「DX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトを始めたものの、当初の計画からどんどん内容が膨らんでしまい、収拾がつかなくなってしまった…」 「次から次へと新しい要望が出てきて、予算や納期が守れそうにない…」
企業が変革を目指してDXプロジェクトに取り組む中で、このような悩みを抱えるケースは少なくありません。その大きな原因の一つが、本記事のテーマである「スコープクリープ」です。スコープクリープは、プロジェクトの成否を左右する重要な課題でありながら、その恐ろしさや具体的な対策が見過ごされがちなポイントでもあります。
この記事では、DX推進を担当する皆様が直面しうるスコープクリープの問題に焦点を当て、以下の点について分かりやすく解説します。
本記事をお読みいただくことで、スコープクリープを理解し、ご自身のDXプロジェクトを計画通りに進めるための具体的なヒントを得られるはずです。DXプロジェクトの初期段階にある方、あるいは現在進行中のプロジェクトで課題を感じている方も、ぜひ最後までご覧ください。
スコープクリープとは、プロジェクトの進行中に、当初定義されていなかった要求や機能が際限なく追加・変更され、プロジェクトの範囲(スコープ)が徐々に拡大してしまう現象を指します。「クリープ(creep)」という言葉が示すように、忍び寄るように、気づかぬうちに範囲が広がっていくのが特徴です。
具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
DXプロジェクトは、多くの場合、既存の業務プロセスやビジネスモデルに変革をもたらすことを目的としています。そのため、プロジェクト開始時には見えていなかった課題や、新たな技術の可能性に気づくことも多く、それがスコープクリープを引き起こす要因となりやすいのです。
従来のシステム開発プロジェクトと比較しても、DXプロジェクトは特にスコープクリープが発生しやすい環境にあると言えます。その背景には、以下のようなDX特有の事情が関係しています。
これらの要因が複雑に絡み合い、DXプロジェクトはスコープクリープの温床となり得るのです。
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スコープクリープを放置すると、プロジェクトに様々な悪影響を及ぼします。
このように、スコープクリープはDXプロジェクトの成功を阻む深刻な問題を引き起こす可能性があるのです。
スコープクリープはなぜ発生してしまうのでしょうか。その主な原因を理解することが、対策を講じる上での第一歩となります。
プロジェクトが「何を達成するために存在するのか」という目的やゴールが曖昧な場合、関係者それぞれが異なるイメージを抱き、結果として要求が発散しやすくなります。
また、プロジェクトの初期段階における要件定義が不十分だと、後から「あれが足りない」「これが考慮されていなかった」といった問題が次々と発覚し、スコープの拡大につながります。特にDXプロジェクトでは、新しいビジネスモデルや業務プロセスを対象とすることが多く、要件を網羅的に定義することの難易度が高いと言えるでしょう。
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プロジェクトに関わる経営層、事業部門、情報システム部門、そして実際にシステムを利用するエンドユーザーなど、様々なステークホルダーが存在します。これらの関係者間でのコミュニケーションが不足していると、それぞれの期待値にズレが生じやすくなります。
例えば、経営層は革新的な成果を短期間で期待しているのに対し、現場は現状業務の課題解決を優先したいと考えているかもしれません。このような期待値のズレが調整されないままプロジェクトが進行すると、各方面からの追加要求が発生し、スコープクリープを引き起こします。
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プロジェクト進行中に、新たな要求や仕様変更の必要性が出てくること自体は避けられない場合もあります。問題なのは、これらの変更要求を適切に管理するプロセスが存在しない、あるいは機能していないケースです。
変更要求の受付窓口が不明確であったり、変更がプロジェクト全体(スコープ、コスト、スケジュール、品質)に与える影響を評価する仕組みがなかったりすると、なし崩し的に要求が受け入れられ、スコープが無秩序に拡大していきます。
DXプロジェクトは、試行錯誤の中で新たな知見が得られたり、競合の動きや市場のトレンドが変化したりすることもあります。こうした変化に対応しようとすることは本質的には正しいのですが、その対応が場当たり的になるとスコープクリープを助長します。
当初の計画に固執しすぎるのも問題ですが、変化に対して無計画に対応することもまた、プロジェクトを混乱させる原因となるのです。
特に新しい技術やアイデアを試す際に、「まずは作ってみてから考えよう」「細かいことは後で決めよう」といった姿勢でプロジェクトがスタートすることがあります。柔軟性やスピード感はDXにおいて重要ですが、最低限のゴール設定や優先順位付けがないまま進めてしまうと、方向性が定まらず、関係者の思いつきによる要求が次々と追加され、スコープクリープに陥りやすくなります。
スコープクリープの原因を理解した上で、次に具体的な対策について見ていきましょう。これらの対策を実践することで、DXプロジェクトを計画通りに進め、成功に導く可能性を高めることができます。
スコープクリープを防ぐための最も基本的かつ重要な対策は、プロジェクトの初期段階で明確な目標を設定し、それに基づいて要件を徹底的に定義することです。
プロジェクトが開始された後も、関係者との継続的かつ効果的なコミュニケーションは不可欠です。
プロジェクトに変更はつきものですが、それをコントロールするための変更管理プロセスを整備し、厳格に運用することがスコープクリープ対策の鍵となります。
特に大規模で不確実性の高いDXプロジェクトにおいては、段階的なアプローチを採用することが有効です。
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スコープクリープを含む様々なプロジェクトリスクに対応するためには、強力なプロジェクトマネジメント体制が不可欠です。
これまで述べてきた対策に加えて、スコープクリープを未然に防ぐために、プロジェクト開始前から意識しておきたい予防策も存在します。
ここまで、DXプロジェクトにおけるスコープクリープの原因と対策について解説してきました。これらの対策を自社だけで実行することが難しい、あるいはより確実にプロジェクトを成功させたいとお考えの企業様もいらっしゃるかもしれません。
私たちXIMIXは、Google Cloud および Google Workspace の導入・活用支援を通じて、多くのお客様のDX推進をご支援してまいりました。その豊富な経験と専門知識に基づき、DXプロジェクトの初期段階における課題設定や目的の明確化、具体的なスコープ定義から、プロジェクト推進における様々な課題解決まで、お客様に寄り添った伴走支援を提供しています。
スコープクリープは、DXプロジェクトの成功を妨げる大きな障害となり得ますが、適切な知識と対策、そして信頼できるパートナーがいれば乗り越えることが可能です。XIMIXは、お客様のDXプロジェクトがスコープクリープの罠にはまることなく、確実に成果を生み出すためのお手伝いをいたします。
DXプロジェクトの進め方やスコープ管理にお悩みでしたら、ぜひ一度XIMIXにご相談ください。
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本記事では、DXプロジェクトを推進する上で避けては通れない課題である「スコープクリープ」について、その定義、影響、原因、そして具体的な対策と予防策を解説しました。
スコープクリープは、気づかぬうちにプロジェクトを蝕み、コスト増大、納期遅延、品質低下といった深刻な問題を引き起こす可能性があります。しかし、その発生メカニズムを理解し、プロジェクトの初期段階から適切な対策を講じることで、リスクを大幅に軽減することができます。
明確な目標設定と徹底した要件定義、ステークホルダーとの継続的なコミュニケーション、効果的な変更管理プロセスの確立、段階的なアプローチ、そして強力なプロジェクトマネジメント体制の構築は、スコープクリープを防ぎ、DXプロジェクトを成功に導くための鍵となります。
DXは企業にとって大きな変革の機会ですが、その道のりは決して平坦ではありません。本記事でご紹介した内容が、皆様のDXプロジェクト推進の一助となり、スコープクリープという落とし穴を回避し、目指すべきゴールへと着実に進むためのお役に立てれば幸いです。
もし、DXプロジェクトの計画や実行において専門的なサポートが必要だと感じられた際には、多くの実績を持つXIMIXがお手伝いできることがあります。どうぞお気軽にお声がけください。