「DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進して、新しい価値を生み出したい!」 多くの企業がそう考え、様々な取り組みを進めています。しかし一方で、 「既存システムの維持管理やセキュリティ対策に追われて、新しいことへの投資がなかなかできない」 「IT予算の大半が、現状維持のための『守り』に消えてしまう」 といった声もよく聞かれます。これは、企業活動に不可欠なIT投資における「守り」と「攻め」のバランスという、普遍的な課題です。
DXを効果的に推進し、企業の持続的な成長を実現するためには、この「守りのIT」と「攻めのIT」のバランスを意識的に管理・最適化していくことが非常に重要になります。
この記事では、DX推進の前提となる「守りのIT」と「攻めのIT」とは何か、なぜそのバランスが重要なのか、そして自社にとって最適なバランスをどのように見つけていけばよいのか、基本的な考え方を分かりやすく解説します。DXの推進を担当されている方、IT戦略や予算策定に関わる方にとって、今後の取り組みのヒントとなれば幸いです。
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まず、それぞれの言葉が何を指しているのか、基本的な定義と役割を確認しましょう。
「守りのIT」とは、既存の事業運営を維持・効率化するためのIT投資を指します。日々の業務を支え、安定稼働させることが主な目的です。具体的には以下のようなものが含まれます。
「守りのIT」は、いわば企業の土台であり、これがしっかりしていないと日々の業務が成り立ちません。電気や水道のようなインフラに近い役割と言えるでしょう。
一方、「攻めのIT」とは、新しい価値を創造し、ビジネスの成長や変革を促進するためのIT投資を指します。競争優位性を確立したり、新たな収益源を生み出したりすることが目的です。具体的には以下のようなものが考えられます。
「攻めのIT」は、企業の未来を創るための投資であり、成長のエンジンとなる役割を担います。
では、なぜこの二つのバランスを取ることがDX推進において重要なのでしょうか?
「守りのIT」は不可欠ですが、これにばかり投資が偏ると、既存システムの維持にコストとリソースが割かれ、「攻め」への投資余力がなくなってしまいます。その結果、市場の変化や新しい技術トレンドに対応できず、競合他社に遅れを取り、徐々に競争力を失っていく可能性があります。老朽化したシステム(レガシーシステム)が足かせとなり、DXどころか現状維持すら困難になる「2025年の崖」問題(経済産業省指摘)も、この偏りが招くリスクの一つです。
逆に、「攻めのIT」ばかりを優先し、「守り」をおろそかにすると、どうなるでしょうか。新しいシステムやサービスを導入しても、それを支えるインフラが脆弱だったり、セキュリティ対策が不十分だったりすると、システム障害や情報漏洩といった重大な問題を引き起こす可能性があります。土台が不安定なまま新しい挑戦をしても、結局はうまくいきません。また、日常業務の安定性が損なわれれば、従業員の不満増大や生産性低下にもつながります。
つまり、「守りのIT」は事業継続の基盤であり、「攻めのIT」は事業成長の推進力です。どちらか一方だけでは企業は持続的に成長できません。安定した土台(守り)の上で、未来への投資(攻め)を行う。この両輪をバランス良く回していくことこそが、DXを成功させ、変化の激しい時代を勝ち抜くための鍵となるのです。
最適なバランスを考える前に、まずは自社の現状を知ることが重要です。現状のIT投資が「守り」と「攻め」にどのくらいの割合で配分されているかを把握してみましょう。
厳密な分類が難しい場合もありますが、大まかな傾向を掴むことが第一歩です。一般的に、日本企業は欧米企業に比べて「守り」のIT投資比率が高い傾向にあると言われています。自社の状況を客観的に把握することで、課題が見えてきます。
現状を把握したら、次は理想的なバランスに向けて舵を切るためのステップを考えます。
IT投資のバランスは、企業の経営戦略や事業戦略と連動しているべきです。「我が社は今後、どの事業領域で、どのように成長していきたいのか?」という全体戦略を踏まえ、それを実現するためにITがどう貢献すべきか(守り・攻めそれぞれで)を明確にします。経営層とIT部門が一体となって議論することが不可欠です。
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「攻め」の投資原資を生み出すためには、「守り」のコスト構造を見直し、効率化・最適化を図ることが有効です。
経営戦略に基づき、「攻めのIT」として注力すべき領域を特定します。すべての領域に一度に投資するのではなく、優先順位をつけることが重要です。例えば、「まずは顧客接点のデジタル化から」「データ分析基盤の整備を最優先で」といった具体的な方針を定めます。
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ステップ1〜3を踏まえ、中長期的な視点でのIT投資計画(ロードマップ)を作成します。そして、そのロードマップに基づき、単年度のIT予算配分を見直します。「守り」の効率化で生まれた原資を、計画的に「攻め」の領域へとシフトしていくイメージです。一度決めたら終わりではなく、定期的に見直し、戦略や状況の変化に合わせて柔軟に調整していくことが大切です。
実施したIT投資(特に「攻め」)の効果を測定し、評価する仕組みを構築します。ROI(投資対効果)だけでなく、業務プロセス改善度、顧客満足度、従業員満足度など、多角的な視点で評価し、その結果を次の投資計画や改善活動に活かしていくPDCAサイクルを回します。
最適なバランスを目指す過程で、陥りやすい罠や注意点もいくつかあります。
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モダンなクラウドプラットフォームであるGoogle Cloud や、コラボレーションツール群である Google Workspace は、「守り」と「攻め」の両面で企業のIT投資バランス最適化に貢献できます。
これらのツールをうまく活用することで、「守り」のコストを最適化しつつ、「攻め」の活動を加速させる、理想的なバランスに近づけることが可能です。
「守りのIT」と「攻めのIT」のバランスを取る重要性は理解できても、
といったお悩みを抱えている企業様も多いのではないでしょうか。
私たちNI+Cが提供する XIMIX は、そのような課題を解決し、お客様のDX推進とIT投資の最適化をご支援します。
NI+Cは、長年にわたり多くの企業のIT基盤構築やDX推進を支援してきた実績があります。Google Cloud に関する高度な知見と経験に基づき、お客様の状況に合わせた最適なIT投資バランスの実現をサポートします。
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DX時代の企業経営において、「守りのIT」と「攻めのIT」のバランスを最適化することは、持続的な成長のための重要な経営課題です。どちらか一方に偏ることなく、安定した事業基盤の上で、未来への投資を戦略的に行っていく必要があります。
本記事では、その基本的な考え方として、それぞれの定義、バランスの重要性、現状把握の方法、そして最適化に向けたステップを解説しました。特に、「守り」の効率化・最適化によって「攻め」の原資を生み出すという視点は、多くの企業にとって有効なアプローチとなるでしょう。
まずは自社のIT投資の現状を見つめ直し、経営戦略との整合性を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。そして、Google Cloud のようなモダンなテクノロジーを活用することも視野に入れながら、自社にとっての最適なバランスを追求していくことが、DX成功への近道となるはずです。