「デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させ、新たな事業価値を創出したい」 多くの企業経営者やDX推進担当者が強い意欲を持つ一方で、その実現を阻む大きな壁が存在します。それは、既存システムの運用・保守といった「守りのIT」に、予算や人材といった貴重なリソースの大半が割かれてしまうという現実です。
このような課題は、企業の成長を鈍化させる深刻な問題です。本記事では、DX時代の企業経営に不可欠な「守りのIT」と「攻めのIT」の最適なバランスを見つけるための考え方と、具体的なアプローチを解説します。特に、クラウド技術、中でも Google Cloud や Google Workspace がこの課題解決にどう貢献するのか、専門的な視点から掘り下げていきます。
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まず、「守りのIT」と「攻めのIT」がそれぞれ何を指すのか、その定義と役割を明確にしましょう。
「守りのIT」とは、既存の事業運営を安定的に維持し、効率化するためのIT投資です。企業の根幹を支える土台であり、電気や水道のようなインフラに例えられます。これがなければ、日々の業務は成り立ちません。
これらの活動は、事業継続性の担保とコンプライアンス遵守に不可欠です。
「攻めのIT」とは、ビジネスモデルの変革や新たな価値創造を通じて、企業の競争優位性を確立し、事業成長を加速させるための戦略的なIT投資です。
「攻めのIT」は、企業の未来を切り拓くための投資であり、成長の原動力となる重要な役割を担います。
「守り」と「攻め」、どちらも重要であることは論を俟ちません。しかし、問題は両者のバランスにあります。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX白書2023」をはじめとする各種調査では、依然として多くの日本企業がIT投資を「守り」に偏重させている実態が指摘されています。
守りに偏るリスク:市場からの脱落
IT予算の大半を現行システムの維持に費やす状況が続くと、「攻め」に振り向ける余力が枯渇します。結果として、市場の変化や新たなテクノロジーに適応できず、競合に後れを取ることに。経済産業省が警鐘を鳴らした「2025年の崖」は、まさにこのレガシーシステムが引き起こすDXの停滞と経済的損失のリスクを象徴しています。
攻めに偏るリスク:脆弱な基盤
逆に、基盤となる「守り」をおろそかにして「攻め」の施策ばかりを進めると、システム障害や大規模なセキュリティインシデントを招く危険性が高まります。脆弱な土台の上では、いかに革新的なアプリケーションも安定して稼働させることはできず、顧客や従業員の信頼を失うことにも繋がります。
企業が持続的に成長するためには、「守りのIT」という安定した基盤の上で、「攻めのIT」という成長エンジンを力強く回す、この両輪駆動が不可欠なのです。
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自社のIT投資を理想的なバランスへシフトさせるためには、戦略的なアプローチが必要です。ここでは、NI+Cがお客様をご支援する際に重視している5つのステップをご紹介します。
まずは、自社のIT投資が「守り」と「攻め」にどのような割合で配分されているかを客観的に把握することから始めます。
これにより、自社が抱える課題の輪郭が明確になります。
IT投資のバランスは、必ず全社の経営戦略と連動していなければなりません。「3年後にどの市場でNo.1を目指すのか」「そのために、どのような顧客価値を提供するのか」といった経営目標を達成するための手段として、IT戦略を位置づけます。経営層とIT部門が密に連携し、「守り」と「攻め」それぞれで達成すべき目標を具体化することが極めて重要です。
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「攻め」の投資原資を生み出す最も効果的な方法は、「守り」のコスト構造を見直すことです。ここで鍵となるのが、クラウドの活用です。 サーバーの管理やソフトウェアのアップデートといった定型的な運用業務から解放されるSaaSや、リソースを柔軟に伸縮させられるIaaS/PaaSへ移行することで、運用負荷とコストを劇的に削減できる可能性があります。
特に Google Cloud のようなモダンなパブリッククラウドは、インフラ管理の大部分をGoogleに任せられるため、情報システム部門はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。
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経営戦略に基づき、「攻め」として注力すべき領域を特定し、優先順位をつけます。「まずはデータ分析基盤を整備し、顧客インサイトの深化を図る」「次に、その知見を活かしてパーソナライズされたマーケティング施策を展開する」といったように、段階的かつ戦略的に投資領域を定めます。
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上記ステップを踏まえ、中長期的なIT投資計画(ロードマップ)を策定し、単年度の予算配分を見直します。「守り」の効率化で創出したリソースを、計画的に「攻め」の領域へ再配分していくのです。一度計画を立てて終わりではなく、投資の効果(ROIだけでなく、顧客満足度や従業員エンゲージメントなども含めて)を定期的に測定し、戦略を柔軟に見直していくPDCAサイクルを回し続けることが成功の鍵となります。
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理想のバランスを目指す過程には、いくつかの注意点が存在します。
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モダンなクラウドプラットフォームである Google Cloud と、コラボレーションツールスイートの Google Workspace は、「守り」と「攻め」の両面で企業のIT投資バランスの最適化に大きく貢献します。
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これらのツールを戦略的に活用することで、「守り」のコストと工数を最適化しながら、そこで生まれたリソースを「攻め」の活動へと振り向け、企業の成長を加速させる好循環を生み出すことが可能です。
「守りと攻めのバランスの重要性は理解できたが、具体的に何から手をつければいいのか分からない」 このようなお悩みを抱える企業様は少なくありません。
私たち XIMIX は、長年にわたる豊富な実績と、Google Cloud に関する高度な専門知識を基に、お客様の状況に合わせたIT投資の最適化をご支援します。
現状のITコスト構造や運用体制を分析するITアセスメントサービスから、Google Cloud / Google Workspace の導入・移行、データ分析基盤の構築、AI活用支援まで、一気通貫でサポート。お客様が「守り」の負荷から解放され、「攻め」のDXを力強く推進できるよう、ビジネスパートナーとして伴走します。
XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
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DX時代の変化の激しい市場環境で持続的に成長するためには、「守りのIT」と「攻めのIT」のバランスを戦略的に管理し、最適化することが不可欠です。多くの日本企業が直面する「守り」偏重の構造から脱却し、「攻め」への投資を加速させる必要があります。
その最も効果的な一手が、クラウド活用による「守りのIT」の変革です。インフラ運用を効率化・高度化することで、コストと人材を「攻めのIT」領域、すなわち新たな顧客価値の創造やビジネスモデルの変革へとシフトさせることができます。
まずは自社のIT投資の現状を客観的に見つめ直し、経営戦略との連携を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。その上で、Google Cloud のような先進的なテクノロジーをいかに活用していくか。その戦略的な判断が、企業の未来を大きく左右する鍵となるでしょう。