「日々の繰り返し作業から解放され、より創造的な業務に集中したい」 「複数のツールを使う手作業でのデータ転記は、ミスが多くて非効率だ」 「導入済みのGoogle Workspaceを、もっと戦略的に活用してDXを推進したい」
これらは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を目指す多くの企業で聞かれる、現場の切実な声です。事実、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査でも、多くの企業がDX推進において「人材不足」や「既存システムの複雑化」といった課題を抱えており、身近な業務の非効率が足かせとなっている現実が浮き彫りになっています。
もし貴社がGoogle Workspaceを導入済みであれば、これらの課題を解決する極めて強力かつ低コストな手段が、すでに手元にあることをご存知でしょうか。それが「Google Apps Script(GAS)」です。
GASは、普段お使いのGmail、スプレッドシート、ドキュメントといったツール群をプログラムで連携させ、煩雑な業務を自動化するための仕組みです。
この記事では、GASを初めて知る方、プログラミング経験のない決裁者の方にもご理解いただけるよう、以下の点を中心に、XIMIXがSIerとして培ってきた知見を交えながら分かりやすく解説します。
本記事を最後までお読みいただくことで、GASが貴社のDX推進と生産性向上にどのように貢献できるか、具体的なイメージを掴んでいただけるはずです。
まず、GASがどのような技術なのか、その基本を押さえましょう。
Google Apps Script(略称: GAS)とは、Googleが提供するプログラミング言語および実行プラットフォームです。その中核は「Google Workspaceの各サービスを、プログラムを通じて自在に操作・連携させる仕組み」と言えます。
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近年、プログラミング不要で業務を自動化できる「ローコード/ノーコード」ツールが人気です。しかし、それらには「決められた機能しか使えない」「複雑な業務ロジックには対応しきれない」といった限界もあります。
一方、GASはプログラミングを要するものの、その分、圧倒的な自由度と柔軟性を誇ります。Google Workspaceの機能を深く、そして細かく制御できるため、企業の独自ルールや複雑な業務フローにも対応した、かゆい所に手が届く自動化を実現できるのです。
「手軽さ」のローコード/ノーコード、「柔軟性・拡張性」のGAS。両者の特性を理解し使い分けることが、効果的な業務改善の鍵となります。
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GASを活用することで、企業は具体的にどのような恩恵を受けられるのでしょうか。ここでは経営層・決裁者視点での主要なメリットを4つご紹介します。
Google Workspace(有償版)を利用していれば、GASの利用に追加のライセンス費用は原則かかりません。RPAツールなどに代表される他の自動化ソリューションが、高額な導入・維持コストを要する場合があることを考えると、これは非常に大きなメリットです。最小限の投資で、大きなリターン(業務効率化)を狙える、費用対効果に優れた選択肢と言えます。
多くの企業では、Google Workspaceを導入していても、そのポテンシャルを最大限に引き出せていないケースが散見されます。GASは、日常業務で使い慣れたツール群を連携・自動化することで、「単なるツールの集合体」から「統合された業務改善プラットフォーム」へと昇華させます。これは、すでに行ったIT投資の価値を最大化することに直結します。
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GASは、比較的小さな業務改善からスモールスタートできるため、情報システム部門だけでなく、現場の各部門が主体となったボトムアップ型のDX推進に適しています。現場の担当者が自らの課題を解決するためにGASを学び、成功体験を積み重ねることは、組織全体のITリテラシー向上と、自律的な改善文化の醸成に繋がります。
関連記事:DXを全従業員の「自分ごと」へ:意識改革を進めるため実践ガイド
GASは、Google Workspace内にとどまらず、APIを介してSlackやSalesforce、さらには基幹システムといった外部サービスとも連携が可能です。まずはGASで身近な業務の自動化から始め、将来的にGoogle Cloudのより高度なサービス(Cloud Functionsなど)へとステップアップしていくことで、全社的なDX基盤を段階的に構築していくための、重要な第一歩となり得ます。
GASのメリットをご理解いただいたところで、具体的に「何ができて」「どのように業務が変わるのか」を、機能と活用事例をセットで見ていきましょう。
GASの最も基本的な機能は、各アプリケーションの操作と、それらを自在に組み合わせることです。
機能例:
【活用事例】申請・承認ワークフローの完全自動化
Googleのサービスだけでなく、APIを公開している様々な外部Webサービスとも連携し、業務の幅を大きく広げます。
機能例:
【活用事例】営業部門とバックオフィス間のデータ連携自動化
関連記事:データのサイロ化とは?DXを阻む壁と解決に向けた第一歩【入門編】
作成したスクリプトは、「トリガー」という仕組みで決まった時間に自動実行させることができます。
機能例:
【活用事例】経営会議用レポートの完全自動生成
GASは強力なツールですが、その効果を最大限に引き出すためには、いくつかの重要なポイントと注意点があります。これらは、NI+Cがお客様の導入をご支援する中で特に重視している点です。
まず最も重要なのは、「GASを使って何を解決したいのか」という目的を具体的に定義することです。漠然と始めるのではなく、「〇〇のレポート作成時間を月20時間削減する」といった明確なゴールを設定しましょう。そして、最初から大規模なシステムを目指すのではなく、まずは効果が分かりやすく、実現が容易な小さな業務から「スモールスタート」し、成功体験を積み重ねることが、社内の理解を得て推進力を生む秘訣です。
関連記事:なぜDXは小さく始めるべきなのか? スモールスタート推奨の理由と成功のポイント、向くケース・向かないケースについて解説
GASは「作って終わり」ではありません。業務内容の変更やGoogle Workspaceの仕様変更に対応するため、継続的なメンテナンスが必要です。
無料版のGASには、1回のスクリプト実行時間(通常6分)や、1日にAPIを呼び出せる回数などに上限が設けられています。大量のデータを扱う場合や、高頻度で実行する処理は、この制限に抵触する可能性があるため注意が必要です。また、予期せぬエラー発生時に処理を安全に停止し、管理者に通知する「エラーハンドリング」をスクリプトに組み込むことは、安定運用の絶対条件です。
GASは、実行したユーザーの権限でGoogle Workspace上のデータにアクセスします。意図しない情報漏洩やデータ破損を防ぐため、スクリプトに与える権限は必要最小限に留める「最小権限の原則」を徹底することが重要です。特に個人情報や機密情報を扱う場合は、組織のセキュリティポリシーを厳格に遵守した設計が求められます。
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Google Workspace セキュリティ設定:厳格さと利便性の両立を実現する具体的アプローチ
【入門編】最小権限の原則とは?セキュリティ強化とDXを推進する上での基本を徹底解説
ここまで見てきたように、GASは手軽に始められる一方、本格的に活用してビジネスインパクトを出すためには、技術的な知識に加え、運用体制やセキュリティなど、考慮すべき点が多く存在します。
「自社のどの業務にGASを適用できるか、専門家の意見が聞きたい」 「開発スキルを持つ人材が社内にいないが、業務自動化は急務だ」 「将来的な内製化を目指したいので、伴走しながら支援してほしい」
このような課題をお持ちであれば、ぜひ一度、私たちXIMIX (NI+C)にご相談ください。Google Workspaceのエキスパートとして、豊富な実績に基づいた最適なソリューションをご提案します。
XIMIXのGoogle Workspace 導入支援についてはこちらをご覧ください。
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本記事では、Google Apps Script (GAS) をテーマに、その基本からビジネスにおける価値、具体的な活用法、そして導入を成功させるための要点までを解説しました。
たとえプログラミングが分からなくても、「GASを使えば、あの面倒な作業を自動化できるかもしれない」という視点を持つことが、貴社の生産性向上に向けた大きな一歩となります。
まずは貴社の業務に潜む「非効率」を探すことから始めてみてはいかがでしょうか。そして、その解決策を具体的に検討するフェーズで課題に直面した際には、いつでも私たちXIMIXにご相談ください。専門家の知見を活用することが、DX成功への最短ルートです。