めるべきか、具体的な相談をしたい場合は、専門家への相談も有効な第一歩となるでしょう。

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