クラウドサービスは、現代のビジネスにおいてDX推進の加速や業務効率化に不可欠な存在となりました。しかしその一方で、クラウド利用に伴う新たなリスクも顕在化しています。特に、クラウドサービスの価格改定や提供サービスの終了は、企業のIT予算や事業継続計画に深刻な影響を及ぼしかねない重大な懸念事項です。
多くの企業様が、ある日突然通知される利用料金の値上げや、基幹システムで利用していたサービスの提供終了といった事態に直面する可能性があります。「これまで安定して利用できていたのに、なぜ?」「代替サービスへの移行コストや時間はどうなるのか?」といった不安の声は少なくありません。
本記事では、こうしたクラウドサービス特有のリスクに対し、企業がどのように備え、対処していくべきか、具体的な戦略や実践的な対策をで解説します。クラウドサービスの継続的な活用と事業成長を目指す企業の皆様にとって、本記事がリスクヘッジの一助となれば幸いです。
クラウドコンピューティング市場の成長とともに、サービスの統廃合や料金体系の見直しは、提供ベンダーの戦略上、起こり得る事象です。まずは、これらのリスクが企業にどのような影響を与えるのか、具体的に見ていきましょう。
多くのクラウドサービスは、初期費用を抑えつつ柔軟に利用開始できる反面、利用料金が変動する可能性を常に内包しています。特に海外ベンダーが提供するサービスの場合、為替レートの変動、インフレーション、機能追加や市場戦略の変更など、様々な要因で価格改定が行われることがあります。
これが企業経営に与えるインパクトは小さくありません。
クラウドサービスは、永続的な提供が保証されているわけではない点も、利用におけるリスクの一つです。ベンダーの経営判断や事業再編により、ある日突然、特定のサービスや機能が終了、あるいは他のサービスに統合されることがあります。
サービス提供終了がもたらす主な脅威は以下の通りです。
これらのリスクは、特に基幹システムや顧客向けサービスなど、事業の根幹に関わる部分でクラウドを利用している場合に、より深刻な問題となります。
では、企業はこれらのリスクにどう立ち向かえば良いのでしょうか。場当たり的な対応ではなく、戦略的なアプローチが求められます。
クラウドサービス利用開始時の契約内容は、隅々まで確認することが基本です。特に、価格改定に関する通知条件、サービスレベルアグリーメント(SLA)、サービス終了時の通知期間やデータ移行に関する取り決めは重要です。
可能であれば、価格改定の上限や固定期間、サービス終了時の移行サポートなどについて、契約交渉時にベンダーと協議することも検討すべきです。一般論として、特に大口契約の場合は、交渉の余地が生まれることもあります。
特定のクラウドベンダーの技術やサービスに過度に依存してしまう「ベンダーロックイン」の状態は、価格改定やサービス終了のリスクを増大させます。この状態を回避・軽減するための戦略が不可欠です。
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「もしも」の事態に備え、利用中のクラウドサービスから撤退または移行する場合の計画、いわゆる「出口戦略」をあらかじめ策定しておくことが極めて重要です。
出口戦略には、以下の要素を含めるべきです。
戦略的なアプローチに加え、日々の運用やシステム設計においてもリスクを低減するための工夫が求められます。
アプリケーションやデータを特定のクラウドプラットフォームに過度に依存させない、ポータビリティの高いシステム設計を心がけることが重要です。コンテナ技術(Docker、Kubernetesなど)の活用や、APIベースの疎結合なアーキテクチャを採用することで、異なる環境への移行が比較的容易になります。
クラウドサービスの利用料金は、リソースの使用状況に応じて変動します。不要なリソースの削除、適切なインスタンスタイプの選択、予約インスタンスやスポットインスタンスの活用など、定期的なクラウドコスト最適化の取り組みが、価格改定の影響を緩和する上で役立ちます。
また、利用状況を常に監視し、コスト構造を把握しておくことで、価格改定が行われた際に、どの部分に影響が出るのか、どのような対策が有効かを迅速に判断できます。
市場には常に新しいクラウドサービスが登場し、既存サービスも進化しています。自社の要件に合致する可能性のある代替サービスについて、日頃から情報収集を行い、定期的に評価するプロセスを確立しておくことが望ましいです。これにより、万が一のサービス終了時にも、慌てずに次の選択肢へ移行できます。
これまで述べてきたように、クラウドサービスの価格改定やサービス終了リスクへの備えは、多岐にわたる専門知識と継続的な取り組みが求められます。しかし、これらの対策をすべて自社だけで行うには、リソースやノウハウの面で課題を感じる企業様も少なくないでしょう。
そのような課題に対し、NI+CのXIMIXは、Google Cloud をはじめとするクラウドサービス全般に関する深い知見と豊富な導入・運用支援の実績を活かし、お客様の状況に合わせた包括的なご支援をします。
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クラウドサービスは、適切に活用すればビジネスに多大な恩恵をもたらしますが、その一方で、価格改定やサービス終了といった固有のリスクも存在します。これらのリスクを過度に恐れる必要はありませんが、軽視することなく、平時から戦略的かつ計画的に備えることが肝要です。
本記事でご紹介した、契約内容の確認、ベンダーロックインの回避、出口戦略の策定、そして技術的・運用的な対策を参考に、自社のクラウド戦略を見直し、不測の事態にも揺るがない resilient (レジリエント) なIT基盤の構築を目指してください。
クラウド戦略の策定やリスク対策、コスト最適化は一度行えば終わりというものではなく、ビジネス環境や技術動向の変化に合わせて継続的に見直していく必要があります。XIMIXは、そうしたお客様の継続的な取り組みに寄り添い、Google Cloud を活用した最適なソリューションを提供することで、お客様のDX推進と事業成長を長期的にご支援してまいります。