コラム

【入門】Google Cloud障害発生時、慌てないための初動対応と情報収集ガイド

作成者: XIMIX Google Cloud チーム|2025,05,02

はじめに

企業のDX推進において、Google Cloudのようなパブリッククラウドサービスの活用は不可欠な要素となっています。しかし、どれだけ堅牢なインフラであっても、サービス障害のリスクをゼロにすることはできません。万が一、利用中の Google Cloud サービスで障害が発生した場合、「何から確認すればいいのか?」「どこで情報を得られるのか?」と戸惑ってしまう担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特に、クラウド運用経験が浅い場合や、初めて障害に直面した場合、迅速かつ冷静な対応は難しいものです。

この記事では、Google Cloud を利用する企業の担当者様に向けて、サービス障害が発生した際の基本的な初動対応と、正確な情報を収集する方法について、入門レベルで分かりやすく解説します。

この記事を読むことで、以下のことが理解できます。

  • Google Cloud 障害発生時に最初に確認すべきこと
  • 公式な障害情報を確認する方法(Google Cloud Service Health の見方)
  • 障害発生時の基本的な対応ステップ
  • 障害に備えて事前に準備しておくべきこと

落ち着いて対応するための知識を身につけ、万が一の事態に備えましょう。

Google Cloudで障害が発生したらまず確認すべきこと

システムアラートやユーザーからの報告などで Google Cloud 関連の障害が疑われる事象を検知したら、パニックにならず、まずは以下の点を確認しましょう。

①自社環境への影響範囲の特定

最初に把握すべきは、「どのサービス」が「どの範囲」で影響を受けているか、です。

  • 利用している Google Cloud サービス: Compute Engine の VM インスタンスか、Cloud Storage のバケットか、特定の API かなどを特定します。
  • リージョン・ゾーン: 利用しているリソースがどのリージョンやゾーンに属しているかを確認します。障害は特定の地域に限定して発生することが多いため、この情報は非常に重要です。
  • 具体的な影響: 「VMインスタンスに接続できない」「アプリケーションからのレスポンスがない」「データのアップロードが失敗する」など、具体的な事象を整理します。

正確な影響範囲を把握することが、その後の情報収集や対応を効率的に進めるための第一歩となります。

②社内への一次連絡・情報共有

障害の可能性を検知し、おおよその影響範囲が掴めたら、速やかに関係部署や担当者に状況を共有しましょう。早期の情報共有は、不要な混乱を防ぎ、組織的な対応を可能にするために重要です。

  • 報告内容: 現時点で把握している影響範囲、確認している事象、今後の対応方針(情報収集中であることなど)を簡潔に伝えます。
  • 連絡体制: 事前に定められたエスカレーションルートや連絡手段に従って報告します。

公式情報の入手先:Google Cloud Service Health

自社環境への影響を確認したら、次に Google Cloud 側で公式な障害情報が出ていないかを確認します。最も信頼性が高く、最初に確認すべき情報源は Google Cloud Service Health です。

Google Cloud Service Health: https://status.cloud.google.com/?hl=ja

Google Cloud Service Health とは?

Google Cloud Service Health は、Google Cloud の各サービスの稼働状況やインシデント(障害)情報をリアルタイムで提供する公式ダッシュボードです。(以前は Google Cloud Status Dashboard という名称でした)

ここで公開される情報は、Google Cloud のエンジニアリングチームによって確認された、信頼性の高い情報です。

ダッシュボードの見方

Google Cloud Service Health のページにアクセスすると、サービスの一覧と現在のステータスが表示されます。

  • サービス一覧: Google Cloud の主要なサービスがリストアップされています。
  • ステータス表示: 各サービスについて、通常は緑色のチェックマーク(利用可能)が表示されています。問題が発生している場合は、オレンジ色(サービス障害)や赤色(サービス停止)のアイコンが表示され、詳細情報へのリンクが示されます。
  • タイムライン: 過去のインシデント履歴も確認できます。

障害が疑われるサービスやリージョンに問題を示す表示がないかを確認しましょう。

インシデント詳細情報の確認方法

サービスに問題が発生している場合、該当サービスの行をクリックすると、インシデントの詳細情報が表示されます。

  • 発生日時: 障害の発生時刻。
  • 影響範囲: 影響を受けているサービス、リージョン、具体的な機能など。
  • 現在の状況: Google Cloud 側での調査状況、復旧作業の進捗など。
  • 更新情報: 状況に進展があるたびに、タイムスタンプ付きで情報が更新されます。

定期的にこの詳細情報を確認し、最新の状況を把握するように努めましょう。

Personalized Service Health の活用

Google Cloud Service Health は全てのユーザーに公開されている情報ですが、Personalized Service Health を設定することで、自社が利用しているプロジェクトやサービスに特化した、よりパーソナライズされた障害情報を受け取ることができます。

  • 設定方法: Google Cloud コンソールから設定します。
  • メリット: 自社に関係のない障害情報に惑わされることなく、影響のあるインシデント情報だけを効率的に把握できます。アラート通知を設定することも可能です。

可能であれば、事前に Personalized Service Health を設定しておくことを強く推奨します。

その他の情報収集チャネル

Google Cloud Service Health が最も重要な情報源ですが、状況に応じて以下のチャネルも補助的に役立つ場合があります。

  • Google Cloud サポートへの問い合わせ: 契約しているサポートプランに応じて、テクニカルサポートに直接問い合わせることができます。Service Health にまだ情報が掲載されていない場合や、自社固有の状況について確認したい場合に有効です。ただし、大規模障害発生時は問い合わせが集中し、回答までに時間がかかる可能性もあります。
  • Google Cloud 公式ブログやSNS: 重大な障害が発生した場合、公式ブログや X (旧 Twitter) アカウントなどで情報が発信されることがあります。
  • コミュニティフォーラムなど: Google Cloud のユーザーコミュニティなどで情報交換が行われることもありますが、情報の正確性については注意が必要です。必ず公式情報を正として判断しましょう。

障害発生時の基本的な対応プロセス(ステップ形式)

ここまでの情報収集方法を踏まえ、障害発生時の基本的な対応プロセスをステップ形式でまとめます。

  • Step 1: 影響範囲の確認と社内共有
    • 自社システムへの影響(サービス、リージョン、具体的な事象)を特定します。
    • 関係部署へ迅速に第一報を連絡します。
  • Step 2: Google Cloud Service Health での公式情報確認
    • Google Cloud Service Health にアクセスし、該当サービス・リージョンのステータスを確認します。
    • インシデント情報が公開されている場合は、詳細を定期的に確認します。
  • Step 3: 必要に応じて Personalized Service Health の確認
    • 設定している場合は、Personalized Service Health で自社プロジェクトへの影響情報を確認します。
  • Step 4: 状況に応じた暫定対応の検討
    • 公式情報や影響範囲に基づき、ビジネス継続のための暫定対応(例: 別のリージョンへの切り替え検討、ユーザーへのアナウンスなど)を検討・実施します。これはシステムの構成や事前の準備状況に大きく依存します。
  • Step 5: Google Cloud サポートへの問い合わせ(必要な場合)
    • 公式情報だけでは状況が不明な場合や、個別具体的なサポートが必要な場合に問い合わせます。
  • Step 6: 復旧確認と根本原因の分析(事後対応)
    • Google Cloud Service Health などで復旧が宣言された後、自社システムが正常に動作するかを十分に確認します。
    • 可能であれば、Google Cloud から提供される障害レポート(Postmortem)などを参考に、根本原因を理解し、再発防止策や今後の改善策を検討します。

障害発生に備えるために:事前の準備

障害発生時に慌てず、迅速かつ的確に対応するためには、事前の準備が非常に重要です。

  • サポートプランの確認・見直し: 自社のビジネス要件に合った Google Cloud のサポートプランに加入しているか確認しましょう。テクニカルサポートへのアクセス可否や応答時間はプランによって異なります。
  • 障害対応プロセスの文書化と周知: 誰が、いつ、何を、どのように行うのか、といった障害発生時の対応プロセスを事前に文書化し、関係者間で共有・周知しておくことが重要です。
  • Personalized Service Health の設定: 前述の通り、自社に関連する障害情報を効率的に受け取るために設定しておきましょう。
  • 障害発生時の連絡体制の整備: 社内外の関係者への連絡ルート、連絡手段を明確に定めておきます。
  • 重要なシステムの冗長化検討: ミッションクリティカルなシステムについては、単一障害点を作らないよう、マルチリージョン構成などの冗長化を検討することも有効な対策です。

XIMIXによる支援サービス

Google Cloud の障害発生時の対応は、迅速な情報収集と的確な判断が求められます。特に、クラウド運用に慣れていない場合や、担当者のリソースが限られている場合には、大きな負担となり得ます。また、障害の根本原因を分析し、恒久的な対策を講じるには、専門的な知識や経験が必要となるケースも少なくありません。

私たち XIMIX  は、Google Cloud / Google Workspace の導入支援から、システムインテグレーション、運用保守、そして障害発生時のテクニカルサポートまで、お客様のビジネスを成功に導くための包括的な伴走支援サービスを提供しています。

多くの企業様の Google Cloud 活用をご支援してきた豊富な実績と知見に基づき、万が一の障害発生時にも、お客様と連携して迅速な問題解決を図り、ビジネスへの影響を最小限に抑えるお手伝いをいたします。また、平常時からお客様の環境を理解し、最適な運用方法や障害に備えたアーキテクチャ設計に関するコンサルティングも可能です。

Google Cloud の安定運用や障害対応に不安をお持ちでしたら、ぜひ一度 XIMIX にご相談ください。

XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。

まとめ

今回は、Google Cloud でサービス障害が発生した場合の初動対応と、公式な情報収集の方法について、入門者向けに解説しました。

障害発生時のポイント:

  • 慌てず影響範囲を特定し、社内共有を行う。
  • まず Google Cloud Service Health で公式情報を確認する。
  • Personalized Service Health を活用し、関連情報を効率的に得る。
  • 基本的な対応プロセスに従って、冷静に対応を進める。

そして何よりも、事前の準備が重要です。サポートプランの確認、対応プロセスの整備、連絡体制の確立などを平時から行っておくことが、万が一の際に被害を最小限に抑え、迅速な復旧につながります。

クラウドサービスを安心して活用するためには、障害発生時の対応方法を理解し、備えておくことが不可欠です。この記事が、皆様の Google Cloud の安定運用の一助となれば幸いです。

次のステップとして、まずは自社の Google Cloud サポートプランを確認し、障害対応プロセスが整備されているか見直してみてはいかがでしょうか。