「データに基づいた意思決定が重要だとは分かっているが、何から手をつければ良いのだろうか」「我が社には分析に使えるような『ビッグデータ』はない」。企業のDXを推進する多くの担当者様から、このようなご相談をいただきます。
しかし、ご安心ください。データ活用は、必ずしも膨大なビッグデータから始める必要はありません。むしろ、ビジネスの成果に直結する「宝」は、お客様とのやり取りや日々の業務の中に眠る、身近な「スモールデータ」にこそ隠されています。
この記事では、「スモールデータ活用」の入門編として、以下の3つの要素を分かりやすく解説します。
【見つけ方】 どこに価値あるデータが眠っているのか
【活用事例】 データをどうビジネス成果に繋げるのか
【ポイント】 活用を成功させるために押さえるべきこと
本記事が、貴社のデータ活用の第一歩を踏み出すための、具体的で実践的なガイドとなれば幸いです。
データ活用と聞くと、多くの人が「ビッグデータ」を連想します。しかし、その思い込みが、かえって活用のハードルを上げているかもしれません。
巨大テック企業が膨大なデータを駆使して成功を収めたことから、「データ活用には大規模な投資と専門家チームが必要」というイメージが定着しました。しかし、これはあくまで一つの側面です。多くの企業にとって、まずは自社の状況に合った、地に足のついたデータ活用から始めることが成功への近道です。
スモールデータとビッグデータの違いは、単純な量の差ではありません。その本質的な違いは、重視する点にあります。
ビッグデータ | スモールデータ | |
特徴 | 量 (Volume), 種類 (Variety), 速度 (Velocity) を重視 | 質 (Quality), 文脈 (Context), 顧客理解 (Customer Insight) を重視 |
データ源の例 | IoTセンサーデータ、SNSの投稿など、網羅的・大規模なデータ | 顧客アンケート、営業日報、コールセンターの応対履歴など、具体的で意図を持ったデータ |
主な目的 | パターン発見、未来予測、全体傾向の把握 | 個の理解、因果関係の特定、具体的なアクションへの示唆 |
では、その「宝」はどこにあるのでしょうか。業種・業態を問わず、多くの企業に共通して存在するスモールデータの代表例をご紹介します。
SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)には、顧客情報、商談履歴、問い合わせ内容、担当者の活動記録など、顧客との関係性を示す第一級のデータが蓄積されています。
自社サイトのアクセスログは、顧客の興味・関心を示す貴重な情報源です。「どのページを」「どれくらいの時間」見たか、どの資料をダウンロードしたか、といった一つひとつの行動が、顧客の検討状況を教えてくれます。
経費精算、勤怠管理、会計システムといったバックオフィスのデータも、業務効率化のための重要なスモールデータです。申請から承認までのリードタイムや、特定の時期に集中する業務負荷などを可視化できます。
データを見つけたら、次はいよいよ活用です。具体的なアクションに繋がった3つの事例を見ていきましょう。
ある企業では、SFAに蓄積された失注データを分析しました。その結果、特定の業種のお客様に対して、価格面での失注率が際立って高いことが判明。そこで、その業種向けの提案に「導入後の費用対効果(ROI)シミュレーション」を加えるように営業プロセスを変更したところ、失注率が改善し、部門全体の成約率が15%向上しました。
あるBtoB企業では、自社サイトの価格情報ページを3分以上閲覧したものの、問い合わせに至らなかった企業リストを抽出。そのリストに対し、営業担当者が「導入事例集」を送付し、フォローコールを実施。結果、休眠していた見込み顧客の中から複数のアポイントメントを獲得し、新たな商談機会を創出することに成功しました。
ある中堅企業では、経費精算システムのログデータを分析。申請から承認までのプロセスで、特定の役職者で承認が滞留するボトルネックを発見しました。承認フローを見直し、一定金額以下は自動承認する仕組みを導入したことで、経費精算にかかる全社的な工数を大幅に削減できました。
スモールデータ活用の道のりには、いくつかの壁が立ちはだかります。しかし、これらは適切なツール、特にクラウド技術を活用することで乗り越えることが可能です。
最大の壁は、データが各部門のシステムに分散し、連携できない「サイロ化」です。
解決策: Google Cloudのデータウェアハウス BigQuery を活用すれば、社内に散在するデータを一元的に集約・管理する基盤を構築できます。これにより、全社で「同じデータを見て」議論できるようになります。
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なぜデータ分析基盤としてGoogle CloudのBigQueryが選ばれるのか?を解説
データは集まっても、「誰が分析するのか」という人材の問題は深刻です。
解決策: Looker のようなBIツールは、専門家でなくとも直感的な操作でデータを可視化します。さらに、Vertex AIのような生成AIを使えば、自然言語で質問するだけで分析結果を得ることも可能であり、データ活用の「民主化」が加速しています。
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部門を横断してデータを扱う上で、セキュリティと権限管理は最重要課題です。
解決策: Google Cloudは世界最高水準のセキュリティを誇ります。詳細なアクセス権限設定やデータの暗号化、監査機能が標準で備わっており、企業の厳しいガバナンス要件を満たしながら、安全にデータ活用を推進できます。
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ツールだけでなく、プロジェクトの進め方にも成功のポイントがあります。
データ活用プロジェクトでよくある失敗は、最初から完璧な全社データ基盤を目指して計画が肥大化し、頓挫してしまうことです。まずは特定の課題に絞って「小さく始めて、早く成果を出す」ことが重要です。この小さな成功体験が、全社展開への機運を醸成します。
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データ活用は、それ自体が目的ではありません。「どの課題を解決すれば、最もビジネスインパクトが大きいか」という投資対効果(ROI)の視点でテーマを設定することが、決裁者を含む関係者の理解と協力を得る上で不可欠です。
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社内のリソースだけで、技術的な課題とビジネス課題を同時に解決するのは容易ではありません。データ活用の豊富な経験を持つ外部パートナーと協業することは、プロジェクト成功の確率を格段に高める有効な選択肢です。
私たち『XIMIX』は、これまで多くの中堅・大企業の皆様と共に、データ活用の第一歩からご支援してまいりました。
私たちは単にツールを導入するだけではありません。お客様のビジネスを深く理解し、どこから始めるべきか、どうすればビジネス成果に繋がるかを共に考えます。データ基盤の設計・構築から、分析・可視化、さらには組織への定着化までをワンストップでご支援できるのが私たちの強みです。
「まずは何から始めれば良いか、専門家の意見を聞いてみたい」。そのような段階からでも、ぜひお気軽にご相談ください。
XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
XIMIXのGoogle Cloud 導入支援についてはこちらをご覧ください。
本記事では、スモールデータ活用の入門知識として、その見つけ方から活用事例、そして成功のためのポイントまでを解説しました。
ビッグデータに固執せず、まずは身近な「スモールデータ」の価値に目を向けましょう。
データは営業・マーケティング・バックオフィスなど、社内のあらゆる場所に眠っています。
データ活用の壁は、Google Cloudのようなクラウド技術と、適切な進め方で乗り越えられます。
データ活用は、企業の規模を問わず、競争力を高めるための強力な武器となります。この記事を参考に、ぜひ貴社でも「宝探し」の第一歩を踏み出してみてください。